生活保護を受けていても自己破産できる?費用の扱いと流れ
この記事のもくじ
生活保護を受けていても、自己破産の手続きは使えます。破産手続の開始の原因は「支払不能」で(破産法15条)、受給しているかどうかは条文の要件に書かれていません。裁判所の申立書には、生活保護の受給の有無を書く欄があり(松江地方裁判所の案内で確認)、受給中の申立てを前提にした書式です。費用は、法テラスの民事法律扶助で弁護士費用を立て替えてもらい、受給者には返すことの猶予や免除が認められる場合があります。管財事件になる場合の費用と、ケースワーカーへの伝え方を、この記事で整理します。
受給中でも自己破産の手続きは使える
東京都西多摩福祉事務所の「生活保護のてびき」(令和5年7月作成)は、「借金があっても生活保護を受けられますか」という問いに「受けられます」と答え、保護費で借金を返済することは困難なので、任意整理や自己破産で債務を整理することをすすめています。厚生労働省の研修資料にも、生活保護を受給している人が法テラスを利用すると、相談が無料で、自己破産の手続費用も自己負担がない(償還の猶予・免除)という例が載っています。
ただし、自己破産が向くかどうかは、借金の額、財産、収入の見込みで変わります。任意整理や個人再生などとの比べ方は、生活保護の人向けに生活保護を受けながら債務整理する方法|法テラスの費用の扱いでまとめています。この記事は、自己破産を選んだ場合の費用と進め方に絞ります。
費用は法テラスの立替えと、償還の猶予・免除
自己破産を弁護士に頼む費用は、法テラスの民事法律扶助で立て替えてもらえます。法務省の資料にある仕組みは次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法律相談 | 費用負担なし(無料) |
| 弁護士費用など | 法テラスが立て替え、あとで分割して返す(原則) |
| 返す時期と額 | 援助の開始決定の後、事件の進行中から。原則3年以内に払い終える金額で、月々5,000円から1万円程度 |
| 生活保護を受給している人など | 返すことの猶予や免除が認められる場合がある(事件の相手方などから経済的な利益を得た場合は除く) |
| 猶予・免除の手続き | どちらも申請して審査を受ける形で、受給の状況が確認される |
厚生労働省の研修資料にある法テラス東京の自己破産の例(平成30年の日程を使った説明)では、援助の申込みから決定まで通常2週間ほどかかること、生活保護を受給している間は事件の終了まで返済を猶予できること、事件の終了後も受給が続いている場合は、申請により猶予されていた費用が免除になる可能性があることが説明されています。免除の判断は個別なので、受給の状況が変わったとき(就労して収入が増えたなど)の扱いは、申込みのときに弁護士かサポートダイヤルに確かめます。窓口の番号と受付時間は借金の公的な相談窓口の早見表にあります。立替えの条件は自己破産の費用は法テラスで立て替えできる?条件と流れで扱います。
管財事件になったときの費用:東京地方裁判所の例
財産が少なければ同時廃止で、裁判所に納める予納金は小さく済みます。管財事件になると、破産管財人の費用などの引継予納金が必要です。東京地方裁判所民事第20部が破産管財人に向けて出した令和8年1月の文書によると、平成22年4月1日以降に法テラスの援助開始決定がされた生活保護受給者の破産事件のうち、管財人が選ばれる事件は、次の費用を法テラスが申立人に代わって立て替える制度があります。
- 引継予納金(管財人費用)20万円
- 官報公告費用(令和8年以降の申立ては2万397円)
- 印紙・郵券の費用(6,450円)
令和8年以降の申立てでは、合計226,847円です(筆者の足し算。文書は同じ内容を※で示しています)。引継予納金は、法テラスから管財人の口座に直接振り込まれ、本人が現金で用意する形ではありません。
返す義務も文書で説明されています。管財人が集めた財産(財団収集額)が40万円以下の場合は、集めた額から事務費などを引いた額が管財人報酬になります。40万円を超える財団ができた場合は、管財人報酬に次いで、法テラスの立替金が財団から返されます。文書の例では、財団収集額が50万円、管財人報酬が40万円なら、差し引いた10万円を法テラスに返します。生活保護の受給者が、手元の保護費から返す形ではありません。
これは東京地方裁判所の運用を管財人に知らせた文書です。ほかの裁判所の扱いは、申立てを担当する弁護士か、申立先の裁判所の案内で確かめます。予納金の仕組みは自己破産の予納金とは?金額の決まり方と納める時期・分納の確認にあります。
保護費は自己破産でどう扱われるか
