自己破産はしたもん勝ち?手続きの負担と免責されない場合
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自己破産は、「したもん勝ち」の制度ではありません。免責が許可されて確定すれば、税金や養育費などを除いて返済の責任を免れますが、その前に財産を手放し、手続きの間は転居や一部の仕事に制限がかかり、免責が許可されない場合もあります。この記事は、得か損かの答えを出すのではなく、手放すもの、手続きの負担、免責されない場合、その後の生活を、条文と裁判所の資料で並べます。
「したもん勝ち」と言えない理由:免責は自動で許可されない
自己破産の目的は、返せなくなった借金について、裁判所に破産手続の開始と免責の許可を求めることです。裁判所の説明では、破産手続が始まっても当然に返済を免れるわけではなく、免責が許可されて確定して初めて、責任を免れます(破産法252条7項)。
手続きの中身は、債務者の財産を金銭に換えて債権者に分ける(配当する)ことです(裁判所「破産・再生」)。借りた側が一方的に払わなくなる仕組みではなく、持っている財産を債権者に分けたうえで、免責が許可されるかどうかを裁判所が審査します。免責を許可する条件として、破産法252条1項は11の免責不許可事由を挙げ、そのどれにも当たらないときに許可すると定めています。
つまり、借金を重ねてから破産すれば得をする、という作りにはなっていません。たとえば、返せない状態を隠して借り入れた場合や、特定の人にだけ返した場合などは、免責不許可事由にあたりえます(同条1項2号・3号・5号)。やってはいけない行為は自己破産で嘘はバレる?申立て前にしてはいけない財産の移動と返済に整理しました。
手放すもの・手続きの負担を事実で並べる
自己破産で手放すもの、かかるお金、手続きの間の制限を、表にまとめます。費用の額は東京地方裁判所民事第20部が公表している令和8年1月1日現在の例で、裁判所ごとに違います。
| 区分 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 手放す財産 | 開始の時に持っていた財産は破産財団になり、換価して配当に回る。現金99万円までと、差押えが禁止された財産などは手元に残る | 破産法34条 |
| 申立ての費用 | 収入印紙は破産の申立て1,000円と免責の申立て500円の計1,500円。予納金や郵便料が別に要る | 裁判所Q&A |
| 予納金の例 | 東京地裁では、同時廃止事件の基準額13,046円、個人の管財事件は最低20万円と1件につき20,397円 | 東京地裁の公表資料 |
| 書類の準備 | 債権者一覧表、財産目録、事情説明書、住民票の写し、給与明細など | 裁判所Q&A |
| 転居・旅行 | 開始決定から手続が終わるまで、裁判所の許可なしに居住地を離れられない | 破産法37条 |
| 管財人の調査 | 説明義務、財産の開示、免責の調査への協力。郵便物が管財人に配達され、開いて見られる | 破産法40条・41条・81条・82条・250条2項 |
| 官報 | 開始決定などが官報で公告される | 破産法10条 |
弁護士や司法書士に頼むときの費用は、これとは別にかかります。内訳は自己破産の費用はいくら?裁判所の費用と弁護士費用の内訳で見られます。
**費用と時間の目安を並べると、負担の大きさがつかめます。**費用は、法テラスの着手金の基準額(債権者1社〜10社)と東京地裁の公表額を足した筆者の計算で、事務所への実際の支払額ではありません。
| 同時廃止 | 管財事件 | |
|---|---|---|
| 費用の総額の例(筆者の計算) | 151,496円 | 358,847円〜446,847円 |
| 手続きの時間 | 弁護士が代理人の場合、東京地裁では申立てから3開庁日以内の面接で同時廃止が決まることがある。そのあと免責の意見申述の期間が1か月以上ある | 債権者集会などが加わり、同時廃止より長くなる構造。全国共通の日数は公表されていない |
| 本人の動き | 書類の準備、裁判官との面接、免責の審尋(呼出しがある場合) | 同左に加えて、管財人の調査への協力、郵便物の転送 |
時間の内訳は自己破産の流れ|相談から免責許可の決定までの期間と手順に、費用の組み立ては自己破産の費用はいくら?にあります。
手続きの負担の重さは、同時廃止か管財事件かで違います。管財事件では債権者集会が開かれ、郵便物の転送もありますが、同時廃止ではどちらもありません(裁判所の民事事件Q&A、破産法81条)。同時廃止になるか管財事件になるかは、裁判所が決めます。違いは自己破産の同時廃止と管財事件の違い|分かれ目と費用・期間にあります。
選挙権は失いません(裁判所の民事事件Q&A)。一方で、資格や職業には制限がかかることがあります。警備業法3条1号などで「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」が欠格とされていて、免責許可の決定が確定すると当然に復権します(破産法255条1項1号)。
