支払督促と通常訴訟・少額訴訟の違い|届いた側の対応の差
届いた書類が支払督促か、通常の訴状か、少額訴訟かによって、出す書類と期限がまったく違います。 支払督促は受け取ってから2週間以内の督促異議、訴訟(通常・少額)は呼出状に書かれた期日までの答弁書や出頭が、まず必要です。この記事では、3つの手続きの違いを比較表で並べ、書類の表題から見分ける方法、それぞれの手続きで届いた側が何を出すかを説明します。
3つの手続きの違い
最初に、届いた側の目線で比べます。
| 支払督促 | 通常訴訟 | 少額訴訟 | |
|---|---|---|---|
| 届く書類 | 支払督促(同封:督促異議申立書) | 訴状、口頭弁論期日呼出状 | 訴状、呼出状、少額訴訟の説明書面、答弁書用紙、事情説明書 |
| 裁判所の審理 | 書記官が債権者の申立てだけを見て発する。債務者に事情を聞かない | 裁判官が双方の主張と証拠を、期日を重ねて審理する | 原則として最初の期日で審理を終え、その日のうちに判決が出る |
| 対象の請求 | 金銭などの一定量の給付。額の制限はない | 簡易裁判所は140万円以下、超えれば地方裁判所 | 60万円以下の金銭の支払い |
| 争う方法 | 送達から2週間以内に督促異議。出すと通常訴訟に移る | 答弁書で争う内容を示し、期日に出頭する | 答弁書と出頭。通常訴訟への移行も申し出られる |
| 判決のあとの不服申立て | 異議がなく確定すると確定判決と同じ効力 | 判決の送達から2週間以内に控訴できる | 控訴はできない。同じ裁判所に2週間以内の異議が出せる |
| 放置した場合 | 仮執行宣言が付き、差押えができる状態になる | 欠席すると、請求どおりの判決が出ることがある | 同じく、請求どおりの判決が出ることがある |
表の根拠は、民事訴訟法382条以下(支払督促)、368条以下(少額訴訟)、285条(控訴)と、裁判所のQ&Aです。少額訴訟の判決には仮執行宣言が付き、確定する前でも強制執行を申し立てられます。通常訴訟との大きな違いは、審理の速さです。少額訴訟では証拠も、その場で取り調べられるものに限られます(同法371条)。反訴もできません(同法369条)。
書類の表題で見分ける
表題が「支払督促」なら支払督促、「訴状」と「口頭弁論期日呼出状」が入っていれば訴訟、少額訴訟の説明書面や答弁書用紙が同封されていれば少額訴訟です。「仮執行宣言付支払督促」「債権差押命令」など、ほかの書類を含めた見分け方の表と、書類が本物かの確かめ方は裁判所から督促状が届いたら|支払督促か確かめて2週間以内にすることに載せています。差押えがすでに始まっているときは差押命令とは?裁判所から届く書類の読み方と次にすることを読んでください。この記事は、3つの手続きの比較と、届いた側が出すものに絞ります。
届いた側が出すもの:手続き別
手続きごとの動きを、時間の順に並べます。
手続き別の提出物と宛先を、先に表で並べます。
| 手続き | 出すもの | 出す先 | いつまでに |
|---|---|---|---|
| 支払督促 | 督促異議申立書(同封の用紙) | 支払督促を出した簡易裁判所 | 送達を受けた日から2週間以内 |
| 通常訴訟 | 答弁書(争う内容を書く)。期日に出頭 | 訴状を受け付けた裁判所 | 呼出状で裁判所が指定した日まで |
| 少額訴訟 | 答弁書(同封の用紙)と、証拠。期日に出頭 | 訴状を受け付けた簡易裁判所 | 最初の期日まで(期日は原則1回) |
どの手続きでも、提出する書面はコピーをとって保管し、郵送なら配達の記録が残る方法を選ぶと、出した事実を後から示せます。
支払督促のとき
- 受け取った日から2週間以内に、同封の督促異議申立書を出す。出し方は支払督促の異議申し立ての書き方|督促異議申立書の記入例
- 出さないと、仮執行宣言が申し立てられ、2通目の書類が届く
通常訴訟のとき
- 呼出状に書かれた期日に出頭するか、期日までに答弁書を出す。答弁書の提出期限に全国共通の日数はなく、裁判所が呼出状で指定する
- 欠席して、争う意思を示す答弁書もないと、請求どおりの判決が出ることがある(民事訴訟法158条・159条)
