自己破産 / Q&A

自己破産された側の債権者ができること|貸したお金と手続きへの参加

この記事のもくじ
  1. 裁判所から通知が届いたら:書類の種類でできることが変わる
  2. 債権届出の手順:配当を受けるためにすること
  3. 債権者集会に出席するか、出席しないか
  4. 免責に意見を出せる期間と、書き方
  5. 配当の見通しと、保証人・免責されない請求の確かめ方
  6. 弁護士に聞くとよい場面と、してはいけないこと

貸したお金の相手が自己破産しても、貸した側が何もできないわけではありません。裁判所から通知が届いた事件では、①債権届出をして配当を受ける、②債権者集会に出る、③免責を許可してよいかについて意見を出す、の3つを選べます。一方で、手続が始まった後は、相手に直接請求したり、新たに訴えたりすることはできません。配当は財産に応じた割合なので、全額が戻るとは限らないことも、先に押さえておきます。

裁判所から通知が届いたら:書類の種類でできることが変わる

最初にするのは、届いた書類がどの段階のものかを見分けることです。管財事件か同時廃止かで、債権者に来る通知も、できることも違います(裁判所の民事事件Q&A)。

早見表:届いた書類と、貸した側ができること
届いた書類 意味 貸した側ができること
破産手続開始決定の通知書と破産債権届出書 破産手続が始まり、債権を届け出る期間が定められている 期間内に債権届出をする。債権者集会の日時があれば、出席するかを決める
債権届出の期間を定めない旨が書かれた通知 破産財団が手続の費用に足りないおそれがあるとき、裁判所は届出期間を定めないことができる(破産法31条2項) 今は届出をしない。のちに手続の費用に足りる見込みになり、裁判所が期間を定めたときは、あらためて通知される(同条3項)
免責についての意見を述べられる期間の通知 免責許可の申立てがあり、意見を出せる期間が定められた(破産法251条) 期間内に、免責の当否について意見を出す

通知書には、事件番号、裁判所、破産管財人の氏名、期間や日時が書かれています。この3点は、後の手順で何度も使うので、控えておきます。

同時廃止の事件では債権者集会は開かれず、免責についての意見を述べたいときは所定の期間内に述べる形になります(裁判所の民事事件Q&A)。管財事件と同時廃止の違いは自己破産の同時廃止と管財事件の違い|分かれ目と費用・期間にまとめています。

破産手続が始まると、破産債権は、法律に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ行使できなくなります(破産法100条)。つまり、本人に「今すぐ払って」と迫る、新しく支払督促や訴訟を起こすといった形での回収は、この時点でできなくなります。訴える手続の選び方は貸した借金を返さない相手を訴えるには?支払督促と少額訴訟の選び方にありますが、相手に破産手続開始の決定が出た後は、その方法は使えません。

債権届出の手順:配当を受けるためにすること

破産した人にお金を貸していた人は、債務者の財産から配当を受けるために、裁判所へ破産債権を届け出られます。通知書をよく読み、破産債権届出書に書き込み、貸した事実を示す書類のコピーを付けて、期間内に出すのが基本です(裁判所の民事事件Q&A)。

  1. 通知書で期間と提出先を確かめる。 債権届出期間が決まっていれば、その日までに裁判所に届くよう出します。事件番号を書き写しておきます。
  2. 届出書に、債権の額と原因を書く。 破産法111条1項は、各破産債権の額と原因を届け出ると定めています。原因は、何のお金だったかが分かる書き方にします。
  3. 配当が少額でも受け取る意思があるなら、その旨を書く。 自分への配当額が最高裁判所規則で定める額に満たないとき、受け取る意思を届け出ていないと、その配当は他の債権者に回ります(同条1項4号、201条5項)。届出書の該当する欄を確認します。
  4. 貸した事実を示す書類のコピーを付ける。 借用書、振込の明細、返済の約束が分かるメールやLINEの画面などです。裁判所のQ&Aは「請求書、借用書など」を例に挙げています。
  5. 担保がある債権は、別の欄も埋める。 抵当権などの担保を持つ債権者は、担保で回収できない見込みの額を届け出る決まりです(破産法111条2項)。

