債務整理の全体と選び方 / Q&A

債務整理は一部のみ選べる?手続き別に対象から外せる借金の範囲

この記事のもくじ
  1. 結論:一部のみ選べるのは任意整理と特定調停
  2. 個人再生・自己破産で借金を外せない理由
  3. 残したい借金がある人の分かれ道
  4. 任意整理で一部のみにするときの選び方と注意
  5. 相談の前に作る「全部の借入一覧」

債務整理で借金の一部のみを対象にできるのは、任意整理と特定調停です。個人再生と自己破産は、裁判所の手続きの中で「すべての債権者を平等に扱う」決まりがあるため、借金を選んで外すことはできません。残したい借金(車のローン・保証人つきの借金・勤務先からの借入など)がある人は、まず「どの手続きなら外せるか」を見てから、手続きを選ぶ順番になります。

結論:一部のみ選べるのは任意整理と特定調停

任意整理は、弁護士・司法書士が貸金業者などと一社ずつ返済方法を話し合う手続きです。裁判所を使わない話し合いなので、どの会社と交渉するかを依頼する人が選べます。特定調停も、調停の相手方となる債権者を決めて、その住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てる手続きです(裁判所の簡易裁判所Q&A)。ただし申立てのときには、債権者と担保権者の一覧表も出すことになっているため(特定調停法3条3項、裁判所の特定調停Q&A)、外す借金も含めて全部の借入を書いたうえで、相手方にする債権者を選ぶ形になります。

一方、個人再生と自己破産は、借金を減らしたり免除したりする効果を裁判所が決める手続きです。一部の債権者だけを外すと、外れた債権者だけが得をし、手続きに入った債権者が損をする形になるため、法律はそれを原則として許していません。

手続き 対象を選べるか 外した借金の扱い 裁判所
任意整理 選べる(一社ずつ交渉) 契約どおり返し続ける 使わない
特定調停 選べる(相手方を決めて申立て) 契約どおり返し続ける 簡易裁判所
個人再生 選べない(すべての債権者が対象) 外すこと自体ができない 地方裁判所
自己破産 選べない(すべての債権者が対象) 外すこと自体ができない 地方裁判所

なお、税金・国民健康保険料などは、任意整理の交渉相手にはならず、自己破産でも免責されず(破産法253条1項1号)、個人再生でも計画の外で払う扱いです(民事再生法122条)。役所との相談は別に進めます。

早見表:残したい借金ごとに使える手続き
  • 車のローン(ローン会社が所有者のもの):任意整理で外せる/個人再生・自己破産では車を引き揚げられる可能性
  • 住宅ローン:任意整理で外せる/個人再生は住宅資金特別条項で払い続けられる場合がある/自己破産では、ローンが残る家は手放す形になることが多い
  • 保証人つきの借金:任意整理で外せる/個人再生・自己破産では保証人に請求が行く
  • 勤務先・共済組合からの借入:任意整理で外せる/個人再生・自己破産では対象になる

個人再生・自己破産で借金を外せない理由

自己破産では、借金(破産債権)は破産手続によらなければ取り立てられず(破産法100条1項)、財産を分ける配当も、同じ順位の債権者には債権額の割合に応じて行われます(194条2項)。全員が同じ土俵に乗ることが前提の手続きです。

個人再生でも、再生計画による借金の減らし方は「再生債権者の間では平等でなければならない」と定められています(小規模個人再生は民事再生法229条1項、給与所得者等再生は244条で準用)。例外は、不利益を受ける債権者の同意がある場合と、少額の債権の弁済の時期などに別の定めをする場合に限られ、債務者が好きな借金を選んで外せる仕組みではありません。手続きが始まった後は、特別の定めがある場合を除き、計画によらない返済そのものが禁じられます(85条1項)。

外したつもりの借金がどうなるかも、条文で決まっています。

  • 自己破産:知りながら債権者一覧(債権者名簿)に書かなかった借金は、免責が確定しても残ります(破産法253条1項6号)。うその債権者名簿を出すことは免責不許可事由です(252条1項7号)。
  • 個人再生:一覧から外して特定の人にだけ返すと、手続きの前なら偏った返済(偏頗弁済)として問題になり、後なら85条に反します。くわしくは個人再生の偏頗弁済とは?手続き前に一部だけ返すと起きることで扱います。

家族・友人・勤務先からの借金も「債権者」です。書き漏れやすい借金の扱いは個人間の借金も債務整理の対象?家族や友人への借金の扱いにまとめています。

残したい借金がある人の分かれ道

「この借金だけは残したい」という理由ごとに、手続きの向き・不向きが変わります。

1. 車のローンがある ローン会社やディーラーが車の所有者になっている契約(所有権留保)では、その会社を手続きの対象にすると、車を引き揚げられる可能性があります。日本司法書士会連合会の指針(6条)は、依頼を受けるときに予想される不利益を十分に説明するよう司法書士に求めており、その解説は、説明すべき不利益の例に、所有権留保の自動車の占有を失う可能性と、保証人に残額の一括請求がされる可能性を挙げています。弁護士の依頼でも、車や保証人への影響は、受任の前に説明を受けて確かめる事柄です。任意整理ならローン会社を外して、ほかのカードローンだけを整理する形が取れます。くわしくは任意整理で車のローンはどうなる?所有権留保と車を残す方法へ。

