自己破産 / チェックリスト

自己破産で嘘はバレる?申立て前にしてはいけない財産の移動と返済

この記事のもくじ
  1. 嘘がばれる場面と、ばれたときに起きること
  2. 申立て前にしてはいけない行為チェック表
  3. 自己破産で前科はつくか
  4. もうしてしまったときの動き方

自己破産は、嘘が通る前提で作られた手続きではありません。申立てには債権者の一覧、財産、収入、家計の資料を出し、管財事件では管財人が調べ、債権者も意見を述べられます。財産を隠す、特定の人にだけ返す、借金を書き落とす、といった行為は、免責が許可されない理由になり、ばれて免責が取り消されたり、罪に問われたりすることもあります。この記事は、申立ての前に避けたい行為をチェック表にし、もうしてしまったときの動き方までを整理します。なお、自己破産をしたこと自体で前科はつきません。

嘘がばれる場面と、ばれたときに起きること

嘘は、ひとつの調査で見つかるのではなく、手続きの複数の場面で照らし合わされます。

一覧:嘘がばれる場面と、条文上の結果
場面 何が起きるか 条文
申立ての書類 住民票、事情説明書、債権者一覧表、財産目録、源泉徴収票・給与明細などを出す(裁判所Q&A) 破産法248条3項など
裁判所・管財人の調査 破産者は必要な説明をする義務を負い、財産の内容を書面で出す。免責の調査にも協力する 破産法40条・41条・250条2項
郵便物 管財事件では、破産者あての郵便物が管財人に配達され、管財人が開いて見られる 破産法81条・82条
債権者の意見 債権者は、免責について意見を述べられる 破産法251条
免責の後 不正の方法で免責を得たと債権者が申し立てると、1年以内に限って免責が取り消されうる 破産法254条

郵便物の転送は管財事件の話で、同時廃止では管財人がいないため起きません。通帳をどこまでさかのぼって見られるかは、裁判所ごとの運用で違います(自己破産で通帳はどこまで調べられる?見られる期間と取引)。

ばれたときの結果は、大きく3つに分かれます。

  1. 免責が許可されない。 隠匿、虚偽の債権者名簿、虚偽の説明、義務違反は、いずれも免責不許可事由です(破産法252条1項1号・7号・8号・11号)。免責が許可されなければ、借金は残ります。
  2. 免責が後から取り消される。 不正の方法で免責を得たときは、債権者の申立てで、免責許可から1年以内なら取り消されることがあります(破産法254条1項)。
  3. 刑事罰を受ける。 債権者を害する目的の財産の隠匿などは、10年以下の拘禁刑もしくは1千万円以下の罰金、またはその両方です(破産法265条1項)。裁判所に求められた説明を拒み、虚偽の説明をしたときは、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方です(同271条)。

不許可事由にあたっても、裁判所が経緯などの事情を考えて相当と認めれば、免責を許可できます(破産法252条2項)。ただし、これは裁判所の判断で、結果は個別に違います。事由の全体は自己破産の免責不許可とは?注意する行為と裁量免責の仕組みにあります。

申立て前にしてはいけない行為チェック表

次の表は、申立ての前後で問題になりやすい行為を、条文と一緒に並べたものです。免責が許可される条件を保証する表ではなく、避けたい行為と、代わりにすることの整理です。

チェック表:申立て前にしてはいけない行為と、代わりにすること
行為 なぜ問題になるか 条文 代わりにすること
親・友人・勤務先など特定の人にだけ返す 一部の債権者だけを有利にする行為は、免責不許可事由になりうる。管財人が取り消す(否認する)こともできる 破産法252条1項3号・162条 返さずに、債権者一覧に載せる。すでに返した分は記録する
家・車・預金を家族名義にする、売った形にする 債権者を害する財産の処分は、免責不許可事由になりうる。無償の行為は、支払の停止の前6か月以内のものも否認の対象になる(家財の扱いは自己破産で差し押さえが家に来る?) 破産法252条1項1号・160条3項 名義は動かさず、財産の一覧に正直に書く
現金や貴重品を家族に預ける、隠す 財産の隠匿は免責不許可事由で、詐欺破産罪にもなりうる 破産法252条1項1号・265条 財産目録に書く。手元に残せる範囲は別に決まっている
返せない状態を隠して、新たに借りる・カードを作る 申立ての日の1年前から開始決定までの間に、開始の原因があることを知りながら、ないと信じさせるため詐術を用いて信用取引で財産を得ることは、免責不許可事由になる 破産法252条1項5号 借入れをやめ、返済が難しいと分かった時点で相談する
カードで商品を買って、すぐ売って現金にする 著しく不利益な条件での処分は、免責不許可事由にあたりうる(クレジットカードの現金化が例とされる) 破産法252条1項2号 カード払いを増やさず、生活費の不足は公的な貸付けや相談で
借金を一覧から外す(家族・友人からの分など) 虚偽の債権者名簿は免責不許可事由。知りながら載せなかった請求権は免責されない 破産法252条1項7号・253条1項6号 すべての借金を載せる
通帳・領収書・帳簿を捨てる、書き換える 帳簿・書類の隠滅や偽造は免責不許可事由 破産法252条1項6号 残っている書類は、そのまま依頼先に渡す
収入・勤務・家族の状況を偽って説明する 説明を拒んだり虚偽の説明をしたりすることは免責不許可事由で、罰則もある 破産法252条1項8号・271条 聞かれたことに、分かる範囲で答える

