借金の滞納で差し押さえになる前にできること|止める方法の選び方
この記事のもくじ
借金の滞納で「差し押さえる」と言われたとき、止める手は今どの段階にいるかで変わります。民間の債権者が給料や預金を差し押さえるには、裁判所を通して債務名義(判決や仮執行宣言付支払督促など)を取る必要があります。支払督促が届く段階なら、送達から2週間以内の督促異議で、訴状が届く段階なら、呼出状に書かれた期限と期日までの答弁で、差押えに進む前に動けます。差押命令がすでに届いた段階なら、取立てが始まる日(預金は1週間後、給料は4週間後)までの日数が勝負です。
まず確かめる:手元の書類は、どの段階のものか
「差し押さえ」の文字があっても、書類の種類で意味が違います。次の順に、手元にある書類を並べてください。
- 債権者や回収会社からの督促状・一括請求の通知(「差押え」「法的措置」の文言があっても、債権者の通知です)
- 簡易裁判所から届いた「支払督促」
- 裁判所から届いた「訴状」と「呼出状」
- 判決書、または「仮執行宣言付支払督促」
- 裁判所から届いた「債権差押命令」
2から5は、裁判所から届く書類です。1だけなら、まだ裁判所は動いていません。裁判所を名乗る偽の書類もあるので、裁判所の番号を自分で調べてかけ、事件番号を確かめます。偽物の見分け方は裁判所から督促状が届いたら|支払督促か確かめて2週間以内にすることに載せています。
差押え前の「予告」と書かれた通知そのものは、差し押さえ予告の通知が届いたら|実際に差し押さえられるまでで扱います。
段階ごとに取れる手:表で選ぶ
| 今の段階 | 取れる手 | 期限・止まる時点 |
|---|---|---|
| 督促・一括請求だけ | 債権者と分割を話し合う/弁護士・司法書士に依頼して受任通知を出してもらう/法テラスなどに相談する | 期限はない。ただし裁判に進めば次の行に移る |
| 支払督促が届いた | 督促異議の申立て(通常の訴訟に移る)/そのうえで分割の和解を話し合う | 送達を受けた日から2週間以内(仮執行宣言が付く前まで) |
| 訴状が届いた | 答弁書を出して期日に出る/和解(分割払い)を話し合う | 呼出状に書かれた答弁書の提出期限と期日。欠席すると請求どおりの判決が出ることがある |
| 判決・仮執行宣言付支払督促が出た | 仮執行宣言付の支払督促への異議(2週間)、判決への控訴(2週間)/執行停止の申立て/債権者と和解/個人再生・自己破産の申立て | 異議・控訴を出しても、執行停止がなければ差押えは止まらない |
| 差押命令が届いた | 範囲変更の申立て(年金・生活保護費の口座など)/債権者と話し合い/個人再生・自己破産の申立て | 預金は送達から1週間、給料は4週間で取立て開始。破産や再生が止めるのは裁判所の決定の時点 |
債務名義を取る手続きの順番は、差し押さえとは?借金で差し押さえられるまでの流れと対象で全体を説明しています。ここでは、各段階で何をするかに絞って進めます。
差押えの前の段階:督促・支払督促・訴状
督促・一括請求だけの段階は、最も選択肢が広い時期です。債権者に分割払いを持ちかける方法のほか、弁護士や認定司法書士に債務整理を依頼して、受任通知を出してもらう方法があります。貸金業者は、弁護士・司法書士から債務整理の依頼を受けたとの通知を受けたあとは、正当な理由がなければ、電話やFAX、訪問での直接の返済要求ができなくなります(貸金業法21条1項9号)。止まるのは直接の返済の要求で、書面の送付や裁判までは止まりません。クレジットカードを滞納した場合の流れはクレジットカードの滞納や借金で訴状が届いたら|答弁書と期日の準備にあります。
支払督促が届いたら、送達を受けた日から2週間以内に督促異議を出します。異議が出ると、請求額が140万円以下なら簡易裁判所、それを超えれば地方裁判所で、通常の訴訟に移ります。異議を出さずに2週間たつと、債権者の申立てで仮執行宣言が付き、債権者は強制執行を申し立てられるようになります(民事訴訟法391条)。
2週間の数え方(初日を数えない)は、裁判所から督促状が届いたら|支払督促か確かめて2週間以内にすることに計算例があります。数え間違いが怖いときは、裁判所に電話で確かめます。
