差し押さえた物がオークションに?公売と競売の仕組みと止め方
差し押さえた財産を売る手続きは、税金や保険料の滞納で行う公売と、借金やローンで行う競売の2つです。国税庁の公売は、入札のほか、インターネットのオークションサイトで競り売りの形でも行われます。どちらも、売られる前に止める道があります。公売は、買受代金が納められる前に滞納している税金を完納すれば中止になります。競売は、債権者が申立てを取り下げれば止まりますが、買受けの申出が入った後は同意が要ります。
公売と競売の違い:誰が、何のために、どう売るか
名前も売り方も似ているため、まず自分の差押えがどちらかを見分けます。税務署・市区町村・年金事務所などからの差押えは公売の系統、カード会社・消費者金融・銀行など民間の債権者からの差押えは競売や執行官の売却の系統です。
| 項目 | 公売(税金・保険料の滞納処分) | 競売(借金・ローンの強制執行など) |
|---|---|---|
| 根拠 | 国税徴収法(地方税は国税徴収法の滞納処分の例による) | 民事執行法 |
| 差押えをする人 | 税務署長・自治体など役所 | 債権者の申立てを受けた裁判所・執行官 |
| 裁判所の手続き | 不要 | 債務名義(判決など)か担保権が必要 |
| 売り方 | 入札または競り売り(国税徴収法94条)。インターネットでは民間のオークションサイト上の競り売り | 期間入札などの入札 |
| 情報の出る場所 | 国税庁の公売情報ホームページ、各自治体のページ | 裁判所の不動産競売物件情報サイトBIT |
| 売れた代金 | 滞納した税金などに配当し、残りは滞納者に交付 | 債権者への配当 |
国税庁のインターネット公売ガイドラインは、競り売りの参加申込みや買受申込みを、民間事業者が運営する「KSI官公庁オークション」で行うと定めています。操作はネットオークションに似ていますが、公売には決まりがあります。公売参加申込が必要なこと、代金を期限までに一括で納めること、買受代金の納付までに公売が中止されれば落札しても買えないことなどが、国税庁のQ&Aに書かれています。
税金滞納の公売までの流れと、公売される財産
国税の滞納では、督促状を発した日から10日を過ぎても完納しないと、徴収職員は財産を差し押さえなければならないと定められています(国税徴収法47条1項)。差押えの後、税務署長は財産を換価するときは公売に付さなければならず(同法94条1項)、公売は入札か競り売りで行います(同条2項)。
公売の前後の流れは、次のとおりです。
| 段階 | 起きること | 根拠・出どころ |
|---|---|---|
| 差押え | 督促状から10日を過ぎても完納しないとき、財産が差し押さえられる | 国税徴収法47条 |
| 公売公告 | 公売の日の少なくとも10日前までに、財産・方法・日時・場所などを公告する。滞納者にも通知される | 同法95条・96条 |
| 公売情報の掲載 | 期日入札は入札期日の10日前までに、期間入札は入札期間初日のおおむね1か月前に掲載。見積価額は3日前までに掲載 | 国税庁の公売手続の一般的な流れ |
| 入札・売却決定 | 見積価額より低い金額では落札できない。動産は公売期日に売却決定。不動産は公売期日の後の売却決定期日に決定 | 同法111条・113条 |
| 買受代金の納付 | 売却決定の日が期限。税務署長は30日を超えない範囲で延ばせる。納めた時に買受人が財産を取得する | 同法115条・116条 |
| 配当 | 国税などに配当し、残りがあれば滞納者に交付 | 同法129条 |
公売される財産は、国税庁の公売情報ページで、土地・建物・農地などの不動産、時計・バッグなどの動産、自動車等、ゴルフ会員権などに分けて掲載されています。公売の財産は、現況のまま売られます。国は、品質に関する不適合の責任を負いません(国税庁Q&A)。
住民税、固定資産税、自動車税、国民健康保険料なども、滞納処分の仕組みは国税に準じています。市区町村の公売は、市区町村のサイトに載ります。税金の差押えそのものの流れは税金の滞納で差し押さえはいつ?督促状から差押えまでの流れ、国民健康保険料は国民健康保険が払えないと差し押さえ?督促から差押えまでと相談で扱っています。
公売を止める方法:完納の時期と、換価の猶予
公売は、差押財産を国が売り、その代金を国税に充てる制度です。そのため、国税庁のQ&Aは、売却(買受代金の納付)の前に滞納している国税が完納された場合などは、公売が中止されると説明しています。落札されても、買受代金の納付の前に公売が中止されれば、落札者は財産を買えません。国税徴収法117条も、買受代金の納付の前に完納の事実が証明されたときは、売却決定を取り消さなければならないと定めています。
払い切れないときは、換価の猶予を使えます。差押えを解除する制度ではなく、財産の売却を待ってもらう制度です。
申請による換価の猶予の条件は、次の表のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 国税徴収法151条の2 |
| 状況の条件 | 一時に納付すると、事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがある |
| 意思の条件 | 納税について誠実な意思がある |
| 申請の期限 | 国税の納期限から6か月以内 |
| 猶予の期間 | 1年以内 |
| 注意 | ほかに滞納している国税があると使えない(申請中・猶予中のものを除く)。申請書には財産目録などを付ける |
