債務整理の全体と選び方 / 比較

債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違い

この記事のもくじ
  1. 4つの手続きの比較表
  2. 使える人の条件と対象になる借金
  3. 返済額と返済期間の決まり方
  4. 残る支払い・保証人・信用情報の違い
  5. 表から見る、手続きを比べるときの考え方

債務整理の種類は、任意整理・特定調停・個人再生・自己破産の4つです。いちばん大きな違いは、裁判所を使うかどうかと、返済が残るかどうかです。任意整理と特定調停は今の借金を分割で返し続ける手続き、個人再生は裁判所が認めた額まで減らして返す手続き、自己破産は免責によって返済の責任を免れる手続きです。この記事は、サイト内で手続きの違いを比べるときの基準の表として、条文番号をつけて並べています。

4つの手続きの比較表

まず全体を1つの表で見ます。細かい条件は次の見出しから順に説明します。

比較表:債務整理の種類ごとの違い
比べる点 任意整理 特定調停 個人再生 自己破産
裁判所の関与 なし 簡易裁判所(相手方の住所地) 地方裁判所 地方裁判所
使える人の条件 法律の定めなし(相手の合意が要る) 支払不能に陥るおそれがある人など(特定調停法2条1項) 継続的・反復的な収入の見込み、借金総額5,000万円以下(民事再生法221条1項) 支払不能(破産法15条1項・2条11項)
対象にする借金 選んで交渉できる 申し立てた相手方 原則すべての借金 原則すべての借金
返済額の決まり方 相手との合意 調停で合意(公正・妥当・経済的合理性:17条2項) 最低弁済額・清算価値などの下限以上(民事再生法231条・174条) 返済なし(財産から配当)
返済期間 合意による 合意による 原則3年・最長5年(民事再生法229条2項) なし
免責不許可事由 関係しない 関係しない 関係しない あり(破産法252条1項)。裁量免責あり(同条2項)
残る支払い 対象外にした借金 対象外の借金 税金など一般優先債権(民事再生法122条)、養育費など(229条3項) 税金・養育費・罰金など(破産法253条1項)
保証人への影響 請求が保証人に行くことがある 同左 計画は保証人に及ばない(民事再生法177条2項) 免責は保証人に及ばない(破産法253条2項)
官報 なし なし 載る(民事再生法10条) 載る(破産法10条)
資格の制限 なし なし なし 復権まで一部の資格に制限(破産法255条)

表の中で、任意整理だけは「法律の定めなし」が並びます。任意整理は特定の法律の手続きではなく、借入先との合意で返し方を決め直すものだからです。日本司法書士会連合会は、任意整理では過払い金があれば回収して他社の返済に充て、残りは分割返済の和解を結ぶと説明し、分割期間はおよそ3年程度の和解が多いとしています。

使える人の条件と対象になる借金

4つの手続きは、入口の条件が違います。

  • 任意整理:法律上の条件はありません。相手が話し合いに応じるかどうかで決まります。どの借入先を対象にするかを選べるので、保証人のついた借金や車のローンを外して進めることもできます(外したものは今の契約どおり払い続けます)。
  • 特定調停:金銭の借金を負っていて、支払不能に陥るおそれがある人などが対象です(特定調停法2条1項)。申立ての際に特定調停を求めることを述べ、財産の状況を示す明細書と関係する債権者の一覧表を出します(3条2項・3項)。
  • 個人再生:小規模個人再生は、継続して、または反復して収入を得る見込みがあり、再生債権の総額が5,000万円を超えない個人が使えます(民事再生法221条1項)。この5,000万円には住宅ローンなどの住宅資金貸付債権や、担保で回収できる見込みの額は含めません。給与所得者等再生は、さらに給与など定期的な収入があり、額の変動の幅が小さい人が対象です(239条1項)。
  • 自己破産:支払能力を欠くために、期限の来た借金を一般的かつ継続的に返せない状態(支払不能)が手続開始の原因です(破産法15条1項・2条11項)。借金がいくら以上という金額の線は条文にありません。

個人再生と自己破産は、原則としてすべての借金を手続きに入れます。一部の借入先だけを外すことはできず、家族や友人からの借金も債権者一覧に載せます。自己破産で、知りながら債権者名簿に載せなかった借金は免責されません(破産法253条1項6号)。

返済額と返済期間の決まり方

返済が残る3つの手続きで、返す額の決まり方を比べます。

任意整理と特定調停は、相手との合意で決まります。特定調停では、調停の内容が債務者の経済的再生に役立つ観点から、公正かつ妥当で経済的合理性があるものでなければならないとされています(特定調停法17条2項・20条)。合意がまとまらなければ、不成立で終わることもあります(18条)。

