個人再生で車はどうなる?ローン中の車と完済した車で違う扱い
個人再生をしても、車は手放すとは限りません。分かれ目は2つで、車のローンが残っているかと、車検証の「所有者」の欄が誰になっているかです。ローンを完済した車は、財産として評価されて再生計画の返済額に響きますが、そのまま持ち続けられる形が基本です。ローン中で所有者がローン会社の車は、ローン会社が引き上げを求められる立場にあるので、残せるかどうかを手続の前に弁護士と整理します。この記事では、この2つの場合の扱いと、仕事で車が必要な人の考え方を順に書きます。
車の扱いが分かれる3つの場合
まず、自分の車がどれに当たるかを、車検証とローン契約書で確かめます。
| 場合 | 車検証の所有者 | 個人再生での扱いの考え方 |
|---|---|---|
| ローンがない(完済した)車 | 自分 | 財産として評価され、清算価値に入る。持ち続けられる形が基本 |
| ローン中で、所有者が自分 | 自分 | 抵当権のような担保が付いていない車は、ローンは再生債権の一つとして扱われるのが基本 |
| ローン中で、所有者がローン会社(所有権留保) | ローン会社・信販会社 | ローン会社が引き上げを求められる立場。残す方法を手続の前に協議する |
所有権留保とは、代金を払い終えるまで、車の所有権を売主や信販会社に残しておく契約の形です。車検証の所有者欄に自分以外の名前があれば、この形が疑われます。リース契約の車も、所有者はリース会社です。契約書を見て、割賦払いなのかリースなのかを分けて、弁護士に伝えます。
なお、住宅ローンには、ローンを払い続けながら家を残せる特則があります(民事再生法196条〜)が、車のローンには同じ特則がありません。特則の対象の「住宅資金貸付債権」は、住宅の建設・購入・改良の資金で、住宅に抵当権が付いているものだからです。住宅の場合は個人再生で住宅ローンを払い続ける特則で扱っています。
完済した車:清算価値にどう入るか
個人再生では、返済の総額が、自分の財産を処分して返済に回した場合の額(清算価値)を下回ってはならないとされています(裁判所の説明)。完済した車は財産なので、評価額が清算価値に加わります。
仮の例で、返済額への響き方を見ます(筆者の計算です)。
- 無担保の借金:300万円(基準債権が100万円以上500万円以下なので、最低弁済額は100万円。231条2項4号)
- 財産:完済した車の評価額80万円+預金30万円=110万円
財産の合計110万円が最低弁済額の100万円を上回るので、返済総額は110万円以上になります。3年(36回)で払う計画なら、月約3万600円です。車がなければ財産は30万円で、最低弁済額の100万円が下限になり、月約2万7,800円です。車を残すことで、月に約2,800円、総額で10万円の差が出る計算になります。
この差を「車を手放して売り、そのお金を返済に回す」場合と比べると、自分の負担の見通しが立ちます。計算の考え方は個人再生の清算価値とはに、最低弁済額の早見表は個人再生の最低弁済額の早見表にあります。
評価額は、中古車の買取店の査定や、車の年式・走行距離から見た相場で調べます。どの方法の評価を使うかは裁判所の書式と運用で決まります。東京地方裁判所の案内では、財産目録及び清算価値算出シートの提出が求められています。申立先の裁判所の案内を、弁護士と一緒に確かめます。
ローン中の車:引き上げと協議
所有者がローン会社の車は、民事再生法の別除権の考え方が関わります。53条は、再生手続の開始時に再生債務者の財産に付いている担保権(特別の先取特権、質権、抵当権、商法・会社法による留置権)を持つ人は別除権を持ち、再生手続によらないで行使できると定めています。所有権留保は条文には名前が出てこないので、車が当てはまるかどうか、どう扱うかは、契約と事情に沿って弁護士が判断します。
どの方向になっても、自分で決めてはいけないことが2つあります。
