督促・取り立て・差し押さえ / 制度解説

少額訴訟を起こされたら|60万円以下の裁判の流れと答弁の準備

この記事のもくじ
  1. 届いた書類で最初に確かめること
  2. 少額訴訟の仕組み:原則1回で終わる
  3. 期日までにすること
  4. 判決の後:分割払い、異議、強制執行
  5. 専門家に頼むか、自分で出るか

少額訴訟を起こされたということは、簡易裁判所から訴状と呼出状が届き、60万円以下のお金の支払いを求められている状態です。この手続きは原則として最初の期日1回で言い分を聞き、証拠を調べ、その日のうちに判決まで進みます。ここで取れる行動は大きく3つで、答弁書を出して期日に出る、通常の訴訟に移したいと申し出る、話し合いで和解する、のいずれかです。何も出さずに欠席すると、請求どおりの判決が出ることがあります。

届いた書類で最初に確かめること

少額訴訟では、訴えられた側に、訴状、口頭弁論期日呼出状、少額訴訟手続の内容を説明した書面、答弁書用紙、事情説明書が同封されると裁判所は案内しています。まず、この5点がそろっているかを見ます。訴状だけで呼出状しかなく、少額訴訟の説明書面がないときは通常の訴訟かもしれません。支払督促や通常訴訟との見分け方と、手続き別に出すものは支払督促と通常訴訟・少額訴訟の違い|届いた側の対応の差の表で確かめられます。

早見表:同封される書類と役割
書類 何が書いてあるか あなたがすること
訴状 請求の金額と、その理由(いつ・どの契約か) 金額と事実が自分の認識と合うか読む
口頭弁論期日呼出状 最初の期日の日時と法廷 日付を手帳とカレンダーに入れる
少額訴訟手続の説明書面 この手続きの仕組み 通常手続への移行を望むか判断する材料にする
答弁書用紙 請求に対する返答を書く欄 同封の欄に沿って書いて返送する
事情説明書 収入・支出などの事情を伝える欄 分割払いを望むなら具体的に書く

次に、書類が本物かを確かめます。裁判所は、裁判所を名乗る偽の郵便物や詐欺に注意するよう公表しています。書類に書かれた電話番号に掛けるのではなく、裁判所の公式サイトの一覧で自分で番号を調べ、事件番号を伝えて問い合わせます。偽物の書類にも正規の番号が書かれていた例があるためです。

答弁書の提出期限に全国共通の日数はなく、呼出状に書かれた日を見ます。民事訴訟法の改正で、2026年5月21日以降は、裁判所への書類の出し方がオンライン(mints)にも広がっています(裁判所は、同日以降に申し立てられた支払督促への異議で、この方法を案内しています)。少額訴訟でも、書類の出し方や書式が同封の案内で違う場合があるので、同封の説明書面に従い、迷ったときは担当の書記官に聞きます。

少額訴訟の仕組み:原則1回で終わる

民事訴訟法の第368条以下と裁判所の案内は、この手続きを次のように定めています。

項目 内容
対象 簡易裁判所での、60万円以下の金銭の支払いを求める訴え
原告の利用回数 同じ裁判所で年間10回まで(裁判所のQ&A)
審理 特別の事情がない限り、最初の期日で終える(第370条)
証拠 その場ですぐ調べられるものに限る(第371条)
反訴 被告から別の請求を立てることはできない(第369条)
判決 原則として、審理が終わった後すぐに言い渡す(第374条)

被告にとって大切なのは、証拠の制限です。その場で調べられない証拠、たとえば後日呼び出す証人は使えません。契約書、返済の領収書、通帳の写し、督促のやり取りの控えなど、期日に持参できる書面を用意します。裁判所も、言い分の裏付けになる証拠は最初の期日に出せるよう準備するよう案内しています。

期日までにすること

手順は次の順番が目安です。

  1. 呼出状の期日、法廷、答弁書の提出期限を確かめる
  2. 訴状の金額と事実を、契約書や返済記録と照らし合わせる
  3. 答弁書に、請求を認めるのか、争うのかを書く(同封の用紙の欄に沿って書く。欄の名前を推測で書かない)
  4. 事情説明書に、収入・支出・今払える月額を書く
  5. 証拠の書面を、原告に渡す分とあわせてコピーしておく
  6. 通常の裁判を望む場合は、最初の期日で弁論をする前に、その旨を申し出る

場面ごとの分かれ道は次のとおりです。

分かれ道:自分の状況ごとの進め方
状況 向く進め方
借りた事実も金額も合っている。一括では払えない 答弁書で認めたうえで、分割払いの希望と収入・支出を書く。期日で和解の話し合いを申し出ることもできる
金額や事実に争いがある(払った分が引かれていない等) 答弁書で争う点を書き、領収書や通帳を持参する
証人を呼ぶ、書類が多いなど、1回では説明しきれない 最初の期日で弁論する前に、通常の手続への移行を申し出る(第373条)
請求された借金の時効が気になる 時効は援用という手続きが必要で、個別の判断になる。借金の時効は5年?援用の仕組みを読み、期日が近いなら弁護士・司法書士に早めに相談する

