差し押さえできない財産の一覧|生活保護・年金・生活に必要な物
この記事のもくじ
差し押さえできない財産は、法律ごとにまとまって決まっています。生活保護費、年金、児童手当などの給付は、受ける権利そのものが差押禁止です。給料は4分の3(月33万円が上限)、衣服や家具などの生活用品、1か月分の食料・燃料、66万円までの現金も差押禁止です。ただし、口座に振り込まれた後の預金や、税金の滞納による差押えでは扱いが変わります。この記事では、借金の差押え(民事執行法)を中心に、差押禁止の財産を一覧にし、税金の滞納との違いを表で示します。口座に入った後の扱いは口座の差し押さえはいつ来る?預金が止まる仕組みと生活費の守り方に譲ります。
受ける権利が差押禁止の給付:生活保護・年金・手当
次の給付は、法律で、受ける権利を譲渡・担保・差押えにすることが禁じられています。
| 給付 | 根拠 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 生活保護費 | 生活保護法58条 | すでに受けた保護金品と、受ける権利の両方が対象 |
| 老齢基礎年金・付加年金 | 国民年金法24条 | 国税の滞納処分(その例による処分を含む)で差し押さえる場合は除く |
| 老齢厚生年金 | 厚生年金保険法41条1項 | 同じく国税の滞納処分は除く |
| 障害年金・遺族年金 | 国民年金法24条・厚生年金保険法41条 | 条文の例外は、老齢基礎年金・付加年金・老齢厚生年金だけ |
| 児童手当 | 児童手当法15条 | 受ける権利の差押禁止 |
| 児童扶養手当 | 児童扶養手当法24条 | 同上 |
| 雇用保険の失業等給付 | 雇用保険法11条 | 同上 |
| 労災保険の保険給付 | 労働者災害補償保険法12条の5第2項 | 退職しても権利は変わらない |
| 健康保険の給付(傷病手当金など) | 健康保険法61条 | 国民健康保険は国民健康保険法67条 |
| 介護保険の給付 | 介護保険法25条 | 同上 |
「生活保護」で調べる人が多い点を補います。生活保護法58条は、被保護者は、すでに受けた保護金品とそれを受ける権利を差し押さえられないと書いています。それでも、預金に差押命令が出てしまう場面があるため、裁判所は、生活保護費や年金の振込口座が差し押さえられて生活が成り立たなくなる場合を、差押範囲の変更の例に挙げています。申立ては、債権者が銀行から支払を受ける前に、命令を出した裁判所へ行います。受給中なら、担当の福祉事務所にも命令の写しを見せて相談します。
給料・ボーナス・退職金:4分の3は差し押さえられない
給料、賃金、俸給、退職年金、賞与は、支払期に受けるべき給付の4分の3が差押禁止です。その額が政令の額を超えるときは、政令の額が禁止の範囲です(民事執行法152条1項)。毎月払いなら、政令の額は33万円です(施行令2条)。退職手当も4分の3が禁止です(民事執行法152条2項)。養育費などの扶養義務に係る債権で差し押さえるときだけは、禁止は2分の1に下がります(同条3項)。
裁判所は、給料差押えで差し押さえられるのは**給料の4分の1(月額が44万円を超える場合は33万円を除いた金額)**と案内しています。この「給料」は、所得税・住民税・社会保険料を引いた後の額を基準にするのが一般的な扱いです。届いた差押命令の差押債権目録に、計算の基準がどう書かれているかを確かめます。
| 税・社会保険料を引いた後の額 | 差押えの対象 | 手元に残る額 |
|---|---|---|
| 24万円 | 6万円 | 18万円 |
| 40万円 | 10万円 | 30万円 |
| 44万円 | 11万円 | 33万円 |
| 50万円 | 17万円 | 33万円 |
筆者の計算です。44万円が境目で、それを超えると、手元に残るのは一律33万円になります。計算の詳しい説明は給料の差し押さえはいくらまで?4分の1の決まりと会社への通知にあります。
家財・現金などの動産:差押禁止の14項目
家財や現金は、動産として執行官が差し押さえます。民事執行法131条は、差し押さえてはならない動産を14項目挙げています。
| 号 | 差押禁止の動産 |
|---|---|
| 1 | 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳、建具 |
| 2 | 1か月間の生活に必要な食料と燃料 |
| 3 | 標準的な世帯の2か月間の必要生計費を勘案した額の現金(施行令1条で66万円) |
| 4・5 | 農業・漁業を自分の労力で営む人の、仕事に欠かせない器具・肥料・家畜・漁具など |
| 6 | 技術者、職人などが、仕事に欠くことができない器具(商品を除く) |
| 7 | 実印など、職業や生活に欠かせない印 |
| 8 | 仏像、位牌など、礼拝や祭祀に欠かせない物 |
| 9 | 系譜、日記、商業帳簿など |
| 10 | 勲章など名誉を表す物 |
| 11 | 学校などでの学習に必要な書類と器具 |
| 12 | まだ公表していない発明・著作に係る物 |
| 13 | 義手、義足など身体の補足に使う物 |
| 14 | 法令で設けなければならない消防用の機械、避難器具など |
ゲーム機、スマートフォン、パソコン、テレビについて、条文は個別に書いていません。生活に欠くことができない家具・台所用具(1号)、仕事に欠かせない器具(6号)、学習に必要な器具(11号)のどれに当たるかで決まります。たとえば、仕事に使うパソコンは6号、学校の学習で使う機器は11号の考え方に近く、趣味で遊ぶだけのゲーム機は、どれにも当たらないと考えられます。ただし、実際に差し押さえるかどうかは、執行官が現場で判断します。
もう一つの歯止めが、129条です。差し押さえる動産の売得金が手続費用を超える見込みがないときは、執行官は差押えをしてはいけません。売っても手続費用に届かない見込みの物は、差し押さえられません。
