住宅ローンが払えないと競売に?滞納からの流れと任意売却の時期
住宅ローンを滞納しても、翌月に競売になるわけではありません。競売までには、督促、分割払いの権利を失う手続き、保証会社による肩代わり、裁判所への申立てという段階があり、それぞれに「ここまでなら選べる」という分かれ目があります。任意売却を考える時期は、買受人が代金を納めて家の所有権が移る前までが限度で、実際には競売の申立てより前に動くほうが選択肢が多く残ります。この記事では、段階の順番と、各段階でできることを手順にします。
滞納から競売までの流れと、各段階でできること
住宅ローンの返済が遅れたときの流れを、段階ごとに整理します。月数は金融機関や保証会社の契約で違うため、表では「何が起きるか」と「どこで確かめるか」を中心にしています。
| 段階 | 起きること | 動く人 | 自分にできること |
|---|---|---|---|
| 1 返済が遅れる | 引き落としができず、遅れた日数に応じて延滞損害金がつく | 金融機関 | 当日に金融機関へ連絡し、入金方法と金額を確かめる。返済方法の変更を相談する |
| 2 督促が続く | 電話や書面で支払いを求められる | 金融機関・保証会社 | 督促状の期限と送り主を記録する。収入の見通しを書き出す |
| 3 期限の利益を失う | 契約の定めにより、分割払いの権利が失われ、残りの全額を一括で求められる | 金融機関 | 契約書の「期限の利益」の条項を確かめる。一括請求の書面を保管する |
| 4 代位弁済 | 保証会社が金融機関に残額を支払い、請求先が保証会社に変わる | 保証会社 | 個人再生の期限が動き出すので、日付を控えて早く相談する |
| 5 競売の申立て | 保証会社が抵当権にもとづいて裁判所に競売を申し立て、裁判所が開始決定を出す | 保証会社・裁判所 | 開始決定の書類を受け取り、任意売却の可否を債権者に伝える |
| 6 売却の準備と入札 | 現況調査と評価のあと、売却基準価額が決まり、期間入札が行われる | 裁判所・執行官 | 内覧への対応と、退去や引っ越しの時期を考える |
| 7 売却許可と代金納付 | 買受人が代金を納めると、その時に家を取得する | 買受人 | 退去の準備を終える |
| 8 引渡し | 退去しないと、買受人が引渡命令を申し立てる | 買受人・裁判所 | 引渡命令の通知が届いたら弁護士に相談する |
3の「期限の利益」は、分割で払える権利のことです。民法137条は、破産手続開始の決定を受けたときなどに期限の利益を主張できないと定めていますが、住宅ローンで多いのは、契約書に「返済が一定期間遅れたら一括返済になる」と書いてある形です。何か月遅れたらこの段階に入るかは、金銭消費貸借契約書と、保証会社との保証委託契約書の条項で決まります。数字を探すなら、まずこの2通を開いてください。
信用情報にも、段階に応じた記録が残ります。CICでは返済日から61日以上、または3か月以上の遅れが「異動」として扱われ、保証会社が代わりに払う代位弁済もJICCなどに登録されます。次の住宅ローンやカードを申し込む際の審査に響く期間は、機関ごとに「契約終了後5年以内」などと決まっています。
| 時点 | 返済条件の変更 | 個人再生の住宅ローン特則 | 任意売却 |
|---|---|---|---|
| 遅れ始め・督促の段階 | 金融機関に相談できる | 申立ての準備ができる | 査定を取り、売却の準備ができる |
| 一括請求のあと | 保証会社との話し合いになる | 申立てができる | 債権者の同意を取りに行く |
| 代位弁済から6か月以内 | 保証会社との話し合い | 住宅資金特別条項を定められる | 債権者の同意が前提 |
| 代位弁済から6か月を過ぎた | 保証会社との話し合い | 住宅資金特別条項は使えない | 債権者の同意が前提 |
| 競売の開始決定のあと | 保証会社との話し合い | 6か月以内なら申立てができる | 買受人が代金を納めるまで |
任意売却を考える時期と、競売との違い
任意売却は、返済の継続が難しいときに、家を売って残りの借金を減らす方法です。住宅金融支援機構は、不動産競売のように法的手続で強制的に処分するものではなく、通常の売買だと説明しています。競売より高く売れることが期待でき、引渡しの時期を調整しやすいとされています。
そのうえで、時期は次の順番で考えます。
- 返済が苦しくなった時点:まず金融機関に、返済期間の延長や一定期間の返済額の減額などの返済条件の変更を相談します。住宅金融支援機構の案内でも、変更の申請はローンを借りている金融機関に出します。審査があり、希望どおりにならないこともあります。
- 条件を変えても払えないと分かった時点:家を残すか手放すかを決める段階です。残すなら個人再生の住宅資金特別条項、手放すなら任意売却を、並べて比べます。
- 一括請求や代位弁済の通知が届いた時点:個人再生を選ぶなら、保証会社が代位弁済した日から6か月以内に申し立てる必要があります(民事再生法198条2項)。任意売却を選ぶなら、債権者に売却の意向を伝え、売り出しの価格を決めます。
- 競売の開始決定が届いた時点:売却が決まる前であれば、任意売却に切り替える余地が残っています。ただし債権者の同意が前提で、入札が近づくほど時間はなくなります。
任意売却には、抵当権を外すための債権者の承諾が欠かせません。住宅金融支援機構の手続きでは、本人が不動産会社を選び、査定と売出価格の確認を経て媒介契約を結び、購入希望者が現れたら抵当権の抹消に応じるかの審査を受けます。売出価格を機構に確かめないまま売り出すと、抹消に応じられないことがあるとされています。売る前に、債権者に価格を確認する手順を飛ばさないことが要点です。