税務署長の判断で行う換価の猶予(同法151条)もあります。期限の6か月を過ぎていても、税務署に相談する意味があります。住民税などの地方税は、猶予や分納の中身が条例で決まり、自治体で違います。納税課(税務課)で聞きます。猶予の全体像は税金を滞納しそうなとき|納税の猶予の条件と申請・分割の考え方にあります。
税務署に連絡するときの話し方の例です。
文例:「差押えを受けた財産が公売にかかると聞いて連絡しました。一度に納付すると生活が続けられないため、換価の猶予と分割での納付を相談したいです。収入と支出が分かる書類を持って伺います。」
借金・ローンの競売を止めるとき
借金の場合は、債務名義を持つ債権者の申立てで裁判所が競売をします。借金の差押え全体の流れと対象は差し押さえとは?借金で差し押さえられるまでの流れと対象に、差押命令が届いたときの読み方は差押命令とは?裁判所から届く書類の読み方と次にすることに、預金の差押えは口座の差し押さえはいつ来る?預金が止まる仕組みと生活費の守り方にあります。不動産は、抵当権がなければ強制競売、住宅ローンのように抵当権があれば担保不動産競売です。開始決定を受けると差押えの効力が生じますが、債務者は通常の使い方で住み続けられます(民事執行法46条)。
競売の売却情報は、裁判所のBITで公開されます。期間入札の不動産は、入札期間が始まる日の2週間前までに公告されます。買受可能価額は、売却基準価額から10分の2を引いた額です(裁判所Q&A)。
競売を止める道は、債権者が申立てを取り下げることです。買受けの申出があった後は、最高価買受申出人などの同意が必要になります(民事執行法76条1項)。債権者と返済の話がつく見込みがあるなら、買受けの申出が入る前に進める必要があります。
住宅ローンの競売は、個人再生の住宅資金特別条項を使う道があり、再生手続開始の申立て後、認可の見込みがあると裁判所が認めれば、相当の期間を定めて抵当権の実行の中止を命じられます(民事再生法197条)。自己破産では、抵当権は別除権として破産手続によらずに行使できるため、競売は止まりません(破産法65条1項)。住宅の場合は住宅ローンが払えないと競売に?滞納からの流れと任意売却の時期にまとめています。
売られる前に確かめることは、次のとおりです。
- 書類の差出人(税務署・自治体・裁判所・債権者)と、書類に書かれた日付
- 公売・競売の対象になる財産と、売却の日
- 滞納の総額と、払える見込みの金額
- 税金以外の借金があるか
借金が複数あるときは、債務整理を扱う弁護士や認定司法書士に、書類を持って相談します。違いは債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いで確かめられます。相談先の窓口は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方に載せています。
よくある質問
Q. 差し押さえられた自分の物を、公売で買い戻せますか?
買えません。国税庁の公売情報は、公売財産を所有する滞納者を、参加できない人に挙げています。手元に残したい財産があるなら、公売の前に、滞納している税金を納めるか、換価の猶予を税務署に相談する形になります。
Q. 公売で売れた金額が、滞納額より多かったらどうなりますか?
売却代金は、差押えに係る国税、交付要求を受けた税金や公課、抵当権などで担保された債権などに配当され、配当した後に残りがあれば滞納者に交付されます(国税徴収法129条)。足りないときの順位は同法などで決まります。売れた金額が滞納額より多くても、抵当権つきの債権など、ほかに配当を受ける人がいれば、その分が先に差し引かれます。
Q. 借金の差押えでも、家財や車がオークションにかけられますか?
借金の差押えで売られるのは、不動産と自動車が裁判所の競売、家財などの動産は執行官の動産執行です。ただし生活に欠かせない家具や衣服、66万円までの現金などは差し押さえられません。車は[車は差し押さえられる?ローン中の車とローン完済後の車の違い](/sashiosae-kuruma/)で説明しています。
出典・参考にした公的な情報
- 公売情報(公売とは・公売手続の一般的な流れ・よくある質問)(国税庁)
- 公売手続の一般的な流れ(国税庁 公売情報)(国税庁)
- よくある質問(Q&A)(国税庁 公売情報)(国税庁)
- インターネット公売ガイドライン(国税庁 公売情報)(国税庁)
- 国税徴収法 第47条・第94条〜第96条・第111条・第113条・第115条〜第117条・第129条・第151条・第151条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事執行法 第45条・第46条・第76条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法 第65条(別除権)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事再生法 第197条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 強制競売(手続の案内)(裁判所)
- 担保不動産競売(手続の案内)(裁判所)
- 民事事件Q&A(買い受けたい不動産はどのように探せばよいのですか)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。