督促・取り立て・差し押さえ / Q&A

年金生活で取り立てを受けたら|差し押さえできない年金と相談先

この記事のもくじ
  1. 年金を受ける権利は、差し押さえられない
  2. 口座に入った年金:差押えが来たときの動き
  3. 届いた請求の差出人で、扱いが変わる
  4. 年金生活の人が使える相談先と、債務整理という選択肢

年金で暮らしていても、借金の督促や取り立ては届きます。先に結論を言うと、**年金を「受ける権利」は、貸金業者など民間の債権者の差押えの対象になりません。**国民年金法24条と厚生年金保険法41条が、給付を受ける権利を差し押さえることができないと定めているからです。ただし、口座に振り込まれたあとの預金は別の扱いになり、税金や保険料の滞納には例外があります。この記事では、年金のどこが守られ、どこから先が守られないかと、年金生活の人が使える相談先を整理します。

年金を受ける権利は、差し押さえられない

条文の内容を、年金の種類ごとに表にします。

早見表:年金と差押えの関係
対象 差押えできるか 根拠・注意
年金を受ける権利(老齢・障害・遺族の給付) できない 国民年金法24条、厚生年金保険法41条。譲り渡すことも、担保に供することもできない
老齢基礎年金・付加年金・老齢厚生年金を、国税滞納処分で差し押さえる場合 例外としてできる 24条・41条のただし書き。借金の取り立てではなく、税金などの滞納処分の話
口座に振り込まれたあとの年金 預金として差し押さえられることがある 裁判所に範囲変更を申し立てて対応する(民事執行法153条)
生活保護費、児童手当 受ける権利は差押えできない 生活保護法58条、児童手当法15条

ここで押さえたいのは、貸金業者が年金を差し押さえるには、電話や督促状では足りないことです。強制執行は、確定判決や仮執行宣言付支払督促などの債務名義がないとできません(民事執行法22条)。つまり、裁判の判決や仮執行宣言付きの支払督促などで債務名義を取られてからでないと、口座の差押えまでは進みません。督促状や取り立ての電話が来た段階では、まだ差押えではありません。届いた書類が支払督促なら、期限があるため、支払督促が届いたら|異議申立ての期限と放置した場合の流れを先に読んでください。

年金を担保に貸す、通帳やキャッシュカードを預けるよう求めるといった業者の言い分も、条文の側から見ておく必要があります。24条は、年金を受ける権利を担保に供することも禁じています。そうした話を持ちかけられたら、その場で応じず、警察の相談窓口や消費生活センターに相談します。ヤミ金の可能性は闇金の被害は警察に相談できる?連絡が来たときの対応と相談先で確かめられます。

口座に入った年金:差押えが来たときの動き

年金が口座に振り込まれたあとは、形式上は預金です。差押命令が銀行に届くと、その時点で効力が生じます(民事執行法145条)。差押命令は、債務者の言い分を聞かずに出されるため、事前の通知はありません。債権者が取り立てられるのは、債務者に差押命令が送達された日から1週間たったあとです(155条1項)。

裁判所の民事事件Q&Aは、年金の振込口座が差し押さえられて生活が成り立たなくなる場合などに、差押えの範囲を変えてもらう申立て(差押範囲変更の申立て)ができるとしています。順番は次のとおりです。

  1. 差押命令の書面が届いたら、日付と裁判所名、事件番号を確かめる
  2. 債権者が銀行から支払を受ける前に、差押命令を出した裁判所へ申し立てる(受けたあとでは間に合わない)
  3. 申立書、陳述書、家計表(申立前2か月分)、通帳の写し(過去1年分)、課税(非課税)証明書、世帯全員の住民票などを、裁判所の案内で確かめてそろえる
  4. 判断が出るまでの口座の扱いを、弁護士・認定司法書士や裁判所に確かめる(裁判所は、申立てがあると、効力が生じるまでの間、銀行に支払の禁止を命じることがある。153条3項)

申立てがあっても、認められるとは限りません。認められても、借金そのものは減りません。口座の差押えが来る前に、債務名義の有無を確かめ、早めに窓口に相談するのが先です。口座差押えの流れは口座の差し押さえはいつ来る?預金が止まる仕組みと生活費の守り方で、差押えが禁止される財産の一覧は差し押さえできない財産の一覧|生活保護・年金・生活に必要な物で説明します。

