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任意整理と自己破産の違い|返済の有無と失うものを比べる

この記事のもくじ
  1. 任意整理と自己破産の違い(比較表)
  2. 返済が残るか|免責の仕組みと免責されない借金
  3. 失うものを比べる|財産・資格・転居・官報
  4. 保証人と信用情報はどう違うか
  5. 返済の見込みが立たないときの判断の材料

任意整理と自己破産のいちばんの違いは、元本の返済が残るかどうかです。任意整理は、利息を見直したうえで元本を3〜5年で返しきります。自己破産は、裁判所が免責を許可して決定が確定すれば、税金などを除く借金の返済の責任を免れます(破産法252条7項・253条1項)。その代わり、一定の財産を手放し、手続きの間は転居などに制限がかかり、官報に載ります。月に返せる額で元本を返しきれないときに、自己破産が選択肢に上がります。

任意整理と自己破産の違い(比較表)

比較表:任意整理と自己破産の違い
比べる点 任意整理 自己破産
元本の返済 引き直し後の元本を、原則そのまま分割で返す 免責が確定すれば、免責されない借金を除いて返済の責任を免れる
手続きの場 裁判所の外(借入先との和解) 地方裁判所に申し立てる
対象の借金 借入先を選べる 原則すべての借金を債権者一覧に載せる
財産 手放す仕組みはない 一定の額を超える財産は、換価して債権者に配当される
資格・仕事 制限なし 免責の確定(復権)まで、一部の資格・仕事に制限
転居・郵便 制限なし 破産手続が終わるまで転居に裁判所の許可が要る。管財事件では郵便物が管財人に届く
官報 載らない 載る(破産法10条)
保証人 対象にした借金は、保証人に請求が行きうる 免責されても、保証人への債権者の権利は残る(253条2項)
税金・養育費など 対象外で払い続ける 免責されない(253条1項)
免責されない場合 なし(合意が条件) 浪費・賭博などの免責不許可事由がある(252条1項)

手続き全体の比較は債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いに、条文つきの基準表があります。個人再生を含めた選び方は任意整理と個人再生の違い|借金額・収入・住宅で選ぶ分かれ道で扱っています。

返済が残るか|免責の仕組みと免責されない借金

自己破産は、破産手続の開始と免責の許可の2つで成り立っています。裁判所の説明でも、破産手続が開始されただけで返済を免れるわけではなく、免責の許可が要るとされています。免責許可の決定は、確定しなければ効力を生じません(破産法252条7項)。

免責が確定しても、次の請求は免責されません(253条1項)。

  • 租税等の請求権(税金、国民健康保険料、年金保険料など)
  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償
  • 故意または重大な過失で人の生命・身体を害した不法行為の損害賠償
  • 養育費・婚姻費用など、扶養に関する義務の請求
  • 雇用関係に基づく使用人の請求
  • 知りながら債権者名簿に載せなかった請求権
  • 罰金等

税金や保険料の滞納が借金の大きな部分なら、自己破産でも残ります。任意整理でも、税金や保険料は対象外で払い続けるので、どちらの手続きでも別に手当てが要ります。納税の猶予の考え方は税金を滞納しそうなとき|納税の猶予の条件と申請・分割の考え方に、自己破産で免責されない支払いの一覧は自己破産しても払う必要がある支払い|税金・養育費などの一覧にまとめています。

もう一つの違いは、免責が許可されない場合があることです。破産法252条1項には、財産を隠す、浪費または賭博その他の射幸行為で著しく財産を減らした、虚偽の債権者名簿を出した、前回の免責許可の確定から7年以内の申立てである、などの事由が並びます。これに当たっても、裁判所が一切の事情を考えて免責を許可できる仕組みがあります(同条2項)。ただし許可されるとは限らないので、心当たりがあれば面談で先に伝えます。仕組みは自己破産の免責不許可とは?で詳しく扱っています。

失うものを比べる|財産・資格・転居・官報

財産:破産手続の開始の時に持っている財産は、原則として破産財団になります(破産法34条1項)。ただし、現金は99万円まで手元に残せます(民事執行法施行令1条の66万円の1.5倍。破産法34条3項1号)。差し押さえが禁止されている生活に欠かせない家財なども対象外です。預金・保険の解約返戻金・車などをどこまで残せるかは条文に一律の基準がなく、裁判所ごとの運用で変わります。財産が少なく手続きの費用も出せないと認められれば、管財人を選ばない同時廃止事件になります(216条1項)。違いは自己破産の同時廃止と管財事件の違いで説明しています。

資格・仕事:たとえば警備業法は、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者を警備員にできない人に挙げています(3条1号)。免責許可の決定が確定すれば当然に復権するので(破産法255条1項1号)、制限は免責が確定するまでです。どの仕事が対象かは各資格の法律で決まるため、該当しそうな仕事なら先に確かめます。一覧は自己破産で就けない仕事にあります。任意整理には、こうした資格の制限はありません。

転居と郵便:破産者は、破産手続が終わるまでの間、裁判所の許可なしに居住地を離れられません(37条)。管財事件では、裁判所の嘱託で郵便物が管財人に配達されることがあります(81条)。同時廃止では手続きが開始と同時に終わるため、実際に問題になるのは主に管財事件の間です。

官報:破産法の公告は官報に掲載されます(10条)。任意整理は裁判所を使わないので載りません。なお、自己破産でも選挙権はなくならないと、裁判所の民事事件Q&Aは説明しています。

