自己破産 / Q&A

自己破産で通帳はどこまで調べられる?見られる期間と取引

この記事のもくじ
  1. Q1 通帳は何年分、どの口座まで出すのですか?
  2. Q2 通帳から、裁判所は何を読み取りますか?
  3. Q3 説明を求められやすい取引は、どんなものですか?
  4. Q4 説明の準備は、どう進めればよいですか?
  5. Q5 隠したり、記帳を飛ばしたりしたら、どうなりますか?

自己破産の申立てでは、預貯金通帳の写しを出し、裁判所はそこから借金の経緯と財産の状況を読み取ります。 出す期間は全国で統一されておらず、秋田地裁は直近1年分、千葉地裁は申立て前2週間以内に記帳した過去2年分、札幌地裁は申立て前1年以上の記帳があることを求めています。調べられる範囲は、給与の振込口座、カードの引落し口座、ネットバンクなど「すべての口座」で、取引の中身では、多額の出金、個人名の相手との入出金、ギャンブルに関わる引落しが説明を求められやすい点です。説明の準備のしかたまで、順に答えます。

Q1 通帳は何年分、どの口座まで出すのですか?

期間は申立先の裁判所で決まります。公表されている案内を並べると、次のとおりです。

裁判所 求める期間 記帳のしかた
秋田地裁 表紙と裏面、直近1年分の写し(定期・積立を含む) 申立て前1週間以内に記帳し、末尾に記帳日を書く
札幌地裁(令和6年1月版) 記帳されている全ページ。申立て前1年以上の記帳と、支払不能を意識した時期の前後の記帳があること 申立て前1週間以内に記帳した内容で預金額を書く
新潟地裁(令和3年2月改訂) 支払不能と思うようになった時期から過去1年にさかのぼる日付の記帳を含む通帳の、表紙から全ページ 最新の部分まで記帳する。手元にないときは再発行か取引履歴を取る
千葉地裁(留意点) 過去2年分 申立て前2週間以内に記帳する

口座は、手元の1つだけでは足りません。新潟地裁は存在するすべての預貯金口座を対象とし、札幌地裁はネットバンクを含むすべての口座の記帳全ページに加え、同居者名義の口座の通帳も求めています。千葉地裁は、給与の振込用、クレジットカードの引落し用、公共料金の引落し用など、使途にかかわらずすべての通帳を出すとしています。残高が0円の口座も、札幌地裁の案内では記載の対象です。定期預金などへの出金や、他の金融機関への振込がある場合は、その出金先・振込先の通帳も確認します。

Q2 通帳から、裁判所は何を読み取りますか?

千葉地裁の「預貯金通帳に関する留意点」は、通帳から読み取れる注意点を具体的に挙げています。これを見ると、調べの目的は、借金の説明と財産目録に漏れがないかの確認だと分かります。

早見表:通帳の記載から裁判所が確かめること(千葉地裁の留意点より)
通帳に出る取引 疑われる点 準備すること
大きな金額や個人名での入金・出金 財産の存在、否認の対象になる行為がないか 通帳にマーカーやメモで事情を書き、上申書で説明
債権者一覧表にないカード会社などへの支払い 債権者の書き漏れ 契約内容を確かめ、一覧表に追加
保険会社への入金・引落し 保険の解約返戻金があるのでは 保険証券・解約返戻金の証明書を用意
JAFからの引落し 車があるのでは 車検証・評価の書類を用意
家賃の引落し額が契約書の額と違う 駐車場代の加算など、車の存在 駐車場の契約を確かめる
自分名義の別口座との送金 対応する口座の資料がない その口座の通帳も出す
申立書にない公的扶助らしき入金 収入の書き漏れ 受給の内容・期間・金額を説明
馬券購入やスポーツくじの引落し 免責に関わる事項 事実のとおり説明

水道光熱費の引落しが通帳にないときは、別の口座があるか、現金払いではないかが疑われます。千葉地裁は、通帳の提出漏れの可能性があるとして、コンビニなどで現金払いしているなら領収書の写しを別に出すとしています。

Q3 説明を求められやすい取引は、どんなものですか?

