税金の滞納で差し押さえはいつから?督促状から10日の流れと押さえられる財産
この記事のもくじ
税金の滞納で差し押さえができるのは、督促状を発した日から10日を過ぎても完納しないときです(国税徴収法第47条、地方税法第331条)。借金のように判決などを待つ必要はなく、役所が自分で預金や給料を押さえられます。ただし、納税の猶予が認められれば、その期間は新たに差し押さえができません(国税通則法第48条第1項)。相談しただけで止まる決まりはないため、動くべき時期は、差し押さえの通知を見てからではなく、督促状が届いた時点です。
差し押さえができるまでの流れと日数
滞納から差し押さえまでの流れは、次の4つの段階で進みます。
滞納から差し押さえまでは、納期限、督促状、10日の期間、差し押さえの順に進みます。督促状は国税なら納期限から50日以内、住民税・固定資産税・自動車税なら納期限後20日以内(条例で別の期間もあります)に出されます(国税通則法第37条、地方税法第329条)。督促状の日付や欄の読み方は税金の督促状の読み方|納期限の欄・届いた日にすること・偽物の見分け方で扱います。
注意したいのは、「督促状を発した日」から数える点です。届いた日ではなく、役所が出した日が起点になります。届いた時点で、10日のうち数日が過ぎていることがあります。
条文は、10日を過ぎれば財産を「差し押えなければならない」と書いています。ただし、財産に強制執行が始まるなど繰上請求の事由が生じたときは、10日を待たずに差し押さえができます(国税徴収法第47条第2項)。
差し押さえの前に、役所は財産を調べます。徴収職員は、滞納者本人に加えて、滞納者に債務を負う勤務先や、財産を預かる金融機関などにも質問し、帳簿書類を検査できます(国税徴収法第141条)。
いくらから差し押さえられるのか
「何円なら差し押さえられないか」という線は、条文にありません。要件は日数で、督促状を発した日から10日を過ぎることです。滞納額が小さくても対象にはなり得ます。逆に、差し押さえは滞納額と費用を満たす範囲に限られ、必要な額を超える差し押さえはできません。差し押さえても滞納額に充てられる見込みがない財産の差し押さえ(無益な差し押さえ)もできません(同法第48条)。
差し押さえられやすい財産と、されない財産
差し押さえの対象は、お金に換えやすい財産です。
- 預貯金:口座が差し押さえられると、金融機関が滞納額の範囲で役所に支払います。
- 給料・賞与:勤務先に差し押さえの通知が届きます。全額ではなく、残す額が決まっています。
- 不動産・自動車:差し押さえたあと、公売などで売却されます。
- 老齢年金:国民年金法第24条は給付の差し押さえを禁じていますが、国税滞納処分で老齢基礎年金を差し押さえる場合は例外です。給料と同じ限度で対象になります(国税徴収法第77条)。
給料で手元に残る額は、国税徴収法第76条で決まっています。所得税・住民税(特別徴収されるもの)・社会保険料に、生活費の額(月10万7千円、生計を一にする配偶者その他の親族が1人増えるごとに4万8千円を加算)、そしてそれらを引いた残りの20%(生活費の額の2倍が上限)を加えた額までは差し押さえられません。筆者の計算で、独身、月給30万円、所得税・住民税・社会保険料の合計が6万円の場合は次のとおりです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 給料 | 30万円 |
| 所得税・住民税・社会保険料 | 6万円 |
| 生活費の額(独身) | 10万7,000円 |
| 残りの20%(30万円 − 6万円 − 10万7,000円 = 13万3,000円の20%) | 2万6,600円 |
| 差し押さえられない額(6万円 + 10万7,000円 + 2万6,600円) | 19万3,600円 |
| 差し押さえられ得る上限(30万円 − 19万3,600円) | 10万6,400円 |
この計算は借金の給料差し押さえ(原則として手取りの4分の1)とは別物です。
差し押さえができない財産もあります(第75条)。生活に欠かせない衣服・寝具・家具・台所用具、3か月分の食料と燃料、仕事に欠かせない器具、実印、仏壇・位牌などです。
家に来る?職員の見分け方と、偽の連絡への注意
差し押さえで職員が家に来る場合、国税庁は次の点を示しています。
- 徴収職員は、徴収職員証票と顔写真つきの身分証明書を持っている
- 差し押さえたときは差押調書を作り、謄本を渡す
- 現金を受け取ったときは、その場で領収証書を渡す
- 滞納整理を外部の業者に委託することはない
SMS、メール、LINEで国税の納付や差し押さえを通知することはなく、ATMの操作を求める連絡も偽物です。不審な連絡は、いったん切って最寄りの税務署に確かめます。詳しい見分け方は督促状の詐欺を見分ける方法|架空請求か本物か確かめる手順にあります。
差し押さえを避けるために、10日のうちにすること
督促状が届いたら、次の順で動きます。
- 督促状の「発した日」と、税目・金額・納期限を読む
- 払える額と時期を書いたメモを作る
- 税務署の徴収担当か、市区町村・都道府県の納税課に電話し、猶予や分割を相談する
- 相談した日と相手の名前を控える
- 約束した分割の額と日を守る
猶予の条件と書類は税金を滞納しそうなとき|納税の猶予の条件と申請・分割の考え方にあります。給料を押さえられると勤務先に伝わるため、会社への影響は税金の滞納は会社に知られる?給料の差し押さえと連絡の範囲で確かめられます。借金の差し押さえとの違いは差し押さえとは?借金で差し押さえられるまでの流れと対象に整理しています。
延滞金も、日数とともに増えます。割合と計算の流れは税金滞納の延滞金はいくら?いつから何%か・計算例と減免の相談で見ます。
よくある質問
Q. 税金の滞納は、何円から差し押さえられますか?
条文は差し押さえの要件を日数で定めていて、滞納額の下限は書かれていません。督促状を発した日から10日を過ぎても完納しないと、少額でも差し押さえの対象になり得ます。
Q. 差し押さえの前に、予告の連絡はありますか?
差し押さえの前にあたる通知は督促状です。督促状とは別に、差し押さえの予告を出すことを国税徴収法第47条は定めていません。督促状が届いたら、10日の間に窓口へ連絡して、猶予や分割を相談します。
Q. 家族の預金や給料も差し押さえられますか?
差し押さえの対象は、原則として滞納している本人の財産です。家族名義の預金や家族の給料が、本人の滞納を理由に差し押さえられることは通常ありません。ただし、本人名義の口座や、本人が持つ共有の財産は対象になり得ます。
出典・参考にした公的な情報
- 国税徴収法 第47条・第48条・第75条・第76条・第77条・第141条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国税徴収法施行令 第34条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国税通則法 第37条・第48条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方税法 第329条・第331条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国民年金法 第24条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国税庁をかたった偽メールにご注意ください(国税庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。