- **ローンの支払いを、自己判断で続ける・止める。**再生手続の開始後は、再生債権について、再生計画によらない弁済が原則として禁止されます(85条1項)。開始前の特定の相手への返済は、財産を隠す・特定の債権者に有利にする行為として問題になりえます。車のローンをどうするかは、申立ての時期とセットで弁護士に決めてもらいます。
- **車の名義を、家族に移す。**財産を隠す目的の名義変更は、財産目録の不記載として扱われるおそれがあります。
選択肢は、大まかに次の3つです。
- ローン会社と協議し、車を残す形に合意できるかを弁護士を通じて確かめる
- 車を引き渡し、残る借金を再生債権の一つとして計画に組み込む
- 家族の協力などでローンを一括で払い、名義の問題を解消して残す(払う資金の出どころは弁護士に説明する)
個人事業を営む人が、事業に欠かせない車の担保を外したい場合には、148条の担保権消滅の許可という仕組みがあります。車の価額に相当する金銭を裁判所に納めて担保権を消滅させる制度で、対象は再生債務者の事業の継続に欠くことができない財産です。所有権留保の車に使えるかは条文だけでは決められないので、事業用の車なら弁護士に確かめます。
仕事で車が必要なときの考え方
車を手放すと、通勤や仕事に支障が出る人は少なくありません。決める前に、次の項目を紙に書き出して弁護士に見せます。
- 車を使う場面:通勤、営業先の訪問、送迎、買い物など。通勤なら距離と、電車・バスの本数と運賃
- 車がなくなった場合の代わりの手段と、その月々の費用
- 車に月々かかっている費用:ローン、保険、税金、車検、駐車場、ガソリン
- 評価額と、ローンの残高(車を売った場合に残る借金の額)
- 家族の中で、ほかに使える車があるか
文例:「通勤に車で片道20キロかかり、バスは1日3本しかありません。ローンは残り約60万円、所有者の欄は信販会社です。車を残すことは検討できますか。手放す場合と残す場合で、返済額がどう変わるか教えてください。」
車を残す場合も手放す場合も、収入が続いて計画どおりに払えることが前提です。車の維持費が家計を圧迫するなら、手放したほうが計画を立てやすいこともあります。ほかの手続きの場合は、任意整理で車のローンはどうなる?と自己破産で車持ちの人が知ることで比べられます。ローンが払えなくなりそうな段階の相談は車のローンが払えないときどうなる?へ。
家の価値とローン残高の関係も返済額を動かします。持ち家がある人は個人再生のオーバーローンとアンダーローンもあわせて読むと、財産全体の見通しが立ちます。
よくある質問
Q. 車検証の所有者がローン会社になっている車は、個人再生で引き上げられることになりますか?
引き上げられると決まっているわけではありません。ローン会社は車の所有者として引き上げを求められる立場にありますが、残す方向で話し合えるか、車を手放して残りの借金を再生債権として扱うかは、契約書の条項と事情で変わります。依頼した弁護士に、車検証と契約書を見せて方針を決めます。
Q. 軽自動車や中古の安い車でも、清算価値に入りますか?
車は財産の一つなので、価値が小さくても財産目録には載せます。価値がほとんどなければ清算価値への影響も小さくなります。査定額を低く書き換えたり、載せずに黙っていたりすると、財産目録の不記載として手続の廃止につながりえます(民事再生法237条2項)。
Q. 家族名義の車を毎日使っています。自分の財産として扱われますか?
名義が家族なら、その車は原則として家族の財産で、自分の財産目録に載せるものではありません。ただし、車検証の所有者・使用者の欄と、購入代金や維持費を誰が払っているかを事実どおりに整理して、弁護士に伝えます。名義だけを変える行為は避けます。
出典・参考にした公的な情報
- 民事再生法 第53条・第85条・第148条・第196条・第231条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個人再生手続(裁判所の説明)(最高裁判所)
- 個人再生手続の申立てに当たって(令和7年11月1日以降適用)(東京地方裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。