家族が勝手に自分名義で借金したら|名義の冒用への対応と相談先
この記事のもくじ
家族が勝手に自分の名義で借りていたとき、本人が契約していないなら、原則として借金は本人に及びません。代理権のない人が本人の代理人として結んだ契約は、本人が追認しなければ本人に効力を生じないと、民法113条1項が定めています。ただし、本人が承諾していた、印鑑やカード、本人確認書類を預けて任せていた、といった事情があると話が変わります。そのため最初にすることは、払わない・認める書面に署名しない・証拠を残すの3つです。そのうえで業者と信用情報機関に事実を伝え、消費生活センターや弁護士に相談します。
まず確かめる:本人が知らない契約か、任せていた範囲か
「勝手に」と言っても、場面によって扱いが違います。業者は「本人が申し込んだ」と考えているので、どの場面にあたるかが争いの中心になります。
| 場面 | 民法の考え方 | 最初にすること |
|---|---|---|
| 申込みも署名も本人は知らない。家族が本人になりすまして契約した | 代理権のない人がした契約は、本人が追認しない限り本人に効力を生じない(113条1項) | 払わない。業者に契約した覚えがないと書面で伝える |
| 家族に頼まれて承諾した、名義を貸した | 本人が了解した契約なので、本人の借金として扱われるおそれがある | 一人で結論を出さず、弁護士・消費生活センターへ |
| 印鑑・カード・本人確認書類を預け、手続きを任せていた | 業者に対して代理権を与えた旨を表示していると、権限の範囲内の行為は本人が責任を負う場合がある(109条)。範囲を超えた行為でも、業者が権限があると信じる正当な理由があるときは同様(110条) | 何を預け、何を任せたかを日付つきでメモしてから相談 |
| 夫婦の生活費のための借入 | 日常の家事に関する債務は連帯責任の対象になりうる(761条) | 夫婦の借金は連帯責任?日常家事債務の範囲を読む |
当てはまる場面の最終判断は、契約書面や経緯を見て、弁護士や裁判所がします。この記事は「払わなくてよい」と決めつける種類の話ではなく、判断の前に本人ができることを順番に示します。
気づいたらまずやる手順
- 払わない・認めない(支払い、返済の約束、「確認しました」への署名をしない)
- 記録を集める(届いた通知、家族とのやり取り、預けた物のメモ)
- 業者に「契約した覚えがない」と書面で伝え、契約書面の写しを求める
- 信用情報を開示して登録内容を見る → 事実と違えば登録元に訂正を求める
- 消費生活センター・弁護士・警察に相談する
手順1:払わない・認めない。 ここでいう「払わない」は、身に覚えのない契約の話です。自分が承諾していた契約は延滞が信用情報に載るので、先に上の表で場面を確かめます。督促が来ると焦って「とりあえず」支払う人が少なくありません。しかし本人が支払ったり、「払います」「分割にしてください」と伝えたりすると、契約を認めた(追認した)と受け取られるおそれがあります。追認すると、契約が本人に及ぶことになり、113条1項の原則は使えなくなります。電話で担当者に急かされても、「契約した覚えがないので、書面で確認します」と答えて切って構いません。
手順2:記録を集める。 次のものを1か所にまとめます。
- 業者から届いた書類、メール、留守電、ショートメッセージ(日付が分かるもの)
- 家族とのLINE・メールのやり取り。本人の名義で借りたことを家族が認めた発言は、日付と言い方をメモする
- 家族に預けたことがある物(健康保険証、マイナンバーカード、運転免許証、印鑑、キャッシュカード)と、その時期
- 本人の署名ではない筆跡が分かる書類、申込時の住所・電話番号・メールアドレスが本人のものと違う部分
手順3:業者に書面で伝える。 電話だけだと言った言わないになるため、メールか書面で伝えます。契約番号は督促状に書いてあります。
文例:「○月○日付の通知を受け取りました。私は貴社と契約した覚えがありません。契約書面、申込書の写し、申込日時、申込みの方法、申込時に登録された住所・電話番号を教えてください。確認が済むまで、支払いはいたしません。」
応じるかどうかは業者によって違います。回答がない、または不十分なときは、次の相談先へ進みます。
手順4:信用情報を開示する。 業者が延滞として登録していると、本人の信用情報に傷がつきます。CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターの3機関の開示で、身に覚えのない契約が載っていないか見ます。申込み方法と最新の受付状況は信用情報の開示のやり方にあります。
