自己破産しても結婚できる?相手と家族への影響と伝え方
この記事のもくじ
自己破産をしていても、結婚はできます。民法が定める婚姻の要件(年齢、重婚の禁止、近親者間の禁止など)に、破産の有無は入っていません。戸籍にも住民票にも自己破産の事実は載らず、相手の信用情報にも載りません。影響が出るのは、結婚そのものではなく、結婚後に二人の名前でお金を借りる場面、手続きの最中に引っ越す場面、そして相手にどう伝えるかです。
結婚できるか・戸籍や相手の記録に載るか
最初に、結婚を考える人が気にする点を、根拠つきで一覧にします。
| 気になること | 答え | 根拠 |
|---|---|---|
| 結婚の届出ができなくなる | ならない。婚姻の要件に破産は入っていない | 民法731条〜739条 |
| 戸籍に載る | 載らない | 大分地方裁判所のQ&A、戸籍法13条 |
| 住民票に載る | 載らない | 大分地方裁判所のQ&A、住民基本台帳法7条 |
| 相手の信用情報に載る | 載らない | CIC よくあるご質問 |
| 相手が借金を払う義務を負う | 原則なし。保証人・連帯債務者・日常家事債務は別 | 大分地方裁判所のQ&A、民法761条 |
| 官報に載る | 開始決定・免責決定が載る | 大分地方裁判所のQ&A、破産法10条 |
戸籍については、大分地方裁判所のQ&Aが「破産手続や個人再生手続を利用しても、戸籍に記載されることはない」と答えています。戸籍法13条を読むと、戸籍に書く事項は氏名、出生の年月日、戸籍に入った原因、父母の氏名、夫婦である旨などで、破産は挙がっていません。住民票も、住民基本台帳法7条が記載事項として氏名、生年月日、住所、世帯主との続柄などを定めていて、破産の事実は含まれていません。同じ大分地裁のQ&Aは、「戸籍や住民票に載ることはなく、選挙権を失うこともない」と書いています。
相手の信用情報については、CICが「ご家族の信用情報を確認することはできない」と案内していて、開示は本人の申込みが原則です(親権者・後見人などの法定代理人は例外)。また、官報に載る自己破産の情報そのものはCICに登録されず、免責が確定したときに登録元の会社が契約終了日として登録するのは、あなたが結んだ契約の情報です。相手の契約の履歴に、あなたの破産が書き加えられる仕組みは、各機関の案内にありません。
影響が出る場面:相手の名義の借入れと二人で組むローン
相手に影響が出る場面は、あなたの記録そのものではなく、二人の契約が重なる場面です。大分地裁のQ&Aも、家族が(連帯)保証人になっていなければ影響は小さいとしたうえで、破産したことで「家族がローンを組んだり、クレジットカードを作る際の与信審査に影響が出る可能性はある」と書いています。次の4つの場面で考えます。
- 相手が単独で住宅ローンを組む:審査の中心は相手の収入と相手の信用情報です。あなたの記録は、あなたが申込者や担保提供者、連帯保証人に入らない限り、直接は見られません。
- ペアローン・連帯債務・収入合算・連帯保証:あなたも借り手や保証人として審査を受けるので、自分の信用情報が使われます。登録が残る間は通りにくくなります。審査の判断は金融機関ごとで、信用情報機関は審査をしません。
- 収入のない人が配偶者の年収で審査を受ける:CICの案内によると、配偶者の同意を得て配偶者の年収で審査をする場合があり、契約が成立すると本人と配偶者の属性情報(氏名・生年月日など)がCICに登録され、開示のときに配偶者の情報が回答されます。登録されるのは属性で、借入れの履歴ではありません。
- 相手の名義でカードやローンを作ってもらう:実際に使って返すのが自分でも、遅れたときに記録が残るのは名義人の相手です。名義を借りる形は、二人の信用を傷つけやすくなります。
保証人になっている家族がいる借金は別の話です。免責は保証人への請求に影響しないと、破産法253条2項が定めています。この点は自己破産の家族への影響は?配偶者・子どもの生活と信用情報で扱っています。債務整理全般の結婚への影響は債務整理は結婚に影響する?相手への伝え方と家族の信用情報にまとめています。
結婚前の借金を相手が払う義務は、原則としてありません。大分地裁のQ&Aは、(連帯)保証人になっていなければ法律上は返済する必要がないとしています。例外は、結婚後に日常の家事のために使った債務(食料品の購入、家賃や光熱費、家族の医療費、子どもの教育費など)で、民法761条が夫婦の連帯責任を定めています。範囲は夫婦の借金は連帯責任?日常家事債務の範囲と払わなくてよい借金で整理しています。
