家族の財産は差し押さえられる?同居家族の物と共有名義の扱い
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差し押さえの対象は、借金をした本人の財産です。同居する家族の給料や預金口座、家族が自分のお金で買った物を、本人の借金を理由に取っていく仕組みはありません。ただし、家族の物が自分の物として扱われやすい場面(同居の家財、共有名義の不動産)や、家族自身が債務者になっている場面(保証人など)があります。それぞれの境目を、財産の種類ごとに整理します。
Q1. 差し押さえは、家族の財産にも及びますか?
条文を見ると、強制執行の対象は債務者の財産として定められています。債権(給料・預金)の差押えは債務者が持つ債権を、動産の差押えは債務者の占有する動産を、不動産は債務者が所有する不動産(共有持分を含む)を対象とします(民事執行法143条・123条・43条)。
| 財産 | 扱い | 分かれ目 |
|---|---|---|
| 家族の給料 | 対象外 | 家族が保証人・連帯債務者なら、家族自身が債務者として請求される |
| 家族名義の預金口座 | 対象外 | 債務者のお金を名義だけ家族にした場合は、取り戻しの対象になり得る |
| 同居の家財(家具・家電) | 債務者の占有分は対象。家族が占有する物は、家族が提出を拒めば対象外 | 持ち主を示せる書類があるか |
| 債務者名義の不動産 | 対象 | 差押えの後も通常の使い方で使える(民事執行法46条2項)が、競売で売却されると手放す |
| 夫婦共有名義の不動産 | 債務者の持分が対象 | 競売後の共有物分割請求 |
| 家族が相続した財産 | 対象外(相続人の財産) | 債務者が相続人なら、その人の相続分は対象 |
この表は、借金(カード・消費者金融など)の強制執行の話です。税金の滞納は、国税徴収法に別の定めがあります。無償または著しく低い額で財産を譲り受けた人が、第二次納税義務を負う場合もあります(国税徴収法39条)。役所へ相談する前に、財産を家族の名義へ移すことは控えます。
Q2. 同居の家族の持ち物は、持っていかれますか?
動産の差押えは、執行官が行います。執行官は、債務者の住居に立ち入り、その場所で目的物を捜索できます(民事執行法123条2項)。ここで家族と暮らしている場合、住居の中の物が誰の物かは、外から見て分かりにくいという問題があります。
条文の考え方は2つです。
- 債務者の占有する動産は、執行官が占有して差し押さえます(同法123条1項)。
- 債務者以外の者が占有する動産は、その人が提出を拒まないときに限って差し押さえられます(同法124条)。
つまり、家族が自分の持ち物として占有している物(自分の部屋の私物、自分名義の自動車など)は、家族が提出を拒めば対象になりません。それでも差し押さえられたときは、所有権を持つ第三者が、第三者異議の訴えで強制執行の不許を求められます(同法38条)。
夫婦の間では、さらに民法762条2項があります。夫婦のどちらの物か明らかでない財産は、共有と推定されます。家財の多くは、この「どちらの物か分からない」状態になっています。持ち主を示す材料を、前もってそろえておく意味があります。
持ち主を示す材料の例です。
- 購入時の領収書、保証書、クレジットの明細(誰の名義で払ったか)
- 家族が自分の収入で買ったことが分かる通帳の記録
- 車や自転車の車検証・登録書類(所有者欄)
- 贈与や相続で受け取ったときの書類
執行官が来た当日は、家族だけで対応する場合もあります。慌てて物を隠したり持ち出したりすると、あとで別の問題になります。分からないことは、その場で署名せず、執行官の名前と所属を控えて、後日、弁護士・司法書士や法テラスなどに相談します。
差し押さえられない物の範囲(衣服・寝具・家具・台所用具、1か月分の食料・燃料、66万円までの現金など)は、民事執行法131条が定めています。同居家族の分も含め、生活に欠かせない物は対象外です。一覧は差し押さえできない財産の一覧|生活保護・年金・生活に必要な物にあります。
Q3. 家族名義の口座に預けておけば、差し押さえを免れますか?
免れる方法として使うのは勧められません。理由は2つあります。
1つ目は、債権者が差押えを申し立てる際に、債務者名義の口座を特定して出すことです。家族名義の口座は、その時点では対象になりません。しかし、債務者が債権者を害することを知って財産を家族に移したときは、債権者が裁判所へ行為の取消しを請求できます(民法424条)。
2つ目は、自己破産を選ぶ場合の影響です。債権者を害する目的で財産を隠したり、債権者に不利益な処分をしたりすると、免責不許可事由になり得ます(破産法252条1項1号)。
名義を動かして得になることは少なく、手続きの選択肢を狭めます。差押えの前に家計を見直す手順は、借金の滞納で差し押さえになる前にできること|止める方法の選び方で説明しています。
Q4. 夫婦共有名義の家は、差し押さえられますか?