132条は、事情によって範囲を変えられる仕組みです。債務者と債権者の生活の状況などを考えて、執行裁判所は差押えの取消しを命じることも、差押禁止の動産の差押えを許すこともできます。
税金・保険料の滞納では禁止の範囲が違う
税金、国民健康保険料、国民年金保険料などの滞納処分は、国税徴収法(または地方税法がその例による)で、差押禁止の範囲が決まります。借金の差押えと、そのまま重ねて考えないでください。
| 項目 | 借金の差押え(民事執行法) | 税金などの滞納処分(国税徴収法) |
|---|---|---|
| 食料・燃料 | 1か月分(131条2号) | 3か月分(75条2号) |
| 現金 | 66万円まで(131条3号) | 75条の項目に、現金の枠はない |
| 給料 | 税・社会保険料を引いた残額の4分の3、上限33万円 | 税・社会保険料に加え、月10万7千円(生計を一にする親族1人につき4万8千円を加算)と、残りの20%を差し押さえられない(76条、施行令34条) |
| 老齢年金 | 受ける権利は差押禁止 | 給料と同じ限度で差押えの対象(国民年金法24条ただし書、国税徴収法77条) |
同じ給料でも、税金の滞納処分では借金の差押えより手元に残る額が少なくなることがあります。月給30万円の計算例は給料の差し押さえはいくらまで?4分の1の決まりと会社への通知に置いています。税金の差押えの流れは税金の滞納で差し押さえはいつ?督促状から差押えまでの流れで扱っています。
差押禁止の財産が差し押さえられたとき
差押禁止の財産に差押えが及ぶのは、次のような場面です。
- 年金や生活保護費の振込口座に、預金として差押命令が届いた
- 給料の差押えで、残る額では生活が成り立たない額が差押えの範囲になった
- 動産の差押えで、執行官が生活用品や仕事の道具を押さえた
対応は、差押えを出した裁判所(動産は執行官)に事情を書面で伝えることです。預金や給料の場合は、民事執行法153条の差押範囲変更の申立てがあります。動産の場合は、132条の申立てです。申立ての書類のそろえ方は差し押さえを解除するには?取消しや範囲変更の申立てと債務整理で扱います。
自己破産をしたときに手元に残せる財産は、差押禁止とは別の基準です。くわしくは自己破産で差し押さえが家に来る?持っていかれる物と残る物を読んでください。届いた命令の読み方は差押命令とは?裁判所から届く書類の読み方と次にすることにあります。
よくある質問
Q. 生活保護費は、口座に入っていても差し押さえられませんか?
生活保護法58条は、すでに受けた保護金品も、受ける権利も、差し押さえられないと定めています。ただ、口座の預金に差押命令が届く場面があり、裁判所は生活保護費の振込口座の差押えを、差押範囲の変更の対象の例に挙げています。命令が届いたら、債権者が取り立てる前に申し立てます。
Q. ゲーム機やパソコンは差し押さえられますか?
条文にゲーム機とは書かれていません。生活に欠かせない家具や台所用具(131条1号)、学習に必要な器具(11号)、仕事に欠かせない器具(6号)に当たるかで決まります。売れた代金が手続費用を超える見込みがない動産は、そもそも差し押さえられません(129条)。
Q. 年金は、税金を滞納していても差し押さえられませんか?
老齢基礎年金・老齢厚生年金を国税の滞納処分で差し押さえる場合は、禁止の例外です。このため、税金や国民健康保険料などの滞納では、老齢年金が給料と同じ限度で差押えの対象になります。障害年金や遺族年金は、この例外に入りません。
出典・参考にした公的な情報
- 民事執行法 第129条・第131条・第132条・第152条・第153条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事執行法施行令 第1条・第2条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 生活保護法 第58条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国民年金法 第24条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 厚生年金保険法 第41条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 児童手当法 第15条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 児童扶養手当法 第24条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 雇用保険法 第11条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働者災害補償保険法 第12条の5(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 健康保険法 第61条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 介護保険法 第25条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国民健康保険法 第67条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国税徴収法 第75条〜第77条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国税徴収法施行令 第34条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事事件Q&A(差押範囲変更(減縮)の申立てについて)(裁判所)
- 債権差押命令の書式(差押債権目録の書式一覧)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。