自己破産 / Q&A

自己破産したら何を失う?手元に残せる財産と残せない財産

この記事のもくじ
  1. 手元に残る財産(自由財産)の3種類
  2. 「99万円」はいつの時点の話か
  3. 財産の種類ごとの扱い
  4. 家・車・保険・年金・預金口座のよくある場面
  5. 自分の場合に残せる額を確かめる方法

自己破産で失うのは、破産手続開始の時に持っていた財産のうち、「自由財産」にあたらないものです。現金は99万円まで、差押えが禁止された生活用品などは手元に残ります。それを超える預貯金、解約返戻金のある保険、不動産などは、換価されて債権者への配当に回ります。いくらまで残せるかの細かい基準は裁判所ごとに違うので、この記事では条文で決まる部分と、運用で決まる部分を分けて示します。

手元に残る財産(自由財産)の3種類

破産手続開始の時に持っている財産は破産財団になりますが(破産法34条1項)、次のものは財団に属さず、本人の手元に残ります(同条3項)。

  1. 現金のうち99万円まで(民事執行法施行令1条の66万円に2分の3を掛けた額。筆者の計算で99万円)
  2. 差し押さえることができない財産(民事執行法131条の、生活に欠かせない衣服・寝具・家具・台所用具、1か月分の食料・燃料、仕事に欠かせない器具、実印、学習に必要な書類など)
  3. 破産手続開始の後に得た財産(開始時の財産ではないため)

法務省の破産手続の案内も、換価の対象から除かれる自由財産として、99万円までの現金、差押禁止財産、開始後に取得した財産を挙げています。生活に必要な家財が換価されないのは、この2が根拠です。家財の個別の線引き(家電・ゲーム機)と、家に来る執行官・債権者・管財人の違いは自己破産で差し押さえが家に来る?持っていかれる物と残る物で扱います。高価な美術品や高級時計のように、生活に欠かせないとは言えない物は、2に当たらず換価の対象になりえます。

「99万円」はいつの時点の話か

99万円の基準は、破産手続開始の決定の時点です。申立ての前の数か月に現金が減っていても増えていても、見られるのは開始時に手元にある額です。開始の後に働いて受け取った給料は3にあたり、財団に入りません。

注意点は3つあります。

  • 99万円は「現金」の枠です。預金・保険・不動産を合わせて99万円まで残せるという意味ではありません。
  • 裁判所は、申立てまたは職権で、生活の状況・財産の種類と額・収入の見込みなどを考えて、自由財産の範囲を広げられます。この拡張の判断は、開始決定から決定確定の日以後1か月を経過する日までの間にされます(破産法34条4項)。
  • 財産を隠したり、開始前に特定の人にだけ渡したりすると、免責不許可事由に当たることがあります。申立ての前の財産の動かし方は、自己判断せず、依頼先に事前に確かめます。

財産の種類ごとの扱い

早見表:財産の種類と、残せるかの考え方
財産 考え方 基準の決まり方
現金 99万円まで自由財産 条文(破産法34条3項1号)
預貯金 条文上は金銭でなく債権。残せる額は運用で決まる 裁判所ごとの運用
生命保険 解約返戻金がある保険は、返戻金が換価の対象になりえる 裁判所ごとの運用
車 価値と、ローンの残り、生活への必要性で変わる 裁判所ごとの運用と契約内容
持ち家 住宅ローンの残り、担保の有無で変わる 担保権と裁判所の運用
家財・衣類・寝具 生活に欠かせない物は差押禁止で手元に残る 条文(民事執行法131条)
開始後の給料 開始時の財産ではない 条文(破産法34条1項)

預貯金や保険、車、家の「いくらまで」には、全国で共通の金額表はありません。裁判所が財産の種類ごとに定めた換価の基準(運用)があり、それは公表されていることも、依頼先が経験で把握していることもあります。条文にない金額を「99万円まで」と思い込まないことが、最初の注意です。

東京地方裁判所民事第20部は、次のような場合を、原則として管財事件として扱うと説明しています(同裁判所「よくある質問」)。

  • 債務者に33万円以上の現金がある場合
  • 預貯金・保険の解約返戻金・未払の報酬や賃金などで、20万円以上の換価の対象になる資産がある場合
  • 不動産の被担保債権額が、不動産の処分価格の1.5倍未満の場合
  • 資産の調査が必要な場合

これは東京地裁の扱いで、ほかの裁判所では数字が違います。たとえば現金が33万円を超えていても、それだけで99万円の枠を超えるわけではありません。33万円という数字は、同時廃止にできるかの目安の一つです。管財事件になると、予納金の額が変わります(自己破産の同時廃止と管財事件の違い|分かれ目と費用・期間)。

家・車・保険・年金・預金口座のよくある場面

持ち家は、住宅ローンの残りと、不動産の価値の関係で扱いが変わります。ローンの担保になっている家は、処分されて担保権者に回る場合があり、手放す流れと住み続ける方法は自己破産すると持ち家はどうなる?手放す流れと住み続ける方法で説明しています。

車は、価値が低いか、ローンが残っているかで違います。自己破産で車持ちは車を手放す?残せる車とローン中の車の扱いにまとめました。

生命保険は、解約返戻金があるかが分かれ目です。返戻金がない保険は、返戻金を換価する場面そのものが生じません。自己破産で生命保険は解約になる?解約返戻金と残せる場合で見られます。

年金は、年金を受ける権利が差押禁止とされています(国民年金法24条・厚生年金保険法41条1項)。ただし、口座に振り込まれた後の預金は形式上は預金債権になります。自己破産しても年金はもらえる?受給中と受給前・個人年金の扱いで扱っています。

預金口座は、財産の調査で残高や取引が確認されます。口座の見られ方と凍結の考え方は自己破産で通帳はどこまで調べられる?見られる期間と取引と自己破産で口座凍結される?凍結の時期と給料口座の変え方にあります。

自分の場合に残せる額を確かめる方法

残せる額は、次の順で確かめます。

  1. 申立てをする予定の地方裁判所の、破産手続の案内ページを開く(裁判所名と確認日をメモする)
  2. 現金・預貯金・保険の解約返戻金・車・不動産の一覧を作り、評価額を書き出す
  3. 依頼先との面談で、その裁判所の基準に当てはめた場合の見込みを聞く

聞き方の例は次のとおりです。

文例:「現金と預貯金が合わせて約○○万円、解約返戻金のある保険が1件、車が1台あります。申立先の裁判所の基準だと、どれが換価の対象になり、同時廃止と管財のどちらになりそうか、教えてください。」

個別の判断は弁護士などの資格者の仕事で、この記事は判断の材料を示すものです。手続き全体の位置づけは自己破産とは?流れ・失うもの・生活への影響をまとめて確認に、財産以外の不利益は自己破産のデメリット一覧|失うもの・制限・家族への影響にまとめています。

よくある質問

Q. 預金は99万円まで残せますか?

99万円は現金の額です。預金は条文上は金銭ではなく債権として扱われ、いくらまで残せるかは裁判所の運用で決まります。東京地裁は、20万円以上の預貯金などの換価の対象があると原則として管財事件にするとしています。申立先の裁判所の案内で確かめます。

Q. 手放した財産は誰がお金に換えますか?

管財事件では、裁判所が選んだ破産管財人が財産を換価し、債権者に配当します(破産法78条)。同時廃止では管財人がおらず、財産を換価する手続自体がありません。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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