自己破産で口座凍結される?凍結の時期と給料口座の変え方
口座については、自分で動かす前に、弁護士・司法書士に口座の一覧を見せて、何をいつ変えるかを決めてもらうのが最初の一歩です。自己破産で止まりやすいのは、借入先の銀行にある口座です。借入れのある銀行は、破産手続によらずに預金と借入れを相殺できます(破産法67条1項)。管財事件では、開始決定の時点から預貯金の管理処分が管財人に移ります(同法78条1項)。借入れのない銀行の口座は、受任通知の宛先にならないので、銀行の側から止める理由が生じにくくなります。困るのは給料の振込先と、公共料金・カード代・家賃の引落口座なので、依頼先の指示を受けたうえで、受任の前に、借入先ではない銀行の自分名義の口座へ移す準備をします。
口座が止まる3つのパターン
| パターン | 起きること | 影響を受ける口座 |
|---|---|---|
| 借入先の銀行による相殺・取引停止 | 預金と借入れを相殺される。口座の入出金が止まる | 借入れのある銀行の口座 |
| 債権者による預金の差押え | 差し押さえられた口座の残高が引き出せない | 差押えの対象になった口座 |
| 管財事件での財産の管理 | 破産財団に属する財産の管理処分権が管財人に専属する(破産法78条1項) | 手続開始時点の預貯金 |
借入先の銀行。 銀行のカードローンや住宅ローンの契約書・規定には、支払の停止や破産の申立てがあったときに期限の利益を失う条項と、預金との相殺の条項が置かれていることがあります。条項の言葉と運用は銀行ごとに違うので、手元の契約書や銀行の規定集で、「期限の利益の喪失」と「相殺」の項目を開いて確かめてください。借入れと預金が同じ銀行にあるときは、破産法67条1項の相殺の権利もあるため、その銀行の口座は動かせなくなる前提で準備します。
債権者による差押え。 返済が止まって裁判を起こされた後は、預金口座が差し押さえられることがあります。差押えが起きる条件と生活費の守り方は口座の差し押さえはいつ来る?預金が止まる仕組みと生活費の守り方で扱います。
管財事件。 破産手続開始の時に持っている財産は、破産財団に属します(破産法34条1項)。預貯金も含まれ、その管理処分は管財人が行います(78条1項)。開始決定の後に受け取る給料は、開始の時の財産ではないので、原則として本人のものです(34条1項は開始の時の財産に限る)。
受任の前にやる、給料口座などの変え方
借入れのある銀行に給料の振込先や引落口座を置いている人は、次の順で準備します。順番と時期は、依頼する弁護士・司法書士の指示を優先してください。
- 全口座を書き出す。 銀行名、支店、口座の種類、使い道(給料・引落・貯蓄)、借入れの有無を一覧にします。
- 借入先の銀行の口座を特定する。 住宅ローン、カードローン、クレジットカードの銀行と、その銀行の口座の使い道を確認します。
- 借入れのない銀行の口座を用意する。 自分名義の口座を使います。家族の名義の口座に給料を振り込ませる方法は取りません。
- 給料の振込先を変える。 使用者は、労働者の同意を得て、労働者が指定する金融機関の預貯金口座へ振り込めます(労働基準法施行規則7条の2第1項1号)。
- 引落口座を変える。 公共料金、携帯電話、家賃、クレジットカードなどの引落口座を、新しい口座に切り替えます。年金や手当の受取口座の変更は、それぞれの窓口(日本年金機構、市区町村)に確認します。
- 借入先の銀行の口座は、勝手に動かさない。 残高を急に引き出す、家族の口座に移す、特定の債権者にだけ払うといった行為は、財産を隠す行為や、特定の債権者に利益を与える行為として、免責不許可事由になりえます(破産法252条1項1号・3号)。新潟地方裁判所の説明書は、過去2年間に預貯金などを処分、解約、名義変更した事実は、すべて申立書に書くよう求めています。
こうした順番や、すでに借入先の銀行に給料が入っている場合の扱いは、受任の前に弁護士へ相談して決める項目です。受任後に動くと、口座がすでに止まっている場合があります。
通帳は、すべての口座について裁判所に出す
口座を整理しても、存在するすべての口座の通帳を、裁判所に出すことになります。
| 裁判所 | 通帳の範囲 |
|---|---|
| 高松地方裁判所 | 残高にかかわらず、すべての通帳の写し。申立て前1か年以内に解約した口座も同様 |
| 秋田地方裁判所 | 預貯金通帳の表紙と表紙裏面、直近1年分の写し。給与振込用、クレジットカード引落、光熱費引落の口座があれば確認事項に入る |
| 新潟地方裁判所 | 存在するすべての預貯金口座。あらゆる手段でも弁済が不可能だと思うようになった時期から過去1年に遡った日付の記帳を含めて、全ページ |
高松地方裁判所は、コピーを取る前に、申立て前1か月以内の日が記帳されていることを求めています。新しく作った口座も、残高にかかわらず通帳を出します。新潟地方裁判所の説明書は、預貯金口座がマイナスになっている場合も、債権者一覧表に載せる相手に挙げています。通帳で調べられる範囲は自己破産で通帳はどこまで調べられる?見られる期間と取引で詳しく扱います。
凍結の時期といつ解けるか
