債務整理で口座凍結される?凍結の理由と手続きの前にやること
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債務整理で口座凍結が起きやすいのは、お金を借りている銀行(信用金庫・信用組合などを含む)に持っている口座です。銀行は、借金の返済が止まると分かった時点で、その人の預金と借金を差し引く「相殺」をするために、口座からの出金や引き落としを止めることがあります。借入のない銀行の口座は、債務整理を理由に止まることは基本的にありません。困るのは、凍結される口座が給料の振込先や公共料金の引き落とし先になっている場合なので、手続きを始める前に口座を移しておくのが対策の中心です。
債務整理で口座凍結されるのはどの口座か
凍結の対象になるかは、手続きの種類よりも「その銀行からお金を借りているか」で決まります。
| 口座の種類 | 止まる可能性 | 理由 |
|---|---|---|
| カードローン・マイカーローン・フリーローンを借りている銀行の口座 | 高い | 銀行が預金と借金を相殺できる立場にある |
| 住宅ローンを借りている銀行の口座(住宅ローンを整理の対象にする場合) | 高い | 同上。個人再生で住宅ローンを払い続ける場合は扱いが変わる |
| 借入のない銀行・ネット銀行の口座 | 低い | 銀行が相殺できる借金がない |
| 消費者金融・クレジットカード会社の借金だけがある場合の銀行口座 | 低い | その口座の預金を預かっているのは銀行なので、貸金業者やカード会社は相殺できない |
| 家族名義の口座 | 低い | 名義が違えば相殺の関係にならない |
注意したいのは、銀行のカードローンを使っていることを本人が忘れている場合です。給与口座のある銀行で「口座の残高が足りないときに自動で貸してくれる」総合口座の貸越や、キャッシュカード一体型のローンを申し込んでいることがあります。通帳やネットバンキングの明細に「貸越」「ローン返済」の行がないかを見て、借入先の一覧に入れておきます。借入先の洗い出し方は債務整理は一部のみ選べる?手続き別に対象から外せる借金の範囲でも扱っています。
凍結の理由は「相殺」:銀行が預金と借金を差し引く仕組み
民法505条は、二人が互いに同じ種類の債務を負っていて、双方が支払いの時期にあるとき、それぞれが対当額で相殺できると定めています。銀行にとって、あなたの預金は「銀行があなたに返すお金」、カードローンは「あなたが銀行に返すお金」なので、両方を差し引いて回収できるわけです。
銀行のローンの契約規定には、支払を停止したときなどに期限の利益(分割で払ってよいという約束)を失い、その借金と預金を相殺できると定める条項が置かれていることが多くあります。自分の契約にどう書かれているかは、契約書か銀行の規定集で確かめられます。弁護士・司法書士が受任通知を送ったり、裁判所に破産や個人再生を申し立てたりすると、銀行はこれを返済が止まる知らせとして受け取ります。
流れを順に並べると、次のようになります。
- 受任通知が銀行に届く(または裁判所への申立てを銀行が知る)
- 銀行が出金・引き落としを止め、口座の残高を確定させる
- 銀行が残高とローンの残りを相殺する
- ローンに保証会社がついていれば、保証会社が残りを銀行に払う(代位弁済)
- 以後の請求と交渉の相手は保証会社になる
相殺されるのは、止められた時点で口座にあったお金です。給料日の直後に止まれば、その月の給料の多くが借金の返済に回ってしまいます。
なお、自己破産と個人再生には、手続きの開始後や、銀行が支払の停止や申立てを知った後に入ったお金について、相殺を禁じる定めがあります(破産法71条1項、民事再生法93条1項)。ただし例外の定めもあり、自分のお金が当てはまるかを判断するのは依頼先の弁護士や破産管財人です。凍結されている間に生活費として使えないことは変わらないので、移せるものは先に移しておくほうが確かです。
任意整理と、自己破産・個人再生で違う点
任意整理は、交渉する借入先を自分で選べます。銀行のカードローンを対象から外せば、その銀行に受任通知は届かず、口座が止まる理由もありません。ただし外した借金は契約どおり払い続ける必要があり、払えなければ結局は延滞から同じ流れになります。保証人がついている借金を外すかどうかの考え方は債務整理すると保証人はどうなる?請求が保証人に行く仕組みにまとめました。
自己破産と個人再生は、すべての債権者を一覧に書くので、銀行の借金だけを外すことはできません。銀行の口座が止まる前提で準備します。個人再生で住宅ローンを払い続ける特則を使う場合の口座の扱いは個人再生で口座凍結される?凍結の時期と解除までの流れ、自己破産に絞った説明は自己破産で口座凍結される?凍結の時期と給料口座の変え方で取り上げます。
特定調停も相手を選んで申し立てる手続きで、考え方は任意整理に近くなります。