異議申立書は支払督促に同封されています。書き方は支払督促の異議申し立ての書き方|督促異議申立書の記入例、放置した場合の流れは支払督促が届いたら|異議申立ての期限と放置した場合の流れで説明します。異議を出した場合も、借金が消えるわけではありません。裁判の中で、分割払いの和解を話し合う道が開けます。
訴状が届いたら、答弁書を出して期日に出ます。出頭せず、争うことも示さないままでいると、請求どおりの判決が出ることがあります。簡易裁判所の訴訟では、請求を争わない被告に、裁判所が分割払いの定めを置いて支払を命じる決定をする制度があります(民事訴訟法275条の2、支払時期は異議期間経過時から5年以内)。決定するかどうかは裁判所の判断で、原告の意見も聞いて決まります。60万円以下の請求を少額訴訟で起こされた場合は、判決で3年以内の分割払いを定める制度があります(同法375条)。準備は少額訴訟を起こされたら|60万円以下の裁判の流れと答弁の準備にまとめています。
差押えの直前・直後の段階:判決のあと
判決が出たあと、あるいは仮執行宣言付支払督促を受け取ったあとは、債権者がいつでも差押えを申し立てられます。このときは、次の点を押さえます。
- 異議や控訴は、それだけでは差押えを止めない。 仮執行宣言付支払督促に異議を出しても、執行停止の手続きをとらなければ強制執行は止まりません。控訴も同様に、止めるには別の申立てが要ります。
- 公正証書がある場合は、裁判がなくても差押えに進める。 「支払いを怠ったときは直ちに強制執行を受けても異議がない」旨の記載がある公正証書は、裁判を経ずに強制執行に使えます(日本公証人連合会の案内、民事執行法22条5号)。契約のときに公証役場で作った書類があるかを思い出します。
- 債権者との和解は、取下げにつながることがある。 債権者が合意すれば、申立ての取下げで止まります。応じるかは債権者しだいなので、これだけに頼りません。
特定調停では、申立てにより、調停が終わるまで強制執行の手続きの停止を命じる制度があります(特定調停法7条)。停止を命じるかは裁判所の判断で、担保を立てるよう命じられる場合もあります。ただし書が停止の対象から外すのは、給料や退職手当などを請求する債権(従業員の賃金など)に基づく執行で、借金の債権者があなたの給料を差し押さえる場合とは別の話です。
差押命令が届いたあとの段階:日数を数えて動く
差押命令は、債務者の言い分を聞かずに出され、銀行や勤務先に命令が届いた時に効力が生じます(民事執行法145条)。債権者が取り立てられるのは、債務者に命令が送達された日から、預金なら1週間、給料なら4週間たってからです(同法155条)。この期間のうちにできることは次の3つです。
- 差押範囲変更の申立て:生活が成り立たなくなる場合に、差押命令の全部か一部の取消しを求めます(同法153条)。債権者が銀行や会社から支払を受ける前に申し立てる必要があります。年金や生活保護費が入る口座の場合は口座の差し押さえはいつ来る?預金が止まる仕組みと生活費の守り方、手続きの全体は差し押さえを解除するには?取消しや範囲変更の申立てと債務整理にあります。
- 債権者との話し合い:一括で払えない事情を伝え、分割の合意を求めます。合意すれば取下げになることがありますが、応じるかは債権者の判断です。
- 個人再生・自己破産の申立て:止める効果があるのは、裁判所の決定のあとです。
債務整理で止められる範囲と時点
差押えをすでに受けている場合に、債務整理で止まる時点は手続きごとに違います。任意整理には差押えを止める法律上の効果がなく、特定調停は裁判所の停止の判断、個人再生と自己破産は裁判所の決定の時点で効果が出ます。手続き別の時点を並べた表は差し押さえを解除するには?取消しや範囲変更の申立てと債務整理にあります。
大切なのは、止まる時点が「申立ての日」ではなく「裁判所の決定の日」だという点です。申立てから決定までの間にも、取立て開始の日が来ます。取立ては待ってくれないので、差押命令を受け取ったら、依頼先を探す時間を数日で済ませます。手続きごとの違いは差し押さえされた後でも債務整理できる?手続き別に止められるもの、手続きそのものの比較は債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いで比べています。
