離婚するとき借金はどうなる?財産分与と夫婦の借金の分け方
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離婚をしても、借金は消えません。借金を返す義務は、お金を借りる契約をした人(と、その保証人・連帯債務者)が債権者に対して負っているもので、夫婦の関係が終わっても、その契約は続きます。財産分与は夫婦の間で財産を清算する話で、**夫の借金を妻が、妻の借金を夫が、自動的に引き受けることにはなりません。**一方で、借金の使い道によっては、財産分与の計算で考慮されることがあります。この記事では、離婚の前に確かめたい「誰が債権者に責任を負っているか」と「財産分与でどう考えるか」を分けて整理します。
離婚しても借金の請求先は変わらない:立場ごとの早見表
最初に、債権者から見て自分がどの立場かを確かめます。離婚の話し合いでは「夫の借金」「家のローン」とひとまとめに語られがちですが、請求の相手は契約書の上の立場で決まります。
| 自分の立場 | 離婚後の請求先 | 条文・確かめ方 |
|---|---|---|
| 契約者(自分の名前で借りた) | 自分 | 民法587条。契約書の借主欄を見る |
| 配偶者の契約で、自分は何も署名していない | 原則、配偶者だけ | 契約書に自分の名前がないか確かめる |
| 保証人・連帯保証人 | 離婚後も自分に請求できる | 446条。保証は書面で結ぶ。連帯保証人は「先に本人へ請求して」と言う権利もない(454条) |
| 連帯債務者(住宅ローンのペアローンなど) | 離婚後も、債権者は各自に全額を請求できる | 436条。契約書の「連帯債務者」欄を見る |
| 生活のための借入れ(日常家事) | 夫婦が連帯して責任を負うことがある | 761条。範囲は事情で判断される。夫婦の借金は連帯責任?日常家事債務の範囲と払わなくてよい借金で整理 |
離婚の届出を出しただけで、債権者との契約上の立場が自動的に変わることはありません。保証人の立場を外したい、連帯債務者から抜けたい、というときは、債権者との合意が要ります。名義を整理する方法は、住宅ローンについては離婚後に住宅ローンが払えないとき|名義と連帯保証の確認にまとめています。
財産分与で夫婦の借金はどう考えられるか
財産分与は、民法768条にもとづき、離婚した人の一方が相手に財産の分与を求める仕組みです。話し合いで決まらないときは、家庭裁判所が、婚姻中に取得・維持した財産の額、各自の寄与の程度、婚姻の期間、生活水準、協力・扶助の状況、年齢・心身の状況、職業・収入などを考えて、分けるかどうかと分け方を決めます(同条3項)。寄与の程度が違うことが明らかでないときは、同じとされます。
条文には「借金(債務)をどう扱うか」は書かれていません。裁判所の案内も、対象は「婚姻中に協力して取得した財産」と説明しています。そのため、借金が分与の計算でどう考慮されるかは、使い道や事情で変わります。一般には、次のように考えるとされています。
| 借金の種類 | 分与の計算での考え方(一般に) | 話し合いの前に集めるもの |
|---|---|---|
| 家賃・食費・子の教育費など、家族の生活のための借入れ | 考慮されることがある | 借入れの時期と使い道が分かる通帳・明細 |
| 住宅・車など、夫婦で使う財産を買うための借入れ | 財産の価値と残りの借金を合わせて考える | 購入時の契約書、現在の残高証明 |
| ギャンブル・個人の遊興・投資などの借入れ | 考慮されにくいとされる | 借入れ時期、使い道が分かる記録 |
| 婚姻前から本人が負っていた借金 | 婚姻中の財産づくりに使われたかが論点になる | 借入れ時期が分かる契約書 |
この表は一般的な考え方で、あなたの場合の割合や結論を示すものではありません。借金の額や分ける割合は、事情をすべて見て決まります。慰謝料を含めて、金額の見込みはこの記事では扱いません。
もうひとつ、混同しやすい点があります。財産分与で「この借金は夫が引き受ける」と夫婦で決めても、債権者にとっては契約の相手が変わったわけではありません。借金を別の人が引き受け、もとの債務者が責任を免れる形(免責的債務引受)にするには、債権者との契約か、債権者の承諾が必要です(民法472条)。夫婦の約束は、債権者に「払わなくてよくなった」と主張する材料にはならないので、書面にして、債権者への対応も決めておきます。
話し合いの前に整理する5つの手順