手続きの前にやること:口座を移す7つの手順
依頼先と相談しながら、受任通知を出す前に次の順で進めます。口座の変更は反映まで時間がかかるものが多いので、最初の面談の段階で「借入のある銀行に給与口座がある」と伝えておくのが大切です。
- 借入のある銀行・信用金庫・信用組合・農協を書き出す:カードローン、目的別ローン、総合口座の貸越も含めます。
- その銀行の口座の役割を書き出す:給料、年金・手当の受け取り、家賃・電気・ガス・水道・携帯・保険・クレジットカードの引き落としなど。
- 借入のない銀行に新しい口座を作る:ローンやカードの取引がない銀行を選びます。開設の審査や郵送で日数がかかることがあります。
- 勤務先に給与振込口座の変更を届け出る:締め日の関係で翌月や翌々月の給料から切り替わる会社もあるので、給与担当に「いつの給料から変わるか」を確かめます。
- 引き落とし先を一つずつ変える:切り替わるまでの間は、払込票や振込で払えるか各社に聞いておきます。年金の受取口座は年金事務所、手当は市区町村の担当課で手続きします。
- 残高を新しい口座に移す時期を依頼先と決める:移したお金も自分の財産として申告の対象です。自己破産や個人再生では財産を隠したと疑われないよう、移した日と金額を記録に残します。
- 受任通知を出す日を依頼先と合わせる:給料日の直前に通知が届くと、給料が相殺に回るおそれがあります。
文例(勤務先の給与担当へ):「給与の振込口座を〇〇銀行から△△銀行に変更したいので、変更届の用紙をいただけますか。今月の締めに間に合うか、何月の支給分から変わるかも教えてください。」
理由まで説明する必要はありません。給与口座の変更はよくある手続きです。
凍結はいつまで続くのか
凍結の期間を定めた条文は、この記事の出典にはありません。銀行が相殺と保証会社への手続きをどこまで進めたかで変わるため、日数の目安は示せません。凍結が分かったら、依頼先を通じて、または自分で銀行の窓口に、次の4点を書面かメールで確かめます。
- 相殺した金額と日付、相殺のあとに残るローンの残高
- 残りの請求の相手が銀行か、保証会社か
- 口座がこのあと使えるようになるか、解約の扱いになるか
- 凍結の間に給料や年金が振り込まれたとき、その分をどう扱うか
使える見込みが立たないときは、その口座を前提にした振込や引き落としを、先に別の口座へ切り替えます。
凍結された後に気づいたときの対応
すでに口座が止まっていたら、まず依頼先に連絡し、次の3点を伝えます。
- 止まった銀行と口座の種類(普通預金・総合口座など)
- 止まった時点の残高と、これから入る予定のお金(給料日・年金の支給日)
- その口座から引き落とされる予定の支払い
引き落としができなかった公共料金や家賃は、請求書や振込で払う方法を各社に相談します。払えないまま放置すると、別の滞納が生まれます。
相殺のための凍結と、債権者が裁判所を通して預金を押さえる「差し押さえ」は別のものです。差し押さえは、借入のない銀行の口座でも起こり得ます。差押命令が届いている場合は差し押さえされた後でも債務整理できる?手続き別に止められるものを読んでください。受任通知でどの請求が止まるかは債務整理の受任通知とは?督促が止まる仕組みと止まらない支払いにあります。
前の記事の債務整理は結婚に影響する?相手への伝え方と家族の信用情報では家族への影響を、次の債務整理中や後に借入できる?借りられない期間と借りる前の注意点では、手続き中にお金が足りなくなったときの考え方を扱います。
よくある質問
Q. 債務整理で凍結された口座は、いつまで使えませんか?
銀行が預金と借金の相殺を済ませ、保証会社が銀行に代わりに払う手続き(代位弁済)の処理を終えるまでの間、出金や引き落としが止まることがあります。期間を決めた条文はなく銀行の処理しだいなので、凍結が分かった時点で、相殺の金額・残りの請求先・口座が使える見込みの3点を銀行に確かめてください。
Q. 家族名義の口座や、借入のない銀行の口座も凍結されますか?
相殺は、銀行と同じ人が互いにお金を払う関係にあるときの仕組みです(民法505条)。本人に貸していない銀行や、家族名義の口座が、本人の債務整理を理由に相殺されることはありません。ただし、別の債権者が裁判所を通して差し押さえる場合は、相殺とは別の話になります。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第505条(相殺の要件等)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法 第67条・第71条(相殺権・相殺の禁止)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事再生法 第93条(相殺の禁止)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。