表の中で迷いやすいのは、次の3つです。

家族や友人から借りたお金は、返してもよいか。 借りた相手が家族でも、自己破産では債権者の一人です。申立ての前に、その人にだけ返すと、上の表の1行目にあたる可能性があります。返さずに債権者一覧に載せるのが基本で、すでに返した分があるなら、隠さずに伝えます。

日々の生活費の支払いまで、すべて問題になるのか。 家賃、光熱費、食費など、生活に必要な支払いまで一律に問題とされるわけではありません。ただし、どこまでが「義務の範囲の弁済」かは事案ごとの判断なので、支払いを続けるか迷う支払いは、依頼先に先に聞いてから決めます。

預金を引き出して手元に置いたら、見つからないのでは。 引き出したお金も財産で、破産手続開始の時に持っていれば破産財団に属します(破産法34条1項)。現金は99万円までなら破産財団に属しません(同条3項、民事執行法施行令1条の66万円の2分の3。筆者の計算)が、これは申告したうえでの話で、隠してよいという意味ではありません。

個人再生でも、手続き開始後は、再生計画の定め以外の返済が禁じられます(民事再生法85条1項)。開始前の一部返済の扱いは個人再生の偏頗弁済とは?手続き前に一部だけ返すと起きることで見られます。

自己破産で前科はつくか

自己破産をすること自体で、前科はつきません。破産は借金を整理する裁判所の手続きで、刑罰ではないからです。

前科になりうるのは、手続きの中で犯罪にあたる行為をして、有罪の判決が確定した場合です。条文が定めているのは、次の2つです。

罪 行為 罰則
詐欺破産罪(破産法265条1項) 債権者を害する目的で、財産を隠す・壊す、譲渡や債務負担を偽る、債権者に不利益な処分をするなど 10年以下の拘禁刑もしくは1千万円以下の罰金、またはその両方
説明拒絶等の罪(同271条) 申立てや免責の審尋で、裁判所が説明を求めた事項について説明を拒む、または虚偽の説明をする 3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方

詐欺破産罪は、条文上、債権者を害する目的が要る罪です。情を知って、債権者に不利益な処分の相手方になった人(名義変更を受けた家族など)も、同じ罰則の対象になります(破産法265条1項後段)。説明拒絶等の罪は、裁判所に説明を求められた事項についての罪です。どちらも、正直に書類を出し、聞かれたことに答えている限り、問題になる種類の罪ではありません。必要以上に怖がる必要はありません。一方で、「どうせばれない」と考えて動くと、免責が許可されないだけでなく、この表の行為にあたるおそれがあります。

もうしてしまったときの動き方

返済、名義変更、借入れなど、すでにしてしまったことがある場合は、次の順で動きます。

  1. それ以上、同じことをしない。 これ以上の返済や財産の移動は止め、新しい借入れやカードの利用もやめます。
  2. 事実を書き出す。 いつ、誰に、いくら、何のために。通帳や領収書で裏づけられるものは、一緒に保管します。
  3. 依頼先に隠さず伝える。 弁護士や司法書士に頼むときは、不利に思えることも含めて話します。後から見つかるより、先に分かっているほうが対応を考えやすいからです。依頼先の選び方は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方から探せます。
  4. 裁判所には正直に答える。 破産者には説明義務があり(破産法40条1項1号)、財産の内容は書面で出します(同41条)。虚偽の説明は免責不許可事由で、罰則もあります。

返済したお金の扱いは、管財人が取り戻すこと(否認)になることもあれば、事情を考えて免責が許可されることもあります。どちらになるかは事件ごとに違うため、ここで結論は出せません。

次に読むなら、手続きの負担と免責されない場合を事実で示す自己破産はしたもん勝ち?手続きの負担と免責されない場合が続きです。手続きの流れは自己破産の流れ|相談から免責許可の決定までの期間と手順にあります。

よくある質問

Q. 自己破産をすると前科がつきますか?

自己破産をしたこと自体で前科はつきません。破産は刑罰の手続ではないためです。前科になりうるのは、破産法265条の詐欺破産罪や271条の説明拒絶等の罪にあたる行為をして、有罪が確定した場合です。

Q. 家族や友人から借りたお金を債権者の一覧に書かなかったら、どうなりますか?

知りながら債権者名簿に載せなかった請求権は、免責されません(破産法253条1項6号)。虚偽の債権者名簿を出すことは、免責不許可事由にもなります(252条1項7号)。家族や友人からの借金も、載せたうえで、返済の扱いを依頼先に相談します。

Q. 申立てより前に返してしまったお金は、隠さないといけませんか?

隠すと、かえって問題が大きくなります。裁判所や管財人の説明の求めに虚偽で答えることは免責不許可事由にあたり(破産法252条1項8号)、罰則もあります(271条)。いつ・誰に・いくら返したかを書き出し、依頼先に伝えます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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