また、あなたの自己破産で処分の対象になるのは、あなた自身の財産だけです。破産財団は破産者が破産手続開始の時に持っている財産で(破産法34条1項)、相手の名義の財産は含まれません。夫婦の一方が婚姻前から持つ財産と、婚姻中に自分の名で得た財産は、その人の特有財産とされます(民法762条1項)。ただし、どちらのものか明らかでない財産は共有と推定されます(同条2項)。結婚後に買った物の名義があいまいなときは、依頼先に伝えてください。
手続きの時期と結婚が重なるとき
自己破産の手続きが進んでいる最中に結婚する場合は、次の3点を先に確かめます。
転居の制限:破産手続の開始決定を受けた人は、手続きが終わるまでの間、裁判所の許可なしに転居できません(破産法37条、裁判所の民事事件Q&A)。同時廃止は開始決定と同時に手続きが終わるので、主に問題になるのは破産管財人が選ばれる管財事件の間です。結婚で同居を始める場合や、相手の家に入る場合は、住所の変更が許可の対象になりうるので、入籍や引っ越しの日を決める前に依頼先へ伝えます。許可の申立てを却下する決定には即時抗告ができます(破産法37条2項)。
郵便物:管財事件の間は、あなた宛の郵便物が管財人に届けられることがあります(破産法81条・82条。仕組みと止まる時期は自己破産は会社にばれる?家族に知られる場面と官報・郵便物の扱いの表にあります)。同居を始める前に、そのことを相手に説明しておくと、行き違いを防げます。
新たな借入れ:結婚式の費用や新居の準備のために、申立ての前後にカードローンやクレジットで新しく借りるのは避けます。申立ての日の1年前から開始決定までの間に、支払えない状態を隠して信用取引で財産を得ると、免責不許可事由に当たりえます(破産法252条1項5号)。結婚式の費用は、現金で払える範囲に組み替えるのが現実的です。
もう一つ、結婚にからめて財産を動かさないことも大切です。申立ての前に、自分の預金を相手の口座へ移す、相手の親から借りたお金だけ先に返す、といった行為は、債権者を害する財産の処分や特定の債権者への偏った返済として、免責の判断で問題にされる場合があります(破産法252条1項1号・3号)。結婚の準備と財産の移動が重なるときは、事前に依頼先へ相談してください。詳しくは自己破産で嘘はバレる?申立て前にしてはいけない財産の移動と返済を読んでください。
相手に伝える時期と文例
伝える時期は、婚姻届を出す前、遅くとも住宅ローンや賃貸契約の申込みの前に済ませるのが現実的です。審査書類には二人の名前が並ぶので、後から分かると、お金の問題より信頼の問題になりやすいからです。伝えるときは、次の項目を紙に書いて持っていきます。
- 手続きの段階(相談中、申立て済み、免責許可の決定が確定、など)
- 借金だった額と、免責で支払義務がなくなる見込みの範囲(保証人がいる借金、税金、養育費などは別。自己破産しても払う必要がある支払いで確かめられます)
- 管財事件か同時廃止かと、転居や郵便物に関する制限の有無
- 信用情報の記録が残る期間(下の表)と、その間にできないこと
- 相手の名義や保証が関わるものがあるか
話し方の例です。
文例(相手へ):「結婚の前に、お金のことで話しておきたいことがあります。以前の借金で返せなくなって、いま自己破産の手続きを弁護士に頼んで進めています。手続きが終わるまでは、引っ越しに裁判所の許可が要ります。私の記録があなたの信用情報に載ることはありませんが、しばらくは私の名前でローンやカードは作れません。家計の計画を、この紙を見ながら一緒に決めさせてください」
文例(相手の親へ):「結婚の前に、お金の事情をお伝えします。過去の借金のために自己破産の手続きをしていて、いまは弁護士の指示に従って進めています。結婚後の住まいと生活費は、収入の範囲で払えるように予算を立てました」
相手の反応が強く出たときは、その場で結論を出さず、紙を渡して数日考えてもらいます。「官報に載るのか」と聞かれたら、載る内容と見られ方を自己破産すると官報に載る?載る内容と時期・見られる可能性で一緒に確かめられます。
結婚後のお金:記録が残る年数と使えるものの確かめ方
免責が確定した後も、信用情報には記録が一定期間残ります。2019年10月1日以降に結んだ契約について、各機関の案内を整理すると次のとおりです。
| 機関 | 自己破産の記録の扱い |
|---|---|
