自己破産 / Q&A

自己破産すると給料はどうなる?差し押さえの止まり方と職場

この記事のもくじ
  1. 手続が始まったあとの給料は、破産財団に入らない
  2. すでにある給料の差し押さえが止まる時期
  3. 差し押さえられる額:民事執行の「4分の1」
  4. 職場に伝わる場面と、準備しておくこと

自己破産をしても、手続が始まったあとに働いて得る給料は、自分のものとして受け取り続けます。破産財団に入るのは、手続を開始する時に持っている財産だからです。一方で、すでに給料の差し押さえが始まっているときは、止まる時期が手続の種類で分かれます。管財事件なら開始決定で、同時廃止なら廃止決定のあと免責が確定するまで中止され、免責が確定すると効力を失います。

手続が始まったあとの給料は、破産財団に入らない

破産法34条1項は、破産財団を「破産手続開始の時において有する一切の財産」と定めています。給料でいえば、開始の時までに働いたのにまだ受け取っていない分(未払いの給料)は、財産として数えられます。水戸地方裁判所の平成31年4月1日実施の例では、未払いの給料・賞与は4分の1の額で評価していました(古い運用の例なので、申立先の現在の扱いは依頼先に聞きます)。たとえば、働いたぶんの給料の支払日がまだ来ていないときに申し立てると、その一部が評価の対象になるわけです。

これに対して、開始のあとに働いて新しく得る給料は、開始の時には存在しない収入です。生活費や家賃、これからの返済以外の支払いに使えます。「破産したら給料を管財人に渡す」ことにはなりません。

家の中の動産を執行官が差し押さえる場面は、給料の差押えとは別です(自己破産で差し押さえが家に来る?持っていかれる物と残る物)。ただし、次の3点は混同しないでください。

  • 給料以外の財産は別に扱われる:預貯金、保険の解約返戻金、車などは、手続の開始の時点で評価されます。口座の扱いは自己破産で口座凍結される?で説明しています。
  • 免責されない支払いは残る:税金や養育費などは免責の対象外で(破産法253条1項)、国民健康保険料も実務では免責されない側に入れて考えます。これらの滞納があれば、給料から差し押さえられる可能性は残ります。内訳は自己破産しても払う必要がある支払いにまとめています。
  • 勤務先からの借入れ:社内の貸付けや前借りがあれば、債権者一覧表に書きます。松江地方裁判所の記入要領は、賃料や勤務先からの借入れを一覧表に載せないと免責不許可事由にあたることがある、と注意しています。

すでにある給料の差し押さえが止まる時期

給料の差し押さえは、裁判所が差押命令を勤務先(第三債務者)に送ることで効力が出ます。差し押さえが止まる時期は、手続の種類と時点で分かれます。

早見表:自己破産で給料の差し押さえが止まる時期
時点・手続 差し押さえの扱い 根拠
申立てから開始決定まで 止まらない。給料の差し押さえや請求を受けることがある 松江地方裁判所の説明
管財事件(開始決定) 破産債権にもとづく強制執行はできなくなり、すでにされたものは破産財団に対して効力を失う 破産法42条1項・2項
同時廃止(廃止決定のあと) 免責が確定するまで、強制執行はできず、すでにされたものは中止される 破産法249条1項
管財事件で手続が終結したあと 免責の裁判が確定するまで、強制執行はできず、すでにされたものは中止される 破産法249条1項(終結決定は220条1項)
免責許可の決定が確定 中止されていた差し押さえが効力を失う 破産法249条2項

同時廃止では、止まるのが「廃止決定のあと」で、効力を失うのは「免責の確定のあと」と、二段階になっています。中止されている間、差し押さえられた分が会社の手元にあるのか、すでに債権者へ渡ったのかは、事案ごとに状況が違います。差押命令に書かれた債権者名と事件番号を依頼先に見せて、手続の見通しを聞いてください。

なお、表の根拠条文は「破産債権にもとづく」強制執行について定めたものです。税金の滞納処分や、免責の対象にならない債権にもとづく差し押さえは、表と同じ扱いになるとは限りません。税金の差し押さえには、役所に猶予や分納を相談する道が別にあるので、依頼先と役所の両方に聞いてください。

