自己破産すると海外旅行に行ける?手続き中の制限と免責後
自己破産をしても、海外旅行そのものが禁止されるわけではありません。行けるかどうかは、事件の種類で分かれます。管財事件の間は、居住地を離れるのに裁判所の許可が要ります(破産法37条1項)。同時廃止事件は、破産手続が開始と同時に終わるため(同法216条1項)、許可の申立てが問題になる場面は限られます。免責が確定した後は、破産を理由とする旅行の制限はなく、パスポートの発給にも破産を理由にした制限はありません。
免責の審理が続く間は、どの事件でも、裁判所の呼出に応じられる日程にします。
手続きの段階ごとに見る、海外旅行の可否
| 段階 | 海外旅行 | 根拠・注意点 |
|---|---|---|
| 申立ての準備中 | 法律上の禁止はない。ただし旅行費用の使い方に注意 | 浪費は免責不許可事由になりうる(破産法252条1項4号) |
| 申立て後・開始決定の前 | 禁止の定めはないが、面談や裁判所の呼出に出られる日程にする | 裁判所は必要と認めるとき、開始決定の前でも引致を命じられる(破産法38条2項) |
| 管財事件の手続き中 | 居住地を離れるのに裁判所の許可が要る | 破産法37条1項。却下されたら即時抗告ができる(同条2項) |
| 同時廃止事件 | 破産手続は開始と同時に終わる。免責の審理への呼出には応じる | 破産法216条1項。裁判所Q&Aは転居の制限を「破産手続が終わるまで」と説明 |
| 免責許可の決定が確定した後 | 制限なし | 旅券法にも破産の制限はない |
管財事件か同時廃止事件かは、裁判所が判断します(裁判所Q&A)。どちらになりそうかは自己破産の同時廃止と管財事件の違い|分かれ目と費用・期間で確かめてください。
管財事件で許可が要る範囲
破産法37条は、破産者は「居住地を離れる」には、申立てにより裁判所の許可を得なければならないと定めます。旅行の期間や行き先は、条文に書かれていません。数日の国内旅行や出張が許可の対象かどうかは、条文からは決まらないので、管財人に日程を伝えて確かめる必要があります。
許可を取るまでの進め方の一例は、次のとおりです。
- 旅行の日程、行き先、目的、同行者を決める。
- 依頼している弁護士に伝える。
- 弁護士が、裁判所へ許可を求める申立てをする(破産法37条1項)。
- 許可が出てから、航空券や宿を確定させる。
申立てを却下する決定に対しては、破産者が即時抗告をできます(37条2項)。許可が出るまでの日数は決まっていません。日程が決まってからでは間に合わないことがあるので、予定が見えた段階で早めに伝えるのが安全です。
文例:「来月の○日から○日まで、家族と○○(国)へ旅行に行く予定です。管財事件になった場合、居住地を離れる許可はいつまでに、何を出せば取れますか。キャンセルになる場合の費用も考えておきたいです。」
パスポートは、自己破産では制限されない
旅券法13条1項は、旅券の発給や渡航先の追加をしないことができる場合を7つ挙げています。渡航先の法規により入国が認められない人、死刑・無期・長期2年以上の刑に当たる罪で訴追されている人や逮捕状が出ている人、拘禁刑以上の刑の執行中の人などです。旅券法の条文を通して検索しても、「破産」の語は出てきません。
自己破産をしても、パスポートの発給や更新が破産を理由に断られることはない、というのが条文から読める内容です。ただし、行き先の国が定める入国の条件は日本の法律と別で、破産の有無が影響する国があるかどうかは、行き先の大使館や外務省の渡航情報で確かめます。
申立ての前後に、旅行で気をつけること
旅行費用を借金やカードで払わない。 浪費や賭博その他の射幸行為によって著しく財産を減らし、または過大な債務を負担したことは、免責不許可事由です(破産法252条1項4号)。事由に当たっても、裁判所が事情を考慮して免責を許可できる仕組みがあります(同条2項)。旅行が事由に当たるかは、金額や頻度、返済できなくなった経緯など、全体で判断されるので、一律の線はありません。詳しくは自己破産の免責不許可とは?注意する行為と裁量免責の仕組みにまとめています。
