督促・取り立て・差し押さえ / 制度解説

差し押さえとは?借金で差し押さえられるまでの流れと対象

この記事のもくじ
  1. 借金の差し押さえは、裁判や支払督促のあとに来る
  2. 差し押さえられる財産・られない財産
  3. 税金や保険料の滞納は、裁判なしで差し押さえに進む
  4. 差し押さえられたあとにできること
  5. 差し押さえが家族にもたらす影響
  6. 状況別の案内:差し押さえの記事の読み分け

差し押さえとは、国や裁判所が債務者の財産の処分を禁じ、売却や取立てによってお金に換えて、貸した側や国に渡すための手続きです。借金の場合、カード会社や消費者金融などが差し押さえるには、判決や仮執行宣言付支払督促などの債務名義が必要です。一方、税金や国民健康保険料の滞納は、裁判を経ずに役所が差し押さえます。どちらの話なのかが、最初の分かれ道です。

借金の差し押さえは、裁判や支払督促のあとに来る

借金の差し押さえに至る流れは、次のとおりです。

  1. 督促・一括請求
  2. 支払督促や訴状が届く
  3. 異議や答弁をしないまま期限が過ぎ、判決や仮執行宣言付支払督促ができる(債務名義)
  4. 債権者が裁判所(動産は執行官)へ申立てをする
  5. 裁判所が差押命令を出し、債務者と、給料なら会社、預金なら銀行などに送る

債務名義の種類は強制執行とは?借金で強制執行されるまでの条件と流れ・止め方で説明しています。ここで押さえたいのは、差押命令が債務者の言い分を聞かずに出されること(民事執行法第145条2項)です。差押えの効力は、会社や銀行に命令が送達された時に生じます(同条5項)。債務者のもとに届く時期とずれるため、事前に気づく手段は期待できません。

だからこそ、3の段階で動くことが大切です。支払督促の2週間、訴状の答弁書、判決の控訴期間を逃さなければ、差押えまで進まずに済む場合があります。差押えの前触れは差し押さえ予告の通知が届いたらで扱います。

差し押さえられる財産・られない財産

早見表:借金の差し押さえで対象になる財産と対象外
財産 差押えの扱い 押さえておくこと
給料・賞与 4分の3は差押禁止。差し押さえられるのは4分の1。ただし、基準額が月44万円を超えるときは、33万円を超える部分が全額対象(第152条、施行令第2条) 計算は給料の差し押さえはいくらまで?。会社に命令が届く
預貯金 差押えの効力は命令が銀行に送達された時に生じる(第145条5項) 年金や給付金の振込口座は、範囲変更の申立てで対応する。口座の差し押さえはいつ来る?
不動産 強制競売または強制管理(第43条) 差押えの後も、通常の使い方で住み続けられる(第46条2項)
家財・現金などの動産 執行官が差し押さえる(第122条) 衣服・寝具・家具・台所用具、1か月の食料・燃料、66万円までの現金は差押禁止(第131条、施行令第1条)
年金・生活保護・児童手当 受ける権利そのものが差押禁止(国民年金法第24条、生活保護法第58条、児童手当法第15条) 口座に入った後の預金は、預金として差し押さえられることがある
車 手続きが別にある 車は差し押さえられる?

差押禁止の範囲は、事情によって変えられます。差押えで生活に著しい支障が出る場合には、差押命令を出した裁判所へ、債権者が第三債務者から支払を受ける前に、差押範囲の変更を申し立てられます(第153条、裁判所Q&A)。申立てが認められるとは限らず、認められても債務は減りません。一覧は差し押さえできない財産の一覧にまとめています。

