借金の裁判を欠席したら?答弁書を出さずに放置したときの結果
借金の裁判を欠席しても、裁判は終わりません。答弁書を出さずに最初の期日を欠席すると、裁判所は貸した側(原告)の請求どおりの判決を出すことがあります。一方、答弁書を出して争う意思を示していれば、最初の期日に行けなくても、その書面は読まれたものとして扱われます。つまり結果を分けるのは、欠席そのものより、答弁書を出したかどうかと、判決が出た後の2週間をどう使ったかです。
欠席したときに何が起きるか
民事訴訟には、2つの「みなし」の仕組みがあります。
- 自白の擬制:相手の主張した事実を争うことを明らかにしないと、その事実を認めたものとして扱われる。期日に出ない場合も同じ扱い(民事訴訟法第159条1項・3項)
- 陳述の擬制:最初の期日に出ない場合でも、すでに出した訴状や答弁書の内容を述べたものとして扱う(第158条)
答弁書の有無で、次のように分かれます。
| 場面 | 裁判所の扱い | その後 |
|---|---|---|
| 答弁書なし・欠席 | 原告の主張を争わない扱いになり、請求どおりの判決が出ることがある | 判決が送達され、2週間で確定に向かう |
| 答弁書あり(争う)・欠席 | 答弁書の内容を述べたものとして扱われ、審理は続く | 次の期日が決まる。出席して補えば言い分が伝わる |
| 出席 | 言い分と証拠を直接説明できる。話し合いによる和解も選べる | 和解調書は確定判決と同じ効力 |
簡易裁判所では、2回目以降の期日でも、書面の内容を述べたものとして扱うことがあります(第277条)。答弁書を出したから後は放っておいてよい、という意味ではありません。争う内容を書いていても、証拠を出して説明しなければ言い分は伝わりません。
簡易裁判所の「2回目以降も書面を述べたことにする」扱い(第277条)には、範囲があります。裁判所が述べたものとみなすことができるのは、出した準備書面(答弁書を含む)に書いた事項だけです。具体例を挙げます。
| 事前に出した書面 | 2回目の期日を欠席したとき |
|---|---|
| 答弁書に「元金○円を超える部分は争う」と書き、返済記録を添えた | その争う内容は述べたものとして扱われうる |
| 答弁書は「請求を認める」だけで、分割払いの希望を書いていない | 分割の希望は述べたことにならず、話し合いが進みにくい |
| 欠席する期日の直前に、新しい主張(時効など)を口頭で伝えただけ | 書面になっていない主張は、述べたものとして扱われない |
欠席するときほど、争う点と認める点を書面にして、期日の前に提出しておく必要があります。
行けない日があるときの連絡
病気などで期日に出られないときは、簡易裁判所の担当の書記官に相談します。やむを得ない場合には期日の変更もあり、診断書などの書類を求められることがあります。裁判所は、原則として仕事の都合だけでは期日を変更できないと案内しています。
期日の前に、次の順で動きます。
- 呼出状に書かれた事件番号と担当部(係)を確かめる
- 裁判所の公式サイトの一覧で、その裁判所の番号を自分で調べる(書類に書かれた番号を使わない)
- 担当の書記官に、出られない理由と、答弁書を出すつもりがあることを伝える
- 期日変更が難しいと言われたら、答弁書で争う点・認める点を書いて提出する
電話での話し方の例です。
文例:「令和○年(○)第○○号の事件の被告の○○です。○月○日の期日に、病気で出席できません。診断書を用意できますが、期日の変更はできますか。できない場合に備えて、答弁書は期限までに提出します。」
裁判所の公式な案内には、偽の郵便物や、裁判所の職員を名乗って金銭を要求する詐欺への注意があります。連絡先は書類の番号ではなく、公式の一覧から調べます。
書類を受け取っていなくても手続きは進む
裁判の書類は、本人が受け取らなくても、同居者への交付、差置送達、書留郵便での発送(付郵便送達)、公示送達といった方法で届いたものとして扱われます(第106条・第107条・第110条)。方法ごとの条件は、督促状が書留や簡易書留で届いたら|受け取らないとどうなるの表にまとめています。
引っ越して住民票を動かしていない、郵便を長く受け取っていないといった人は、知らないうちに手続きが進んでいることがあります。心当たりがあるときは、訴えられた可能性のある裁判所に問い合わせます。判決の期限に遅れたのが、自分の責任でない事情によるときは、その事情が消えてから1週間以内に限り、期限内にすべきだった手続きを追って行える仕組みもあります(第97条)。使えるかは個別の判断なので、すぐ弁護士・司法書士に相談します。
判決が出た後の流れ
