差押命令とは?裁判所から届く書類の読み方と次にすること
差押命令とは、債権者の申立てを受けて裁判所が出す、給料や預金などの債権を差し押さえる命令です。債務者には取立てや処分を禁じ、勤務先や銀行(第三債務者)には債務者への支払いを禁じます(民事執行法145条1項)。書類には、債権者、請求している金額、差し押さえる債権の範囲が書かれています。取立てが始まるのは債務者への送達から、預金は1週間、給料は4週間後です。その間に、書類を読み、範囲変更や話し合いなどの手を打てます。
差押命令が届く相手と時期
給料や預金などの債権執行は、執行裁判所の差押命令により開始します(同法143条)。命令は債務者と第三債務者の両方に送達されます(同法145条3項)。債務者に意見を聞かずに出されるので、命令が届く前に予告はありません。
効力が生じるのは、命令が第三債務者に送達された時です(同条5項)。債務者に届く日とずれることがあるため、「届いた日に差押えが始まった」とは限りません。
債務者あての書類には、差押えの取消しを求める申立て(範囲変更)ができる旨などの教示が付くことになっています(同条4項)。債権者が申し立てていれば、第三債務者には、差押命令の送達から2週間以内に債権の有無などを答えるよう求める書面(陳述の催告)も届きます(同法147条1項)。裁判所の書式では、給料なら雇っているか・給料はいくらか、預金なら口座があるか・残高はいくらかなどが聞かれます。
書類の読み方:欄ごとの意味と見る場所
裁判所の債権差押命令申立書の書式は、「当事者」「請求債権」「差押債権」の欄で作られ、請求債権と差押債権は別紙の目録に詳しく書かれる形です。届く命令も、同じ並びで読みます。
| 見る所 | 書いてあること | 確かめること |
|---|---|---|
| 裁判所名・事件番号 | 命令を出した地方裁判所と、事件の番号 | 範囲変更の申立てや問い合わせで使う。メモしておく |
| 債権者 | 申し立てた会社や人 | 借入先と社名が違うときは、債権が譲り渡されていないか。古い借金の請求が債権回収会社から来たらを読む |
| 債務者・第三債務者 | 自分、勤務先または銀行(支店) | 差し押さえられた口座・勤務先の特定が合っているか |
| 請求債権目録 | 債権者が請求している金額の内訳 | 元金、確定損害金・確定利息金、損害金(遅延損害金)、督促手続費用、執行費用の合計。判決や支払督促の金額と照らす |
| 差押債権目録 | 差し押さえる債権の範囲 | 預金は銀行・支店と頭書の金額、給料は4分の1などの割合 |
裁判所の請求債権目録の書式は、債務名義が判決、支払督促、和解調書・調停調書、公正証書、家事審判・家事調停調書のどれかで書き方が分かれます。支払督促用の記載例は、元金、確定損害金、確定利息金、損害金(元金に対する遅延損害金を「令和○年○月○日から令和○年○月○日まで年○パーセント」の形で書く)、督促手続費用、仮執行宣言申立費用、執行費用(本申立手数料4,000円、申立書の作成費用、差押命令正本の送達費用など)の順に並び、合計額が出ます。
差押債権目録は、預金と給料で書き方が違います。
- 預金: 「第三債務者○○銀行(○○支店扱い)に対する預金債権と、預入日から命令送達時までに生じた利息のうち、定期預金、普通預金などの順に、頭書の金額に満つるまで」と読めます。詳しくは口座の差し押さえはいつ来る?で説明しています
- 給料: 「命令送達日以降に支払期が来る給料から、所得税・住民税・社会保険料を引いた残額の4分の1(残額が月44万円を超えるときは、その残額から33万円を引いた額)」で、頭書の金額に満つるまで。1回では終わらず、毎月続きます
頭書の金額が、取立てできる上限です。債権者は、差押債権目録に書かれた額を超えて取り立てられません(裁判所Q&A)。
取立てが始まる日を数える
取立てが可能になる日は、債務者に命令が送達された日から数えます(同法155条)。
| 差押えの対象 | 取立てが可能になるまで | 根拠 |
|---|---|---|
| 預金・売掛金など | 債務者への送達から1週間 | 155条1項 |
| 給料・賞与・退職手当(養育費などの請求を含まない場合) | 債務者への送達から4週間 | 155条2項 |
| 給料の差押えで、養育費などの請求を含む場合 | 1週間 | 155条2項かっこ書 |
数え方の例です(筆者の計算)。11月2日(月)に債務者へ命令が送達された場合、民法140条により初日は数えません。預金は、翌3日から数えて1週間が11月9日(月)に満了し、取立ては早ければ翌10日(火)から可能です。給料は、4週間(28日)が11月30日(月)に満了し、取立ては12月1日(火)からです。