税金や保険料の滞納は、裁判なしで差し押さえに進む

借金と税金の滞納では、差押えに至る道が違います。

比較表:借金の差し押さえと税金滞納の差し押さえ
項目 借金(民間の債権者) 国税・地方税の滞納
前提 債務名義が必要 不要(役所が自分で差し押さえる)
督促 債権者による 国税は納期限から50日以内に督促状(国税通則法第37条)。住民税などは納期限後20日以内(地方税法第329条)
差押えが可能になる時 差押命令が出た時 督促状を発した日から10日を過ぎても完納しないとき(国税徴収法第47条、地方税法第331条)
給料の差押え 基準額の4分の1(基準額が44万円を超えると、33万円を超える部分は全額) 所得税・住民税・社会保険料と生活費相当額などを残した額(国税徴収法第76条)。計算が違う
差押禁止の食料・燃料 1か月分 3か月分(国税徴収法第75条)
年金 受ける権利は差押禁止 老齢基礎年金などを受ける権利は、国税滞納処分なら差押えの対象になる(国民年金法第24条ただし書)

税金の場合、条文上は10日を過ぎれば差し押さえなければならないとされています。実際には、猶予や分割納付の相談中は差押えを控えることもありますが、「10日待ってもらえる」と読むのは危険です。督促状が届いた時点で、税務署や市区町村の納税課へ連絡します。税金の流れは税金の滞納で差し押さえはいつ?、納税の猶予の条件は税金を滞納しそうなときに整理しています。

差し押さえられたあとにできること

差押命令が届いたら、次の順で確かめます。

  1. 命令を出した裁判所名、事件番号、債権者、差押えの金額(債権の範囲)を読む
  2. 取立てが可能になる日を数える(債務者に命令が送達された日から、預金なら1週間、給料なら4週間。第155条)
  3. 生活費に当たる口座や給料が差し押さえられていれば、取立ての前に範囲変更を申し立てる
  4. 債権者に連絡して、分割払いの合意ができるかを探る
  5. 全体の借金が重いなら、債務整理を検討する

書類の読み方は差押命令とは?裁判所から届く書類の読み方と次にすること、止める方法の選び方は借金の滞納で差し押さえになる前にできることで説明します。債務整理では、破産手続開始の決定があると強制執行は効力を失い、個人再生の開始決定で中止されますが、任意整理には差押えを止める法的な効力がありません。違いは債務整理の種類を比較で確かめます。

差押えを受けた後でも債務整理を選べる場合があります。債務整理を扱う弁護士・司法書士に相談するときは、手元の判決や差押命令の写しを持参します。費用の総額を書面で説明してくれるか、差押えがある状態での手続きの見通しを具体的に話してくれるかを確かめて選びます。

差し押さえが家族にもたらす影響

差押えの対象になるのは、債務者本人の財産です。同居の家族の給料や預金が、債務者の借金を理由に差し押さえられることはありません。ただし、共有名義の財産や、同居の家族と共用している家財の扱いには注意が必要です。くわしくは家族の財産は差し押さえられる?で扱います。家族が連帯保証人になっている場合は、その家族が債務者となる別の請求がありえます。まず、相談窓口の番号を借金の相談窓口はどこ?で確かめ、状況を話せる準備をします。

状況別の案内:差し押さえの記事の読み分け

この記事は、差し押さえの全体像の入口です。状況に近い記事から開いてください。

よくある質問

Q. 差し押さえは、いきなり来ることがありますか?

借金(カード・消費者金融)の場合は、判決や仮執行宣言付支払督促などの債務名義ができた後に、債権者が裁判所へ申し立てます。差押命令は債務者の言い分を聞かずに出されるため、差押えそのものの予告はありません。税金の滞納は、督促状を発した日から10日を過ぎると、裁判所を通さずに差し押さえられる状態になります。

Q. 差し押さえられたら、全財産を取られますか?

取られません。給料は原則として支払われる額(税金・社会保険料を引いた額が基準になるのが一般的)の4分の3が差押禁止で、生活に欠かせない衣服・寝具・家具・台所用具や、1か月分の食料・燃料なども対象外です。差押えは、債権者の請求額と執行費用に達するまでです。

Q. 年金や生活保護費は差し押さえられますか?

年金や生活保護を受ける権利は、法律で差押えが禁止されています。ただし、口座に振り込まれた後の預金は、預金として差し押さえられることがあり、その場合は裁判所に差押範囲の変更を申し立てます。税金の滞納では、老齢年金に例外があります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

強制執行とは?借金で強制執行されるまでの条件と流れ・止め方

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