届いた請求の差出人で、扱いが変わる

「年金から返せ」「督促状が来た」といっても、差出人によって仕組みが違います。

差出人 性質 年金への影響 次にすること
貸金業者・カード会社 民間の借金の請求 受ける権利は差押えできない。債務名義がなければ差押えもできない 取り立ての決まりを確かめ、窓口や弁護士・認定司法書士に相談する
年金事務所 国民年金保険料の督促(国民年金法96条) 滞納処分が進むと、老齢基礎年金などに例外が及ぶことがある 免除・納付猶予を窓口に相談する(国民年金が払えないときの免除と納付猶予|申請の流れと将来への影響)
市区町村・税務署 税金・国保料の滞納処分 裁判なしで進み、国税滞納処分の例外が関わる 納税や納付の猶予・分割を窓口に相談する(税金を滞納しそうなとき|納税の猶予の条件と申請・分割の考え方)
「年金を担保に貸す」「年金を預けろ」という業者 ヤミ金の疑い 担保にすることは条文上できない(国民年金法24条) 応じず、警察の相談窓口・消費生活センターへ

貸金業者の取り立てには、時間帯、勤務先、家族、受任通知の後といった決まりがあります。取り立てそのものは、取り立てが怖いとき|法律で禁止されている取立てと連絡先の一覧にまとめます。

年金生活の人が使える相談先と、債務整理という選択肢

年金で暮らす人が、返せない借金を相談できる窓口は、1つではありません。

  • 財務局の多重債務相談窓口:借金の相談と、専門家への橋渡し。業者との交渉の代理はしません
  • 消費生活センター(消費者ホットライン188):契約や業者への対応の相談。ヤミ金の疑いがあるときにも使います
  • 法テラス:収入や資産が一定以下などの条件を満たすと、無料の相談や費用の立替えを使えます。条件は窓口で確かめます(借金が返せないとき法テラスでできること|無料相談と費用立替の流れ)
  • 地域包括支援センター:市町村が設置する、高齢者の総合相談や権利擁護などを行う窓口です(厚生労働省)
  • 自立相談支援機関:生活全般と家計の相談先。家計の見直しを手伝う制度もあります

番号と受付時間は、借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方でまとめています。

返済の見通しが立たないときは、債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)という選択肢もあります。自己破産をしても、公的年金を受ける権利は破産の手続で取り上げられません。詳しくは自己破産しても年金はもらえる?受給中と受給前・個人年金の扱いで説明しています。

事務所に依頼するなら、選ぶときは次の点を確かめます。依頼先が弁護士か認定司法書士か、受任する資格者本人と面談できるか、費用の総額を書面で出してもらえるか。認定司法書士が裁判外で代理できるのは、1社(個別の債権)ごとに140万円以下のときです。違いは債務整理は弁護士と司法書士どっち?140万円の線と選ぶときの確認点で説明しています。取り立てを止められる範囲は、取り立てを止めたいとき|弁護士・司法書士に依頼した後の流れで確かめてください。

よくある質問

Q. 年金が入る口座を差し押さえられたら、年金は取り戻せませんか?

差押えの範囲を変えてもらう申立て(民事執行法153条)ができますが、認められるとは限りません。債権者が銀行から支払を受ける前に、差押命令を出した裁判所へ申し立てる必要があります。認められても債務は減りません。口座が止まったら、すぐ弁護士・認定司法書士や法テラスなどに相談します。

Q. 年金事務所から督促状が届きました。借金の取り立てと同じですか?

別の仕組みです。国民年金の保険料を滞納すると、厚生労働大臣は期限を指定して督促でき、督促状の期限は発する日から10日以上先になります(国民年金法96条)。期限までに払わないと、国税滞納処分の例による処分が行われることがあります。払えないときは、免除や納付猶予を年金事務所や市区町村の窓口に相談します。

Q. 「年金を担保に貸す」と言われたら、どうすればよいですか?

国民年金法24条は、給付を受ける権利を担保に供することができないと定めています。年金証書や通帳、キャッシュカードを預けるよう求められても応じず、その場で決めません。警察相談専用電話の#9110か、消費生活センターに相談してください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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