自己破産 / 基本ガイド

自己破産とは?流れ・失うもの・生活への影響をまとめて確認

この記事のもくじ
  1. 自己破産は「破産手続」と「免責」の2本立て
  2. 手続きの流れと、同時廃止・管財事件の分かれ目
  3. 手元に残る財産と、手放す財産
  4. 免責されない支払いと、免責が許可されない場合
  5. 自己破産をした後の生活への影響
  6. 困りごと別の道案内と、手続きの選び方・相談先

自己破産とは、返済できなくなった借金について、裁判所に破産手続の開始と免責の許可を求める手続きです。免責許可の決定が確定すると、税金や養育費などを除いて返済の責任を免れます。手続が始まっただけでは借金は消えず、免責が確定して初めて責任を免れる点が、いちばん大切な前提です(裁判所「破産・再生」、破産法252条7項)。その代わり、一定額を超える財産は手放し、手続の間は引っ越しや一部の仕事に制限がかかります。

自己破産は「破産手続」と「免責」の2本立て

自己破産は、1つの手続に見えて、実際は2つの判断でできています。

段階 裁判所が決めること 本人にとっての意味
破産手続 破産手続開始の決定をするか、その後に管財人が財産を調べて配当するか 持っている財産を整理し、債権者に分ける
免責 免責許可の決定をするか 許可が確定すると、返済の責任を免れる

個人が自分で申し立てた場合は、破産の申立てと同時に免責の申立てもしたものとみなされます(破産法248条4項)。ただし、免責の申立てには別に収入印紙500円が要ります。申立てに納める印紙は、破産手続の開始分1,000円と免責分500円で、合計1,500円です(裁判所の民事事件Q&A)。

開始の原因は「支払不能」です。支払能力を欠いて、弁済期のきた債務を一般的かつ継続的に払えない状態を指します(破産法2条11項・15条1項)。借金が何円以上という線はありません。収入が途絶えた、病気で働けない、返済のために別の借入れを重ねているといった事情を、裁判所が総合して見ます。

申立先は、原則として住所地を管轄する地方裁判所です。裁判所は中立の立場にあるため、申立てについての相談には応じません。破産を考える人には弁護士への相談を案内しています(裁判所「破産・再生」)。相談先の選び方は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方にまとめています。

手続きの流れと、同時廃止・管財事件の分かれ目

流れを短く言うと、依頼先に相談して書類をそろえ、地方裁判所に申し立て、開始決定を受け、免責の許可を受けるという順です。全体の時系列は自己破産の流れ|相談から免責許可の決定までの期間と手順で段階ごとに説明しています。

時系列図:自己破産が終わるまでの大まかな流れ
  1. 相談・依頼(弁護士などに借入先と収入・財産を伝える)
  2. 申立ての準備(債権者一覧表・財産目録・家計の資料をそろえる)
  3. 地方裁判所へ破産手続開始と免責許可の申立て
  4. 破産手続開始の決定(ここから手続中の制限が始まる) 5-a. 同時廃止:開始と同時に手続が終わる。意見申述の期間を経て免責の判断へ 5-b. 管財事件:破産管財人が財産と免責不許可事由を調べ、債権者集会が開かれる
  5. 免責許可の決定、確定(確定して初めて効力が生じる)

分かれ目になるのが、破産管財人を選ぶかどうかです。破産法は管財事件が原則で、財産が少なく、手続の費用も払えないと認められるときは、開始と同時に手続を終える同時廃止になります(破産法216条1項)。どちらになるかは裁判所が決めます(裁判所の民事事件Q&A)。

同時廃止 管財事件
管財人 選ばれない 裁判所が選ぶ
債権者集会 開かれない 原則として開かれる
費用の例 東京地裁の予納金基準額は13,046円 東京地裁の個人の管財は最低20万円と、1件につき20,397円

費用の例は東京地方裁判所民事第20部が令和8年1月1日現在として公表している額で、ほかの裁判所は額が違います。東京地裁は、33万円以上の現金があるとき、20万円以上の換価の対象になる資産(預貯金・保険の解約返戻金など)があるとき、免責の調査を経るのが相当なときなどを、原則として管財事件にするとしています(同裁判所「よくある質問」)。分かれ目の詳細は自己破産の同時廃止と管財事件の違い|分かれ目と費用・期間にあります。

手元に残る財産と、手放す財産

破産手続開始の時に持っていた財産は、原則として破産財団になり、換価して債権者への配当に回ります(破産法34条1項)。ただし次のものは財団に入らず、手元に残ります(同条3項)。

  • 現金のうち99万円まで(民事執行法施行令1条の66万円に2分の3を掛けた額。筆者の計算で99万円)
  • 差し押さえが禁止された財産(生活に欠かせない衣類・寝具・家具・台所用具、仕事に欠かせない器具など。民事執行法131条)
  • 開始の後に働いて得た給料(開始時の財産ではないため)

一方で、一定額を超える預貯金、解約返戻金のある生命保険、ローンの残っていない車、不動産などは、換価の対象になりえます。何をいくらまで残せるかの目安(換価基準)は、条文ではなく裁判所ごとの運用で決まります。したがって「99万円までなら何でも残せる」とは言えません。99万円は現金の額で、預金は別の扱いになります。財産の種類ごとの考え方は自己破産したら何を失う?手元に残せる財産と残せない財産で、持ち家については自己破産すると持ち家はどうなる?手放す流れと住み続ける方法で扱っています。

免責されない支払いと、免責が許可されない場合

免責が確定しても、税金などの租税等の請求権、悪意で加えた不法行為の損害賠償、養育費など扶養に関する義務、雇用関係の請求権、知りながら債権者一覧に載せなかった請求権、罰金等は免責されません(破産法253条1項)。個々の保険料などが租税等に含まれるかは、納付先の役所で確かめます。