原因欄は、たとえば次のように、日付・名目・返済の状況を順に並べると伝わります。様式は裁判所の届出書に従い、ここで挙げたのは書き方の見本です。

原因の見本:「令和○年○月○日に、生活費の貸付けとして金○万円を貸し付けた(金銭消費貸借)。返済期日は令和○年○月○日。これまでに○円の返済を受け、残額は○円。」

届出の期間に間に合わなかったときは、自分の責任ではない理由で届出ができなかった場合に限り、その理由がなくなってから1か月以内なら届け出られます(破産法112条1項)。この1か月は伸ばすことも縮めることもできません(同条2項)。期限を過ぎたとき、遅れた理由が認められるかは、裁判所や弁護士に早めに確かめます。

届出の後は、管財人が各債権への認否を書いた認否書を作ります(破産法117条)。

債権者集会に出席するか、出席しないか

管財事件では、原則として、財産状況を報告するための債権者集会の日時が決まります(破産法31条1項2号。債権者の数などによっては開かない場合もあります、同条4項)。出席するかは任意で、債権届出を出していれば、集会に出なくても配当を受けられます(裁判所の民事事件Q&A)。

出席するかどうかは、次のように考えると決めやすくなります。

出席する理由 出席しなくてもよい理由
管財人から、破産者の財産の状況や換価の見通しを直接聞ける 届出をしていれば、出席しなくても配当は受けられる
異時廃止の前には債権者の意見を聴く手続があり(破産法217条1項)、意見を述べる機会になる 裁判所が書面で意見を聴く方法を選ぶ場合もある(同条2項)
決議をする議題があれば、議決権を使える 遠方の裁判所で、日程に出られない

決議が必要な事項は、集会に出た、または書面等で投票した議決権者の議決権の総額の2分の1を超える同意で可決されます(破産法138条)。遠方で出られない場合は、裁判所が相当と認めるときにウェブ会議システムで参加できる制度があります。上申書を出して、認めるかどうかは事案ごとの判断になります(裁判所の民事事件Q&A)。集会で本人が何を聞かれるかは自己破産で裁判所に行くのは何回?審尋と債権者集会の中身で見られます。

免責に意見を出せる期間と、書き方

自己破産では、手続の最後に、免責を許可してよいかを裁判所が決めます。その前に、裁判所は、管財人と破産債権者が意見を述べられる期間を定めます。この期間は、公告が効力を生じた日から数えて1か月以上でなければなりません(破産法251条1項・3項)。条文は「破産債権者」と書いており、債権届出をしたことを条件にしていません。

意見を出したからといって、免責が不許可になるとは限りません。免責を許可するかどうかは、裁判所が、免責不許可事由にあたるかを見て決めます(破産法252条1項)。意見は、その判断の材料の一つです。

意見を書くときは、感情ではなく事実を並べると、裁判所に伝わりやすくなります。

  • 自分の債権の内容(いつ・いくら貸したか)
  • 免責不許可事由にあたると考える事実(財産を隠している様子、特定の人にだけ返している様子など)と、その時期
  • その事実を裏づける資料(メッセージの記録、通帳の写し、第三者から聞いた内容の記録など)

免責不許可事由は11あり、一覧と裁量免責の仕組みは自己破産の免責不許可とは?注意する行為と裁量免責の仕組みで説明しています。

免責されない請求権を持つ人は、意見を述べられる破産債権者から除かれています(破産法251条1項)。その請求権は、免責が許可されても残るものとして253条1項に挙げられているためです(後の節で説明します)。自分の請求権がこれにあたりそうなときは、意見の出し方より先に、あたるかどうかを確かめます。

配当の見通しと、保証人・免責されない請求の確かめ方

貸したお金が、どれだけ戻るかは、破産者の財産と債権者の数で決まります。配当は、同じ順位の債権について、債権の額の割合に応じて行われます(破産法194条2項)。

仮の数字で考えます(筆者の計算の例です)。配当に回せる財産が100万円で、届け出られた債権の合計が2,000万円なら、配当の割合は5%です。50万円を貸していた人の配当は、50万円×5%=2万5,000円になります。実際の割合は、事件ごとに違います。

財産が少なく、破産手続の費用も払えないときは、同時廃止、または手続の途中での廃止になり、配当は行われません(破産法216条・217条)。この場合、貸した側が配当を受けられない可能性が高くなります。一方で、配当の後に新しく財産が見つかったときは、裁判所の許可を得て、届出をした債権者に追加配当が行われます(破産法215条)。追加配当を受けられるのは、届出をした債権者なので、少額でも届出をしておく意味があります。