債務者の持分が差押えの対象になります。民事執行法43条2項は、金銭の支払いを目的とする債権の強制執行について、不動産の共有持分を不動産とみなすと定めています。
仕組みを順に見ます。
- 債権者が、債務者の持分を対象に、競売(強制競売)を申し立てる
- 持分が売却され、買った人が共有者の1人になる
- 共有者は、いつでも共有物の分割を請求できる(民法256条1項)
- 話し合いか裁判で、家を売る、または持分を買い取る形で調整する
民法249条は、各共有者が共有物の全部をその持分に応じて使えると定めています。持分を買った人が同居するわけではありませんが、家全体の扱いについて発言する立場になります。名義が夫婦の共有で、片方だけが債務者の場合、家に住み続けたい側が、競売前に債務者の持分を買い戻す、債務者が返済の見通しを示すなど、ほかの形で調整することが多くなります。具体的な進め方は、弁護士に確かめます。
住宅ローンのペアローンなど、夫婦それぞれが借入れをしている場合は、別の問題です。連帯債務では、債権者は、連帯債務者の1人にも、全員にも、全部または一部の請求ができます(民法436条)。この場合は家族自身が債務者として、財産を差し押さえられます。ローンの滞納から競売までの流れは住宅ローンが払えないと競売に?滞納からの流れと任意売却の時期で扱っています。
Q5. どんなときに、家族自身が支払う義務を負いますか?
家族というだけでは、借金を払う義務は生じません。義務が生じるのは、次のように、家族自身が契約や法律の当事者になっている場合です。
| 場合 | 家族が負う責任 |
|---|---|
| 保証人・連帯保証人になっている | 債務者が払えないとき、家族に請求が来る |
| 連帯債務者になっている | 全額の請求を受け得る |
| 日常の家事で生じた債務 | 夫婦の他方も連帯して責任を負う(民法761条)。範囲は事案ごとに判断される |
| 相続した | 借金も相続される。相続放棄などの期限がある |
貸金業者は、債務者以外の家族に代わりに返済するよう要求してはいけません(貸金業法21条1項7号)。家族に取立てが来たときの対応は借金で家族に取り立てが来たら?払う義務の有無と業者への伝え方にあります。保証人になっていない家族が、本人を相談につなぐ手順は家族の借金が発覚したら|払う義務の有無と本人を相談につなぐ手順にまとめています。
Q6. 差押えの書類が、家族に知られることはありますか?
あります。差押命令や裁判所の書類は債務者に送達されますが、本人に会えないときは、同居者などで書類の受領について相当のわきまえのある者に交付できます(民事訴訟法106条1項)。同居の家族が受け取る可能性があります。給料の差押えでは、命令が勤務先にも届きます。
家族に隠すより、本人が先に事情を話し、債権者との話し合いと債務整理の検討に、家族も同席して進めるほうが、あとの混乱が少なくなります。
よくある質問
Q. 夫の借金で、妻の給料や預金口座が差し押さえられることはありますか?
妻が保証人や連帯債務者になっていない限り、妻名義の給料や口座を差し押さえる根拠はありません。差押命令は、債務者の債権として債権者が特定した勤務先や銀行へ出されるためです。ただし、妻が保証人などの場合は、妻自身が債務者として請求されます。
Q. 同居の家族が執行官に会ったとき、家族の持ち物は持っていかれますか?
差押えの対象は債務者の動産です。執行官は債務者の住居に入って捜索できますが、債務者以外の者が占有する動産は、その人が提出を拒めば差し押さえられません。自分の物なら、持ち主を示せる領収書や保証書を見せて、所有を説明します。
Q. 夫婦の共有名義の家は、夫の借金で競売にかけられますか?
差押えの対象になるのは債務者の持分だけです。ただし、金銭の支払いを目的とする強制執行では、不動産の共有持分も不動産とみなされ、競売にできます。買った人が共有者になり、共有物の分割を請求される形になります。
出典・参考にした公的な情報
- 民事執行法 第38条・第43条・第46条・第123条・第124条・第131条・第143条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第249条・第256条・第424条・第436条・第761条・第762条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法 第106条(補充送達)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国税徴収法 第39条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法 第252条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業法 第21条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。