個人再生で口座凍結される?凍結の時期と解除までの流れ
個人再生で口座が止まるのは、お金を借りている銀行(信用金庫・信用組合などを含む)に持っている口座が中心です。銀行は、預金と借金を差し引く「相殺」で回収できる立場にあり、依頼先からの受任の通知や裁判所への申立てを知った時点で、出金や引落しを止めることがあります。借入のない銀行の口座は、個人再生を理由に止まる仕組みがありません。止まる時期は銀行の対応しだいですが、準備でできることははっきりしています。給料の振込と公共料金の引落しを、借入のない銀行の口座へ、手続の前に移すことです。
個人再生で口座が止まる仕組み:相殺
民法505条は、二人が互いに同じ種類の債務を負い、双方が支払いの時期にあるとき、対当額で相殺できると定めています。銀行にとって、預金は「銀行が本人に返すお金」、ローンは「本人が銀行に返すお金」なので、差し引いて回収できます。
個人再生の手続の中でも、この相殺は認められています。民事再生法92条1項は、再生債権者が手続開始のときに再生債務者に債務を負っていて、債権と債務の双方が債権届出期間の満了前に相殺に適する状態になったときは、債権届出期間内に限り、再生計画によらず相殺できると定めています。東京地裁は、手続開始の決定で債権届出の期限などを定めると案内しています。相殺の機会は、その期間までです。
一方、民事再生法93条1項は、相殺が許されない場合を挙げています。たとえば、再生手続開始の申立てがあった後に銀行が債務を負担し(預金を受け入れ)、その負担の当時に申立てがあったことを知っていたときは、相殺できません(同項4号)。支払の停止があった後に債務を負担し、その当時に停止があったことを知っていたときも、原則として相殺できません(同項3号)。ただし例外の定め(同条2項)もあり、個々の入金が当てはまるかを判断するのは、依頼先の弁護士や司法書士です。この記事では「申立て後に振り込まれた給料は、相殺の対象にならない場合がある」という理解にとどめます。
凍結の時期と解除までの流れ
| 段階 | 起きること | 口座の状態 |
|---|---|---|
| 受任通知が銀行に届く、または申立てを銀行が知る | 銀行が借入先として手続を把握する | 出金・引落しが止まることがある(時期は銀行しだい) |
| 申立て・個人再生委員の選任 | 委員が収入と財産の状況を調べる | 止まった口座は止まったまま。預金は財産目録に載る |
| 手続開始の決定 | 債権届出期間などが定められ、官報に公告される | 銀行は届出期間内に相殺できる |
| 銀行が相殺する | 預金とローンが対当額で差し引かれる | 相殺で残った預金があれば返金の手続へ |
| ローンに保証会社がある場合 | 銀行が保証会社に請求し、代位弁済が行われる | 以後の返済先は保証会社になる |
| 口座の整理 | 残高の払戻し、または口座の解約 | 解除。以後の取引は銀行の規則に従う |
「凍結はいつから?」への答えは、銀行が手続を知った時点以降です。法律に日数の定めはなく、受任通知の直後に止まる銀行もあれば、申立てが分かってから止める銀行もあります。
「いつまで?」「どうやって解除する?」にも、法律の期間はありません。目安にできるのは、銀行が相殺を終え、保証会社への請求などの事務処理が済むまでの間、という流れです。解除の申出は本人ではなく、依頼先を窓口にして銀行に確認し、残高、相殺額、返金の時期を書面で出してもらいます。銀行とのやりとりの窓口を依頼先に一本化すると、説明が食い違いません。
相殺で残った預金は、手続の中で財産として扱います。凍結のあとに返金されたお金も、財産目録と通帳の記録で追えるようにしておきます。通帳の準備は個人再生で通帳はどこまで調べられる?に書きました。
住宅ローンを払い続ける特則を使う場合も、同じ銀行にほかの借入があれば、その分の相殺で口座が止まることがあります。住宅ローンの引落し口座が止まると延滞になるため、返済口座を別の口座へ変えるか、止まる前に返済方法を銀行と決める必要があります。特則の仕組みは個人再生で住宅ローンを払い続ける特則で説明します。
給料・公共料金の振替を移す手順