税金の滞納がある場合は、自己破産をしても残ります。払える見通しは、役所の窓口で分納を相談する形で立てます。分割の考え方は税金を滞納しそうなとき|納税の猶予の条件と申請・分割の考え方にあります。一覧は自己破産しても払う必要がある支払い|税金・養育費などの一覧で詳しく見られます。

もう一つの関門が、免責不許可事由です。破産法252条1項は11の事由を挙げ、財産を隠した、特定の債権者だけに返した、浪費や賭博で財産を著しく減らした、債権者一覧に虚偽を書いた、裁判所の調査に説明を拒んだ、といったものがあります。事由に当たっても、裁判所が開始に至った経緯など一切の事情を考えて相当と認めるときは、免責を許可できます(同条2項、裁量免責)。当たるかどうか、許可されるかどうかは個別の判断です。この記事では結論を出さず、注意する行為は自己破産の免責不許可とは?注意する行為と裁量免責の仕組みで整理しています。

保証人がいる借金は、本人が免責されても、保証人への債権者の権利は残ります(破産法253条2項)。保証人への影響は自己破産すると連帯保証人はどうなる?請求の流れと話し合い方で説明しています。

自己破産をした後の生活への影響

影響は、「手続の間だけ続くもの」と「記録として残るもの」に分けると整理しやすくなります。

項目 内容 根拠
転居・旅行 開始決定から手続が終わるまで、裁判所の許可なしに居住地を離れられない 破産法37条1項
郵便物 管財事件では、破産者あての郵便物が管財人に配達され、開いて見られることがある 破産法81条・82条
資格・職業 警備業、宅地建物取引士の登録、生命保険募集人の登録などで、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」が欠格とされる 警備業法3条1号・14条、宅地建物取引業法18条1項2号、保険業法279条1項1号
復権 免責許可の決定が確定すると、当然に復権し、資格の制限が外れる 破産法255条1項1号
官報 開始決定などは官報に公告される 破産法10条
信用情報 全国銀行個人信用情報センターは、官報の破産の開始決定を決定日から7年を超えない期間持つ 同センターの公表
戸籍・選挙権 戸籍や住民票に載らず、選挙権も失わない 裁判所の資料

転居の許可は、同時廃止なら開始と同時に手続が終わるため、実際に問題になるのは主に管財事件の間です。数日の旅行で許可が要るかなど細かい運用は条文にないので、依頼先と裁判所に確かめます。資格制限の詳細は自己破産で就けない仕事|警備員など資格制限の一覧と期間にあります。

家族への影響は、本人の借金が家族の返済義務になるわけではありません。保証人や連帯債務者でない家族の財産は、破産財団に入りません。家族の暮らしや信用情報への響き方は自己破産の家族への影響は?配偶者・子どもの生活と信用情報で見られます。デメリットを一覧で見たい場合は自己破産のデメリット一覧|失うもの・制限・家族への影響が入口です。

困りごと別の道案内と、手続きの選び方・相談先

知りたいことから、次の記事に進めます。

ここからは、自分に合う手続きかを考える材料と相談先です。自己破産は、収入が続く見込みが薄い、または借金が大きく、元の借金を返す見通しが立たない人が検討する手続きです。収入が続くなら、返済額を減らして払う任意整理や個人再生が候補になります。手続きの全体像は債務整理とは?4つの手続きの違いと自分に合う方法の選び方に、家を残したい場合の比較は自己破産と個人再生の違い|家・仕事・返済額で選ぶ判断材料にあります。

どの手続きを使うかは、収入・財産・借金の額と、家や仕事の事情で決まります。個別の見立ては、弁護士など資格のある人に、書類を見せて聞く形で確かめるのが現実的です。費用が心配なときは、法テラスの民事法律扶助による立替えが使える場合があります(借金が返せないとき法テラスでできること|無料相談と費用立替の流れ)。

自己破産の依頼先を探すときは、弁護士に頼む選択肢もあります。見積書で総額を確かめ、報酬の内訳と分割払いの可否を書面で示してもらう、資格者本人と面談できるかを確かめる、といった点を見て選びます。

相談の前に、借入先の一覧(会社名・残高・毎月の返済額)、収入が分かる資料、持ち家・車・保険などの財産が分かる資料をそろえておくと、話が早く進みます。次に読むなら、手続きを時系列でたどる自己破産の流れ|相談から免責許可の決定までの期間と手順が続きです。

よくある質問

Q. 自己破産をすると借金は全部なくなりますか?

免責許可の決定が確定すれば、返済の責任を免れます。ただし税金、罰金、養育費など、免責されない請求権が破産法253条1項に挙げられています。手続が開始されただけの段階では、借金は消えません。

Q. 自己破産は借金がいくら以上ならできますか?

金額の下限は法律にありません。開始の原因は「支払不能」で、収入・財産・借金の額と返済の見通しをあわせて裁判所が判断します(破産法15条・2条11項)。金額だけで、できる・できないは決まりません。

Q. 自己破産をすると戸籍や選挙権に影響しますか?

裁判所の資料は、戸籍や住民票に載ることはなく、選挙権も失わないと説明しています。官報に公告が載ること、一部の資格や職業に制限がかかることは影響として残ります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

自己破産の流れ|相談から免責許可の決定までの期間と手順

自己破産のデメリット一覧|失うもの・制限・家族への影響

自己破産したら何を失う?手元に残せる財産と残せない財産

債務整理とは?4つの手続きの違いと自分に合う方法の選び方