自己破産 / Q&A

自己破産しても年金はもらえる?受給中と受給前・個人年金の扱い

この記事のもくじ
  1. 公的年金の受給権は、差押禁止の財産
  2. 例外:税金・国保料などの滞納があるとき
  3. 口座に入った年金と、預貯金としての扱い
  4. 個人年金保険と企業年金は、公的年金と別に考える
  5. 年金で暮らす人が、手続の前にしておくこと

自己破産をしても、公的年金を受け取る権利そのものは、手続で取り上げられません。国民年金法24条と厚生年金保険法41条が、年金など給付を受ける権利は差し押さえられないと定め、破産法34条3項2号は、差し押さえることができない財産を破産財団に含めないとしているからです。つまり、受給中の年金も、これから受け取る年金も、破産の手続で債権者に配当される財産にはなりません。例外と注意点は、税金などの滞納、口座に入ったあとの預金、民間の個人年金保険の3つです。

公的年金の受給権は、差押禁止の財産

条文の中身を、年金の種類ごとに見ます。

  • 国民年金法24条:給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、差し押さえることができません。老齢基礎年金や付加年金を国税滞納処分で差し押さえる場合だけが例外です。
  • 厚生年金保険法41条:保険給付を受ける権利は、差し押さえることができません。老齢厚生年金を国税滞納処分で差し押さえる場合だけが例外です。
  • 破産法34条3項2号:差し押さえることができない財産は、破産財団に属しません。

借金の取立てで差し押さえられないものが、破産の手続でも取り上げられない、という並びです。老齢年金のほか、障害や遺族の給付も、これらの条文が定める「給付を受ける権利」の保護の対象です。

例外:税金・国保料などの滞納があるとき

差押禁止には、**国税滞納処分(その例による処分を含む)**という例外があります。国税徴収法77条は、社会保険制度にもとづく老齢年金や退職年金を「給料等とみなして」差押禁止の範囲を決めます。年金が全額守られるのではなく、給料と同じ限度を残して差し押さえられうる、という意味です。

さらに、税金や国民年金保険料の滞納は、自己破産をしても免責されません(破産法253条1項1号)。国民年金法96条4項は、保険料の滞納について国税滞納処分の例で処分できると定めていて、破産法のいう「租税等の請求権」に含まれます。国民健康保険料も、実務では免責されない側に入れて考え、個別の請求が当たるかは、納付通知書を依頼先に見せて確かめます(自己破産しても払う必要がある支払い)。年金から税金などを差し押さえられている人は、自己破産だけでは止まりません。年金の種類ごとの扱いを、早見表にまとめます。

早見表:年金の種類ごとの扱い
年金・お金の種類 借金の取立て・破産での扱い 注意すること
公的年金(受給中)の受給権 差し押さえられない。破産財団に属しない 税金などの滞納処分は別
公的年金(受給前)の将来の権利 同じ「給付を受ける権利」で、取り上げられない 保険料の滞納は免責されない
口座に入った年金(預金になったもの) 預貯金として申立書に書く。扱いは裁判所で差がある 年金が入る口座だと依頼先に伝える
民間の個人年金保険(受給前) 解約返戻金が財産として数えられる 評価の方法は裁判所ごと
企業年金・退職年金(受給中) 給料と同じく4分の3は差し押さえない(民事執行法152条) 一時金は4分の3の扱い(同条2項)
年金担保融資の借入れ 別除権付きの債権として債権者一覧表に載せる 契約書を依頼先に見せる

口座に入った年金と、預貯金としての扱い

条文が守っているのは、年金を「受ける権利」です。年金が口座に振り込まれたあとの残高は、形式上は預金として扱われます。松江地方裁判所の記入要領は、財産目録に、残高の有無にかかわらず、開設している口座をすべて書くよう求めています。水戸地方裁判所の平成31年4月1日実施の例は、預貯金の合計が20万円以上かどうかを、同時廃止か管財事件かを分ける項目の1つにしていました。東京地裁の現行の「よくある質問」も、預貯金など20万円以上の換価対象資産がある場合を、原則として管財事件に挙げています。