差し押さえられる額:民事執行の「4分の1」

借金の返済のための給料の差し押さえは、全額を取られるわけではありません。民事執行法152条1項は、給料などの支払期に受けるべき給付の4分の3は差し押さえてはならないと定めています。4分の3の額が政令の額を超えるときは、政令の額までが差押禁止です。民事執行法施行令2条は、月払いなら33万円と定めています。

筆者の計算で、月ごとの差し押さえの上限を示します(一般に、税金と社会保険料を引いた手取り額を基準に説明されます。裁判所Q&Aも、月額44万円を超える場合は33万円を除いた額と説明しています)。

月の手取り額(基準) 差押禁止の額 差し押さえられる額の上限
20万円 15万円(4分の3) 5万円
40万円 30万円(4分の3) 10万円
44万円 33万円(4分の3) 11万円
50万円 33万円(政令の額) 17万円

44万円が境目で、それを超えると33万円を除いた全額が差し押さえの対象です。養育費など扶養の義務にもとづく請求では、4分の3が2分の1になります(同条3項)。差し押さえの仕組みの全体は給料の差し押さえはいくらまで?4分の1の決まりと会社への通知で詳しく扱っています。破産以外の手続で差し押さえを止められるかは差し押さえされた後でも債務整理できる?にあります。

職場に伝わる場面と、準備しておくこと

破産の手続を裁判所が勤務先へ知らせる、という説明は、裁判所の公表資料には見当たりません。職場に伝わりうる場面は、次のとおりです。

  1. 給料の差し押さえがあるとき:差押命令は勤務先に送られます。破産の申立ての前から差し押さえがあれば、会社はすでに借金の事情を知っています。
  2. 勤務先から借入れがあるとき:債権者一覧表に載り、会社も債権者として手続に加わります。
  3. 書類を会社に頼むとき:退職金の見込額を示す書類や、給与明細・源泉徴収票を、会社の担当者に頼むことがあります。
  4. 資格制限のある仕事のとき:松江地方裁判所は、生命保険外務員や警備員などに就けなくなる資格制限があると説明しています。免責許可の決定が確定すると制限はなくなります。詳しくは自己破産で就けない仕事にあります。

官報や郵便物から会社に知られるかどうかは自己破産は会社にばれる?で整理しています。

手続の前にしておくことは、次の3つです。

  • 給与明細と源泉徴収票を、直近分から並べておく
  • 差押命令や、裁判所・債権者から届いた書類を、日付順に保管する
  • 会社の退職金規程と、社内の貸付け・積立ての有無を確かめる

自己破産全体の流れの中で、給料がどこで影響を受けるかを見るなら自己破産とは?流れ・失うもの・生活への影響をまとめて確認から読み直せます。

よくある質問

Q. 免責が確定したあと、また給料を差し押さえられることはありますか?

免責の対象になった借金については、中止されていた差し押さえが効力を失い(破産法249条2項)、そのあとに新しく差し押さえることもできません。ただし、税金や養育費などは免責されない請求権です(破産法253条1項)。国民健康保険料も、実務では免責されない側に入れて考え、通知書を依頼先に見せて確かめます。その債権者が別に手続を取ることはありえるので、免責されない支払いは手続の前から分けて確認しておきます。

Q. 賞与や退職金は、手続でどう扱われますか?

水戸地方裁判所の平成31年4月1日実施の例では、未払いの給料・賞与は4分の1の額、退職金は支給見込額の8分の1(すでに退職した人や近く退職予定の人は4分の1)を、財産の評価に入れます。松江地方裁判所は、勤続5年以上の人に退職金の見込額を示す書類を求めています。評価の方法は裁判所で違うので、申立先の運用を依頼先に聞いてください。

Q. 申立てをしたあと、開始決定が出るまでの間も給料は差し押さえられますか?

差し押さえられることがあります。松江地方裁判所は、破産の申立てから開始決定までの間は、判決などにもとづいて給料の差し押さえや請求を受けることがあると説明しています。申立てをした時点では差し押さえは止まらないので、すでに差押命令が届いているなら、依頼先にすぐ伝えてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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