個人間の借金も債務整理の対象?家族や友人への借金の扱い
この記事のもくじ
家族や友人、知人から借りたお金も、法律の上では消費者金融やカード会社からの借金と同じ「借金」です。そのため債務整理の対象になりえます。ただし扱いは手続きで分かれ、任意整理では個人間の借金を対象から外して本人同士で返し方を決められますが、自己破産と個人再生では親や友人も債権者一覧に載せる必要があります。手続きの前に家族や友人にだけ返すと「偏った返済」として問題になるため、返す前に依頼先へ相談します。
結論:手続き別に見る個人間の借金の扱い
先に全体を表で見ておきます。どの手続きでも、個人間の借金があることは依頼先の弁護士・司法書士に隠さず伝えるのが出発点です。外すかどうかを決めるのは、その後です。
| 手続き | 個人間の借金を対象にするか | 貸した家族・友人に起きること |
|---|---|---|
| 任意整理 | 外せる(交渉する相手を選ぶ手続き) | 外せば何も届かない。約束どおりに返していく |
| 特定調停 | 外せる(相手方を決めて申し立てる) | 相手方にすれば、簡易裁判所の調停の相手になる |
| 個人再生 | 外せない(債権者一覧に載せる) | 裁判所から通知が届き、減額後の計画どおりに受け取る |
| 自己破産 | 外せない(債権者一覧に載せる) | 裁判所から通知が届き、免責が確定すると請求できなくなる |
自己破産と個人再生で外せない理由は、条文にあります。自己破産では、知りながら債権者名簿に書かなかった借金は免責されず(破産法253条1項6号)、うその債権者名簿を出すことは免責不許可事由です(252条1項7号)。親への借金だけ一覧に書かずに残すことはできない、ということです。
個人再生(小規模個人再生)では、再生計画による減らし方は、債権者の同意などの例外を除いて「再生債権者の間では平等でなければならない」と定められています(民事再生法229条1項。給与所得者等再生にも244条で準用)。親だけを減額せずに全額返す計画は、原則として立てられません。
借金の種類ごとに手続きの対象から外せる範囲は、債務整理は一部のみ選べる?手続き別に対象から外せる借金の範囲でまとめています。この記事では、相手が家族や友人のときに起きることに絞って説明します。
- 任意整理:依頼先に存在を伝える → 外すかを決める → 外したら本人同士で返済の約束を見直す
- 自己破産:債権者一覧に載せる → 裁判所から相手に通知 → 免責が確定すると請求できなくなる
- 個人再生:債権者一覧に載せる → 裁判所から相手に通知 → ほかの債権者と同じ割合で計画どおりに返す
- どの手続きでも:申立ての前に家族・友人にだけ返さない
任意整理で個人間の借金を外すときに知っておくこと
任意整理は、弁護士・司法書士が貸金業者やカード会社と返済方法を話し合う手続きです。家族や友人の借金を外しても手続きは進められ、相手に何かが届くこともありません。
ただし、外した借金について、依頼先が代わりに話し合うことはありません。取立てのやり方を縛る貸金業法21条は「貸金業を営む者」が相手の決まりで、弁護士・司法書士から書面で受任の通知が届いた後に本人へ電話や訪問で返済を求めることを禁じる規定(21条1項9号)も、家族や友人からの請求には及びません。外した借金は、これまでどおり自分で向き合う借金です。
外すかどうかは、次の順に確かめます。
- 個人間の借金も含めて、借入先・残高・毎月返している額を一覧にする。
- 任意整理で和解した後の毎月の返済額(依頼先の見込み)を足す。
- 手取りから生活費を引き、両方を払っても回るかを見る。
- 回らないなら、貸してくれた人と返す額・時期を話し合うか、手続きそのものを依頼先と見直す。
貸してくれた友人や知人との話し合い方と、合意を残す書面の作り方は、個人間の借金が返せないとき|友人や知人との話し合い方と書面で扱っています。
自己破産・個人再生で親や友人に届くもの
自己破産や個人再生を申し立てると、債権者一覧に載った人には裁判所から書類が届きます。「知られたくない」と考えていても、ここは避けられません。
自己破産の場合 裁判所は、免責について債権者が意見を述べられる期間を定め、知れている債権者に通知します(破産法251条1項・2項)。破産手続開始の決定をしたときも、その内容が知れている破産債権者に通知されます(32条3項1号。裁判所が通知を省く決定をする場合があります)。免責が確定すると、配当を除いて返す責任を免れるため(253条1項。知りながら一覧に書かなかった借金は例外です)、貸した家族や友人は、その後は返済を求められなくなります。
個人再生の場合 小規模個人再生では、開始決定と同時に債権届出期間などが定められ、知れている債権者に通知されます(民事再生法222条)。再生計画案には書面で決議が行われ、同意しないと回答した人が頭数の半数以上か、額の2分の1を超えると、手続きは廃止されます(230条6項・237条1項)。親や友人も、ほかの債権者と同じように回答する立場になります。
返ってくる額が減る、または返ってこなくなるのは、貸してくれた側にとっても大きな出来事です。だからこそ、一覧に載せることを決めたら、書類が届く前に事情を話しておくほうが関係を保ちやすくなります。
文例(親に伝える):「借金が返せなくなって、弁護士に相談して自己破産の手続きをすることにした。お父さんから借りた50万円も、法律で一覧に書かないといけない決まりになっている。裁判所から書類が届くと思うので、先に話しておきたかった。」
文例(友人に伝える):「借りているお金のことで話がある。返せる見通しが立たなくなって、個人再生という裁判所の手続きを使うことにした。あなたへの借金も手続きに入れないといけなくて、裁判所から通知が行く。迷惑をかけて本当にごめん。」
