自己破産で裁判所に行くのは何回?審尋と債権者集会の中身
自己破産で裁判所に行く回数に、全国共通の決まりはありません。行く場面は「申立ての受付」「裁判官との面接(破産審尋)」「債権者集会」「免責の審尋」の4つで、同時廃止なら債権者集会は開かれず、管財事件なら原則として開かれるため、そこで回数が分かれます。面接や免責の審尋を開くかどうかは、裁判所ごとの運用で違い、弁護士に依頼すると窓口や面接を代理人が行う裁判所もあります。この記事では、各場面で何を聞かれ、何を準備しておくかを、公表されている裁判所の案内から順に説明します。
裁判所に行く4つの場面と、同時廃止・管財事件での違い
先に全体を表にします。「同時廃止」は破産管財人を選ばず、開始の決定と同時に手続を終える型、「管財事件」は管財人が財産を調べて換価する型です。どちらになるかは裁判所が判断します(違いの詳しい中身は自己破産の同時廃止と管財事件の違いで扱います)。
| 場面 | 同時廃止 | 管財事件 | 中身 |
|---|---|---|---|
| 申立ての受付(窓口) | あり | あり | 書類の点検と手続の説明。本人申立てでは原則本人が来庁(札幌・千葉の案内) |
| 裁判官との面接(破産審尋) | 裁判所による | 裁判所による | 支払不能の状態か、経緯、財産を聞く |
| 債権者集会(財産状況報告集会) | 開かれない | 原則開かれる | 管財人が経緯と財産の状況を報告 |
| 免責の審尋・意見申述期間 | あり | あり | 免責を認めてよいかを、本人と債権者から聞いて判断 |
数え方は事件によって変わります。筆者の整理では、同時廃止は「受付+面接(呼出しがあれば免責の審尋)」の組み合わせ、管財事件はそこに債権者集会が加わる組み合わせです。弁護士に依頼すると、東京地裁の案内にあるとおり申立代理人が裁判官と面接する場合があり、本人の出向く回数が減ることがあります。減るかどうかは、申立先の裁判所の案内か、依頼する弁護士に聞いて確かめます。
裁判所は、申立ての仕方や書類についての質問には答えますが、自己破産をしたほうがよいかといった個別の相談には応じません(千葉地裁の案内、松江地裁の案内)。その相談は、弁護士・司法書士や法テラスなどが受け持ちます。
破産審尋(裁判官との面接)で聞かれること
自己破産の申立てがあると、裁判所は債務の総額や財産の状況から、全額を支払えない状態かを調べます。松江地裁の案内は、そのために申立人から資料を出してもらい、裁判所へ出頭を求めて裁判官が直接面接すると書いています。呼び方は「面接」「審尋」「即日面接」など裁判所ごとに違います。東京地裁は、最初から管財事件として申し立てる場合、申立日とその翌日から数えて3開庁日以内に申立代理人と裁判官が面接する運用だと案内しています。
面接で聞かれる中身は、申立書に付ける陳述書の質問と重なります。札幌地裁の陳述書の書き方が挙げる項目は次のとおりで、書いた内容と口頭の答えが食い違わないことが大切です。
- 借金が増えた理由(生活費・返済のための借入れ・ギャンブルなど)
- 過去に破産・個人再生・特定調停・任意整理をしたことがあるか
- 振り返って不必要・不相当だったと思う支出があるか
- クレジットカードで現金化する目的の買い物をしたことがあるか
- 借入れを始めたころからの職歴(アルバイト・パートを含む)
- 申立てに至るまでの経緯(借入れの時期・使い道・返済が苦しくなった時期・支払不能と考えた状況)
札幌地裁は、収入欄の金額が職歴欄の収入と矛盾しないか、債務総額が債権者一覧表の合計と合っているかを、見直すよう求めています。面接の前に、陳述書・債権者一覧表・家計表の数字を並べて見比べておきます(書類の作り方は自己破産の家計簿と必要書類で扱います)。
