任意整理と個人再生の違い|借金額・収入・住宅で選ぶ分かれ道
任意整理と個人再生のいちばんの違いは、元本が減るかどうかです。任意整理は、利息を見直したうえで元本を原則そのまま3〜5年で分割して返します。個人再生は、裁判所が認めた再生計画で、借金を法律の下限(最低弁済額など)まで減らし、原則3年で返します。分かれ道は、①元本を3〜5年で返しきれるか、②住宅ローンを残して家に住み続けたいか、③借入先を選びたいか、④財産がどれくらいあるか、の4つです。
任意整理と個人再生の違い(比較表)
| 比べる点 | 任意整理 | 個人再生 |
|---|---|---|
| 元本 | 原則そのまま(利息制限法での引き直しは別) | 最低弁済額・清算価値などの下限まで減る(民事再生法231条・174条) |
| 利息 | 将来利息を付けない和解を目指して交渉 | 計画で決めた額を返す |
| 返済期間 | 合意しだい(3年程度が多く、5年もありうる) | 認可決定の確定から原則3年、特別の事情があれば5年まで(229条2項) |
| 裁判所 | 使わない | 地方裁判所に申し立てる |
| 対象 | 借入先を選べる | 原則すべての借金 |
| 使える条件 | 法律の定めなし(相手の合意が要る) | 継続・反復した収入の見込み、住宅ローン等を除く借金5,000万円以下(221条1項) |
| 住宅ローン | 対象から外して払い続ける | 住宅資金特別条項で、払い続けながら家を残せる(198条・199条) |
| 官報 | 載らない | 載る(10条) |
| 保証人 | 対象にすれば請求が行きうる | 計画は保証人に及ばない(177条2項) |
| 税金など | 対象外 | 一般優先債権として手続きの外で払う(122条) |
個人再生の返済総額の下限は、小規模個人再生では次のとおりです(民事再生法231条2項3号・4号)。基準になる借金が100万円未満ならその全額、100万円以上500万円以下なら100万円、500万円超1,500万円以下なら5分の1、1,500万円超3,000万円以下なら300万円、3,000万円超5,000万円以下なら10分の1です(筆者が条文から整理)。さらに、財産を処分したと仮定した額(清算価値)を下回る計画は認められません。給与所得者等再生では、手取り年収から最低限度の生活費を引いた額の2年分以上という条件も加わります(241条2項7号)。
分かれ道:借金額・収入・住宅・財産で選ぶ
どちらが合うかは、次の順に問いを当てはめると絞り込めます。最終的な判断は、事情を聞いた弁護士・司法書士との面談で決まります。
- 引き直し後の元本を、月に返済へ回せる額で60回(5年)以内に返しきれるか
- 返しきれる → 2へ
- 返しきれない → 個人再生(収入がなければ自己破産)を考える
- 住宅ローンを払いながら、家に住み続けたいか
- はい → 任意整理なら住宅ローンを外す。ほかの借金も重いなら個人再生の住宅資金特別条項
- いいえ・家はない → 3へ
- 保証人つきの借金など、外したい借入先があるか
- ある → 任意整理(外せる)。個人再生では保証人に請求が行く
- ない → 4へ
- 預金・保険の解約返戻金・車などの財産が多いか
- 多い → 個人再生では清算価値が上がり、返済額の下限が増える。任意整理のほうが差が小さいことがある
- 少ない → 返済総額で比べる(次の見出し)
日本司法書士会連合会の指針は、破産や民事再生が適切なのに安易に任意整理を選んではならない、としています。1で「返しきれない」に当たるのに任意整理を勧められたら、なぜその方法なのかを面談で聞いてください。
返済総額の違い|筆者の計算例
同じ借金で、任意整理と個人再生の返済額がどれだけ違うかを筆者が計算しました。前提は次のとおりです。任意整理は将来利息なしで60回の和解ができた場合、個人再生は小規模個人再生の最低弁済額を36回で返す場合とし、清算価値は最低弁済額より小さいとしています。依頼の費用と裁判所の費用は含めていません。
| 引き直し後の元本 | 任意整理(60回)の月額・総額 | 個人再生(36回)の月額・総額 | 総額の差 |
|---|---|---|---|
| 120万円 | 2万円・120万円 | 約2万7,800円・100万円 | 20万円 |
| 300万円 | 5万円・300万円 | 約2万7,800円・100万円 | 200万円 |
| 600万円 | 10万円・600万円 | 約3万3,400円・120万円 | 480万円 |
表から読み取れることは3つあります。
- 元本が小さいと差は小さい:120万円では総額の差は20万円で、36回で返す個人再生のほうが月額はかえって重くなります。裁判所の費用や手続きの手間を考えると、任意整理のほうが負担が軽い場合が多い金額帯です。
- 元本が大きいと差が広がる:300万円を超えると、個人再生の下限が100万円や5分の1に抑えられるため、差は数百万円になります。