保証人と信用情報はどう違うか

保証人:自己破産で免責されても、保証人・連帯保証人に対する債権者の権利は消えません(破産法253条2項)。任意整理で保証人つきの借金を対象にしたときも、債権者が保証人に残りを請求することがあります。どちらの手続きでも、保証人に事前に伝えるか、その借金を外すかの判断が要ります。詳しくは保証人がいる借金を任意整理するとどうなる?と自己破産すると連帯保証人はどうなる?で説明しています。

信用情報:信用情報機関ごとに、記録の残る期間の数え方が違います。

手続き JICC CIC 全国銀行個人信用情報センター
任意整理 契約終了後5年が目安(機関ごとの数え方は任意整理でブラックリストに載る期間|信用情報の登録と消える時期) 契約終了後5年が目安 契約終了日から5年が目安
自己破産 破産申立の情報を、契約継続中と契約終了後5年以内。免責確定日を完済日として報告 免責の確定後、登録元が免責で契約が終了した日から5年 取引情報のほか、官報情報(破産の開始決定)を決定日から7年を超えない期間

任意整理は、和解した返済が続く間が「契約継続中」にあたります。筆者の整理では、3〜5年の返済期間と完済後の5年を合わせた期間が、記録の残りうる目安です。自己破産は、免責が確定した日が契約終了の起点になります。どちらが短いかは返済期間の長さ、機関、契約日で変わるため、「何年で消える」と一つの数字で比べることはできません。

返済の見込みが立たないときの判断の材料

任意整理から自己破産へ移るかどうかを分ける、いちばん大きな材料は、引き直し後の元本を、月に回せる額で60回以内に返しきれるかです。筆者の計算で、不足の額を出してみます(将来利息なしで60回、元本÷回数)。

月に返済へ回せる額 60回で返しきれる元本 元本300万円のときの不足 元本600万円のときの不足
3万円 180万円 120万円 420万円
5万円 300万円 0円 300万円
8万円 480万円 0円 120万円

不足の額が大きく、回数を延ばしても埋まらないなら、任意整理の返済は途中で行き詰まりやすくなります。回せる額の出し方と、元本ごとの月額の早見表は任意整理はいくらまでできる?借金額と月の返済額の目安にあります。

破産法の入口の条件は、支払不能です。支払能力を欠くために、期限が来た借金を一般的かつ継続的に返せない状態をいいます(破産法15条1項、2条11項)。借金の額の下限や上限は条文になく、収入・財産・生活費との関係で裁判所が判断します。

選ぶ前に、次の点を自分に当てはめてみます。

  1. 月に回せる額で、元本を3〜5年で返しきれるか。返しきれないなら、自己破産か個人再生を比べる
  2. 手放したくない財産(持ち家、車、解約返戻金のある保険)はあるか。あるなら、個人再生や任意整理の側が有利になりうる
  3. 就いている仕事や、目指す仕事に資格の制限があるか
  4. 保証人のついた借金があり、保証人への請求を避けたいか
  5. 浪費やギャンブルでできた借金、特定の人にだけ返した履歴など、免責不許可事由に近いことがあるか
  6. 税金・養育費など、免責されない支払いの割合が大きくないか

最終的な判断は、収入・財産・借入先の一覧を持って弁護士に面談して決めます。裁判所は、中立の立場にあるため、破産や再生の申立てに関する相談には応じられないと案内しています。自己破産の申立ての代理は弁護士の仕事で、司法書士は裁判所に出す書類の作成を担当します(司法書士法3条1項4号)。弁護士と司法書士の線は債務整理は弁護士と司法書士どっち?140万円の線と選ぶときの確認点で確かめられます。

自己破産の全体の流れと失うものは自己破産とは?手続きの流れ・失うもの・生活への影響を全体でで詳しく扱っています。任意整理の側から良い点を確かめ直したいときは任意整理のメリットも参考になります。

自己破産に進む場合も、任意整理に進む場合も、依頼先を選ぶときは、手続きごとの見通しと費用の総額を同じ借入先の一覧をもとに出してもらいます。自己破産の申立てを任せるなら、弁護士に相談するという選択肢があります。

次は、借金額と月の返済額の目安を任意整理はいくらまでできる?借金額と月の返済額の目安で自分の数字に当てはめてみましょう。

よくある質問

Q. 任意整理の和解をしたあとで、自己破産に切り替えられますか?

返済が続かなくなれば、和解のあとでも自己破産を申し立てることはできます。裁判所が見るのは支払不能かどうかで、和解した借金の残りも手続きに入ります。切り替える前に、家族や友人など特定の相手にだけ返済することは、後で問題にされることがあるので控えます。

Q. 自己破産は任意整理より信用情報への登録が長く続きますか?

起点と機関で違うので一概に比べられません。JICC では任意整理も破産申立ても、契約継続中と契約終了後5年以内が目安です。任意整理は3〜5年の返済の間が契約継続中にあたるため、完済後の5年と合わせると長くなる場合があります。全国銀行個人信用情報センターは、破産の官報情報を決定日から7年を超えない期間持ちます。

Q. 自己破産は自分で申し立てることもできますか?

本人が地方裁判所に申し立てること自体はできます。収入印紙は破産の申立てが1,000円、免責の申立てが500円で、ほかに予納金などが要り、額は裁判所ごとに違います。ただし裁判所は申立ての相談には応じないため、準備は弁護士に頼むか、書類の作成なら司法書士に頼む選び方もあります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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