整理すると、説明を求められやすい取引は次の4つです。

  1. 多額の出金・入金。札幌地裁は、通帳に高額な出入金があれば、趣旨と使い道を確認して上申書(A4の別紙)で説明するよう求めています。
  2. 個人名の相手との入出金。千葉地裁は、個人名の振込について、援助なのか、貸金の返済なのかを説明する必要があるとしています。親族や知人にだけ返済すると、免責の手続で問題にされることがあると、松江地裁も注意しています。
  3. 一部の債権者への返済や、第三者への財産の移し替え。札幌地裁は、支払不能と考えた時期以後に一部の債権者へ弁済していないか、親族への送金や元配偶者への財産分与がないかを確かめるよう求めています。破産法162条は、支払不能になった後の弁済などを、管財人が否認できると定めています(債権者が事実を知っていた場合)。特定の債権者に特別の利益を与える目的で、義務に属さない、または方法や時期が義務と違う弁済をした場合は、免責不許可事由にもなります(252条1項3号)。
  4. ギャンブルや浪費にあたる支出。浪費や賭博その他の射幸行為で著しく財産を減らしたり、過大な債務を負ったりしたことは免責不許可事由です(同項4号)。ただし、事情しだいで裁判所が免責を許可できる仕組みもあります(同条2項)。仕組みの詳しい説明は自己破産の免責不許可とはで扱います。

Q4 説明の準備は、どう進めればよいですか?

申立ての前に、自分で次の順に進めると、書類の矛盾と漏れを減らせます。

  1. 対象期間の通帳をすべて記帳し、コピーを取る。
  2. 通帳を最初から読み、10万円以上の出入りや、個人名・不明な相手との取引に印を付ける。金額の線は決まりではなく、筆者のおすすめの目安です。裁判所に求められたら、その線に合わせて下げます。
  3. 印を付けた取引ごとに、「いつ・誰と・いくら・何のためか」をメモにする。手元に契約書や領収書があれば、一緒に付ける。
  4. メモを、A4の上申書にまとめる。通帳そのものにも、マーカーやメモ書きで事情を書き込む(千葉地裁の留意点)。
  5. 家計表・財産目録・債権者一覧表と照らし合わせ、出入りのある相手が一覧表から漏れていないかを見る。

文例(上申書):「令和○年○月○日の○○円の出金は、○○(相手との関係)への○○のためのものです。当時の事情は次のとおりです。○○。関係する資料として、○○の写しを添付します。」

書くのに迷う取引があれば、そのまま弁護士・司法書士に見せるほうが、早く片づきます。家計表の作り方は自己破産の家計簿と必要書類にあります。

Q5 隠したり、記帳を飛ばしたりしたら、どうなりますか?

通帳の一部を出さない、口座を申告しない、といったことをすると、手続上の不利益が大きくなります。破産者には、管財人などの請求があれば破産に関して必要な説明をする義務があり(破産法40条)、開始決定後は預貯金など財産の内容を書いた書面を裁判所に出す義務があります(41条)。財産を隠した場合や、説明を拒み虚偽の説明をした場合は免責不許可事由になります(252条1項1号・8号・11号)。債権者を害する目的で財産を隠した場合には、10年以下の拘禁刑などの刑事罰があり(265条)、裁判所が求めた説明を拒んだり虚偽の説明をしたりした場合にも、3年以下の拘禁刑などの定めがあります(271条)。

千葉地裁は、免責不許可事由があっても、裁判所の判断で免責を許可する場合があり、大切なのは裁判所に本当の事実を明らかにすることだと書いています。口座の凍結の時期や給与口座の変え方は自己破産で口座凍結される?で、浪費やギャンブルの扱いは浪費やギャンブルの借金でも自己破産できるかで扱います。

よくある質問

Q. 通帳に載っていない現金のやりとりも調べられますか?

通帳の写しや取引明細書が調べの出発点になりますが、現金の動きは通帳に出ません。札幌地裁の案内は、給与の入金や家賃・光熱費・電話代の引落しが通帳にない場合、受け取りや支払いの手段を上申書で説明し、裏付けの資料を出すよう求めています。通帳にない現金も、家計表や財産目録に書く対象です。

Q. 古い通帳や、記帳していない部分があるときはどうしますか?

札幌地裁は、通帳を紛失した口座や、長期間記帳がなく複数の出入金が合算された部分がある口座は、取引明細書を取り寄せて出すよう求めています。千葉地裁の留意点も、「一括」「おまとめ」「合計記帳」があれば取引明細書を出すと書いています。金融機関の窓口で、期間を指定して取り寄せます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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