本人申立ての場合、窓口での受付も1回目の裁判所通いになります。札幌地裁は、受付の際に手続案内のDVD(約15分)の視聴と手続説明を行い、書類に不足があれば直して再度来庁してもらうことがあると案内しています。千葉地裁も、申立書の点検と手続の流れの説明に時間がかかるので、余裕を持って来庁するよう書いています。
債権者集会(管財事件)の中身
管財事件では、破産法31条1項2号により、裁判所は破産手続開始の決定と同時に、破産者の財産状況を報告するための債権者集会(財産状況報告集会)の期日を定めます。集会の期日には、破産管財人・破産者・届出をした破産債権者が呼び出されます(136条1項)。
集会の中身について、東京地裁は債権者向けの案内で、破産管財人が破産に至った経緯、管財業務の内容、破産財団の現状などを報告し、出席した債権者は質問や意見を述べられると説明しています。つまり破産者にとっての集会は、管財人の報告を聞く場であり、管財人や債権者から質問が出たら答える場です。破産者には、管財人の請求や債権者集会の決議に基づく請求があれば、破産に関して必要な説明をする義務があります(40条)。
出席についての注意は3つです。
- 債権者の出席は任意です。東京地裁は出席しなくても配当を受けられなくなる不利益はないと案内し、裁判所のQ&Aは債権届出を出していれば出席しなくても配当を受けられると案内しています。集会の主役は債権者ではなく管財人の報告です。
- 同時廃止では債権者集会は開かれません。 東京地裁の案内は、同時廃止の通知書には、免責についての意見を述べられる期間が書かれていると説明しています。
- 債権者の数などの事情から、裁判所が集会を招集するのが相当でないと認めるときは、期日を定めないこともあります(31条4項)。
裁判所が相当と認めるときは、破産者・管財人・届出をした債権者がウェブ会議システムで期日に出頭できます。希望するときは上申書を出し、認めるかどうかは事案ごとの判断です(裁判所のQ&A)。上申書の前に、事件のある裁判所へ確認します。
免責の審尋と、債権者の意見申述期間
自己破産では、手続を始める決定を受けるだけでは借金の支払義務はなくなりません。免責許可の決定が確定してはじめて、非免責債権(税金・養育費など)を除く支払義務を免れます。自分で破産を申し立てた場合は、反対の意思を表示しない限り、免責の申立てもしたものとみなされます(破産法248条4項)。
免責を認めてよいかの審理について、松江地裁の案内は、免責の審尋期日を指定して破産者から事情を聴き、債権者からも意見を聴くと説明しています。一方、東京地裁の債権者向けの案内は、同じ段階を「意見申述期間」の言葉で説明しており、審尋期日の言葉は使っていません。債権者が免責について意見を書面で出せる期間は、公告の効力が生じた日から1か月以上と定められています(破産法251条)。免責の段階で本人の呼出しがあるか、あるとしていつかは、裁判所と事件で違うため、呼出状・通知書の日時が最優先の情報です。
免責の審理で重く見られるのは、免責不許可事由(破産法252条1項)に当たる行為の有無です。財産を隠したこと、浪費やギャンブルで著しく財産を減らしたこと、虚偽の債権者一覧表を出したこと、裁判所の調査で虚偽の説明をしたこと、などが並んでいます。当たる事情があっても、裁判所が一切の事情を考えて免責を許可できる仕組みがあります(同条2項)。浪費やギャンブルが理由の場合は、浪費やギャンブルの借金でも自己破産できるかと裁量免責の考え方、自己破産の免責不許可とはを先に読んでおくと、面接で聞かれる意味が分かります。裁判所から反省文などの提出を求められたときの書き方は自己破産の反省文の書き方|書く項目と文例・避けたい書き方にあります。
当日の持ち物と、答え方の準備
呼出状や通知書が届いたら、まず日時・場所・持参するものを読みます。そのうえで、次の準備をします。
- 呼出状・通知書と、出した書類の控え:札幌地裁と新潟地裁の案内は、申立書の全ページのコピーを自分用に取っておくよう求めています。控えがあれば、面接で「申立書に書いたとおり」と確かめながら答えられます。