個人再生は、法律が返済総額の下限を決めています。小規模個人再生の最低弁済額は次のとおりです(民事再生法231条2項3号・4号)。

基準になる借金の総額 返済総額の下限(最低弁済額)
100万円未満 その全額
100万円以上500万円以下 100万円
500万円を超え1,500万円以下 5分の1
1,500万円を超え3,000万円以下 300万円
3,000万円を超え5,000万円以下 10分の1

※条文から筆者が整理した早見表。境目の金額はどちらの式でも同じ額になる。

このほかに、手元の財産を処分したと仮定した額(いわゆる清算価値)を下回る計画は認められません(174条2項4号・231条1項)。給与所得者等再生では、手取り年収から最低限度の生活費を引いた額の2年分以上という条件も加わります(241条2項7号)。返済は3か月に1回以上の分割で、期間は認可決定の確定から原則3年、特別な事情があれば5年を超えない範囲です(229条2項)。最低弁済額の計算は個人再生の最低弁済額の早見表で詳しく扱っています。

自己破産には返済の計画はありません。破産管財人が選ばれる管財事件では財産が換価されて配当され、財産が少なく費用も出せないときは、開始決定と同時に手続きを終える同時廃止になります(破産法216条1項)。

残る支払い・保証人・信用情報の違い

どの手続きでも消えない支払いがあります。自己破産で免責されないのは、税金などの租税等の請求権、悪意で加えた不法行為の損害賠償、故意・重大な過失による生命・身体の侵害の損害賠償、養育費や婚姻費用など、雇い人の給料などの請求権、知りながら債権者名簿に載せなかった請求権、罰金等です(破産法253条1項)。個人再生では、税金などの一般優先債権は再生手続によらずに随時払い(民事再生法122条)、養育費などは債権者の同意がない限り減らせません(229条3項)。

保証人がいる借金は、本人が手続きをしても保証人への請求は残ります。自己破産の免責は保証人に対する債権者の権利に影響せず(破産法253条2項)、個人再生の計画も同じです(民事再生法177条2項)。任意整理や特定調停で保証人つきの借金を対象にすると、債権者が保証人に請求することがあります。

信用情報には、どの手続きでも記録が残りえます。登録の仕方は機関ごとに違います。

信用情報機関 債務整理に関わる登録と期間(公式の説明)
CIC 契約内容と支払状況を、契約期間中と契約終了後5年間。延滞が61日以上か3か月以上、保証履行、破産手続開始の決定は「異動」と表示
JICC 2019年10月1日以降の契約は、債務整理・破産申立などの取引事実の情報を契約継続中と契約終了後5年以内
全国銀行個人信用情報センター 取引情報は契約終了日(完済されていなければ完済日)から5年を超えない期間。官報に載った破産・民事再生の手続開始決定は決定日から7年を超えない期間

手続きのデメリットを項目ごとに並べた一覧は債務整理のデメリットは?手続き別に失うものと影響の一覧にあります。

表から見る、手続きを比べるときの考え方

表を見るときは、次の3つの問いに当てはめると、比べる対象が絞れます。どの手続きを使うかの最終的な判断は、事情を聞いた弁護士・司法書士との相談で決まります。

  1. 返済を続けられる収入があるか:ないなら自己破産、あるなら任意整理・特定調停・個人再生が候補になります。
  2. 元金を減らさないと返せないか:利息や分割の見直しで足りるなら任意整理か特定調停、元金の減額が要るなら個人再生か自己破産です。2つの手続きを比べた記事として任意整理と個人再生の違いと自己破産と個人再生の違いがあります。
  3. 残したいものがあるか:家なら個人再生の住宅資金特別条項、資格を使う仕事なら自己破産以外、特定の借入先との関係なら任意整理で対象から外す、という分かれ方になります。

手続きの全体像と選ぶ順番は債務整理とは?4つの手続きの違いと自分に合う方法の選び方で説明しています。依頼を考える段階になったら、代理できる範囲(認定司法書士は1社140万円以下)、面談の方法、報酬の額と算定方法を書面で示してもらえるかを確かめて事務所を比べます。

よくある質問

Q. 任意整理と特定調停は、どちらも話し合いなのに何が違うのですか?

任意整理は裁判所を使わず、代理人の弁護士・司法書士が借入先と交渉するのが通常の形です。特定調停は簡易裁判所で調停委員会を交えて話し合い、まとまると調停調書が作られます。調書には判決と同じ効力があり、約束どおりに返さないと強制執行を受けることがあります。

Q. 個人再生と自己破産は、どちらも官報に載りますか?

どちらも官報に公告されます。破産法10条と民事再生法10条で、それぞれの法律による公告は官報に掲載して行うと定められています。任意整理と特定調停には、官報に公告する手続きはありません。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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