自己破産の免責不許可とは?注意する行為と裁量免責の仕組み
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自己破産で「免責不許可」になるのは、破産法252条1項に挙げられた11の事由のどれかに当たり、しかも裁判所が裁量で免責を許可しない場合です。11の事由に当たっても、裁判所が破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考えて、免責を許可できます(同条2項、裁量免責)。免責が許可されなかったときも、即時抗告ができ、他の債務整理を考える道があります。この記事では、11の事由を条文どおりに表にし、裁量免責の仕組みと、許可されなかったときの流れを整理します。
免責とは何か:免責不許可は「許可しない」判断
自己破産は、破産手続と免責の2段階です。裁判所の説明によると、破産手続が始まっても、当然に返済を免れるわけではありません。支払義務をなくすには、免責許可の決定を受ける必要があります。個人が自分で破産を申し立てると、免責許可の申立てもしたものとみなされます(破産法248条4項)。
裁判所は、破産者が次の11の事由のいずれにも当たらないときは、免責許可の決定をします(破産法252条1項)。逆に言うと、どれかに当たれば、原則として免責不許可になります。ただし、2項の裁量免責があります。免責許可の決定が確定すると、破産者は配当を除き、破産債権について責任を免れます(同法253条1項)。決定は確定しなければ効力を生じません(252条7項)。
免責不許可事由11項目の早見表
条文の言い方を、平易な言葉に直して並べます。判断は裁判所が事案ごとにするので、当たるかどうかを自分で決めつけないでください。
| 号 | 内容(条文の趣旨) | 関連する記事 |
|---|---|---|
| 1号 | 債権者を害する目的で、財産を隠す・壊す・債権者に不利益に処分するなど、破産財団の価値を不当に減らした | 申立て前にしてはいけない財産の移動 |
| 2号 | 破産手続の開始を遅らせる目的で、著しく不利益な条件で借りた。または信用取引で買った商品を著しく不利益な条件で処分した | 同上 |
| 3号 | 特定の債権者に特別の利益を与える目的、または他の債権者を害する目的で、義務でない担保の供与や返済をした | 同上 |
| 4号 | 浪費や賭博その他の射幸行為で、著しく財産を減らし、または過大な借金を負った | 浪費やギャンブルの借金でも自己破産できる? |
| 5号 | 申立ての日の1年前から開始決定までの間に、破産の原因があることを知りながら、ないと信じさせるため詐術を用いて、信用取引で財産を得た | 同上 |
| 6号 | 業務・財産の状況に関する帳簿・書類などを隠滅・偽造・変造した | 同上 |
| 7号 | 虚偽の債権者名簿(債権者一覧表を含む)を出した | 同上 |
| 8号 | 裁判所の調査で、説明を拒み、または虚偽の説明をした | 同上 |
| 9号 | 不正の手段で、破産管財人などの職務を妨害した | 同上 |
| 10号 | 前の免責許可の決定の確定の日などから7年以内に、免責許可の申立てをした | 自己破産を繰り返す人は免責される? |
| 11号 | 説明義務(40条1項1号)、重要財産の開示義務(41条)、免責の調査への協力義務(250条2項)などの義務に違反した | 同上 |
10号は、「前の免責の確定の日から7年以内」だけでなく、給与所得者等再生の再生計画が遂行された場合の認可決定の確定の日や、ハードシップ免責の決定に係る認可決定の確定の日から数える場合もあります。数え方は、申立ての日が基準です。
7号の「債権者一覧表」は、申立てに添えて出す借入先の一覧です。家族や友人から借りたお金も、載せ忘れると問題になります。知りながら載せなかった請求権は免責の対象外にもなります(253条1項6号)。2号に当たりうる行為として、クレジットカードで買った商品を安く売って現金にする、いわゆる現金化が挙げられることがあります。
該当しても免責される場合:裁量免責の仕組み
252条2項は、1項各号のどれかに当たる場合でも、裁判所が「破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるとき」は、免責許可の決定ができると定めています。
押さえる点は4つです。
- 基準は一覧になっていない:「一切の事情」に入る事情と、その重みは、条文に列挙がありません。裁判所が事案ごとに判断します。
- 調査が入りやすい:東京地方裁判所民事第20部は、免責調査を経ることが相当な場合を、原則として管財事件として扱う場合の一つに挙げています。管財事件では、破産管財人が財産、負債、免責について調べ、結果を報告します。予納金は同時廃止より高くなります(東京地裁の公表額では、個人の管財事件は最低20万円)。
- 債権者も意見を述べられる:裁判所は、免責の申立てがあると、管財人と破産債権者が免責の当否について意見を述べられる期間を定めます。期間は公告の効力が生じた日から1か月以上です(破産法251条)。意見が出ても、免責の判断は裁判所がします。
- 嘘や隠し事は別の問題になる:説明を拒む・虚偽の説明をするのは、それ自体が8号の事由で、刑事罰の対象にもなりえます(271条。3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)。裁量免責を求める場面ほど、事実を正確に話すことが土台になります。
