任意整理 / Q&A

任意整理しても住宅ローンは払い続けられる?家を残す整理の仕方

この記事のもくじ
  1. 任意整理で住宅ローンを外す仕組み
  2. 同じ銀行のカードローンを整理するときの注意
  3. 住宅ローン自体が苦しいなら、個人再生との分かれ道
  4. 相談の前にそろえるものと聞くこと

住宅ローンがあっても任意整理はでき、**住宅ローンを整理の対象から外せば、家のローンはこれまでどおり払い続ける形にできます。**任意整理は裁判所を通さない貸主との話し合いなので、どの借金を整理するかを選べるからです。注意したいのは2つで、住宅ローンと同じ銀行のカードローンを整理するときの預金の扱いと、住宅ローン自体が払えなくなっている場合です。後者は、任意整理ではなく個人再生の住宅ローンの特則を考える場面になります。

任意整理で住宅ローンを外す仕組み

任意整理は、弁護士や司法書士がカード会社や消費者金融などと個別に話し合い、将来の利息の扱いや分割の回数を決め直す手続きです。裁判所の手続きではないので、話し合いの相手は依頼する人が事務所と相談して選べます。カードローンやリボ払いだけを相手にして、住宅ローンには受任通知を出さない、という組み立てが基本の形です。

これに対して、個人再生や自己破産は裁判所の手続きで、債権者一覧表にすべての債権者を載せます。住宅ローンを残す仕組み(住宅資金特別条項)は個人再生にありますが、任意整理のように「住宅ローンの銀行とは話し合いをしない」という選び方とは考え方が違います。

項目 住宅ローンを対象から外した任意整理
住宅ローンの返済 契約どおり払い続ける(金額も期間も変わらない)
家の抵当権 そのまま残る
カードローン・リボなど 和解で決めた額を分割で払う
信用情報 整理した借金について記録が残る(JICCでは「債務整理」の項目、CICでは返済条件の変更などとして表れることがある)
新しいローンの審査 記録がある間は通りにくくなる

住宅ローンを対象に入れない理由は、抵当権にあります。抵当権は、返済が滞ったときに家を売ったお金から他の債権者より先に回収できる権利です(民法369条)。住宅ローンを任意整理の相手にして返済の条件を崩すと、担保の家を処分される方向に話が進むおそれがあります。日本司法書士会連合会の指針も、依頼を受けるときに不動産の所有権を失う可能性を説明するよう求めています。

同じ銀行のカードローンを整理するときの注意

住宅ローンを借りている銀行で、カードローンやフリーローンも借りている人は少なくありません。この場合、カードローンだけを任意整理の対象にすると、同じ銀行の口座に影響が出ることがあります。

  1. 預金の相殺:お互いにお金の支払い義務を負っていて、両方の支払い期限が来ていれば、対当額を相殺できると民法505条は定めています。カードローンの返済を止めて期限の利益(分割で払える権利)を失うと、銀行がその口座の預金をカードローンの返済に充てることが考えられます。
  2. 住宅ローンの引き落とし:住宅ローンを引き落とす口座の残高が相殺で減れば、住宅ローンの引き落としができず、遅れが生じるおそれがあります。
  3. 給与の振込先:給与が同じ銀行に振り込まれる設定なら、入った給与も相殺の対象になりうるので、振込先をどうするかを受任通知の前に決めておく必要があります。
  4. 契約の条項:住宅ローンの契約書に、ほかの借入の延滞や債務整理を期限の利益を失う理由として書いていないかを確かめます。民法137条が定める期限の利益を失う場合は、破産手続開始の決定や担保を減らしたときなどにとどまり、ローンでは契約の条項で決まることが多いからです。
同じ銀行で借りているときの確認表
確かめること 見る書類 事務所に伝えること
カードローンの貸主と保証会社 カードローンの契約書・利用明細 貸主が銀行か、保証会社がついているか
住宅ローンの保証会社 住宅ローンの保証委託契約書 カードローンの保証会社と同じ会社か
引き落とし口座と給与の振込先 通帳・給与明細 同じ銀行の口座かどうか
期限の利益を失う条件 住宅ローンの金銭消費貸借契約書 他の借入の延滞・整理が書かれているか

この表で同じ銀行や同じ保証会社が重なるときは、カードローンも対象から外す、口座の使い方を先に整える、といった選択肢を相談の場で比べます。どれを選ぶかは契約の中身で変わるので、契約書を持って行き、事務所に一つずつ見てもらうのが確実です。一部の借金だけを整理するときの全体の考え方は、任意整理を一社だけでする場合の選び方にまとめています。

