個人再生と住宅・車のローン / 用語

個人再生のオーバーローンとアンダーローン|家の価値で変わること

この記事のもくじ
  1. 用語の意味:時価とローン残高の差
  2. 計算例:アンダーローンの場合
  3. 計算例:オーバーローンの場合
  4. 特則を使わず家を手放す場合の数え方
  5. 査定の取り方と、書類にそろえるもの

オーバーローンとは、家の時価がローンの残高より低い状態、アンダーローンとは、時価がローンの残高より高い状態です。個人再生では、**アンダーローンの「差額」が財産として数えられ、再生計画の返済額の下限を押し上げます。オーバーローンのときは、家の分はプラスになりません。**この記事は、この2つの違いが返済額にどう表れるかを、仮の数字で計算して見せます。清算価値そのものの説明は個人再生の清算価値とはに任せ、ここでは家に絞って書きます。

用語の意味:時価とローン残高の差

「時価」は、いま売ったらいくらになりそうかという家の価値で、「ローン残高」は、住宅ローンの元本のうちまだ返していない額です。この2つを引き算します。

状態 時価とローン残高 差額 個人再生での家の数え方
アンダーローン 時価>ローン残高 プラス 差額が財産(清算価値)に入る
オーバーローン 時価<ローン残高 マイナス 家の分は財産に入らない

時価が残高を上回るとき、その差額は、家を売れば手元に残るはずのお金です。個人再生には、返済の総額が、自分の財産を処分して返済に当てた場合の額(清算価値)以上でなければならないという決まりがあります(裁判所の説明)。そのため、アンダーローンの差額は、財産として数える考え方になります。オーバーローンのときは、家を売ってもローンが残るだけで手元に何も残らないので、家の分は財産に入りません。

計算例:アンダーローンの場合

仮の数字です(筆者の計算)。

  • 家の時価:2,800万円、住宅ローン残高:2,300万円 → 差額+500万円
  • 預金など:30万円(車などほかの財産はなし)
  • 住宅ローン以外の無担保の借金:600万円(基準債権が500万円〜1,500万円なので最低弁済額は5分の1の120万円。231条2項4号)

財産の合計は500万円+30万円=530万円で、最低弁済額の120万円より多いので、返済総額は530万円以上が下限になります。借金600万円に対して約88%です。3年(36回)で払うなら月約14万7,000円、5年(60回)なら月約8万8,000円です。ほとんど借金が減らない計算になるので、この場合は個人再生の効果が小さいことが見えてきます。

計算例:オーバーローンの場合

仮の数字です(筆者の計算)。

  • 家の時価:2,200万円、住宅ローン残高:2,900万円 → 差額-700万円
  • 預金など:30万円
  • 住宅ローン以外の無担保の借金:600万円

家の分は財産に入らないので、財産は預金の30万円だけです。最低弁済額の120万円のほうが大きいので、返済総額は120万円になります。3年(36回)で月約3万3,300円です。アンダーローンの例と比べると、同じ借金600万円でも、返済総額が530万円と120万円で約4倍違います。

比べる表:同じ借金600万円でも、家の価値で返済総額が変わる
項目 アンダーローンの例 オーバーローンの例
家の時価 2,800万円 2,200万円
ローン残高 2,300万円 2,900万円
家の差額 +500万円 -700万円(財産には入らない)
預金など 30万円 30万円
財産の合計(清算価値) 530万円 30万円
最低弁済額(借金600万円の5分の1) 120万円 120万円
返済総額の下限 530万円 120万円
月の返済(36回) 約14万7,000円 約3万3,300円

どちらも住宅資金特別条項を使い、住宅ローンは契約どおり払い続ける前提です。その場合の条件と払い方は個人再生で住宅ローンを払い続ける特則にあります。なお、小規模個人再生の「債権総額5,000万円以下」の数え方では、住宅資金貸付債権の額は除かれます(221条1項)。

特則を使わず家を手放す場合の数え方

住宅ローンの特則を使わないで、家を売る・競売になる場合は、住宅ローンの債権者は、家の担保で回収できる分と、回収できない分に分かれます。221条1項の括弧書きは、別除権の行使で弁済を受けられると見込まれる額を、債権総額から除くと定めています。反対に、オーバーローンで担保で回収しきれない見込みの額は、再生債権の総額に含まれて計算されます。

つまり、オーバーローンの家を手放すとき、足りない分の借金が残り、それが再生計画の返済の対象に加わります。売却で足りない分の扱いは、住宅ローンが払えないと競売に?と、住宅金融支援機構の任意売却の説明で確かめられます。機構の説明では、任意売却は一般に競売より高値が期待できるとされますが、売出価格は機構の確認を受ける必要があります。

査定の取り方と、書類にそろえるもの

家の評価が返済額を動かすので、査定の取り方を知っておきます。

  1. **ローンの残高証明書:**住宅ローンを借りている金融機関に、残高を日付つきで出してもらいます。
  2. **登記事項証明書:**土地と建物の両方を法務局で取ります。持分と抵当権の数が分かります。
  3. **不動産会社の査定書:**机上査定(書類と相場による)や訪問査定(現地を見る)があります。手続の財産評価に使う目的であることを伝えたうえで、複数の会社に頼んで額の幅を見ます。
  4. **固定資産税の納税通知書:**評価額の参考にする場合があります。使うかどうかは裁判所の運用で決まります。

東京地方裁判所の個人再生の案内には、提出する書類として、不動産登記事項証明書と、財産目録及び清算価値算出シートが載っています。申立先の裁判所の案内で、評価の方法を確かめてください。小規模個人再生では、財産を財産目録に書かなかったり、不正に記載したりすると、手続の廃止につながりえます(237条2項)。

文例:「住宅ローンの残高は約2,300万円です。不動産会社2社の査定書が2,500万円と2,800万円で、差が大きいのですが、財産目録にはどの額を使うのですか。」

家を残したい人が最後に比べるのは、特則を使って財産に差額が入る場合の返済総額と、家を売って借金を整理する場合の負担です。後者の例として自己破産すると持ち家はどうなる?を読むと、手放した場合の流れが分かります。払えなくなる前の段階の相談は住宅ローンが払えないときの選択肢へ。

よくある質問

Q. 家の査定額は、高く出る会社と低く出る会社のどちらを使えばよいですか?

自分に都合のよい額を選ぶ決まりはありません。複数の会社の査定書を集めると、額に幅があることが分かります。どの査定を財産目録の評価に使うかは、申立先の裁判所の書式と運用に沿って、依頼した弁護士が決めます。低く見せるために業者に頼んで額を下げてもらうことは避けます。

Q. オーバーローンなら、家は財産ゼロとして扱われるのですか?

家の評価額がローン残高を下回るなら、清算価値の計算では家の分はプラスになりません。この記事の計算例は、そのマイナスをほかの財産から引かない前提です。担保で回収できない分は、別の債権として数えられるからです(221条1項の括弧書きと同じ考え方)。引き方の細部は裁判所の書式で確かめます。預金や車の価値は別に評価されるので、家がオーバーローンでも財産全体の合計が下限になることがあります。

Q. 親と一緒に買った家や、共有名義の家はどう数えますか?

評価するのは自分の持分です。持分の割合は登記事項証明書の共有者の欄で分かります。住宅ローンがペアローンなのか連帯債務なのかで、特則を使うときの手続も変わるので、契約書と登記事項証明書の両方を弁護士に見せて確かめます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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