自己破産 / Q&A

自己破産で生命保険は解約になる?解約返戻金と残せる場合

この記事のもくじ
  1. 解約返戻金のある保険が財産になる理由
  2. 同時廃止と管財事件で、保険はどう変わるか
  3. 管財事件でも保険を残す道:自由財産の拡張と介入権
  4. 家族名義の保険・学資保険の見方
  5. 申立ての前にそろえること・してはいけないこと

自己破産で保険が解約になるかは、解約返戻金がいくらあるかと、同時廃止か管財事件かで決まります。解約返戻金は、契約者の財産として数えられます。同時廃止なら管財人が選ばれないので、保険は解約されずに続きます。管財事件では、加入している保険は原則としてすべて解約されます(松江地方裁判所の説明)。ただし、返戻金が小さい保険は手続の分かれ目になりにくく、管財事件になっても残す方法があります。

解約返戻金のある保険が財産になる理由

保険法2条は、保険契約者を「保険料を支払う義務を負う者」、被保険者を「その者の生存又は死亡に関し保険者が保険給付を行うこととなる者」、保険金受取人を「保険給付を受ける者」と、それぞれ別の人として定義しています。解約したときに戻るお金(解約返戻金)を受け取れるのは、契約者です。破産法34条1項は、破産手続の開始の時に持っている一切の財産を破産財団とするので、契約者である人の解約返戻金は、財産として数えられます。

どの保険でも財産になるわけではありません。

早見表:保険の種類ごとの解約返戻金と、破産での数え方
保険の種類 解約返戻金 破産での扱い
終身保険・養老保険・学資保険 契約年数がたつと大きくなりやすい 返戻金の額が財産として数えられる
個人年金保険(受給前) 払込みが進むと大きくなりやすい 同上
定期保険・医療保険などの掛け捨て型 ほとんど出ない、または小さい 数える額は小さい
契約者貸付を受けている契約 貸付残高を引いた額で見る(水戸地裁の平成31年4月1日実施の例) 引いた額を財産として数える
すでに保険金の支払い事由が起きた契約 保険金請求権がある 保険金請求権として財産に書く(松江地裁の記入要領)

共済も保険契約に含まれます(保険法2条1号は、共済契約その他いかなる名称であるかを問わないと定めています)。県民共済や農協の共済に入っている人も、返戻金のある契約は同じように調べておきます。

同時廃止と管財事件で、保険はどう変わるか

保険は、財産の合計額に影響し、同時廃止になるか管財事件になるかの分かれ目になります。

  • 東京地方裁判所は、20万円以上の換価対象資産(預貯金、保険の解約返戻金、未払報酬・賃金など)がある場合などを、原則として管財事件として扱うと公表しています(民事第20部の「よくある質問」Q3を、令和8年10月に開いて確かめました)。
  • 水戸地方裁判所の平成31年4月1日実施の例は、保険の解約返戻金(生命保険等)を資産の1項目に挙げ、契約者貸付があれば貸付残高を引くとしていました。東京地裁の現行のページには、契約者貸付の引き方の記載はありません。現金以外の財産は項目ごとに合計して20万円以上かで判断するので、複数の保険の返戻金は足し合わせて見ます。
  • 松江地方裁判所は、管財事件では破産者が加入している保険はすべて解約される、同時廃止では管財人を選ばず手続を終えると説明しています。

保険が1本で返戻金が20万円を下回るなら、ほかの財産しだいで同時廃止になりえます。複数に入っていて返戻金の合計が20万円を超えるなら、管財事件に近づきます。基準は裁判所ごとに違い、運用も改められることがあります。申立先の裁判所の最新の取扱いを、依頼先に確かめてください。

管財事件でも保険を残す道:自由財産の拡張と介入権

管財事件になって保険が換価の対象になるとき、残す方法が2つあります。

1. 自由財産の拡張(破産法34条4項) 裁判所は、開始決定から決定の確定後1か月を過ぎる日までの間、本人の生活の状況、持っていた財産の種類と額、収入を得る見込みなどを考えて、破産財団に属しない財産の範囲を広げられます。法律が考慮する材料に挙げているのは、生活の状況と収入の見込みです。保険が家族の生活に欠かせない事情(扶養する家族、持病など)があれば、依頼先に伝えて、裁判所への説明に使ってもらいます。認められるかは、事案ごとの判断です。

