個人再生で住宅ローンを払い続ける特則|家を残す条件と流れ
この記事のもくじ
個人再生では、住宅資金特別条項(住宅ローンの特則)を再生計画に定めると、**住宅ローンは原則として約束どおり払い続けながら、ほかの借金だけを再生計画で整理する形にできます。**これは家を手放さずに済む可能性を作る仕組みですが、使えるのは、①自分が住んでいる建物であること、②住宅のための分割払いのローンであること、③その家にほかの担保が付いていないこと、などの条件を満たしたときです。この記事では、条件の見分け方、滞納があるときの扱い、返済が苦しいときの延長の上限、申立てから認可までの流れを順に説明します。
住宅ローンの特則で変わること、変わらないこと
民事再生法は、個人再生に限らず、民事再生の手続全般で住宅資金特別条項を定められるとしています(裁判所の民事事件Q&Aにも同じ説明があります)。特則を使うかどうかは、再生計画案の中で選びます。
大事なのは、特則が減らすのは住宅ローンではなく、ほかの借金だということです。199条1項2号は、まだ支払い期限が来ていない元本と、認可後の約定利息を、もとの契約で決めた時期と額のとおりに支払うと定めています。次の表で、変わることと変わらないことを分けます。
| 項目 | 特則を使った個人再生では |
|---|---|
| 住宅ローンの元本・約定利息 | 契約どおりに払う(減額の対象にならない) |
| 家の抵当権 | 残る(返済が続けば実行されない) |
| カードローン・リボ・消費者金融など | 再生計画で減額し、原則3年(最長5年)で分割して払う |
| 連帯保証人・連帯債務者 | 特別条項の猶予の内容が及ぶ形になる(203条1項) |
| 住宅ローンの滞納分 | 一般弁済期間内(最長5年)に全額払う |
住宅ローン以外の借金には、小規模個人再生なら最低弁済額(基準債権が500万円〜1,500万円なら5分の1など)や、財産の価値(清算価値)による下限があります。詳しい計算は個人再生の最低弁済額の早見表と個人再生の清算価値とはにまとめています。なお、小規模個人再生の「債権総額5,000万円以下」の数え方では、住宅資金貸付債権の額は除かれます(221条1項)。
使える条件を条文で確かめる
特則を使えるかどうかは、次の4点で見分けます。
| 確かめること | 条文 | 見る書類 | 使えない例 |
|---|---|---|---|
| 住宅であること | 196条1号 | 登記事項証明書、住民票 | 本人が住んでいない家、投資用の物件 |
| 住宅の資金の貸付けか | 196条3号 | ローン契約書 | 住宅の購入と関係のない目的のローン |
| 分割払いで、住宅に抵当権があるか | 196条3号 | 登記事項証明書の乙区 | 抵当権が付いていないローン |
| ほかの担保権がないか | 198条1項ただし書 | 登記事項証明書の乙区 | 別の借入の抵当権が同じ家に付いている |
- **住宅であること。**自分が所有して自分の居住に使う建物で、床面積の2分の1以上が専ら自分の居住用であるもの、と196条1号が定めています。店舗や事務所を兼ねた家でも、居住用の面積が半分以上なら対象になりえます。建物が2つ以上あるときは、主に住んでいる1つに限られます。
- **住宅資金貸付債権であること。**住宅の建設や購入(土地や借地権の取得を含む)、住宅の改良のための貸付けで、分割払いの定めがあり、その債権か保証会社の求償権を担保する抵当権が住宅に付いているものです(196条3号)。
- **ほかの担保権がないこと。**住宅に、住宅ローンの抵当権以外の担保権が付いているときは定められません(198条1項ただし書)。たとえば、別の借入の担保として同じ家に抵当権を付けている場合です。住宅以外の土地にも同じローンの抵当権が付いていて、そこに後順位の担保権があるときも、同じく定められません。
- **住宅を失う見込みでないこと。**裁判所は、住宅の所有権や敷地を使う権利を失うことになると見込まれるときは、不認可にします(202条2項3号)。
家に付いている抵当権の数と順位は、法務局で取れる登記事項証明書で分かります。自分で見分けがつかないときは、相談先に証明書を持っていきます。持っていくものの全体は借金の相談に持っていく書類と準備にあります。
払い続ける中身:滞納があるとき、返済が苦しいとき
特則の払い方は、199条で段階が決まっています。
| 段階 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 1 | 約定どおりに払う。認可の確定までに遅れた分(元本・利息・遅延損害金)は、一般弁済期間内に全額払う | 199条1項 |
| 2 | 1で認可の見込みがないとき、最終の返済期限を約定から10年を超えず、終わる時の年齢が70歳を超えない範囲で延ばす | 199条2項 |
| 3 | 2でも足りないとき、一般弁済期間の範囲で、元本の一部と約定利息だけを払う期間(元本猶予期間)を置く | 199条3項 |
| 4 | 債権者の同意があれば、これ以外の変更もできる | 199条4項 |
「一般弁済期間」は、特則を除いた再生計画の返済期間(5年を超えるときは認可確定から5年)です。仮に、月10万円の住宅ローンを3か月滞納して30万円の遅れが出ていたとします。再生計画の返済期間が3年なら、遅れた分は36回で割って月約8,300円です(筆者の計算。遅延損害金を除く)。通常の月10万円に、この分が乗ります。
