自己破産 / Q&A

自己破産で差し押さえが家に来る?持っていかれる物と残る物

この記事のもくじ
  1. 残る家財:差押禁止の動産は破産財団に入らない
  2. 持っていかれる物:換価される財産と、条文にない物の考え方
  3. 家に来る人の違い:執行官・債権者・破産管財人
  4. 申立ての前にしてはいけないことと、依頼先への伝え方

自己破産を申し立てたことが理由で、執行官が家に来て家財を差し押さえることはありません。家に来て動産を差し押さえる執行官は、強制執行を申し立てた債権者の側の手続きで動く人です。自己破産の申立てや開始決定のあとは、破産債権に基づく強制執行はできなくなります(破産法42条)。生活に欠かせない家財は、民事執行法131条が差押えを禁止し、破産法34条3項2号がそれを破産財団に入れないと定めているので、手元に残ります。この記事では、家に来る人(執行官・債権者・破産管財人)の違いと、生活用品の個別の判断(家電・ゲーム機など)を整理します。何をいくらまで残せるかを財産の種類別に知りたいときは、自己破産したら何を失う?手元に残せる財産と残せない財産を先に見てください。

残る家財:差押禁止の動産は破産財団に入らない

自己破産で手元に残る財産の仕組みは、2つの条文がつながっています。

  1. 民事執行法131条:差し押さえてはならない動産を列挙しています。
  2. 破産法34条3項:①民事執行法131条3号の額に2分の3を掛けた額の金銭と、②差し押さえることができない財産は、破産財団に属しないと定めています。ただし、民事執行法132条1項で差押えが許されたものと、開始の決定の後に差し押さえることができるようになったものは別です。

131条が挙げる動産のうち、家財に関わる主なものを表にします。

早見表:差押禁止の動産(民事執行法131条)と家財の例
号 差押えが禁止される物 家財・生活の例
1号 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳、建具 衣類、布団、机、食器棚、鍋・食器、畳
2号 1か月間の生活に必要な食料と燃料 米・食料、灯油・ガス
6号 職業・営業に欠くことができない器具(商品を除く) 職人の工具、仕事で使うパソコンなど
7号 職業・生活に欠くことができない実印その他の印 実印

現金99万円までの枠と、預貯金・保険の扱いは自己破産したら何を失う?手元に残せる財産と残せない財産にあります。差し押さえできない財産の全体は差し押さえできない財産の一覧|生活保護・年金・生活に必要な物にまとめています。

つまり、普通に暮らしている家の家具、食器、衣類、布団は、そのまま使い続けられます。生活に必要な物を残さないと暮らせないので、法律が最初から外しているのです。

持っていかれる物:換価される財産と、条文にない物の考え方

131条の各号に当てはまらない財産は、破産財団に属し、管財人が換価して債権者に配当します(破産法78条1項)。家財の範囲で換価の対象になりやすいのは、次のような物です。

  • 生活に欠かせないとは言えない高価な物:高級時計、貴金属、ブランド品、美術品、コレクションなど
  • 価値のある物で、131条のどの号にも当たらない物:複数台ある車、趣味用の高額な機器など
  • 現金のうち99万円を超える分

では、ゲーム機はどうでしょうか。条文には品目として挙がっていません。そのため「生活に欠くことができない」物か、換価する価値があるかを、個別に見ます。判断のしかたの例を整理します。

物 条文との関係 考え方
冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの家電 品目は挙がっていない。家具・台所用具に当たるかが問題 生活に欠かせない物に当たるかは個別判断。財産目録には載せる
スマートフォン、パソコン 仕事・学習に必要なら6号・11号 仕事や学習に使っているかで変わる
ゲーム機、趣味の機器、楽器 品目は挙がっていない 生活に欠かせない物かと、換価する価値の大きさで個別判断。高額なら換価の対象になりうる
高級時計、貴金属、美術品 該当する号がない 換価の対象になりうる
車 該当する号がない 価値、ローンの残り、生活への必要性で変わる(自己破産で車持ちは車を手放す?残せる車とローン中の車の扱い)

どれが換価されるかの基準は、条文に一覧がなく、裁判所と管財人の運用に左右されます。申立先の裁判所の案内と、依頼先の説明で確かめるのが確実です。換価の対象になる物が多い、または資産の調査が必要な場合は、同時廃止ではなく管財事件になるのが原則とされています(東京地方裁判所民事第20部の説明)。分かれ目は自己破産の同時廃止と管財事件の違い|分かれ目と費用・期間にあります。

