自己破産 / Q&A

自己破産すると慰謝料はどうなる?免責される場合とされない場合

この記事のもくじ
  1. 免責されない慰謝料は、条文のどの部分か
  2. 場面ごとの考え方
  3. 払う約束(示談・公正証書・分割)をしている場合
  4. 請求されているだけの段階でも、債権者一覧に書く
  5. 慰謝料を請求する側の場合
  6. まとめ:自分の慰謝料がどちらかを確かめる手順

自己破産で慰謝料が免責されるかどうかは、「慰謝料」という名前では決まりません。決め手は、慰謝料のもとになった行為が、破産法253条1項の2号(悪意で加えた不法行為)か3号(故意または重大な過失で人の生命・身体を害した不法行為)に当たるかどうかです。当たれば免責されず、当たらなければ、カードローンなどと同じく免責の対象になります。ここでは条文の線引きと、払う約束をしている場合、請求する側の場合まで、一般論として整理します。個別の事情への当てはめは、依頼先の弁護士や裁判所の判断で決まります。

免責されない慰謝料は、条文のどの部分か

免責許可の決定が確定すると、破産者は破産債権について責任を免れます。ただし、次の2種類の損害賠償請求権は例外です(破産法253条1項)。

早見表:慰謝料が免責されるかの分かれ目
見る点 2号 3号 どちらでもない場合
行為の中身 悪意で加えた不法行為 故意または重大な過失により加えた、人の生命・身体を害する不法行為 不注意(過失)による事故、契約上の金銭トラブルなど
免責 されない されない 免責の対象
注意 「悪意」は、単に知っていたというより、相手を害する意図に近い意味で使われることが多いとされます。解釈の問題なので、断定しません 3号は2号に当たるものを除きます。「重大な過失」は、わずかな不注意とは区別されます 賠償の名目が慰謝料・示談金・解決金のどれでも、元の原因で判断します

つまり、同じ「慰謝料」でも、元の出来事の内容によって扱いが分かれます。名前や金額では判断できません。また、法律は「慰謝料」という言葉自体を免責の例外に入れていません。入っているのは、行為の性質で区切られた損害賠償です。

場面ごとの考え方

慰謝料が問題になる代表的な場面を、条文の見方で整理します。当てはまるかは個別の判断で、ここは見方の例です。

慰謝料の元になった出来事 見る条文 考え方
暴力などで、故意に相手にけがをさせた 3号(場合により2号) 「故意」で「身体を害した」型にあたる出来事です。実際に当たるかは、行為の内容と経緯で決まります
交通事故で相手にけがをさせた 3号 3号は「故意または重大な過失」が必要です。通常の不注意による事故は、この線の外側にあります
不貞行為(浮気・不倫)の慰謝料 2号に当たるか 行為の態様で見られます。名前だけで免責・非免責は決まらず、争いになることもあります
離婚の慰謝料 2号・3号に当たるか。養育費や婚姻費用は4号 離婚そのものの慰謝料と、養育費(4号の対象)は別の請求です。離婚するとき借金はどうなる?財産分与と夫婦の借金の分け方で全体を整理しています
職場でのハラスメントや名誉毀損による慰謝料 2号に当たるか 行為の内容と、相手を害する意図があったかが問題になります

4号の「夫婦間の協力・扶助」「婚姻費用の分担」「子の監護」「扶養」は、法律に挙がっている義務です。慰謝料という名目は、4号の列挙には出てきません。養育費など4号の対象は、自己破産しても払う必要がある支払い|税金・養育費などの一覧の表で確認できます。

払う約束(示談・公正証書・分割)をしている場合

すでに示談書や公正証書で慰謝料を払う約束をしている場合も、免責の可否は「書面の名前」では決まらず、元の出来事の性質で考えます。示談書に「解決金」と書いてあっても同じです。約束した金額や分割の条件があるから免責される、あるいは免責されない、とは言えません。

依頼先に持っていくと話が早い資料は、次のとおりです。

  1. 示談書・公正証書・調停調書・判決書の写し(日付と金額、支払条件が分かるもの)
  2. 慰謝料の原因になった出来事の経緯のメモ(いつ、何があったか)
  3. これまでに払った分と、残っている額の記録
  4. 相手方や相手方の代理人からの請求書・メール

