自己破産で車持ちは車を手放す?残せる車とローン中の車の扱い
自己破産をすると、車は「持っている財産」として扱われます。ただし、手放すかどうかは車の状態で分かれます。ローンを払い終えて自分名義の車は、評価額が小さく同時廃止で済めば、そのまま持ち続けられるのが基本の形です。ローンが残り、車検証の所有者がローン会社や販売店になっている車は、契約にもとづいて引き上げを求められることがあります。どちらにあたるかは、車検証と契約書で今日から確かめられます。
車は破産手続で「財産」として数えられる
破産法34条1項は、破産手続の開始の時に持っている一切の財産を破産財団(債権者への配当に回す財産)とすると定めています。車もその1つで、松江地方裁判所の説明は、換価(売ってお金に換えること)の対象に不動産、預貯金、保険の解約返戻金などと並べて自動車を挙げています。
ここで大事なのは、手続が2種類あることです。
- 管財事件:裁判所が破産管財人を選び、管財人が財産を管理して換価し、債権者に配当します。車も、残す扱いにならなければ売却の対象です。
- 同時廃止事件:財産が少なく、換価しても手続の費用に足りないときに、管財人を選ばず開始決定と同時に手続を終えます。管財人がいないので、財産の換価は行われません(松江地方裁判所の説明)。
どちらになるかは裁判所が判断します。分かれ目の基準は法律にはなく、裁判所ごとの運用です。東京地方裁判所は、20万円以上の換価対象資産(預貯金、保険の解約返戻金、未払報酬・賃金など)がある場合などを、原則として管財事件にすると公表しています。水戸地方裁判所の平成31年4月1日実施の例は、自動車・バイク等を資産の1項目として挙げ、項目ごとの合計が20万円以上かどうかで見る形でした。東京地裁の現行の「よくある質問」には、自動車の評価の仕方は載っていません(令和8年10月に開いて確かめました)。自動車の評価額が20万円前後を超えるかどうかが、1つの目安になる地域があったわけで、今の運用は申立先の裁判所で確かめます。申立先の最新の運用は、その裁判所のサイトか、依頼先の弁護士・司法書士で確かめてください。
完済した自分名義の車:残るかどうかの見方
ローンを払い終えて、車検証の所有者も自分である車の場合の考え方を、表にまとめます。
| 車の状態 | 破産での扱いの目安 | 先に調べること |
|---|---|---|
| 完済・自分名義・評価額が小さい | 同時廃止なら換価されず手元に残る | 中古車の査定額(できれば複数)と、ほかの財産の合計 |
| 完済・自分名義・評価額が大きい | 管財事件になり換価の対象になりうる | 自由財産の拡張を求められるか |
| ローン中・所有者がローン会社や販売店 | ローン会社が契約にもとづき引き上げを求めることがある | 車検証の所有者欄と契約書の所有権留保の条項 |
| 家族名義だが、実際は自分の車 | 実質が自分の財産なら換価の対象になりうる | 購入代金とローンを誰が払ってきたか |
評価額は、売るといくらになるかで考えます。松江地方裁判所の記入要領では、財産目録に自動車等を書くとき、初年度登録から6年以上たっていれば時価の記載は求めない扱いです。6年未満の車や所有権留保のついた車は、査定書も出します。新しい車ほど評価額が大きく、管財事件に近づくということです。
管財事件になっても、車を売らずに済む道が法律にはあります。破産法34条4項は、開始決定から決定の確定後1か月を過ぎる日までの間、裁判所が、本人の生活の状況、収入を得る見込み、持っていた財産の種類と額などを考えて、破産財団に属しない財産(自由財産)の範囲を広げられると定めています。車が仕事に欠かせない人は、この拡張を求める場面です。認められるかどうかは、事案ごとの判断になります。
ローン中の車:車検証の「所有者」欄を見る
ローンが残っている車では、車検証の「使用者」ではなく「所有者」の欄を見ます。ディーラーのローンや信販会社のオートローンでは、代金を払い終えるまで所有権を販売店やローン会社に残す契約(所有権留保)が使われます。割賦販売法7条は、割賦販売された指定商品のうち政令で定めるものについて、賦払金の全部の支払の義務が履行される時までは、所有権は販売業者に留保されたものと推定すると定めています。
所有権が貸した側にある車は、ローン会社が契約にもとづいて引渡しを求められます。この権利は、破産法65条にいう別除権(破産手続によらないで行使できる権利)のように、手続の外で行使される形が基本です。引き上げた車が売れた代金は残りのローンに充てられ、足りない分は、ほかの借金と同じ債権として手続に加わるのが一般的な流れです。
登録名義が絡む例として、最高裁判所の平成22年6月4日判決があります。再生手続の事件で、代金を立て替えた信販会社が、所有者としての登録を受けていなかったために、留保した所有権を別除権として行使できないと判断された事例です。車検証の名義がどうなっているかが、結論を分けることがある、という実例です。ご自分の車がどちらにあたるかは、契約書を持って弁護士・司法書士に見てもらってください。