- 月の返済に回せる額が決め手:600万円を60回で返すには月10万円が要ります。返済に回せる額が月5万円なら、任意整理では返しきれない計算です。
財産が多くて清算価値が最低弁済額を上回る人は、個人再生の総額がその分だけ増えます。最低弁済額の境目と計算は個人再生の最低弁済額の早見表、自分の元本で月額を出す表は次々に読む任意整理はいくらまでできる?借金額と月の返済額の目安にあります。
住宅ローンと車がある場合
住宅ローン:任意整理では、住宅ローンを対象から外して約束どおり払い続けます。ほかの借金だけを整理する形です。個人再生では、住宅資金特別条項を使うと、住宅ローンは原則として約束どおり払いながら、ほかの借金だけを減らせます(民事再生法198条・199条)。住宅ローン自体は減りません。また、住宅にほかの借金の担保が付いていると使えず、保証会社が住宅ローンを代わりに払ってから6か月を過ぎて申し立てた場合も使えません(198条1項・2項)。滞納が始まっているなら、早めに相談する理由になります。
車:ローンが残っていて所有権が売主やローン会社にある車は、そのローンを対象にすると引き揚げの対象になりえます。任意整理なら車のローンを外して払い続ける選び方ができますが、個人再生は原則すべての借金を入れるので、車の扱いを依頼先と先に話しておきます。家を残す方法は個人再生で住宅ローンを払い続ける特則、任意整理の側からは任意整理しても住宅ローンは払い続けられる?で詳しく説明しています。
任意整理の和解後に個人再生へ切り替える場合
任意整理で和解したあと、収入が減るなどして返済が続かなくなることがあります。そのときの選択肢は、和解した業者との再和解、個人再生、自己破産です。
個人再生に切り替えるときに気をつけたいのは次の点です。
- 和解した借金も、外していた借金も、すべて手続きに入る:任意整理では対象を選べましたが、個人再生では保証人つきの借金も含めて債権者一覧表に載せます。
- 手続きが始まると、計画以外の返済はできない:再生手続開始の後は、再生計画によらずに返済することが禁じられます(民事再生法85条1項)。特定の相手だけに返し続けることはできません。
- 任意整理で払った分は減ったまま:和解後に返した分は残高から引かれ、残りの額が個人再生の基準になります。
和解後の返済が苦しくなったときの段取りは任意整理の返済が払えないとき|遅れたらどうなるかと再和解にまとめています。個人再生の全体の流れは個人再生とは?返済額が決まる仕組みと家を残す条件・流れへ。任意整理の良い点をもう一度確かめたいときは、前の記事の任意整理のメリットを、自己破産とも比べたいときは次に読む任意整理と自己破産の違い|返済の有無と失うものを比べるを読んでください。
依頼先を選ぶときは、任意整理と個人再生の両方の見通しと費用の総額を、同じ借入先の一覧をもとに出してもらいます。個人再生は地方裁判所の手続きなので、申立ての代理まで頼むなら弁護士、書類作成の支援なら司法書士、と頼める範囲も確かめておきます。
よくある質問
Q. 個人再生は任意整理より費用がかかりますか?
個人再生では、依頼先の費用のほかに裁判所へ納めるお金が要ります。申立ての手数料は収入印紙1万円分で、ほかに郵便料、官報公告の費用、個人再生委員が選ばれた場合はその費用がかかり、額は裁判所ごとに違います。依頼先の費用も含めた総額を、任意整理の見積もりと同じ社数で並べて比べてください。
Q. 任意整理で外した借金を残したまま、個人再生だけ別にすることはできますか?
できません。個人再生は原則としてすべての借金を手続きに入れ、申立てのときに債権者一覧表を出します(民事再生法221条3項)。任意整理で外していた保証人つきの借金や家族からの借金も一覧に載せることになり、保証人には請求が行きえます。
Q. 住宅ローンがない人でも個人再生を使えますか?
使えます。住宅資金特別条項は家を残したい人のための仕組みで、個人再生そのものの条件ではありません。条件は、継続的または反復して収入を得る見込みがあり、住宅ローンなどを除いた借金の総額が5,000万円以下であることです(民事再生法221条1項)。
出典・参考にした公的な情報
- 民事再生法 第10条・第85条・第122条・第174条・第177条・第196条〜第199条・第221条・第229条・第231条・第241条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個人再生手続(裁判所)(最高裁判所)
- 裁判手続 民事事件Q&A(個人再生・住宅資金特別条項)(最高裁判所)
- 民事訴訟費用等に関する法律 別表第一(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- よくあるご質問(任意整理の分割の期間)(日本クレジットカウンセリング協会)
- 債務整理事件の処理に関する指針(令和7年理事会決定・改正)(日本司法書士会連合会)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。