「借金」として一覧に書くもの・確かめるもの
個人間のお金は、書面がないことも多く、借金なのか援助なのかがあいまいになりがちです。民法では、お金の貸し借りは、返す約束をしてお金を受け取ることで成り立ち、借用書は要件ではありません(587条)。迷うものは自分で外さず、依頼先に判断を任せます。
| お金の例 | 一覧に書くか | 依頼先に伝えること |
|---|---|---|
| 親から借りた生活費(返す約束あり) | 書く | 借りた時期・金額・返した額 |
| 友人・知人から借りたお金 | 書く | 相手の名前と連絡先、約束した返済日 |
| 勤務先・同僚から借りたお金 | 書く | 給料から引かれているか |
| 家族にカード代を立て替えてもらった | 返す約束があれば書く | 立て替えの日付と金額 |
| 「返さなくていい」と言われて受け取ったお金 | 依頼先と相談して決める | 受け取ったときのやりとり |
| 親が保証人になっている借金 | 借金そのものは貸した会社を書く | 保証人が誰か(親への請求が起きうる) |
親が保証人になっている借金は、親からの借金とは別の話です。本人が手続きをすると、貸した会社が保証人の親へ請求する流れになりうるため、債務整理すると保証人はどうなる?請求が保証人に行く仕組みで仕組みを確かめておきます。
裁判所の民事事件Q&Aでも、自己破産・個人再生の申立てには債権者一覧表を付けるとされています。思い出せる範囲で、次の点を書き出しておくと相談が早く進みます。
- 誰から(名前・続柄・連絡先)
- いつ・いくら借りたか(振込の記録、メッセージの履歴)
- 返す約束の中身(返済日・分割・利息の有無)
- これまでに返した額と、最後に返した日
手続き前に家族や友人だけに返すと起きること
「親や友人には迷惑をかけたくないから、先に返しておこう」という気持ちは自然です。けれども、手続きの直前に特定の相手だけへ返すことは、ほかの債権者との公平を崩す行為として扱われます。一般に「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれます。
自己破産では、支払いができなくなった後に特定の債権者へ返したお金は、破産管財人が取り戻しを求める「否認」の対象になりえます(破産法162条)。特定の債権者に特別の利益を与える目的で、義務でない時期や方法で返すことは、免責不許可事由にも挙げられています(252条1項3号)。家族に財産を渡す行為も、時期によっては否認の対象になります(160条3項)。
個人再生では、手続き開始後は再生計画によらない返済が禁じられます(民事再生法85条1項)。開始前の返済も、手続きの進み方に影響しうるため、偏った返済が個人再生でどう扱われるかは個人再生の偏頗弁済とは?手続き前に一部だけ返すと起きることでくわしく説明しています。自己破産の前にしてはいけないことの全体は、自己破産で嘘はバレる?申立て前にしてはいけない財産の移動と返済にまとめています。
依頼を決めたら、次のことは返す前に依頼先へ相談します。
- 親や友人に、まとまったお金を返そうとしている
- 家族名義の口座へお金を移そうとしている
- 車や家財を家族に譲ろうとしている
- 相談の前の数か月に、すでに家族や友人へ返している(隠さず伝える)
すでに返してしまっていても、隠すほうが問題を大きくします。いつ・誰に・いくら返したかを書き出して、そのまま伝えてください。手続き全体の選び方に戻るときは、債務整理とは?4つの手続きの違いと自分に合う方法の選び方から確かめられます。
よくある質問
Q. 親からの借金を債権者一覧に書くと、親に裁判所から書類が届きますか?
届きます。自己破産では、免責について意見を述べられる期間が「知れている債権者」に通知され(破産法251条2項)、手続き開始の決定の通知も送られるのが原則です(32条3項)。個人再生でも、知れている債権者に開始決定などが通知されます(民事再生法222条)。親には申立ての前に事情を話しておくと、書類を見て驚かせずに済みます。
Q. 借用書のない家族からの借金も、一覧に書く必要がありますか?
お金の貸し借りは、返す約束をしてお金を受け取ることで成り立ち、書面は要件ではありません(民法587条)。借用書がなくても借金として扱われうるので、一覧から外す前に依頼先へ伝えます。もらったのか借りたのか分からないお金も、いつ・いくら・どんな話で受け取ったかを書き出して相談します。
Q. 任意整理で外した友人への借金は、どう返せばいいですか?
外した借金は、友人との約束どおりに返していきます。任意整理で和解した会社への返済と合わせて毎月払えるかを家計表で確かめ、難しければ返せる額と時期を友人に示して話し合います。合意した内容は書面に残しておくと、後で食い違いが起きにくくなります。
出典・参考にした公的な情報
- 破産法 第32条・第160条・第162条・第251条・第252条・第253条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事再生法 第85条・第222条・第229条・第230条・第244条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第587条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業法 第21条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判手続 民事事件Q&A(破産・個人再生の申立書類)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。