少額訴訟のとき
- 期日は原則1回で、判決まで終わる。そのため、答弁書と証拠を最初の期日までに用意する
- 少額訴訟で審理されたくない場合は、最初の期日で弁論をするまでに、通常の手続きへの移行を申し出られる(同法373条)
- 判決では、裁判所が被告の資力などを考えて、3年を超えない範囲で分割払いなどを定めることがある(同法375条)。分割払いは、求めれば認められるとは限りません。収入と支出を説明できるようにしておきます
少額訴訟の流れは少額訴訟を起こされたら|60万円以下の裁判の流れと答弁の準備に、通常訴訟の訴状が届いたときはクレジットカードの滞納や借金で訴状が届いたら|答弁書と期日の準備に手順があります。
内容証明郵便との違い
支払督促と内容証明郵便は、どちらも支払いを求める書面に見えますが、違いは裁判所が関わるかどうかです。
| 支払督促 | 内容証明郵便 | |
|---|---|---|
| 誰が出すか | 裁判所書記官(債権者の申立てによる) | 債権者などが郵便で送る |
| 強制執行の根拠になるか | 仮執行宣言が付くと債務名義になる(民事執行法22条4号) | ならない |
| 期限 | 異議の期間が法律で決まっている | 書面の期限は債権者が書いたもので、裁判所が定めた期間ではない |
| 時効への影響 | 手続きの間は完成が猶予され、確定すると10年(民法147条・169条) | 催告として、6か月は完成が猶予される。更新にはならない(民法150条) |
内容証明郵便が届いても、それだけで差押えはできません。ただし、続けて裁判を起こされることはあります。内容証明郵便の対応は、届いた書面を持って弁護士や認定司法書士に確かめてください。
どの手続きでも、先にすること
手続きが何であっても、書類を捨てず、受け取った日と封筒を保管します。そして、請求の中身を確かめます。債権者が契約と同じ会社か、金額は元金と利息でどう分かれているか、最後の返済はいつかをメモします。
返済の見通しが立たない場合は、裁判の期限と並行して、債務整理の相談を進める選択肢があります。相談する先を選ぶときは、弁護士か認定司法書士か、費用を書面で示してもらえるか、受任前に面談があるかを確かめます。
選び方は債務整理は弁護士と司法書士どっち?140万円の線と選ぶときの確認点にあります。貸したお金を取り戻す側として支払督促を使う場合は、支払督促の申立書の書き方|貸したお金を取り戻す手続きと費用を読んでください。
よくある質問
Q. 少額訴訟は、何円以下の請求が対象ですか?
簡易裁判所で、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払いを求める場合が対象です(民事訴訟法368条1項)。同じ簡易裁判所で年10回までの利用回数の制限もあります(裁判所のQ&A)。
Q. 届いたのが訴状か支払督促か、判断がつきません。
表題が「支払督促」なら支払督促、「訴状」と呼出状が入っていれば訴訟です。期限がまったく違うので、迷ったら書類を持って裁判所の担当書記官に、どの手続きかを電話で確かめます。種類を見分ける表は、裁判所から届く書類の記事にあります。
Q. 内容証明郵便が届いたのは、裁判と同じですか?
同じではありません。内容証明郵便は裁判所の手続きではなく、それだけでは差押えの根拠になりません。ただし、請求した事実を残す書面として使われ、時効が6か月延びる催告になる場合があります。
出典・参考にした公的な情報
- 民事訴訟法 第158条・第368条〜第380条・第382条〜第396条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 支払督促・少額訴訟・訴訟の相手方になった場合(民事事件Q&A)(裁判所)
- 民事執行法 第22条(債務名義)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第150条(催告)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。