通常の手続に移すと、少額訴訟のように1回で決着せず、期日が続きます。時間は延びますが、証人の取調べなどが使えるようになります。移したあとの答弁書の書き方と文例はクレジットカードの滞納や借金で訴状が届いたら|答弁書と期日の準備に載せています。移すかどうかは、争う点の数と証拠の種類で決めます。

期日で分割払いを求めるときの話し方の例です。

文例:「訴状の金額は借りた額と合っているので、請求自体は認めます。ただ、今の収入では一括で払えません。毎月○円なら続けて払えますので、分割にしていただけないでしょうか。収入と毎月の支出は、事情説明書に書いたとおりです。」

分割払いを裁判所が判決で定めるか、和解で決めるかは、原告の意見も踏まえた裁判所の判断です。言えば決まるものではないので、数字に根拠がある説明を用意します。

判決の後:分割払い、異議、強制執行

請求を認める判決でも、被告の資力などを考えて特に必要があるときは、言渡しの日から3年を超えない範囲で、支払いの時期の定めや分割払いの定めをすることができます。分割払いを定めるときは、払わなかったときに残りを一括で請求できる定め(期限の利益の喪失)も付けます。期限どおりに払えば、訴えを起こした後の遅延損害金が免除される定めも可能です(第375条)。これらの定めについては、不服を申し立てられません。

判決の内容そのものに不服があるときは、判決書の送達を受けた日から2週間以内に、同じ簡易裁判所に異議を申し立てます(第378条)。地方裁判所への控訴はできず(第377条)、異議の後の判決にも控訴はできません(第380条)。2週間を過ぎると判決は確定します。

原告の言い分が認められた少額訴訟判決には仮執行宣言が付くので、確定前でも強制執行を申し立てられます。判決を出した簡易裁判所で給料や預金を差し押さえる少額訴訟債権執行という手続きもあります(民事執行法第167条の2)。被告が異議とともに強制執行の停止を求めると、執行が止まることがあります。払えないまま放置したときの流れは強制執行とは?借金で強制執行されるまでの条件と流れ・止め方で説明しています。

判決で確定した権利は、時効の期間が10年になります(民法第169条)。「時効を待つ」という選択は現実的ではありません。

専門家に頼むか、自分で出るか

少額訴訟は、本人が出席して話す前提で作られた手続きです。簡易裁判所では、裁判所の許可を得て、弁護士以外の人を訴訟代理人にすることもできます(民事訴訟法第54条1項)。認定司法書士は、1件の請求が140万円以下の簡易裁判所の事件を代理できます。差が出るのは、争点が多いとき、ほかにも複数の借金があって全体を整理したいときです。選ぶときの線引きは債務整理は弁護士と司法書士どっち?にまとめています。

費用の見通しが立たないときは、収入などの条件を満たせば、法テラス(日本司法支援センター)の無料相談や費用の立替えを使える場合があります。窓口は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方で探せます。

少額訴訟になった借金のほかにも返済が苦しいなら、債務整理を扱う弁護士・司法書士に、期日の前に相談するという選択肢があります。依頼先を選ぶときは、面談で費用の総額を書面で示してくれるか、依頼できる範囲(簡易裁判所で代理できる金額の上限など)を説明してくれるかを確かめます。

よくある質問

Q. 仕事を休めないとき、期日に行かなくても大丈夫ですか?

答弁書を出さずに最初の期日に出ないと、原告の言い分どおりの少額訴訟判決が出ることがあります。病気などで出られないときは担当の裁判所書記官に相談しますが、原則として仕事の都合だけでは期日は変えられません。休みを取る前提で、期日と必要書類を早めに確かめます。

Q. 少額訴訟を通常の裁判に変えてもらうことはできますか?

できます。被告は、最初の期日で弁論をするまでに、通常の手続に移す旨を申し出ます(民事訴訟法第373条)。申し出ると、その時から通常の訴訟として進みます。最初の期日で言い分を述べた後や、期日が終わった後は申し出られません。

Q. 判決で分割払いにしてもらえますか?

裁判所が資力などを考えて特に必要と認めたときは、判決の言渡しから3年を超えない範囲で分割払いや支払猶予を定めることがあります(第375条)。求めれば認められるものではないので、収入と支出を説明できる資料を期日に持って行きます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

支払督促と通常訴訟・少額訴訟の違い|届いた側の対応の差

クレジットカードの滞納や借金で訴状が届いたら|答弁書と期日の準備

強制執行とは?借金で強制執行されるまでの条件と流れ・止め方

借金の裁判を欠席したら?答弁書を出さずに放置したときの結果