生活保護法58条は、被保護者が、すでに受けた保護金品とこれを受ける権利を差し押さえられることがないと定めています。破産法34条3項2号は、差し押さえることができない財産は破産財団に属しないと定めています。つまり、保護費は債権者への配当のために換価される財産の対象にはなりにくい扱いです。
ただし、保護費の残りを貯めた預貯金や、受給前から持っていた財産が、どう扱われるかは別の問題です。預貯金や保険、車などは、裁判所ごとの運用で、手元に残せる範囲が決まります。何が残せるかは自己破産したら何を失う?手元に残せる財産と残せない財産で扱います。申立ての前に、弁護士に財産を正直に伝えて見通しを聞きます。
ケースワーカー(福祉事務所)への伝え方
生活保護法61条は、被保護者が、収入、支出その他生計の状況に変動があったときは、すみやかに福祉事務所長などに届け出なければならないと定めています。借金の整理を始めると、返済や費用の払い方で支出の状況が変わります。始める前に担当のケースワーカーに伝えておくと、あとで食い違いが起きません。
伝えるときに持っていくものは次のとおりです。
- 借入先の一覧(会社名、残高、延滞の有無)
- 届いた督促状や裁判所の書類
- 法テラスや弁護士に相談した日と、立替えを使う予定かどうか
文例(ケースワーカーへ):「借金が○社あり、返済ができなくなっています。法テラスで弁護士に相談して、自己破産を考えています。費用は法テラスの立替えを使う予定です。保護費の使い方で、気をつけることがあれば教えてください。」
- 借入先と残高の一覧を作る
- 担当のケースワーカーに借金のことを伝える
- 法テラスのサポートダイヤルで、無料相談と立替えの条件を聞く
- 弁護士に相談し、法テラスの援助を申し込む(決定までの期間は、法テラス東京の例で通常2週間ほど)
- 弁護士が受任通知を出し、裁判所へ申立てをする
- 同時廃止か管財事件かが決まり、管財事件なら引継予納金などを法テラスが立て替える
- 免責の許可を受ける。猶予された立替金の免除は、受給状況を見て申請する
受給者に関わるデメリット
自己破産の一般的なデメリットは自己破産のデメリット一覧|失うもの・制限・家族への影響にあります。生活保護を受けている人が、特に気をつける点は次の表です。
| 点 | 内容 |
|---|---|
| 転居の制限 | 破産者は、手続きが終わるまで、裁判所の許可なしに居住地を離れられません(破産法37条)。実際に問題になりやすいのは管財事件の間です |
| 郵便物 | 管財事件では、破産者あての郵便物が破産管財人に配達されることがあります(同81条) |
| 手元の財産 | 預貯金や保険などは、裁判所の運用で残せる範囲が決まります |
| 税金の滞納 | 租税等の請求権は、免責されない債権にあたります(同253条1項1号)。国民健康保険料などがどこまで含まれるかは、弁護士に聞きます |
転居を考える場合は、福祉事務所と管財人の両方に、先に相談します。
よくある質問
Q. 生活保護を受けていると、法テラスの費用は自動的に免除されますか?
自動ではありません。法務省の資料では、立替金は分割して返すのが原則で、生活保護を受給している人などには、返すことの猶予や免除が認められる場合があるとされています。猶予や免除は申請して審査を受ける形です。援助を申し込むとき、サポートダイヤルか弁護士に、猶予と免除の申請の流れを聞いてください。
Q. 生活保護費を、借金の返済にあてることはできますか?
避けてください。東京都西多摩福祉事務所の「生活保護のてびき」は、借金があっても生活保護を受けられるが、保護費で借金を返すのは難しいので、任意整理や自己破産で債務を整理することをすすめる、と書いています。返済についての扱いは自治体で細かい運用が違うため、福祉事務所に先に聞いてください。
出典・参考にした公的な情報
- 生活保護のてびき(令和5年7月作成)(東京都西多摩福祉事務所)
- 民事法律扶助の諸課題について(資料2)(法務省)
- 利用できる制度および多重・過剰債務の解決方法の理解(厚生労働省(家計相談支援事業従事者研修資料))
- 法テラスによる引継予納金(管財人費用)等の立替えについて(令和8年1月)(東京地方裁判所 民事第20部)
- 生活保護法(第58条・第61条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法(第15条・第34条・第37条・第81条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産・免責手続のあらまし(破産申立書の作成について)(松江地方裁判所)
- 民事事件Q&A(破産・個人再生)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。