自己破産しても払う必要がある支払い|税金・養育費などの一覧
自己破産で免責許可の決定が確定すると、借金の返済責任を免れますが、法律が「免責しない」と決めている請求が7種類あります(破産法253条1項)。代表は税金(国民健康保険料や年金保険料を含む)と養育費です。一方、カードローン・消費者金融・家賃・携帯料金などの滞納は、7種類に入っていないので免責の対象になります。ここでは7種類を表で確認し、税金を滞納しているときの相談先まで順に整理します。
免責されない請求は7種類
免責許可の決定が確定すると、破産者は配当を除き、破産債権について責任を免れます。ただし、次の7種類の請求権は免責されません(破産法253条1項)。
| 号 | 免責されない請求 | 具体的に当たるもの |
|---|---|---|
| 1号 | 租税等の請求権 | 所得税・住民税・固定資産税・自動車税のほか、国税や地方税と同じ方法で集める国民健康保険料・国民年金保険料など |
| 2号 | 悪意で加えた不法行為の損害賠償 | 相手を害する意図で行った行為に基づく賠償(詳しくは自己破産すると慰謝料はどうなる?免責される場合とされない場合) |
| 3号 | 故意または重大な過失で人の生命・身体を害した不法行為の損害賠償 | 2号に当たるものを除く |
| 4号 | 夫婦の協力扶助、婚姻費用の分担、子の監護(養育費など)、扶養の義務に係る請求権 | 契約に基づく、これらに類する義務を含む |
| 5号 | 雇用関係に基づく使用人の請求権と、使用人の預り金の返還請求権 | 従業員の未払いの給料など |
| 6号 | 破産者が知りながら債権者名簿に載せなかった請求権 | 破産手続開始の決定を知っていた債権者の請求権は除く |
| 7号 | 罰金等の請求権 | 罰金・科料・刑事訴訟費用・追徴金・過料(97条6号) |
裁判所のQ&Aも、免責の効果を「税金や罰金、養育費などを除いて、返済を免れる」と説明しています。この7種類以外の借金は、原則として免責の対象です。
よく聞かれる支払いは、免責されるか
「これは免責される?」と聞かれやすい支払いを、条文の7種類に当てはめて並べると次のとおりです。
| 支払い | 免責されるか | 見方 |
|---|---|---|
| 住民税・国民健康保険料・国民年金保険料の滞納 | されない | 1号の租税等。国税や地方税と同じ滞納処分の方法で集められる請求です |
| 養育費・婚姻費用の未払い | されない | 4号。子の監護や扶養に係る義務の請求権です |
| 従業員への未払いの給料 | されない | 5号。個人事業主が従業員を雇っているときの話です |
| カードローン・消費者金融・リボ払い | される | 7種類に入っていません |
| 家賃の滞納(手続開始の決定より前の分) | される | 破産債権として免責の対象。決定後の家賃は新たに払う支払いです |
| 携帯電話の利用料金の滞納 | される | 7種類に入っていません。端末の分割代金は、契約書の条件を依頼先に見せて確かめます |
| 奨学金(本人の返還分) | される | ただし保証人・連帯保証人への請求は残ります(253条2項) |
| 債権者名簿に載せなかった借金 | されないことがある | 6号。知りながら載せなかった場合です |
連帯保証人への請求は、免責の「対象」かどうかとは別の話です。本人が免責されても、保証人に対する債権者の権利には影響がありません(破産法253条2項)。保証人に起きることは、自己破産すると連帯保証人はどうなる?請求の流れと話し合い方で扱っています。
税金は、免責で減らない請求の代表です。次の章で、税金や保険料を滞納しているときの動き方を見ます。
税金・保険料を滞納しているとき
破産法97条4号は、「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」を「租税等の請求権」と定めています。国民年金保険料は、納めないと国税滞納処分の例で処分できると定められています(国民年金法96条4項)。市町村が徴収する国民健康保険料も、国民健康保険法79条の2で、法律で定める歳入として滞納処分の対象です。そのため実務では、税金のほか、これらの保険料も免責されない側に入れて考えます。個別の請求が1号に当たるかは、依頼先の弁護士・司法書士に滞納通知を見せて確かめます。
なお、破産手続が始まる前の原因で生じた租税等のうち、手続開始の時点でまだ納期限が来ていないものや、納期限から1年たっていないものは、財団債権として扱われます(破産法148条1項3号)。それ以外の租税等は、破産債権のうち他の債権より優先して扱われる優先的破産債権になります(98条1項)。どちらの扱いになるかは納期限と滞納の時期で変わり、いずれも免責の対象外という点は同じです。まず納期限が分かる書類をそろえておくことが出発点です。
税金を滞納している人が動く順番は、次のとおりです。
- 督促状・納付書・差押予告の書類を集め、税目(所得税・住民税・国保料など)ごとに、納期限・滞納額・延滞金を表にする。
- 国税なら税務署の徴収担当、住民税・固定資産税・国保料なら市区町村の窓口に、払える月額と収支のメモを持って相談する。
- 自己破産を依頼する弁護士・司法書士には、借金と同じく滞納の一覧を最初の面談で全部見せる。
役所との相談で使う制度は、国税の場合、次のとおりです。