2の延長は、払える額に合わせるための最後の手段に近い位置づけです。延ばせば総返済額は増えますし、70歳までという年齢の線もあります。年齢が高い人ほど、延ばせる年数が短くなります。
申立てから認可までの流れ
流れは、一般の個人再生と同じ土台の上に、住宅ローンの手当てが重なります。
- **申立て前:**住宅ローンの返済を、自己判断で止めません。遅れが長引くと、次の段階の期限が動き出すからです。保証会社が代位弁済をした場合は、その全額を払った日から6か月以内かを日付で数えます(198条2項)。保証会社からの通知の読み方は代位弁済の通知が届いたらにあります。
- **申立て:**申立ての後に抵当権の実行(競売)が進んでいるときは、住宅資金特別条項を定めた計画の認可の見込みがあると認められる場合に限り、裁判所に実行手続の中止を求められます(197条1項)。
- **開始決定の後:**住宅ローンの一部を払わないと期限の利益を失う契約のとき、裁判所の許可を得て、認可前でもその弁済ができます(197条3項)。自己判断で住宅ローンだけ払い続けたり止めたりせず、依頼した弁護士の指示に従います。
- **認可:**住宅資金特別条項を定めた計画案が可決されると、裁判所は不認可事由がない限り認可します(202条)。確定後、変更後の権利について、期限の利益の喪失などの定めはもとの契約と同じものとみなされます(203条2項)。つまり、認可後に遅れが続けば、契約の条件に従って期限の利益を失うことがありえます。
全体の期間と書類の流れは個人再生の流れで説明しています。
使えないとき・払い続けられないときの選び方
特則が使えない、または認可の見込みが立たないときは、家を手放す前提の選択肢も並べて比べます。
- **任意整理で住宅ローンを外す:**住宅ローンは契約どおり払える人が、ほかの借金だけを整理する形です。任意整理しても住宅ローンは払い続けられる?で、同じ銀行のカードローンを整理するときの注意を扱っています。
- **売却(任意売却):**住宅金融支援機構の説明では、任意売却は返済の継続が難しいときに家を売って残る債務を減らす方法で、競売より高く売れる可能性があるとされています。ただし機構は売出価格を確認する立場で、確認していない価格では抵当権の抹消に応じられない場合があるとしています。
- **自己破産:**家を含む財産を換価する手続です。家の扱いは自己破産すると持ち家はどうなる?で比べられます。
- **家の価値とローン残高の差の影響:**家の評価額がローン残高を上回るか下回るかで、再生計画の返済額が変わります。個人再生のオーバーローンとアンダーローンで計算例を見られます。
住宅ローンを滞納した後の競売までの流れは住宅ローンが払えないと競売に?に、払えなくなりそうなときの選択肢の全体は住宅ローンが払えないときの選択肢にあります。
弁護士に依頼するなら、個人再生の住宅資金特別条項を扱った経験があるかを面談で聞き、費用の総額と内訳を書面でもらいます。確かめることは、登録の有無と面談の方法、住宅ローンを使う手続の説明、結果の見通しを断定しない説明かどうか、の3つです。事務所を選ぶときの項目は債務整理の事務所の選び方にまとめています。
面談では、次のように伝えると話が早く進みます。
文例:「住宅ローンが残高で○○万円、月○万円で、家は自分が住んでいます。カードローンなどの借金は合計○○万円です。家を残したいので、住宅ローンの特則が使えるか、家に付いている抵当権の確認から教えてください。」
よくある質問
Q. リフォームローンや土地を買ったときのローンも、住宅ローンの特則の対象ですか?
民事再生法196条3号は、住宅の建設や購入の資金(土地や借地権の取得資金を含む)と、住宅の改良の資金の貸付けを住宅資金貸付債権としています。ただし分割払いの定めがあり、その債権か保証会社の求償権を担保する抵当権が住宅に付いていることも条件です。契約書の資金の使い道と、登記事項証明書の抵当権を見比べて確かめます。
Q. 連帯保証人や連帯債務者がいる住宅ローンでも使えますか?
使えます。203条1項は、住宅資金特別条項については、通常の再生計画のように保証人への権利を切り離して扱う177条2項を適用しないと定めています。条文の読み方としては、特別条項で決めた猶予の内容が、連帯保証人などへの請求にも及ぶ形になります。ペアローンなど名義が複数の場合の扱いは、契約の形で変わるので弁護士に確かめます。
Q. 住宅ローンの返済が遅れていると、申立てはもう間に合いませんか?
遅れていても、すぐに使えなくなるわけではありません。保証会社が銀行に代わりに払った(代位弁済の)場合も、その全額を払った日から6か月を過ぎる日までに申し立てれば、特別条項を定められます(198条2項)。日付は通知書で確かめ、残りの期間を数えてから相談先を選びます。
出典・参考にした公的な情報
- 民事再生法 第196条〜第199条・第202条・第203条・第221条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判手続 民事事件Q&A(住宅ローンの支払いが困難になっても住宅を手放さずにすむ手続)(最高裁判所)
- 個人再生手続(裁判所の説明)(最高裁判所)
- 融資住宅等の任意売却(住宅金融支援機構)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。