信用情報に身に覚えのない記録があったとき
CIC は、登録内容が事実と違うときや心当たりがないときは、機関ではなく登録元の会社に問い合わせるよう案内しています。登録元が調べて、誤りなら訂正する仕組みです。JICC も同じ入口で、登録元で解決しない場合には、開示日から2か月以内であれば JICC を通じて登録元に調査を依頼できます。2か月の期限があるので、開示したら早めに動いてください。
注意点が1つあります。事実と合っている記録は、本人が頼んでも訂正・削除できません。「契約していないのだから消せる」とは限らず、契約が本人のものかどうかの判断が先です。業者が名義の冒用を認めて記録を訂正した後の流れは、信用情報の削除依頼はできる?誤った登録を訂正する手順に説明があります。
どこに相談するか:消費生活センター・弁護士・警察
- 消費生活センター(消費者ホットライン188):クレジットカードや後払いの契約で、業者との交渉の進め方を相談できます。番号と受付時間は借金の相談窓口の番号と受付時間で確認してください。
- 弁護士・司法書士:業者への通知、契約が本人のものかの判断、債務整理が必要かの見立てを頼めます。依頼できる範囲は事務所ごとに違うので、見積もりと面談で確かめます。
- 警察:他人の名前や印鑑を使って契約書類を作ることについては、刑法に私文書偽造などの規定があります(159条)。実際に事件として扱われるか、どの罪にあたるかは警察・検察が判断します。相手が家族の場合は、被害届や告訴を出すかどうかを、関係への影響も含めて弁護士に相談してから決めるのが現実的です。
借金の中身が、保証人にされた形のものなら勝手に連帯保証人にされていたらを読んでください。家族との話し合いの進め方は、家族の借金を調べる方法にまとめた順番(責めずに全体を聞く)が使えます。自分の借金が家族に知られた側の場合は自分の借金が家族にバレたときを参考にしてください。
本人の借金として扱われそうなとき
承諾していた、任せていたなど、契約が本人のものとして扱われそうな場合は、返済の方法を考える段階に入ります。借入先ごとの金額を表にし、毎月の収入と生活費から返せる額を出して、自力で返す・返済条件を相談する・債務整理を検討する、のどれが合うかを見ます。窓口の選び方は借金の相談はどこにする?公的窓口・法テラス・弁護士の選び分けにあります。名義を使った家族にも返済の意思があるなら、返済の分担を書面で決めておきます。ただし、書面があっても業者に対しては本人が債務者のままになる点は変わりません。
よくある質問
Q. 勝手に作られた借金は、名義を使われた本人が払わなければなりませんか?
本人が契約していないなら、原則として本人に効力は及びません。代理権のない人が本人の代理人として結んだ契約は、本人が追認しなければ本人に対して効力を生じないと民法113条1項が定めています。ただし、承諾していた、印鑑や書類を預けて任せていたなどの事情があると別の扱いになることがあるため、一人で結論を出さず相談先に伝えてください。
Q. 家族が「自分で返す」と言っています。業者への連絡は任せてよいですか?
名義が自分のままの借金について、家族が払うこと自体は止められません。ただ、本人が支払ったり返済の約束をしたりすると、追認と受け取られるおそれがあります。家族が返すと言っている場合も、契約の経緯を業者に確かめてから対応を決めてください。
Q. 夫が勝手に自分名義で借金をしていた場合、離婚になりますか?
借金があること自体が離婚の条件になるわけではありません。名義を使われた事実と、夫婦として続けるかは別に考えます。離婚した場合の借金の分け方は[離婚するとき借金はどうなる?財産分与と夫婦の借金の分け方](/rikon-shakkin/)で、離婚しない選択は[夫の借金で離婚しない選択](/otto-rikon-shinai/)で説明しています。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第109条・第110条・第113条・第115条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 刑法 第159条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 登録内容が事実と違う場合の訂正(よくある質問)(株式会社シー・アイ・シー(CIC))
- 登録内容への問い合わせ・調査依頼(よくあるお問い合わせ)(株式会社日本信用情報機構(JICC))
- 消費者ホットライン188(消費者庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。