止まる時期と解ける条件は、止まる理由ごとに決まります。条文と手続から言えることを、表にします。
| 理由 | 止まる時期 | 解ける条件 |
|---|---|---|
| 借入先の銀行の相殺・取引停止 | 銀行が規定にしたがって預金と借入れを相殺するときや、取引を止めるとき。受任通知が銀行に届いたあとに動くことがある | 相殺が済んだあと、銀行が取引を再開するか、解約するか。銀行ごとに違う |
| 債権者による預金の差押え | 債権者が裁判所に申し立て、差押命令が銀行に届いたとき | 差押えが取り下げられるなど、差押命令の効力がなくなったとき |
| 管財事件 | 破産手続開始の決定の時点から、預貯金の管理処分は管財人(破産法78条1項) | 管財人が預貯金を財団に組み入れるか、財団から外すかを決めたあと |
解除の日数そのものは銀行の運用で変わるので、次の点を聞き、書面で受け取るのが確実です。
- 何が止まっているのか。 入出金の全部か、カードローンの利用だけか、引落だけか。
- 止めた理由は何か。 期限の利益の喪失か、預金規定の解約事由か、差押えか。
- 相殺される金額はいくらか。 預金の残高と借入れ残高の差し引き、残る借入れ。
- 解除の条件は何か。 相殺が終われば使えるのか、解約になるのか、手続きの終了まで待つのか。
- 預金の残りは返してもらえるのか。 返金の方法と時期。
文例(銀行窓口・書面でお願いする):「受任通知を受けて口座の取引が停止されたと聞きました。停止の理由と根拠の条項、相殺される預金と借入れの金額、取引の再開または解約の条件を、書面で教えてください。」
管財事件では、預金の扱いは管財人の指示が加わります。同じ口座が止まる話でも、任意整理や個人再生では仕組みが違います。それぞれ債務整理で口座凍結される?凍結の理由と手続きの前にやることと個人再生で口座凍結される?凍結の時期と解除までの流れで扱います。
- ①全口座を書き出す(銀行・支店・使い道・借入れの有無)
- ②借入先の銀行の口座と、そこに入っている給料・引落を特定する
- ③借入れのない銀行の自分名義の口座へ、給料・引落を移す(受任の前に、弁護士の指示で)
- ④借入先の銀行の残高は、勝手に動かさない
- ⑤すべての口座の通帳を、裁判所に出す
自己破産のあと、新しく口座を作るとき
口座を開くときの本人確認では、氏名、住居、生年月日、取引の目的、職業を確認します(犯罪による収益の移転防止に関する法律4条)。破産の有無は、法律が定める確認項目に入っていません。全国銀行個人信用情報センターは、ローンなどの情報を、会員が与信取引の判断に使えるよう提供していると説明しています。破産後に新しい口座を開く場合は、借入れのない銀行・給料の振込先に使う銀行を選び、開設前に銀行の案内で条件を確かめてください。ローンやカードの審査は別の話で、自己破産後のクレジットカード|作れるまでの期間と使える代わりに整理しています。
よくある質問
Q. 借入れのない銀行の口座も凍結されますか?
受任通知は借入先の債権者に送るものなので、借入れのない銀行には届きません。口座を止める理由になるのは、その銀行に借入れがあって預金と相殺されるときや、債権者による差押えがあるときです。ただし管財事件では、破産者の財産の管理処分権が管財人に移るため(破産法78条1項)、預金の扱いは管財人の指示に従います。
Q. 口座凍結はいつまで続きますか?
止まる理由で、解ける条件が変わります。借入先の銀行は、相殺や取引停止の手続が済むかどうか、管財事件では管財人が預貯金をどう扱うか、差押えでは債権者の申立てがどうなるかで決まります。日数は銀行ごとに違うので、銀行の窓口で、止めた理由と解除の条件、相殺する残高を書面で聞いてください。
Q. 自己破産のあと、新しく銀行口座を作れますか?
口座を開くときの本人確認の項目に、破産の有無はありません(犯罪収益移転防止法4条)。全国銀行個人信用情報センターの情報は、会員が与信取引を判断する材料として提供されるものです。開設する銀行の案内で、口座の条件を確かめてください。
出典・参考にした公的な情報
- 破産法(第34条・第67条・第78条・第252条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業法(第21条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働基準法施行規則(第7条の2)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律(第4条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 同時廃止事件の申立て要領(高松地方裁判所)(裁判所)
- 個人破産申立添付書類一覧表(本人申立て用)(秋田地方裁判所)(裁判所)
- 自己破産申立について(説明と書き方)(新潟地方裁判所)(裁判所)
- 全国銀行個人信用情報センターの概要(全国銀行協会)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。