口座が止まって困るのは、給料の振込先と、公共料金や家賃の引落し先が、その口座になっているときです。次の順で、手続の前に移します。
| 順番 | すること | 確かめること |
|---|---|---|
| 1 | 借入のある銀行・信用金庫・信用組合・農協を書き出す | 総合口座の貸越や、キャッシュカードと一体のローンも含める |
| 2 | その銀行の口座に、何が入り、何が出ているかを書き出す | 給与、年金、手当の入金。家賃、電気、ガス、水道、携帯、保険、カードの引落し |
| 3 | 借入のない銀行に口座を作る | 開設に数日〜数週間かかることがある。ネット銀行は郵送の確認がある |
| 4 | 勤務先に給与の振込口座の変更を届ける | 何月の給料から変わるか。締め日との関係 |
| 5 | 引落し先を1件ずつ変更する | 変更が反映されるまでの間の払い方(払込票・振込) |
| 6 | 預金を新しい口座へ移す時期を、依頼先と決める | 移した日と金額を記録に残す。移した預金も財産目録に載る |
| 7 | 履行テストの振込に使う口座を決める | 振込の期限に残高が足りる口座にする |
文例(勤務先の給与担当へ):「給与の振込口座を変更したいので、変更届の用紙をいただけますか。何月支給分から切り替わるかも教えてください。」
変更の理由を会社に説明する必要はありません。一方、預金を手続の直前にまとめて移したり、現金で引き出して手元に置いたりすると、財産を隠したと疑われるおそれがあります。小規模個人再生では、民事再生法237条2項が、財産目録に載せるべき財産を載せなかったり不正の記載をしたりした場合の手続廃止を定めています。移した事実と金額は、そのまま依頼先に伝えます。
個人再生は、債権者一覧表の作成、財産目録、再生計画案と、書類の量が多い手続です。口座の整理や銀行とのやりとりまで含めて任せたいときは、弁護士に依頼するという選択肢があります。選ぶときは、個人再生の経験と対応範囲、費用の総額と内訳が書面で示されるか、口座や住宅ローンの銀行への対応を誰がするか、を面談で確かめます。
自己破産の場合の口座の扱いは自己破産で口座凍結される?に、任意整理まで含めた全体像は債務整理で口座凍結される?にまとめています。次は、手続後のカードの話として個人再生後のクレジットカードを読んでください。
よくある質問
Q. 個人再生の手続が始まったら、口座の預金は全額なくなりますか?
全額がなくなるとは限りません。銀行が相殺できるのは、その銀行への借金の額までです。残った預金は返ってきますが、財産目録に載り、持っている財産の合計(清算価値)の計算に入ります。止まる前に移した預金も同じです。
Q. 口座が止まって給料を引き出せないときは、どうしますか?
依頼先の弁護士や司法書士に、すぐ状況を伝えます。銀行への確認は依頼先が窓口になります。当面の生活費は、止まっていない別の口座や手元の現金で組み立て、勤務先には振込口座の変更を届けます。家賃や公共料金は、払込票や振込に切り替えられるか各社に聞きます。
Q. 住宅ローンを払い続ける特則を使えば、その銀行の口座は止まりませんか?
同じ銀行にカードローンなど別の借金があれば、その分の相殺で口座が止まることがあります。住宅ローンだけの銀行でどう対応されるかは、銀行ごとに違うので、依頼先から銀行に聞いてもらいます。住宅ローンの引落し口座が止まると延滞になるので、返済の口座は依頼先と先に決めておきます。
出典・参考にした公的な情報
- 民事再生法 第85条・第92条・第93条・第237条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第505条(相殺の要件等)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個人再生に関するQ&A(東京地方裁判所 民事第20部)(東京地方裁判所)
- 個人再生手続の申立てに当たって(令和7年11月1日以降適用)(東京地方裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。