通常の訴訟の判決に不服があるときは、判決書の送達を受けた日から2週間以内に、控訴を申し立てます(第285条)。簡易裁判所の判決への控訴は地方裁判所が扱います。2週間以内に控訴しなければ、判決は確定し、中身を争えなくなります。
確定した判決は債務名義になり(民事執行法第22条)、原告は強制執行を申し立てられます。判決に「仮に執行することができる」とあれば、確定前でも申立てができます。給料や預金の差押えの仕組みは強制執行とは?借金で強制執行されるまでの条件と流れ・止め方と、差し押さえとは?借金で差し押さえられるまでの流れと対象にまとめています。判決で確定した権利は、時効の期間が10年になります(民法第169条)。
判決の後でも、できることは残ります。控訴できる2週間のうちに、次のように動きます。
- 判決書を受け取った日を記録する。 封筒は保管します。2週間は、判決書の送達を受けた日の翌日から数えます。
- 主文を読む。 「被告は、原告に対し、金○円を支払え」のように、支払いを命じる部分です。認められた金額が、訴状の請求額と合っているかを確かめます。
- 控訴するかを決める。 控訴は、控訴状を判決をした簡易裁判所に出して行います(民事訴訟法286条)。争える点があるか、書類を持って弁護士・認定司法書士に早めに見せます。
- 控訴しないなら、債権者と払い方を話し合う。 差押えが来る前に連絡できれば、分割の相談の余地があります。
債権者へ分割払いを持ちかけるときの文例です。
文例:「令和○年(○)第○○号の判決を受け取りました。一括での支払いは難しいため、月○円ずつの分割払いを希望します。収入と支出が分かる資料を送ります。この内容で受けてもらえるか、書面かメールで教えてください。」
払う約束をしたら、その額を守れるかを家計で確かめてから伝えます。守れない約束は、再び差押えの理由になります。
その他にできることは、給料や預金の差押えが来る前に、債務整理の相談先を決めることです。 債務整理の手続きの違いは債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いで比べられます。相談窓口は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方から探せます。
これから裁判が始まる、または届いたばかりの人へ
訴状と呼出状が届いたばかりで、まだ最初の期日の前なら、できることが一番多い時期です。答弁書を出す手順はクレジットカードの滞納や借金で訴状が届いたらに、60万円以下の請求で少額訴訟になったときは少額訴訟を起こされたらに書いています。まず呼出状の期日と答弁書の提出期限をカレンダーに入れ、書類が届いた日付をメモに残します。答弁書の期限は呼出状の日付を見ます。控訴の2週間は判決書の送達を受けた日の翌日から数えるため、受け取った日を記録しておくことが後で役に立ちます。
よくある質問
Q. 一度欠席しただけで、もう取り返しがつきませんか?
取り返しがつかなくなるのは、判決が確定した後です。審理が続いているうちは、次の期日からの出席や答弁書の提出で言い分を出せます。判決が出ても、判決書の送達を受けた日から2週間以内なら控訴ができます。期限を過ぎそうなときは、すぐに裁判所と弁護士・司法書士に連絡します。
Q. 裁判の書類を受け取らなければ、裁判は始まりませんか?
始まります。受け取りを拒んでも、書類を置いて帰る差置送達ができ、不在が続く場合は書留郵便で発送した時に届いたものとして扱う送達もあります(民事訴訟法第106条・第107条)。受け取らないことは、争う手段にはなりません。
Q. 欠席で判決が出たら、すぐ給料を差し押さえられますか?
判決が確定するか、判決に仮執行宣言が付くと、債権者は強制執行を申し立てられます。申立てから差押命令が会社に届くまでの期間に一律の日数はありません。判決が届いたら、控訴できる2週間の間に、今後の対応を決めます。
出典・参考にした公的な情報
- 民事訴訟法 第97条・第106条・第107条・第110条・第158条・第159条・第263条・第277条・第285条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判手続 簡易裁判所の民事事件Q&A(訴訟の相手方になった場合/期日にどうしても裁判所に出向けない場合/判決に不服がある場合)(裁判所)
- 民事執行法 第22条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第169条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判所を名乗る詐欺・偽の郵便物にご注意ください(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。