裁判所の呼出に応じられない日程を組まない。 高松地方裁判所の同時廃止事件の要領は、免責手続中の転居について、裁判所への出頭が困難になるような転居は控えるよう求め、連絡が取れなくなったり、呼出に正当な理由なく出頭しなかったりすると不利益を受けることがあると注意しています。破産者は、免責についての裁判所や管財人の調査に協力する義務があり(破産法250条2項)、違反は免責不許可事由です(252条1項11号)。
管財事件では、原則として債権者集会が開かれ、同時廃止事件では債権者集会は開かれません(裁判所Q&A)。管財事件の人は、集会の日と旅行の日が重ならないよう、期日が決まったら旅行の日程と照らし合わせます。期日の通知は、申立書に書いた送達場所に届きます。長期の海外滞在中は通知を受け取れないため、受け取りの代わりをする人を決められるかも、弁護士に確かめておきます。
住所や連絡先が変わるときは、すぐ届け出る。 新潟地方裁判所の説明書は、申立てから免責決定の確定までの間に住所が変わったら、速やかに住民票を添えて届け出るよう求めています。海外赴任や長期の出張が見込まれるなら、申立ての前に弁護士へ話してください。
- ①管財事件か同時廃止事件か(弁護士・裁判所の判断)
- ②管財事件なら、居住地を離れる許可の申立て(破産法37条1項)
- ③旅行費用の出どころ(借金・カードを避ける)
- ④裁判所の呼出・面談の日と重ならないか
- ⑤行き先の国の入国条件(大使館・外務省の渡航情報)
相談の前に確かめるチェックリスト
- 旅行の予定日と行き先、費用を誰が払うか
- 仕事で海外出張・海外赴任の予定があるか
- パスポートの有効期限
- 申立ての予定日と、裁判所の期日の見込み
- 旅行に使うお金の出どころ(現金・カード・借入れ)
手続きを選ぶときの全体の影響は自己破産のデメリット一覧|失うもの・制限・家族への影響で比べられます。浪費やギャンブルで作った借金がある場合は浪費やギャンブルの借金でも自己破産できる?裁量免責の考え方を確認してください。
よくある質問
Q. 自己破産をすると、パスポートは取れなくなりますか?
旅券法には、破産を理由に旅券の発給を制限する定めがありません。発給や渡航先の追加をしないことができる場面は、旅券法13条1項が7つ挙げており、渡航先の法規で入国が認められない人、重大な罪で訴追されている人、拘禁刑以上の刑の執行中の人などです。破産は入っていません。
Q. 仕事の出張で海外や遠方へ行くのも、許可が要りますか?
管財事件の間は、破産法37条1項により、居住地を離れるのに裁判所の許可が要ります。出張や日帰りの外出まで許可が要るかどうかは、条文には書かれていません。出張の予定があるときは、破産管財人か依頼している弁護士に、日程を伝えて確かめてください。
Q. 免責が決まったあとは、自由に海外へ行けますか?
破産法37条の制限は、破産手続が終わるまでの間のものです。免責許可の決定が確定した後に、海外旅行を制限する破産法の定めはありません。旅券の発給でも、破産は制限の理由に入っていません。行き先の国が定める入国の条件は別に確かめます。
出典・参考にした公的な情報
- 破産法(第37条・第38条・第216条・第250条・第252条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 旅券法(第13条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判手続 民事事件Q&A(破産)(裁判所)
- 同時廃止事件の申立て要領(高松地方裁判所)(裁判所)
- 自己破産申立について(説明と書き方)(新潟地方裁判所)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。