生活に必要な物まで換価の対象にされそうなときは、裁判所が自由財産の範囲を広げる道があります(破産法34条4項。要件は自己破産したら何を失う?にあります)。

家に来る人の違い:執行官・債権者・破産管財人

「家に来る」と言っても、来る人と目的は全く違います。3つに分けます。

1. 執行官(債権者の差押えの場合):動産の差押えは、執行官がその動産を占有して行います(民事執行法123条1項)。執行官は、債務者の住居などに立ち入り、目的物を捜索できます(同条2項)。これは、債権者が裁判所に強制執行を申し立てた場合の手続きで、自己破産の手続きそのものではありません。申立ての前に差押えを受けている人は、自己破産すると給料はどうなる?差し押さえの止まり方と職場で止まり方を確かめられます。差押えは、債権者の債権と執行費用の弁済に必要な限度を超えてはならず(同法128条)、差押禁止動産は対象外です(同法131条)。破産手続開始の決定があると、破産債権に基づく強制執行はできず、すでにされているものは破産財団に対して効力を失います(破産法42条)。同時廃止のときは、免責の裁判が確定するまで、強制執行は中止します(同法249条1項)。

2. 債権者や取立て業者:貸金業者の督促で家に来ることがあっても、それは差押えではありません。貸金業法21条1項は、正当な理由のない午後9時〜午前8時の訪問や、弁護士・司法書士が受任の通知を出した後の本人への直接請求を禁止しています。取立ての禁止行為と連絡先は取り立てが怖いとき|法律で禁止されている取立てと連絡先の一覧にあります。

3. 破産管財人:管財事件で選ばれる管財人は、財団の財産を管理・処分する権限を持ちます(破産法78条1項)。条文から確かめられる職務は、次のとおりです。

  • 破産者に説明を求め、帳簿・書類・物件を検査する(83条1項)
  • 財産の価額を評定する。その評定に破産者を立ち会わせることができる(153条1項)
  • 裁判所に申し立てて、財産を管財人に引き渡すよう破産者に命じてもらう(156条1項。破産者を審尋し、即時抗告もできる)
  • 職務に抵抗を受けたときは、裁判所の許可を得て警察上の援助を求める(84条)

この条文には、管財人が破産者の住居に立ち入る権限は書かれていません。実際に自宅を見に来るかどうかは、事件ごとの運用で、条文では決まっていません。立会いを求められたら、本人には説明の義務があります(破産法40条1項)。同時廃止なら管財人はおらず、家に来る人もいません。管財事件で裁判所へ行く回数や面談の中身は自己破産で裁判所に行くのは何回?審尋と債権者集会の中身で説明しています。

給料の差押えが先に来ている人は、財産とは別の流れで止まります。自己破産すると給料はどうなる?差し押さえの止まり方と職場を見てください。

申立ての前にしてはいけないことと、依頼先への伝え方

家財を失う不安から、申立ての前に物を動かしたくなる人がいます。次の行為は、免責の判断で問題になりえます。

  • 価値のある物を、先に人に譲る、売って現金にして使う、家族の名義に変える
  • 家財や財産の存在を財産目録に書かない
  • 一部の家族や友人にだけ、売ったお金で返す

債権者を害する目的で財産を隠したり、価値を不当に減らしたりすると、免責不許可事由になります(破産法252条1項1号)。財産目録の不記載や虚偽の説明も、同条1項8号・11号の問題です。何をしてよいか迷ったら、動かす前に依頼先へ聞きます。詳しい線引きは自己破産で嘘はバレる?申立て前にしてはいけない財産の移動と返済で確認できます。

財産目録を作る前に、家の中の物を書き出すと、依頼先との話が進みます。

  1. 現金、預貯金、保険、車、不動産の一覧(評価額が分かる資料つき)
  2. 高価な物(時計、貴金属、カメラ、ゲーム機、楽器など)の種類と購入時期・購入額
  3. 仕事や学習に使っている機器(使い道を書く)
  4. ローン中の物と、その残りの額

文例(依頼先へ):「家に特別高い物はありませんが、ゲーム機と趣味のカメラがあります。購入額はそれぞれ約○万円です。自己破産で手放すことになるか、生活用品として残せるか、申立先の裁判所の扱いを教えてください。申立ての前に売ってよいかも知りたいです」

個別の判断は、弁護士・司法書士や裁判所が、事情と資料を見て行うことです。この記事は、判断の材料を示したものです。

よくある質問

Q. 自己破産を申し立てると、家に執行官が来て家財を差し押さえますか?

自己破産の申立てが理由で、執行官が家財を差し押さえに来るという仕組みはありません。執行官が家の中の動産を差し押さえるのは、債権者が強制執行を申し立てた場合です。破産手続開始の決定があると、破産債権に基づく強制執行はできなくなり、すでにされているものは破産財団に対して効力を失います(破産法42条)。

Q. 冷蔵庫・洗濯機・テレビは持っていかれますか?

民事執行法131条1号は、生活に欠くことができない衣服・寝具・家具・台所用具・畳・建具を差押禁止としています。冷蔵庫などの家電は品目として挙がっていないので、生活に欠かせない物かどうかで個別に判断されます。財産目録には家電も載せて、依頼先にどう扱われるかを聞いてください。

Q. ゲーム機やカメラなどの趣味の物は、手放すことになりますか?

条文に品目は挙がっていないので、生活に欠くことができない物かどうか、換価する価値があるかで個別に判断されます。高価なコレクションや限定品は換価の対象になりうるので、申立ての前に自分で売ったり人に譲ったりせず、先に依頼先へ伝えてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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