- 納税の猶予:災害、本人や生計を一にする親族の病気・負傷、事業の廃止・休止、事業の著しい損失などで一時に納付できないとき、申請により1年以内の猶予を受けられます。猶予期間内の分割納付も認められます(国税通則法46条2項・4項)。担保は原則として必要ですが、猶予に係る税額が100万円以下の場合と、猶予の期間が3か月以内の場合は不要です(同条5項)。
- 換価の猶予:一時に納付すると事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがあり、納税に誠実な意思がある場合に、納期限から6か月以内の申請で、滞納処分による財産の売却を1年以内の期間、猶予できる制度です(国税徴収法151条の2第1項)。国税庁のリーフレットに要件が載っています。
住民税や国保料は、猶予や減免の条件・期間が自治体の条例で決まります。それぞれの入口は、税金を滞納しそうなとき|納税の猶予の条件と申請・分割の考え方、国民健康保険料が払えないとき|減免・分割と保険証の扱い、国民年金が払えないときの免除と納付猶予|申請の流れと将来への影響にまとめています。差押えの時期は税金の滞納で差し押さえはいつ?督促状から差押えまでの流れで確かめられます。
個人再生に切り替えても、税金は減りません。一般の優先権がある債権は、再生手続によらないで随時弁済すると民事再生法122条が定めているためです。税金の分は、手続きを選ぶ前から別に払う計画を立てておく必要があります。
養育費・婚姻費用は免責されない
4号は、夫婦間の協力・扶助の義務(民法752条)、婚姻費用の分担(同760条)、子の監護に関する義務(同766条・766条の3)、扶養の義務(同877条〜880条)に係る請求権を、免責の対象から外しています。契約に基づいて、これらに類する義務を負った場合も同じです。
条文は「義務に係る請求権」と定めているので、すでに滞納している養育費も免責の対象外です。養育費の金額が今の収入に合わなくなったときは、破産とは別に、家庭裁判所の調停で見直しを求める手続きがあります。離婚と借金が重なっているときの整理は、離婚するとき借金はどうなる?財産分与と夫婦の借金の分け方に載せています。
債権者名簿に載せ忘れた借金にも注意
免責されない請求のうち、自分の行動で防げるのが6号です。知りながら債権者名簿に載せなかった請求権は、免責されません。虚偽の債権者名簿を出すこと自体も、免責不許可事由です(破産法252条1項7号)。
載せ忘れが起きやすいのは次の借金です。
- 家族・友人・勤務先からの借入れ(「返さなくていい」と言われていても書く)
- 保証人として引き受けた借金(本人が払っている間も書く)
- 請求書が届いていない借金や、古くて忘れかけているカード・ローン
- 家賃・携帯料金・病院代など、貸金業以外の未払い
自己破産を申し立てると、同時に免責の申立てをしたものとみなされ(破産法248条4項)、債権者一覧表が債権者名簿とみなされます(同条5項)。申立ての前に、通帳・クレジットカードの明細・督促状を見ながら、借入先と未払い先を全部書き出すのがもっとも堅い準備です。何が免責不許可事由になるかは自己破産の免責不許可とは?注意する行為と裁量免責の仕組みで整理しています。
免責されない支払いは、手続きのあとの家計に残ります。税金・養育費・保険料の月額を先に出し、残りの収入で生活できるかを確かめたうえで、自己破産が合うかを依頼先と考えるのが順序です。
よくある質問
Q. 税金を滞納したまま自己破産すると、税金だけが残りますか?
残ります。破産法253条1項1号は、租税等の請求権を免責の対象から外しています。ほかの借金が免責されても、滞納している税金は手続きのあとも請求が続くので、納税の猶予や分割は税務署や市区町村の窓口で別に相談します。
Q. 滞納していた家賃も免責されますか?
家賃は253条1項の7種類に入っていません。破産手続開始の決定より前に生じた滞納分は、ほかの借金と同じ破産債権として免責の対象になります。決定のあとの月の家賃は新しく発生する支払いなので、住み続けるなら払い続けることになります。
Q. 自己破産すれば、連帯保証人の責任も消えますか?
消えません。免責の効力は、債権者が保証人に対して持つ権利に影響しないと破産法253条2項が定めています。本人が免責されても、保証人には請求が残ります。
出典・参考にした公的な情報
- 破産法 第2条・第97条・第98条・第148条・第248条・第252条・第253条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事再生法 第122条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国民年金法 第96条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国民健康保険法 第79条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国税通則法 第46条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国税徴収法 第151条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国税を一時に納付できない方のために猶予制度があります(リーフレット)(国税庁)
- 破産手続・免責に関するQ&A(破産・再生)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。