2. 住宅ローンがある 任意整理なら住宅ローンを外して払い続けられます。個人再生には、住宅ローンを約定どおり(条件を変えて)払い続けながら、ほかの借金を減らす住宅資金特別条項があります(民事再生法196条〜199条)。ただし住宅ローンが「外れる」のではなく、手続きの中で特別な扱いを受ける仕組みです。家にほかの借金の担保が付いているなど、使えない場合もあります。

3. 保証人がついている借金がある 自己破産の免責も、個人再生の計画による減額も、保証人への請求には影響しません(破産法253条2項、民事再生法177条2項)。本人が手続きに入れば、債権者は保証人に請求する流れになります。任意整理ならその借金を外せますが、ほかの借金だけで返済が回るかが前提です。

4. 勤務先や共済組合から借りている 任意整理で外せば、勤務先に手続きのことが伝わる経路を減らせます。個人再生・自己破産では勤務先も債権者として扱われます。

任意整理で一部のみにするときの選び方と注意

一部だけにするかどうかは、「外した借金を払い続けても、生活が回るか」で決まります。手順は次のとおりです。

  1. すべての借入先・残高・毎月の返済額・保証人の有無・担保の有無を一覧にする。
  2. 残したい借金(外す候補)に印をつけ、その毎月の返済額を合計する。
  3. 手取り収入から生活費と、外す借金の返済額を引き、整理する借金に回せる額を出す。
  4. 整理する借金を、日本司法書士会連合会の説明にある「3年程度」の分割で返せるかを見る。
  5. 回らないなら、外す借金を減らすか、個人再生・自己破産も含めて検討する。

依頼先が「一部だけでは足りない」と言うことがあるのは、理由があります。日本司法書士会連合会の指針(令和7年)は、破産や民事再生の申立てが適切なのに安易に任意整理を選んではならないと、司法書士に求めています(7条3項)。外す借金の返済で家計が詰まっていくなら、手続きそのものを見直すほうが生活の立て直しにつながる場合があります。

一社だけを整理する場合の進め方は任意整理は一社だけでもできる?一部だけ整理するときの選び方、手続き全体の違いは債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いで確かめてください。

相談のときの伝え方の例:「借入は5社です。車のローンと、父が保証人の銀行ローンは残したいと考えています。この2つを払い続けた場合、ほかの3社をどう整理できるかを知りたいです。」

相談の前に作る「全部の借入一覧」

一部だけを外す相談でも、依頼先に見せるのは全部の借金です。外す借金の返済額が分からないと、整理した後の家計が成り立つかを判断できません。

書く項目 例 外すかの判断に使う理由
借入先 カード会社、消費者金融、銀行、共済組合、家族 手続きによって対象になる相手が違う
残高と毎月の返済額 残高・約定の返済額 外した借金の返済が家計に残る
保証人の有無 親・配偶者・保証会社 保証人に請求が行くか
担保・所有権留保 車・家 手続きの対象にすると失う可能性
借りた時期 何年から借りているか 利息の引き直しの見込みを依頼先が判断する材料
延滞の有無 何か月遅れているか 外した会社から一括請求が来ていないか

借入先と残高が分からないときは、信用情報の開示のやり方|CIC・JICC・KSCの申込み方法と登録期間で記録を取り寄せて確かめられます。外す・外さないの最終的な判断は、この一覧を見た弁護士・司法書士と一緒に決める事柄です。

判断の順番:一部のみの整理を考えるとき
  1. 全部の借入一覧を作る
  2. 残したい借金とその理由(車・家・保証人・勤務先)を書き出す
  3. 残したい借金を払い続けても家計が回るかを計算する
  4. 回る → 任意整理・特定調停で一部のみ/回らない → 個人再生・自己破産も含めて相談

外した借金に保証人がいる場合、請求がどこへ向かうかは債務整理すると保証人はどうなる?請求が保証人に行く仕組みで確かめられます。

よくある質問

Q. 個人再生で、親から借りたお金だけ先に返してもいいですか?

個人再生の手続きが始まった後は、再生計画によらない返済が禁じられています(民事再生法85条1項)。手続きの前に家族だけに返すことも、清算価値の計算や手続きの進み方に影響しうるため、返す前に依頼先へ伝えて判断を受けてください。

Q. 任意整理で外した借金は、その後どうなりますか?

外した借金は、契約どおりに返し続けます。和解した会社への返済と合わせて毎月払える額かを、手続きの前に家計表で確かめておくことが大切です。外した会社の返済が止まると、そこから督促や一括請求が始まります。

Q. 自己破産で、保証人がついている借金だけ一覧から外せますか?

外せません。知りながら債権者一覧に書かなかった借金は免責されず(破産法253条1項6号)、うその一覧は免責不許可事由にもなります(252条1項7号)。保証人への影響は、手続きを選ぶ前に保証人と話し合っておく事柄です。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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