売却代金がローン残高に届かない場合、届かない分は借金として残ります。同機構は、残債務の圧縮や延滞損害金の減額の相談に応じられる場合があるとしていますが、残りをどう払うかは売ったあとの課題として残ります。
相談先ごとの役割
| 相談先 | 頼めること | 頼めないこと |
|---|---|---|
| 金融機関・保証会社 | 返済条件の変更、任意売却の同意、競売の手続きの説明 | 家計全体の立て直しや、他の借金の整理 |
| 弁護士 | 個人再生・自己破産の申立て、債権者との交渉、競売に関わる法的な判断 | 不動産の売却活動そのもの |
| 宅地建物取引業者 | 家の査定と売却活動(媒介) | 法的な手続きや債務整理 |
| 公的な相談窓口 | 状況の整理と相談先の紹介 | 個別の法的判断 |
不動産会社に任意売却の仲介を頼むときは、宅地建物取引業の免許を受けた業者かを確かめます(宅地建物取引業法3条)。報酬は国土交通大臣の定める額が上限で、それを超えて受け取ることは禁じられています(同法46条)。手数料を誰がどう負担するかは、契約の前に書面で確かめてください。
窓口の番号や受付時間は借金の相談窓口はどこ?にまとめてあります。費用が心配なら、法テラス(日本司法支援センター)の窓口も選択肢です。
家を残す選択肢と、残せない場合
家を残したいなら、個人再生の住宅資金特別条項が候補になります。住宅ローンは原則として約定どおり払い続け、ほかの借金を再生計画で減らす形です。申立てから認可決定までの間は、裁判所が抵当権の実行(競売)の中止を命じられる場合があります(民事再生法197条)。詳しい条件は個人再生で住宅ローンを払い続ける特則に書きました。
自己破産では、持ち家は原則として処分される側に入ります。流れと住み続ける方法は自己破産すると持ち家はどうなる?で扱っています。保証会社が代位弁済したあとの請求の受け止め方は、代位弁済の通知が届いたらを読んでください。
返済の見通しがつかず、住宅ローンのほかにも借金があるなら、債務整理を扱う弁護士に早めに相談する選択肢があります。
事務所を選ぶときは、住宅ローンのある人の個人再生を扱った経験を確かめ、費用の総額を書面で出してもらい、代位弁済からの期限を踏まえた日程を説明してもらえるかを見てください。依頼先の資格の違いは債務整理は弁護士と司法書士どっち?で確かめられます。全体の選択肢は住宅ローンが払えないときの選択肢に整理しています。
今日から準備すること
- 金銭消費貸借契約書と保証委託契約書を探し、期限の利益を失う条件の条項に印をつける
- 督促状、一括請求書、代位弁済の通知は、日付が分かる形で保管する
- 家の査定額(不動産会社の無料査定など)と、ローンの残高を並べて書く
- 収入と支出を1か月分書き出し、条件変更でどこまで払えるかを見積もる
- 金融機関に電話するときの言葉を決めておく
文例:「住宅ローンの返済が難しくなってきました。返済期間の延長や返済額の見直しができないか、手続きと必要書類を教えてください。」
前の記事の病気や入院で住宅ローンが払えないときで収入の見通しを立てたら、次は離婚後に住宅ローンが払えないときも読み、名義の問題がないかを確かめておくと、相談の場で説明がしやすくなります。
よくある質問
Q. 競売の開始決定が届いたあとでも、任意売却に切り替えられますか?
買受人が代金を納付した時に所有権が移ります(民事執行法79条)。それより前なら、債権者が競売の申立てを取り下げて任意売却に進む形がありえますが、応じるかどうかは債権者の判断です。入札で買受けの申出がされたあとは、申出をした人の同意も必要になります(民事執行法76条)。開始決定の書類が届いた日を起点に、金融機関か保証会社へ「任意売却を検討したい」と早く伝えてください。
Q. 競売で売れたあと、ローンの残りはどうなりますか?
競売の売却代金は、法律上の順位に従って配当されます。ローン残高に届かなかった分は、借金として残ります。残りをどう払うかは債権者との話し合いになるので、売却の前後を通じて弁護士などに相談できる状態にしておくと選択肢が増えます。
Q. 競売になっても、その家にそのまま住み続けられますか?
差押えがあっても、通常の使い方で住むことは妨げられません(民事執行法46条2項、188条で準用)。ただし家は売りに出され、買受人が代金を納めると所有権が移ります。占有が続くと、買受人は代金納付から原則6か月以内に引渡命令を申し立てられます(民事執行法83条)。
出典・参考にした公的な情報
- 担保不動産競売(裁判所)(最高裁判所)
- 裁判手続 民事事件Q&A(不動産競売・引渡命令・住宅ローン)(最高裁判所)
- 民事執行法 第46条・第76条・第79条・第83条・第188条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事再生法 第197条・第198条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第137条(期限の利益の喪失)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 融資住宅等の任意売却(住宅金融支援機構)(住宅金融支援機構)
- 返済方法の変更(住宅金融支援機構)(住宅金融支援機構)
- 宅地建物取引業法 第3条・第46条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 信用情報の登録期間(JICC)(株式会社日本信用情報機構)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。