そこで、年金だけで暮らす人は、次の点を依頼先に伝えます。

  1. 年金が入る口座がどれか、毎月いくら入るか
  2. 口座の残高のうち、年金が振り込まれてからまだ使っていない分がいくらか
  3. 税金や保険料の滞納がないか、差し押さえの通知が届いていないか

口座にある年金の扱いは、裁判所や管財人によって運用が分かれることがあります。申立てを予定する裁判所の公表資料と、依頼先の説明で、自分の口座がどう扱われるかを具体的に聞いてください。

個人年金保険と企業年金は、公的年金と別に考える

民間の個人年金保険は、公的年金と違って保険の契約です。年金を受け取り始める前の契約は、解約したときに戻る解約返戻金が財産として数えられます。松江地方裁判所の記入要領は、契約者になっている保険の有無と、解約返戻金の額を財産目録に書くよう求めています。中身は自己破産で生命保険は解約になる?で詳しく扱っています。

すでに受け取り始めた企業年金などは、毎月の継続的な給付です。民事執行法152条1項は、給料や退職年金、生計を維持するために国や自治体以外から支給される継続的な給付について、支払期に受ける給付の4分の3を差し押さえてはならないと定めています。受給中の民間の個人年金が、この「継続的な給付」にあたるかは、契約の内容と裁判所の判断によります。退職手当や、その性質を持つ一時金も、4分の3が差押禁止です(同条2項)。

年金で暮らす人が、手続の前にしておくこと

年金収入が中心の人は、準備の中身が現役世代とは少し違います。

  • 年金額と振込先を書き出す:年金振込通知書や通帳の入金で、毎月の額と日を確かめます。
  • 滞納の有無を調べる:国民健康保険料、国民年金保険料、住民税、固定資産税の滞納がないか。免責されない支払いは自己破産しても払う必要がある支払いで確認できます。
  • 生活保護を受けているか:生活保護法58条は、すでに給与を受けた保護金品と、これを受ける権利を差し押さえられないと定めています。受給中の人の手続は生活保護を受けていても自己破産できる?にあります。
  • 年金を返済に回せと迫られているとき:取立ての場面で何ができて何ができないかは、年金生活で取り立てを受けたらに整理しています。

破産で失うものと残るものの全体は自己破産したら何を失う?手元に残せる財産と残せない財産で一覧にします。年金は、借金の返済に使われる財産ではなく、手続のあとの暮らしを支える収入として残ります。

よくある質問

Q. 年金が入る口座を、借金のある銀行から別の銀行に変えたほうがよいですか?

変える前に、依頼先の弁護士・司法書士に相談してください。申立ての直前に口座や財産を動かすと、財産の隠匿や特定の債権者への優遇とみられるおそれがあります。年金の振込先の変更は、自分で動くのではなく、手続の中でどの時期にどうするかを決めてもらいます。口座の扱いは[自己破産で口座凍結される?凍結の時期と給料口座の変え方](/hasan-kouza/)で説明しています。

Q. 年金だけで暮らしていても、自己破産はできますか?

収入が年金だけの人も、破産の申立てはできます。破産の開始原因は、支払能力がなく、返済期限の来た債務を一般的・継続的に返せない状態(支払不能)で、収入の種類では決まりません。申立書には収入として年金の額を書き、家計の収支と合わせて裁判所が判断します。費用の準備や法テラスの使い方は[自己破産の費用は法テラスで立て替えできる?](/hasan-houterasu/)で確認してください。

Q. すでに年金を担保に借りているお金(年金担保融資)は、どうなりますか?

松江地方裁判所の記入要領は、福祉医療機構の年金担保融資を、年金の受給権を担保にする別除権付きの債権と位置づけ、住宅ローンと同じく債権者一覧表に載せるよう求めています。担保の扱いは通常の借金と違うため、契約書を持って依頼先に見せてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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