- 借入れの一覧を作る:借入先、契約日、残高、月々の返済額、使い道を書き出します。配偶者の借入れ情報は、信用情報機関への開示を本人しか請求できないので、本人と一緒に作ります。調べ方は家族の借金を調べる方法|本人の同意が必要な開示と確かめ方にあります。
- 契約書で、自分の立場を確かめる:保証人欄、連帯債務者欄、連帯保証人の署名がないかを見ます。身に覚えのない署名があるときは、家族が勝手に自分名義で借金したら|名義の冒用への対応と相談先へ進みます。
- 財産の一覧を作る:預貯金、不動産、車、保険、退職金の見込みを、名義と時点つきで書き出します。借金だけでなく、財産と並べて見ないと分与の話になりません。
- 家計の分離を始める:自分名義の口座・カードを守り、新たな保証人の署名や、自分名義での借入れを頼まれても応じません。
- 窓口に相談する:借金の相談は、財務局や自治体の多重債務相談窓口、法テラス、弁護士会・司法書士会などで受けられます。番号と受付時間は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方に書いています。
文例(配偶者に切り出すとき):「離婚の話をする前に、借入れの一覧を一緒に作りたい。借入先、残高、いつ何に使ったかを書いてほしい。責めるためではなく、お互いの責任の範囲を知るために必要なんだ」
感情的になりやすい話題なので、書面(メモや表)にして話すと、言った・言わないの行き違いを減らせます。
まとまらないとき:家庭裁判所の調停と期限
当事者の話し合いでまとまらない、あるいは話し合い自体ができないときは、家庭裁判所の夫婦関係調整調停(離婚)を使えます。裁判所の案内では、夫・妻のどちらも申立人になれ、申立先は相手方の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で決める家庭裁判所、費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手(切手の額は裁判所ごとに異なります)です。調停では、離婚そのもののほか、財産分与・年金分割・慰謝料などの財産の問題もいっしょに話し合えます。
離婚したあとで財産分与を求める場合は、財産分与請求調停(審判)を申し立てます。期限は、離婚した日の翌日から5年を過ぎるとできません。令和8年(2026年)4月1日より前に離婚した場合は2年です。借金の整理と財産分与を同時に進める必要があるなら、離婚の時期と期限をそろえて考えます。
借金が重いとき、離婚の前後で考えること
借金の返済が苦しいときは、離婚の話と別に、債務整理を考える場合もあります。債務整理で保証人に請求が移る仕組みは、債務整理すると保証人はどうなる?請求が保証人に行く仕組みで説明しています。自己破産が家族の生活にどう響くかは自己破産の家族への影響は?配偶者・子どもの生活と信用情報にあります。
離婚せずに家計を守る道もあります。離婚を迷っているなら、夫の借金で離婚しない選択|家計を守る分け方と話し合いの進め方も合わせて読んでください。配偶者の借金の原因がギャンブルのときは、次の夫のギャンブル借金で離婚を考えたら|話し合いの前に整理することで、依存の相談先と整理の順番を取り上げます。
離婚の条件や借金の分け方の最終判断は、弁護士の仕事です。法テラスの無料相談など、使える窓口で個別の事情を伝えてから決めてください。
よくある質問
Q. 夫が借金したまま離婚すると、離婚後に妻へ請求が来ますか?
妻が保証人・連帯保証人になっている、ペアローンなどで連帯債務者になっている、という場合は、離婚後も請求の相手です。契約した本人だけの借金で、妻が契約書に名前を書いていなければ、原則として請求の相手は夫だけです。請求書が届いたら、どの契約のどの立場での請求かを書面で確かめてください。
Q. 財産分与で「借金は夫が全部引き受ける」と決めれば、妻は業者から請求されなくなりますか?
夫婦の間の約束は、それだけでは債権者(貸金業者や銀行)を縛りません。妻が連帯債務者や保証人のままなら、債権者は離婚後も妻に請求できます。契約者を外すには、債権者が加わる債務引受(民法472条)などの手続が要るので、離婚の前に債権者へ相談します。
Q. 離婚後に財産分与を求めるには、いつまでに動けばよいですか?
家庭裁判所への申立ては、離婚した日の翌日から5年を過ぎるとできません。ただし令和8年(2026年)4月1日より前に離婚した場合は2年です。期限は申立ての期限なので、離婚した日が分かる戸籍の記載を手元に置いて、早めに家庭裁判所へ確かめます。
出典・参考にした公的な情報
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。