2. 保険法60条の介入権 管財人など契約者以外の人が死亡保険契約を解除するとき、解除は保険会社が通知を受けた時から1か月たった日に効力を生じます(保険法60条1項)。この1か月の間に、保険金受取人(契約者である人を除き、契約者や被保険者の親族、または被保険者本人に限る)が、契約者の同意を得て、解除されたとすれば保険会社が支払うはずの金額(解約返戻金に当たる額)を管財人などに支払い、保険会社に通知すれば、解除は効力を生じません(同条2項)。破産手続でも、受取人が払ったときは、保険会社が解除による金銭を支払ったものとみなされます(同条3項)。

つまり、家族の受取人が返戻金に当たる額を自分で用意できれば、保険を解約させずに続けられる道があります。ただし、対象は保険料積立金のある死亡保険契約に限られます。用意するお金の額と時期は、事案ごとに変わるので、依頼先を通じて管財人と相談します。

家族名義の保険・学資保険の見方

保険は、名義ではなく、契約者がだれかで見ます。

契約者 被保険者 解約返戻金を数えるのはだれの手続か
自分 自分 自分の財産
自分 子(学資保険など) 契約者である自分の財産
配偶者 自分 配偶者の契約で、自分の財産ではない
自分 自分、受取人は家族 契約者である自分の財産(受取人が家族でも変わらない)

学資保険は、子どもの名前の保険のように感じられますが、契約者が親なら、解約返戻金を受け取る権利は親にあります。親が破産すれば、学資保険の返戻金も財産として数えられます。

ただし、名義だけで決まらないこともあります。松江地方裁判所は、実質的に破産者の財産であれば、名義が他人でも換価の対象になりうると説明しています。保険料を実際に払ってきたのが自分で、契約者の欄だけ家族にしてある場合は、実質が見られるおそれがあります。申立ての直前に契約者を変えたり、受取人や被保険者を動かしたりすることは、財産を動かす行為として問題にされるので、先に依頼先へ相談してください。

申立ての前にそろえること・してはいけないこと

  1. 保険の一覧を作る:会社名、証券番号、契約者、被保険者、受取人、月々の保険料。共済も含めます。
  2. 解約返戻金の額を調べる:保険会社に連絡して、いま解約したときの返戻金と、契約者貸付の残高を調べます。
  3. 過去2年の解約を書き出す:松江地方裁判所の記入要領は、申立て前2年以内に保険を解約している場合、その使途も報告するよう求めています。
  4. 保険を解約して返済に回さない:解約金を一部の債権者にだけ返す、知人に渡すといった行為は、特定の債権者を有利に扱う行為として免責不許可事由になりえます(破産法252条1項3号)。財産を隠したり、価値を減らしたりする目的の処分も同様です(同項1号)。

保険以外の財産の扱いは自己破産したら何を失う?手元に残せる財産と残せない財産にまとめています。同時廃止と管財事件の分かれ目は自己破産の同時廃止と管財事件の違いで詳しく扱っています。配偶者や子どもの保険への影響は自己破産の家族への影響は?配偶者・子どもの生活と信用情報も読んでください。

よくある質問

Q. 掛け捨ての医療保険や定期保険も、解約になりますか?

解約返戻金がほとんど出ない契約は、解約しても配当に回るお金が小さいので、財産として数えられる額も小さくなります。同時廃止なら保険は解約されません。管財事件では、続けられるかを管財人と契約の内容を見て決めます。どちらの場合も、加入している保険はすべて申立書に書いて、返戻金の有無を保険会社で調べておきます。

Q. 保険会社から契約者貸付を受けています。返戻金はどう数えますか?

水戸地方裁判所の平成31年4月1日実施の例は、保険会社から契約者貸付を受けている場合は、貸付残高を引いた額で解約返戻金を見るとしています。返戻金が30万円で貸付が20万円なら、財産として数える額は10万円です(筆者の計算)。ほかの裁判所の運用は違うことがあるので、申立先の扱いを依頼先に聞いてください。

Q. 子どもの学資保険は、取り上げられますか?

契約者がだれになっているかで決まります。契約者が自分なら、被保険者が子どもでも、解約返戻金は契約者である自分の財産として数えます。契約者が配偶者なら、配偶者の契約です。保険料を実際に出しているのがだれかも見られるので、証券と通帳の引き落としを並べて依頼先に見せてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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