ここで、ローンを払い続けて車だけ守ろうとすることには注意が必要です。破産手続では、債権者を平等に扱うことが前提です。特定の債権者にだけ返す行為は、免責不許可事由になりえます(破産法252条1項3号)。松江地方裁判所の説明も、一部の債権者(知人や親族を含む)にだけ片寄った返済をすると免責の手続で問題にされることがある、と注意しています。ローン中の車を残したい場合は、自己破産ではなく別の手続が合うことがあります。
車を残したい人の選択肢と、申立て前にしてはいけないこと
車を手放したくない事情があるときの手続は、おおまかに3つに分かれます。
- 自己破産のまま、評価額の小さい自分名義の車を残す:同時廃止で済むか、管財事件で自由財産の拡張が認められるか、という見方になります。
- 個人再生にする:ローン中の車の扱いは個人再生で車はどうなる?ローン中の車と完済した車で違う扱いで説明しています。返済の計画を立てて払う代わりに、財産を処分しない形を取れる手続です。両者の違いは自己破産と個人再生の違いで比べています。
- 任意整理で車のローンを対象から外す:車のローンだけ払い続け、ほかの借金を整理する選び方です。任意整理で車のローンはどうなる?にあります。
申立ての前には、次のことを避けます。
- 車を家族や知人の名義に変える、極端に安く売る
- 売った代金を、特定の人にだけ返済に回す
- 査定や名義の事実を、依頼先や裁判所に伝えない
財産を隠す目的の処分は免責不許可事由になりえます(破産法252条1項1号)。水戸地方裁判所の平成31年4月1日実施の例も、申立ての直前に資産を現金にしても、原則として現金として扱うとしています。売って現金に変えても、財産の数え方は変わらないという意味です。松江地方裁判所の記入要領は、申立て前2年以内に20万円以上で処分した財産を書くよう求めています。
動く前の準備を、順に並べます。
- 車検証で「所有者」と「使用者」を確かめる
- ローンの契約書で、所有権留保の条項と残りの返済額を確かめる
- 中古車の査定を取る(できれば複数の店で)
- 車が必要な理由を書き出す(通勤距離、公共交通の有無、通院、家族の送迎など)
- これらを持って弁護士・司法書士に相談し、同時廃止か管財事件かの見通しを聞く
費用の面では、管財事件になると裁判所に納める予納金が大きく変わります。東京地方裁判所の公表(令和8年1月1日現在)では、予納金の基準額は同時廃止事件で13,046円、個人の管財事件で最低20万円に1件につき20,397円を加えた額です(ほかに予納郵券があり、額は裁判所ごとに違います)。松江地方裁判所の案内は、管財事件で概ね20万円以上です。同時廃止と管財事件の分かれ目と費用は自己破産の同時廃止と管財事件の違いにまとめています。車以外の財産をどう扱うかは自己破産したら何を失う?手元に残せる財産と残せない財産を読んでください。
よくある質問
Q. 軽自動車や古い中古車でも、手放すことになりますか?
車の大きさや種類で決まるのではなく、売ったらいくらになるか(評価額)と、事件が同時廃止か管財事件かで決まります。評価額が小さい車は、同時廃止であれば管財人が選ばれないので売却されません。管財事件になった場合も、残せるように裁判所に求める手続(自由財産の拡張)があります。結論は申立先の裁判所の運用で変わるため、評価額の見込みを依頼先に伝えて見通しを聞いてください。
Q. 仕事や通院で車がないと暮らせません。事情は考えてもらえますか?
破産法34条4項は、裁判所が自由財産の範囲を広げるかを決めるとき、本人の生活の状況や収入を得る見込みを考慮すると定めています。通勤の距離、公共交通の有無、通院の頻度、家族の送迎などを具体的にメモしておくと、依頼先が裁判所に説明しやすくなります。認められるかは個別の判断です。
Q. 家族の名義にしてある車なら、影響はありませんか?
名義だけで決まりません。松江地方裁判所の説明では、実質的に破産者の財産であれば名義が他人でも換価の対象になりえます。財産目録は、車検証の記載にかかわらず実質的に自分が所有する車をすべて書く形です。破産の直前に名義を移すと、財産を隠したと見られて免責の判断に響くおそれがあります。
出典・参考にした公的な情報
- 破産法 第34条・第65条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 割賦販売法 第7条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産・免責手続のあらまし/破産申立書(個人用)等の記入要領(松江地方裁判所)(裁判所)
- 同廃・管財振り分けの運用について(水戸地方裁判所・平成31年4月1日実施)(裁判所)
- 民事第20部(倒産部)よくある質問(東京地方裁判所)(裁判所)
- 最高裁判所 平成22年6月4日判決(自動車引渡請求事件)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。