住宅ローン自体が苦しいなら、個人再生との分かれ道

任意整理で軽くなるのは、対象にした借金の利息や月々の負担です。住宅ローンそのものの返済額は変わらないので、住宅ローンが家計を圧迫している人は、ほかの借金を整理しても足りないことがあります。そのときに候補になるのが、個人再生の住宅資金特別条項です。

この特則では、住宅ローンは原則として約束どおり払い続け、ほかの借金を再生計画で減らします。住宅ローンの返済が難しければ、最終の支払い期限を最長10年、終わる時の年齢が70歳を超えない範囲で延ばせる定めもあります(民事再生法199条2項)。一方で、家に住宅ローン以外の担保がついていると使えない、保証会社が代わりに払ってから6か月を過ぎると使えない、といった条件があります。

状況 考える方向
住宅ローンは払えていて、カードローン・リボが苦しい 住宅ローンを外して任意整理
ほかの借金が大きく、任意整理の分割では払いきれない 個人再生(住宅資金特別条項)
住宅ローンの返済が遅れ始めている まず銀行に返済条件の相談、並行して弁護士に相談
家を残すと生活が成り立たない 売却や自己破産も含めて比べる

数字で比べると、分かれ道が見えやすくなります。仮に、ほかの借金が240万円で、任意整理で将来の利息をつけずに60回で和解できたとすると、月の返済は4万円です(筆者の計算)。同じ240万円を小規模個人再生にした場合、最低弁済額は100万円(基準債権が100万円以上500万円以下のとき)なので、3年で払うと月約2万7,800円になります(筆者の計算)。実際の返済額は、財産の価値や裁判所の判断で上がることがあるので、この数字は比べるための目安です。

住宅ローンの特則の条件と流れは個人再生で住宅ローンを払い続ける特則で、住宅ローンの返済そのものが難しいときの選択肢は住宅ローンが払えないときの選択肢で詳しく扱っています。

相談の前にそろえるものと聞くこと

住宅ローンがある人の任意整理では、住宅ローンを外せるかどうかの判断に、契約の書類が欠かせません。次のものを用意しておくと、面談で具体的な見通しを聞けます。

  • 住宅ローンの金銭消費貸借契約書と保証委託契約書
  • 住宅ローンの返済予定表(残高と完済の時期が分かるもの)
  • 家の登記事項証明書(抵当権がいくつ、誰についているか)
  • ほかの借金の一覧(貸主・残高・月の返済額・保証会社)
  • 給与の振込口座と、住宅ローンの引き落とし口座の通帳

面談では、次のように聞くと話が早く進みます。

文例:「住宅ローンは対象から外して、カードローンとリボだけを整理したいです。カードローンの1社が住宅ローンと同じ銀行なので、口座の預金や引き落としにどんな影響があるか、外すべきかを教えてください。」

書類の集め方と借入一覧の作り方は、借金の相談に持っていく書類と準備を参考にしてください。任意整理の後に家を買う・借り換える予定がある人は、債務整理すると住宅ローンは組めるかもあわせて読むと、記録が残る期間を含めた計画が立てやすくなります。

よくある質問

Q. 住宅ローンを対象から外せば、住宅ローンの銀行に任意整理を知られませんか?

受任通知は対象にした相手にだけ送られるので、住宅ローンの銀行に事務所から連絡が行くことはありません。ただ、整理した借金の記録は信用情報機関に残り、銀行が契約の途中で信用情報を確かめること(途上与信)は利用目的として認められています。知られないとは言い切れないので、住宅ローンの返済を遅らせないことを優先してください。

Q. 任意整理の返済中に、住宅ローンの借り換えはできますか?

借り換えは新しいローンの審査になり、審査は各金融機関の判断です。信用情報に整理の記録がある間は通りにくくなるので、借り換えで返済を軽くする計画は立てにくいと考えておきましょう。審査と記録の関係は、債務整理と住宅ローンの審査をまとめた記事で扱っています。

Q. 住宅ローンの返済がすでに遅れていても、任意整理で家を残せますか?

任意整理で減らせるのはほかの借金の負担なので、住宅ローンの遅れそのものは銀行との相談で解決する必要があります。保証会社が代わりに払う代位弁済まで進むと、個人再生の住宅ローンの特則が使える期間(代位弁済から6か月)にも関わります。遅れが出た時点で、銀行と弁護士の両方に早めに相談してください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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