経緯の説明や家計の改善など、一般にどんな準備をするかは浪費やギャンブルの借金でも自己破産できる?裁量免責の考え方に、裁判所に反省文を出すときの書き方は自己破産の反省文の書き方|書く項目と文例・避けたい書き方にまとめています。
免責が許可されなかったときの流れと次の手
免責不許可の決定が出たあとの流れを、順に整理します。
- 決定が送達される:裁判所は、免責不許可の決定をしたとき、その裁判書を破産者に送達します(破産法252条4項)。
- 即時抗告ができる:免責許可の申立てについての裁判には、即時抗告ができます(同条5項)。期間は、裁判の告知を受けた日から1週間です(破産法13条が準用する民事訴訟法332条)。免責許可の決定の確定までが公告から2週間なのに、不許可は1週間なのは、不許可の裁判書は破産者に送達され、公告で代えられないためです(破産法252条4項)。許可の決定の期間は自己破産の復権とは?にあります。1週間は短いので、決定が届いたら、すぐ依頼先に連絡します。
- 確定すると、免責の効果は生じない:借金の支払義務は残ります。免責の裁判が確定するまで中止されていた強制執行(同法249条1項)は、確定後に進められるようになります。
- 時効は2か月の間、完成しない:免責の申立てを却下した決定や免責不許可の決定が確定した日の翌日から2か月を経過するまでは、一般の破産債権の時効は完成しません(同条3項2号)。
- 復権の時期が変わる:免責が許可されて確定すると、当然に復権します(255条1項1号)。不許可の場合は、この復権の事由に当たりません。条文上は、開始決定後に詐欺破産罪で有罪の確定判決を受けずに10年を経過したときに復権する、などの事由があります(同項4号)。資格制限が解ける時期は自己破産の復権とは?資格制限が解ける時期と免責確定までの期間で説明しています。
次の手は、状況で分かれます。
| 状況 | 検討する道 | 注意 |
|---|---|---|
| 決定に不服がある | 即時抗告 | 期間は告知を受けた日から1週間 |
| 継続的に収入を得る見込みがある | 個人再生 | 収入と借金の額の要件がある(民事再生法221条1項) |
| 毎月払える原資がある | 任意整理・特定調停 | 返済を続ける収入や援助が前提(大分地方裁判所のQ&A) |
| 収入が戻らない | 弁護士・司法書士に、残った借金への対応を相談 | 事情に合う手続きは個別に決まる |
免責の取消しにも注意が必要です。不正の方法で免責許可を受けた場合に、債権者が免責許可の決定から1年以内に申し立てると、裁判所は免責取消しの決定ができます(破産法254条)。
免責不許可を避けるために、申立て前にすること
免責の判断は申立てまでの行動の積み重ねで決まります。次の点を確認してください。
- 借入先を一社も漏らさず、一覧に載せる(家族・友人からの借金を含む)
- 財産の目録に、現金、預貯金、保険、車、不動産、高価な物を載せる
- 申立てを決めたあとに、新しく借りない、特定の人にだけ返さない、財産を人に移さない
- 裁判所や管財人の質問に、不利な事実も含めて答える
- 迷ったことは、動く前に依頼先へ聞く
文例(依頼先へ):「借入先は○社と家族から○万円があります。一覧に載せる範囲を確認したいです。申立ての前に売った物が○点あります。免責で問題になる可能性と、今から私が気をつけることを教えてください」
個別の免責の見通しは、弁護士・司法書士が資料を見て判断することです。この記事は、判断の材料を示したものです。
よくある質問
Q. 免責不許可になったら、借金はすべて残りますか?
免責許可の決定は、確定しなければ効力を生じません(破産法252条7項)。不許可の決定が確定すれば、免責の効果は生じず、借金の支払義務は残ります。免責の裁判が確定するまで止まっていた強制執行は、確定後に再び進められるようになります。残った借金への対応は、他の債務整理も含めて弁護士・司法書士に相談してください。
Q. 免責が許可された場合でも、払い続ける支払いはありますか?
あります。破産法253条1項は、税金などの租税等の請求権、悪意で加えた不法行為の損害賠償、養育費などの扶養に関する義務、知りながら債権者名簿に載せなかった請求権、罰金などを、免責の対象から外しています。一覧は[自己破産しても払う必要がある支払い|税金・養育費などの一覧](/hasan-higamen/)で確かめられます。
Q. 免責不許可事由に当たるかどうかは、自分で判断できますか?
判断するのは裁判所です。条文には金額の基準がなく、「著しく」「過大」などの言葉を、事案ごとに裁判所が見ます。自己判断で財産を動かしたり、事実を隠したりせず、不利な事実も含めて依頼先に話し、見通しを聞いてください。
出典・参考にした公的な情報
- 破産法 第10条・第13条・第40条・第41条・第249条・第250条・第251条・第252条・第253条・第254条・第255条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法 第332条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事再生法 第221条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産・再生(裁判所)(裁判所)
- よくある質問(東京地方裁判所民事第20部)(東京地方裁判所)
- 債務整理の方法についてのQ&A(大分地方裁判所)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。