| CIC | 免責許可の決定が確定すると、登録元が免責で契約が終了した日を契約終了日として登録し、そこから5年間保有される |
| JICC | 破産申立の情報は、契約継続中および契約終了後5年以内 |
| 全国銀行個人信用情報センター | 取引情報は契約終了日から5年を超えない期間。ほかに、官報に公告された破産の開始決定の情報(官報情報)を、決定日から7年を超えない期間保有する |
住宅ローンを銀行で組むなら、銀行系の機関の7年が目安の一つになります。ただし、審査に通るかどうかは各金融機関の総合判断で、記録があるから否決と決まるわけでも、年数が過ぎたから通ると決まるわけでもありません。自分の記録がいまどう載っているかは、機関に開示して確かめられます。方法は信用情報の開示のやり方|CIC・JICC・KSCの申込み方法と手数料にあり、各手続きの年数の比較はブラックリストの期間の早見表|延滞・債務整理・破産ごとの年数で見られます。
免責が確定すると、当然に復権します(破産法255条1項1号)。復権すると、破産者であることを理由にした資格の制限も、各法令の定めに従って外れます。結婚後の仕事や住まいに関わる制限は、自己破産で就けない仕事|警備員など資格制限の一覧と期間で確認してください。
結婚後は、相手とのお金の分け方も決めておきましょう。免責後の数年間は、現金・デビットカード・プリペイドで暮らしを組み立て、家計の見直しは赤字家計の立て直し方|借金返済中に固定費から見直す手順の手順で進めると、同じ状況に戻る可能性を小さくできます。個別の事情に合う手続きの選び方や、免責の見通しは、弁護士・司法書士が判断することです。
よくある質問
Q. 自己破産をした人と結婚すると、相手の信用情報にも載りますか?
載りません。CICは、家族の信用情報は確認できず、開示は本人の申込みが原則だと案内しています。登録されるのは、申込みや契約をした本人の契約情報です。ただし、収入のない人が配偶者の年収でローンの審査を受けると、契約後に配偶者の氏名や生年月日などの属性情報も登録されます。これは自己破産の記録が相手に移るという意味ではなく、相手の借入れの履歴にもなりません。
Q. 自己破産したことは、結婚相手の親や親戚に知られますか?
自己破産の開始決定と免責決定は官報に載りますが、官報発行サイトにはキーワード検索がなく、載った記事は一定期間で見られなくなります。家族や親戚が偶然目にする形ではありません。ただ、郵便物や転居、結婚後の住宅ローンの書類から話が伝わることはあるので、相手に伝える時期は自分で決めておくほうが安心です。
Q. 手続きの途中で結婚して引っ越すことはできますか?
破産手続が終わるまでの間は、裁判所の許可なしに転居できません(破産法37条)。同時廃止なら開始決定と同時に手続きが終わるので、主に問題になるのは管財事件の間です。入籍の時期や新居の契約は、先に依頼先の弁護士・司法書士へ伝え、転居の許可が必要かを確かめてください。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第731条〜第739条・第761条・第762条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 戸籍法 第13条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 住民基本台帳法 第7条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法 第10条・第34条・第37条・第81条・第252条・第255条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 債務整理の方法についてのQ&A(大分地方裁判所)(裁判所)
- 裁判手続 民事事件Q&A(破産手続開始の決定による制限)(裁判所)
- 家族の借入状況を確認できますか?(CIC よくあるご質問)(株式会社シー・アイ・シー)
- 配偶者の情報が回答されると聞いたのですが、どのような場合ですか?(CIC よくあるご質問)(株式会社シー・アイ・シー)
- 免責の確定と信用情報の登録(CIC よくあるご質問)(株式会社シー・アイ・シー)
- 信用情報の登録期間(JICC)(株式会社日本信用情報機構)
- 登録情報と加盟資格(全国銀行個人信用情報センター)(一般社団法人全国銀行協会)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。