- 申立書に押した印鑑:新潟地裁は、裁判所に行くたびに申立書に押したのと同じ印鑑を持参するよう書いています。札幌地裁も、以後の書面には申立書と同じ印鑑を使うよう求めています。
- 裁判所の郵便を受け取れる送達場所:新潟地裁の案内は、裁判所が送達場所に送った郵便は、受け取れなくても受け取ったのと同じ効果が生じると警告しています。引っ越したら、住民票を付けて住所変更の届出をします。
- 時系列のメモ:借入れを始めた時期、増えた理由、返済が苦しくなった時期、支払不能を意識した出来事を、年表のように1枚にまとめます。札幌地裁の書き方のポイントがそのまま使えます。
- 通帳の高額な出入りの説明:高額な入出金や、個人名の相手との入出金は、理由をA4の別紙(上申書)で説明するよう求められます(自己破産で通帳はどこまで調べられるかで扱います)。
答え方は、次の3つを守ります。
- 事実のとおりに答える。借金の使い道が浪費・ギャンブルなら、日常の生活費と書かず、そのとおり述べる。札幌地裁は、裁判所に虚偽の説明をしたとされて免責を受けられない場合があると注意しています。
- 覚えていないことは、覚えていないと言う。札幌地裁の陳述書の案内も、職歴欄で覚えていない項目には「覚えていません。」と書き、省略しないよう求めています。
- 推測で数字を言わない。手元の通帳・明細・請求書を見ながら答えます。
文例(時期を聞かれたとき):「正確な日付は覚えていません。通帳の○月の記帳では、○社への返済が止まっています。そのころに返済が難しいと感じました。」
虚偽の説明は、免責不許可事由になるだけではありません。申立てや免責の審尋で、裁判所が説明を求めた事項について説明を拒み、または虚偽の説明をした債務者には、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)の定めがあります(破産法271条)。言いにくいことほど、先に弁護士や司法書士に話して、どう書面で説明するかを決めておくのが安全です。
手続の全体の流れと期間は、自己破産の流れ|相談から免責許可の決定までに載せています。
よくある質問
Q. 弁護士に頼めば、裁判所には一度も行かなくて済みますか?
申立ての受付や裁判官との面接は、代理人の弁護士が行う運用の裁判所があります(東京地裁の案内は、申立代理人と裁判官が面接すると書いています)。ただ、免責の審尋や債権者集会で本人の呼出しがあるかどうかは、裁判所と事件の型で変わります。呼出状や通知書に日時が書いてあれば、それに従います。
Q. 債権者集会に、お金を貸した人が来て責められることはありますか?
債権者の出席は任意で、債権届出をしていれば来なくても配当を受けられると裁判所は案内しています。集会の中心は、破産管財人が経緯や財産の状況を報告することです。来た債権者は質問や意見を述べられるので、管財人に聞かれたことと同じ内容を、事実のとおりに答えられるようにしておきます。
出典・参考にした公的な情報
- 破産法(第31条・第40条・第136条・第248条・第251条・第252条・第271条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産(破産手続・同時廃止と管財事件・債権者集会・必要書類)(裁判所)
- 民事事件Q&A(破産の申立て・債権者集会)(裁判所)
- 東京地方裁判所民事第20部 よくある質問(管財事件・面接・債権者集会・意見申述期間)(東京地方裁判所)
- 破産・免責手続のあらまし(裁判官との面接・免責の審尋)(松江地方裁判所)
- 破産・免責申立書の書き方と留意事項(令和6年1月版)(札幌地方裁判所)
- 破産・免責手続について(よくあるご質問)(千葉地方裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。