この日までに範囲変更の申立てなどを済ませるのが目標です。差押範囲変更は、債権者が第三債務者から支払を受ける前に申し立てる必要があります(裁判所Q&A)。
届いてからできること
- 事件番号の裁判所に連絡し、書類が本物か確かめる。 書類に書かれた電話番号ではなく、裁判所の公式サイトの「各地の裁判所の所在地・電話番号等一覧」で調べた番号に電話します。書類が本物らしく見えても、それだけで信用しません
- 請求の内訳を、手元の判決・支払督促・請求書と照らす。 金額が合わないと思えば、書面で裁判所や弁護士・司法書士に示します
- 生活費に当たる口座や給料が対象なら、範囲変更を申し立てる(同法153条)。 申立てがあれば、裁判の結果が出るまで第三債務者に支払いを禁じられます
- 債権者に連絡して、分割払いなどの話し合いを持ちかける。 合意できれば、債権者が取下書を出して手続を終えます
- 借金全体が重いなら、債務整理を考える。
債務整理で差押えが止まる時点は、破産と個人再生は裁判所の決定の時点、特定調停は裁判所の停止の判断、任意整理は止める法的な効力がありません。手続き別の表は差し押さえを解除するには?取消しや範囲変更の申立てと債務整理に置いています。
どの段階で何ができるかは借金の滞納で差し押さえになる前にできること|止める方法の選び方に、取消しの申立ての詳細は上の解除の記事にあります。給料の差押えの金額の計算は給料の差し押さえはいくらまで?4分の1の決まりと会社への通知で確かめられます。
「差押え予告」と差押命令は別のもの
「差押えを予告します」という書面や電話は、債権者や役所から来る連絡で、裁判所の差押命令ではありません。差押命令は、裁判所が出し、債務名義があることが前提です。予告にどう対応するかは差し押さえ予告の通知が届いたら|実際に差し押さえられるまでで読めます。
裁判所の書類を装った詐欺もあります。裁判所は、不審な郵便や電話で金銭を要求する手口に注意を呼びかけています。命令の事件番号を手がかりに、裁判所の代表番号へ自分でかけて確かめます。
よくある質問
Q. 差押命令が届いたら、すぐに口座や給料から引かれますか?
すぐには引かれません。債権者が取り立てられるのは、債務者への送達から預金なら1週間、給料なら4週間たってからです。ただし、差押えの効力は命令が銀行や会社に届いた時に生じているので、その部分は債務者に支払われません。
Q. 差押命令を受け取らなかったら、差押えは効かなくなりますか?
効かなくなりません。差押えの効力は、第三債務者(銀行や会社)に命令が送達された時に生じます。債務者に直接会えない場合でも、同居者への交付や差置きで送達される仕組みがあります(民事訴訟法106条)。受け取りを避けるより、中身を読んで動くほうが得です。
Q. 差押命令の内容に法律上の誤りがあると思うときは、不服を申し立てられますか?
執行抗告という手続があり、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内に、抗告状を裁判所に出します(民事執行法10条2項)。理由の書き方は難しく、期限も短いので、届いたらすぐ、弁護士や認定司法書士に書類を見せます。
出典・参考にした公的な情報
- 民事執行法 第10条・第22条・第143条・第145条・第147条・第153条・第155条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法 第101条・第106条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第140条(期間の計算)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法 第24条・第42条・第249条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事再生法 第26条・第39条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 特定調停法 第7条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 債権差押命令申立書(記載例)・請求債権目録・差押債権目録の書式(裁判所)
- 民事事件Q&A(差押範囲変更(減縮)の申立てについて/取立て・取下げについて)(裁判所)
- 裁判所や裁判所職員を騙る詐欺にご注意ください(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。