判決や調停で決まっている場合は、そこに書かれた原因が、判断の手がかりになります。

請求されているだけの段階でも、債権者一覧に書く

慰謝料の請求を受けているが、まだ金額が決まっていない、訴訟の途中、という段階でも、債権者一覧表に載せます。自己破産の申立てをすると、同時に免責の申立てをしたとみなされ、債権者一覧表が債権者名簿とみなされます(破産法248条4項・5項)。

知りながら名簿に載せなかった請求権は免責されません(253条1項6号)。虚偽の債権者名簿を出すことは、免責不許可事由にもなります(252条1項7号)。相手に知られたくない、金額が確定していない、という理由で外すことはできません。

慰謝料を請求する側の場合

相手方(支払う側)が自己破産をした、という通知が届いた場合の見方です。

  • 慰謝料が2号・3号に当たる性質なら、免責が確定しても請求権は残ります。
  • 当たらないなら、免責が確定すると、破産者は責任を免れます。
  • 管財人が選ばれる管財事件では、通知書に債権を届け出る期間が書かれています。配当を受ける形で手続に参加するには、その期間内の債権届出が必要です(破産法111条1項)。
  • 管財人がつかない同時廃止事件では配当がなく、債権届出書は送られません。通知書には、免責について意見を述べられる期間が書かれます(東京地方裁判所民事第20部の案内)。
  • 免責についての意見を出せるのは、破産管財人と破産債権者ですが、253条1項各号の請求権を持つ人は、意見を述べる者から除かれています(251条1項)。

手続きに参加する側の動き方は自己破産された側の債権者ができること|貸したお金と手続きへの参加にまとめています。慰謝料が253条1項に当たるかは、争いになることもあるため、請求する側も弁護士や、条件に合えば法テラスの相談を使うのが近道です。

自分が自己破産を申し立てる側で、慰謝料を受け取る立場にある場合は、別の見方が要ります。破産手続開始の時に持っている一切の財産は破産財団に属するとされ(破産法34条1項)、すでに請求できる慰謝料があれば、その権利も財産の一つとして扱われる場面があるためです。扱いは、慰謝料の金額が決まっているか、いつ生じた請求かなどで変わります。申立ての前に、請求できる慰謝料があることを依頼先に伝えておきます。

まとめ:自分の慰謝料がどちらかを確かめる手順

  1. 慰謝料の元になった出来事を、1行で書く(何をして、相手がどうなったか)
  2. その行為が、わざとか、重大な不注意か、通常の不注意かを整理する
  3. 請求書・示談書・判決書の写しと一緒に、弁護士や司法書士の面談で見てもらう
  4. 債権者一覧表には、金額が決まっていなくても載せる

免責不許可事由や裁量免責の全体は、自己破産の免責不許可とは?注意する行為と裁量免責の仕組みで確かめられます。

よくある質問

Q. 離婚の慰謝料を払う約束をしていますが、自己破産で免責されますか?

離婚の慰謝料という名前だけでは決まりません。破産法253条1項は、悪意で加えた不法行為や、故意・重大な過失で人の生命・身体を害した不法行為の損害賠償を免責から外しています。慰謝料の元になった出来事がこれに当たるかを、約束の書面や経緯を見て判断します。

Q. 慰謝料を請求されている途中ですが、債権者一覧に書くべきですか?

書きます。請求を受けているだけで金額が決まっていない段階でも、知りながら名簿に載せなかった請求権は免責されません(破産法253条1項6号)。金額が未確定のときは、請求書や訴状の内容をそのまま依頼先に見せます。

Q. 相手が自己破産したと通知が来ました。慰謝料はもう請求できませんか?

慰謝料の原因が悪意の不法行為などに当たれば、免責されず請求が残ることがあります。当たらなければ、免責が確定すると回収は難しくなります。通知に債権届出の期間が書かれているときは、その期限(破産法111条1項)を逃さず、弁護士や法テラスに相談してください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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