保証人・連帯保証人がいるとき

免責許可の決定は、破産者の保証人など、破産者とともに債務を負う人への債権者の権利に影響しません(破産法253条2項)。連帯保証人がいる貸付けなら、破産者が免責されても、保証人に請求できます。保証人までが破産したときは、債権者は、破産手続開始の時に持つ債権の全額で、それぞれの破産手続に参加できます(破産法104条1項)。保証人への請求の流れは自己破産すると連帯保証人はどうなる?請求の流れと話し合い方で、保証人の側から整理しています。

免責されない請求にあたるか

免責が許可されても、次のような請求権は残ります(破産法253条1項)。貸した側に関わりやすいのは、次の3つです。

  • 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(2号)
  • 破産者が故意または重大な過失により加えた、人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(3号)
  • 破産者が知りながら債権者名簿に載せなかった請求権(6号。開始決定を知っていた債権者の請求権は除く)

たとえば、お金を貸したこと自体ではなく、だまされて渡した、約束と違う使い方をされたなど、不法行為が問題になりそうな事情がある場合は、これらに近づきます。ただし、実際に免責されない請求にあたるかは、事情と証拠で決まるため、条文の一覧だけでは言えません。一覧は自己破産しても払う必要がある支払い|税金・養育費などの一覧にあります。

弁護士に聞くとよい場面と、してはいけないこと

次のような場面では、自分で判断せず、弁護士に書類を見せて確かめます。

  1. 貸した金額が大きく、配当を待つだけでは納得できないとき
  2. だまされた、使い込まれたなど、免責されない請求にあたるかもしれないとき
  3. 連帯保証人に請求したいが、どう進めればよいか分からないとき
  4. 通知が届かなかったのに、あとから自己破産されたと分かったとき

費用が心配なときは、収入や資産が一定以下などの条件で、法テラスの無料相談や費用の立替えを使える場合があります。窓口と受付時間は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方から探せます。法テラスの使い方は借金が返せないとき法テラスでできること|無料相談と費用立替の流れにあります。

してはいけないのは、手続によらない取立てです。本人に電話や訪問で何度も請求する形は、破産債権を破産手続によらずに行使することになり(破産法100条)、認められません。家族や勤務先に連絡して払わせようとする形も、相手を追い詰めるだけです。家族が保証人でない限り、本人の借金を家族が返す義務はありません。「泣き寝入り」を避けるための手段は、届出、集会、意見、保証人への請求という、手続の中にあります。

破産者が申立ての前に特定の人にだけ返したり、財産を動かしたりしていないかは、管財人が調べる事項です。その前提の整理は、次の自己破産で嘘はバレる?申立て前にしてはいけない財産の移動と返済で扱っています。

よくある質問

Q. 債権届出をしないと、貸したお金は請求できなくなりますか?

配当を受けるには、期間内に債権届出をする必要があります。裁判所のQ&Aも、期間内に届出をしないと配当を受けられないことがあると注意しています。免責が確定した場合の効力は、届出をしたかどうかではなく、破産債権にあたるかで決まります。条文上、届出をしなかった債権が免責の対象から外れるという定めはありません。

Q. 破産者の保証人や連帯保証人にも請求できなくなりますか?

請求できます。免責許可の決定は、破産債権者が保証人などに対して持つ権利に影響しないと破産法253条2項が定めています。保証人が自分で払えないと判断すれば、その人が別に債務整理をする場合があるため、保証人の状況も確かめます。

Q. 通知が届いていないのに自己破産されていた場合はどうなりますか?

破産者が債権者の存在を知りながら債権者名簿に載せなかった請求権は、免責されないと破産法253条1項6号が定めています。ただし開始決定を知っていた債権者の請求権は除かれます。当てはまるかどうかは事情によるため、弁護士に確認します。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

貸した借金を返さない相手を訴えるには?支払督促と少額訴訟の選び方

自己破産の免責不許可とは?注意する行為と裁量免責の仕組み

自己破産すると連帯保証人はどうなる?請求の流れと話し合い方

自己破産しても払う必要がある支払い|税金・養育費などの一覧