相談先と、伝えること
どの段階でも、弁護士か認定司法書士に書類を見せるのが近道です。認定司法書士が代理できるのは、簡易裁判所の範囲(1社あたり140万円以下)に限られます。判決書や差押命令のように、事件の大きさや手続きが見えにくいときは、どちらに頼めるかを最初に聞きます。収入が少なく費用が心配な人は、法テラスの無料相談や立替の仕組みがあります。詳しくは借金が返せないとき法テラスでできること|無料相談と費用立替の流れで確かめてください。公的な窓口の一覧は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方から選べます。
相談に持っていく書類は、次のとおりです。
- 裁判所から届いた書類(支払督促、訴状、判決書、差押命令)と、その封筒
- 督促状や一括請求の通知
- 借入先の一覧(会社名、残高、毎月の返済額)
- 直近の給与明細と、通帳のコピー
文例(相談の申込み):「支払督促が○月○日に届きました。異議の期限が近いので、書類を持って早めに相談したいです。借入れは○社で、勤務先の給料が差し押さえられる心配があります。」
債務整理を扱う弁護士・司法書士に頼むことを考えるなら、費用の総額と支払い方法を書面で示してくれるか、差押えが近いことを伝えたうえで、いつまでに何を申し立てるかを説明してくれるかを確かめます。
よくある質問
Q. 今どの段階にいるのか分からないとき、何から確かめればよいですか?
手元の書類を、督促状、支払督促、訴状と呼出状、判決書や仮執行宣言付支払督促、債権差押命令の順に並べます。裁判所から届いたものが一つもなければ、まだ裁判所は動いていない段階です。ひとつでもあれば、その書類を受け取った日から期限が動いているので、すぐ日付を書き出します。「差し押さえます」と書かれた通知そのものの読み方は、差押予告の記事にあります。
Q. 差押えの手続きに入ってからでも、話し合いで止められますか?
債権者が合意して申立てを取り下げれば止まります。債権者が応じるかは相手しだいで、法律が止める力を持つのは、破産や再生の開始決定、裁判所の停止の決定などです。話し合いに頼って期限を逃さないように、同時に別の手も調べておきます。
Q. 判決が出たあと、控訴すれば差押えは止まりますか?
仮執行宣言が付いた判決は、控訴をしても強制執行ができます。控訴で執行が止まるわけではなく、止めるには別に執行停止の申立てが要ります。期限は判決書の送達を受けた日から2週間なので、判決が届いたら早めに弁護士・司法書士か法テラスに書類を見せます。
出典・参考にした公的な情報
- 民事執行法 第22条・第29条・第145条・第153条・第155条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法 第275条の2・第375条・第382条・第386条〜第393条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業法 第21条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法 第42条・第249条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事再生法 第26条・第39条・第184条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 特定調停法 第7条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事裁判Q&A(支払督促・訴訟の相手方になった場合・強制執行の準備・差押範囲変更の申立て)(裁判所)
- 簡易裁判所Q&A(支払督促を受けた場合・仮執行宣言付支払督促を受けた場合・調停)(裁判所)
- 公正証書で金銭消費貸借契約をするとき(強制執行認諾)(日本公証人連合会)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。