個人再生のオーバーローンとアンダーローン|家の価値で変わること
オーバーローンとは、家の時価がローンの残高より低い状態、アンダーローンとは、時価がローンの残高より高い状態です。個人再生では、**アンダーローンの「差額」が財産として数えられ、再生計画の返済額の下限を押し上げます。オーバーローンのときは、家の分はプラスになりません。**この記事は、この2つの違いが返済額にどう表れるかを、仮の数字で計算して見せます。清算価値そのものの説明は個人再生の清算価値とはに任せ、ここでは家に絞って書きます。
用語の意味:時価とローン残高の差
「時価」は、いま売ったらいくらになりそうかという家の価値で、「ローン残高」は、住宅ローンの元本のうちまだ返していない額です。この2つを引き算します。
| 状態 | 時価とローン残高 | 差額 | 個人再生での家の数え方 |
|---|---|---|---|
| アンダーローン | 時価>ローン残高 | プラス | 差額が財産(清算価値)に入る |
| オーバーローン | 時価<ローン残高 | マイナス | 家の分は財産に入らない |
時価が残高を上回るとき、その差額は、家を売れば手元に残るはずのお金です。個人再生には、返済の総額が、自分の財産を処分して返済に当てた場合の額(清算価値)以上でなければならないという決まりがあります(裁判所の説明)。そのため、アンダーローンの差額は、財産として数える考え方になります。オーバーローンのときは、家を売ってもローンが残るだけで手元に何も残らないので、家の分は財産に入りません。
計算例:アンダーローンの場合
仮の数字です(筆者の計算)。
- 家の時価:2,800万円、住宅ローン残高:2,300万円 → 差額+500万円
- 預金など:30万円(車などほかの財産はなし)
- 住宅ローン以外の無担保の借金:600万円(基準債権が500万円〜1,500万円なので最低弁済額は5分の1の120万円。231条2項4号)
財産の合計は500万円+30万円=530万円で、最低弁済額の120万円より多いので、返済総額は530万円以上が下限になります。借金600万円に対して約88%です。3年(36回)で払うなら月約14万7,000円、5年(60回)なら月約8万8,000円です。ほとんど借金が減らない計算になるので、この場合は個人再生の効果が小さいことが見えてきます。
計算例:オーバーローンの場合
仮の数字です(筆者の計算)。
- 家の時価:2,200万円、住宅ローン残高:2,900万円 → 差額-700万円
- 預金など:30万円
- 住宅ローン以外の無担保の借金:600万円
家の分は財産に入らないので、財産は預金の30万円だけです。最低弁済額の120万円のほうが大きいので、返済総額は120万円になります。3年(36回)で月約3万3,300円です。アンダーローンの例と比べると、同じ借金600万円でも、返済総額が530万円と120万円で約4倍違います。
| 項目 | アンダーローンの例 | オーバーローンの例 |
|---|---|---|
| 家の時価 | 2,800万円 | 2,200万円 |
| ローン残高 | 2,300万円 | 2,900万円 |
| 家の差額 | +500万円 | -700万円(財産には入らない) |
| 預金など | 30万円 | 30万円 |
| 財産の合計(清算価値) | 530万円 | 30万円 |
| 最低弁済額(借金600万円の5分の1) | 120万円 | 120万円 |
| 返済総額の下限 | 530万円 | 120万円 |
| 月の返済(36回) | 約14万7,000円 | 約3万3,300円 |
どちらも住宅資金特別条項を使い、住宅ローンは契約どおり払い続ける前提です。その場合の条件と払い方は個人再生で住宅ローンを払い続ける特則にあります。なお、小規模個人再生の「債権総額5,000万円以下」の数え方では、住宅資金貸付債権の額は除かれます(221条1項)。
特則を使わず家を手放す場合の数え方
住宅ローンの特則を使わないで、家を売る・競売になる場合は、住宅ローンの債権者は、家の担保で回収できる分と、回収できない分に分かれます。221条1項の括弧書きは、別除権の行使で弁済を受けられると見込まれる額を、債権総額から除くと定めています。反対に、オーバーローンで担保で回収しきれない見込みの額は、再生債権の総額に含まれて計算されます。
つまり、オーバーローンの家を手放すとき、足りない分の借金が残り、それが再生計画の返済の対象に加わります。売却で足りない分の扱いは、住宅ローンが払えないと競売に?と、住宅金融支援機構の任意売却の説明で確かめられます。機構の説明では、任意売却は一般に競売より高値が期待できるとされますが、売出価格は機構の確認を受ける必要があります。
査定の取り方と、書類にそろえるもの
家の評価が返済額を動かすので、査定の取り方を知っておきます。
- **ローンの残高証明書:**住宅ローンを借りている金融機関に、残高を日付つきで出してもらいます。
- **登記事項証明書:**土地と建物の両方を法務局で取ります。持分と抵当権の数が分かります。
- **不動産会社の査定書:**机上査定(書類と相場による)や訪問査定(現地を見る)があります。手続の財産評価に使う目的であることを伝えたうえで、複数の会社に頼んで額の幅を見ます。
- **固定資産税の納税通知書:**評価額の参考にする場合があります。使うかどうかは裁判所の運用で決まります。
東京地方裁判所の個人再生の案内には、提出する書類として、不動産登記事項証明書と、財産目録及び清算価値算出シートが載っています。申立先の裁判所の案内で、評価の方法を確かめてください。小規模個人再生では、財産を財産目録に書かなかったり、不正に記載したりすると、手続の廃止につながりえます(237条2項)。
文例:「住宅ローンの残高は約2,300万円です。不動産会社2社の査定書が2,500万円と2,800万円で、差が大きいのですが、財産目録にはどの額を使うのですか。」
家を残したい人が最後に比べるのは、特則を使って財産に差額が入る場合の返済総額と、家を売って借金を整理する場合の負担です。後者の例として自己破産すると持ち家はどうなる?を読むと、手放した場合の流れが分かります。払えなくなる前の段階の相談は住宅ローンが払えないときの選択肢へ。
よくある質問
Q. 家の査定額は、高く出る会社と低く出る会社のどちらを使えばよいですか?
自分に都合のよい額を選ぶ決まりはありません。複数の会社の査定書を集めると、額に幅があることが分かります。どの査定を財産目録の評価に使うかは、申立先の裁判所の書式と運用に沿って、依頼した弁護士が決めます。低く見せるために業者に頼んで額を下げてもらうことは避けます。
Q. オーバーローンなら、家は財産ゼロとして扱われるのですか?
家の評価額がローン残高を下回るなら、清算価値の計算では家の分はプラスになりません。この記事の計算例は、そのマイナスをほかの財産から引かない前提です。担保で回収できない分は、別の債権として数えられるからです(221条1項の括弧書きと同じ考え方)。引き方の細部は裁判所の書式で確かめます。預金や車の価値は別に評価されるので、家がオーバーローンでも財産全体の合計が下限になることがあります。
Q. 親と一緒に買った家や、共有名義の家はどう数えますか?
評価するのは自分の持分です。持分の割合は登記事項証明書の共有者の欄で分かります。住宅ローンがペアローンなのか連帯債務なのかで、特則を使うときの手続も変わるので、契約書と登記事項証明書の両方を弁護士に見せて確かめます。
出典・参考にした公的な情報
- 民事再生法 第196条・第221条・第231条・第237条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個人再生手続(裁判所の説明)(最高裁判所)
- 個人再生手続の申立てに当たって(令和7年11月1日以降適用)(東京地方裁判所)
- 融資住宅等の任意売却(住宅金融支援機構)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。