免責されない場合:不許可になるとき、許可されても残る支払い
免責に関わる「免責されない」には、2つの意味があります。分けて見ます。
免責が許可されない場合
破産法252条1項の免責不許可事由のどれかにあたると、免責は原則として許可されません。事由は11あり、この記事のテーマに近いのは次の4つです。
- 浪費や賭博その他の射幸行為で、著しく財産を減らした、または過大な債務を負ったこと(4号)
- 特定の債権者に特別の利益を与える目的での返済や担保の提供(3号)
- 開始の原因を隠して、信用取引で財産を得たこと(5号)
- 裁判所の調査で、説明を拒む、または虚偽の説明をしたこと(8号)
残りの7つ(財産の隠匿、帳簿の隠滅、虚偽の債権者名簿、前の免責から7年以内の申立てなど)は自己破産の免責不許可とは?注意する行為と裁量免責の仕組みの早見表にあります。
どれかにあたっても、裁判所が開始に至った経緯などを考えて相当と認めるときは、免責を許可できます(同条2項、裁量免責)。許可されるかは個別の判断です。免責が許可されなければ、返済の責任は残ります。
免責が許可されても残る支払い
免責が許可されて確定しても、破産法253条1項が挙げる請求権は免責されません。7種類のうち、「したもん勝ち」の誤解が出やすいのは、次の3つです。
| 免責されない請求権 | 例 |
|---|---|
| 租税等の請求権(国税徴収の例で徴収できる請求権) | 税金、国民年金保険料など |
| 夫婦間の扶助、婚姻費用、養育費などの義務 | 養育費、婚姻費用 |
| 知りながら債権者名簿に載せなかった請求権 | 借金を一覧から外した場合 |
悪意の不法行為による損害賠償、人の生命・身体を害した損害賠償、雇用関係の請求権、罰金等も免責されません。
借金の大半が税金や養育費のような免責されない支払いだと、自己破産をしても負担が大きくは減りません。一覧と考え方は自己破産しても払う必要がある支払い|税金・養育費などの一覧にあります。保証人がいる借金は、本人が免責されても、保証人への債権者の権利は残ります(破産法253条2項)。
自己破産した後の生活:変わること、変わらないこと
「した人の末路」と検索する人が知りたいのは、手続きの後の暮らしでしょう。条文や公表資料で言えることを分けると、次のとおりです。
- 住まい・仕事。 転居の制限は破産手続が終わると外れます。資格の制限は、免責が確定して復権すると外れます。会社や家族に知られる場面は自己破産は会社にばれる?家族に知られる場面と官報・郵便物の扱いで整理しています。
- お金の借入れ。 全国銀行個人信用情報センターは、官報に公告された破産の開始決定の情報を、決定日から7年を超えない期間保有すると公表しています(同センターの登録情報のページ)。信用情報機関ごとに期間と扱いが違うため、クレジットカードの契約や住宅ローンが組める時期は、一律には言えません。自己破産後のクレジットカード|作れるまでの期間と使える代わりで見られます。
- 家族。 保証人や連帯債務者でない家族に、本人の借金の返済義務は生じません。
- 生活の立て直し。 債務整理の後に変わること、変わらないことは債務整理の後の生活はどうなる?変わることと変わらないことにあります。
何度でもできる手続きではない点にも注意が必要です。前の免責の確定の日から7年以内の免責の申立ては、免責不許可事由にあたります(破産法252条1項10号)。2回目以降の考え方は自己破産を繰り返す人は免責される?2回目の申立てと7年の線にあります。
「得か損か」ではなく、立て直しの手段として選ぶ考え方
自己破産を「得か損か」で考えると、手放すものや制限ばかりに目が行ったり、反対に、軽く考えすぎたりします。判断の材料は、次の4つに分けると整理しやすくなります。
- 返せる見通しがあるか。 収入が続き、減額や分割で払い切れる見込みがあるなら、任意整理や個人再生が候補になります。収入が途絶えている、借金が大きく返す見通しが立たないなら、自己破産が候補になります。
- 残したい財産があるか。 持ち家や車を残したいときは、個人再生が検討されます。比較は自己破産と個人再生の違い|家・仕事・返済額で選ぶ判断材料にあります。
- 免責されない支払いの割合。 税金や養育費が借金の大半なら、別の手段(役所への分納の相談など)が先になります。
- 免責不許可事由にあたる行為がないか。 浪費、賭博、特定の人への返済などがある場合は、依頼先に事実を伝えたうえで進め方を決めます。
自己破産は、返せなくなった借金を整理し、生活を立て直すために法律が用意した手続きの一つです。得をする手段としてではなく、収入・財産・借金の額で見て、ほかの手段よりも合うかを確かめて選びます。個別の見立ては、弁護士など資格のある人に書類を見せて確かめるのが現実的です。全体像は自己破産とは?流れ・失うもの・生活への影響をまとめて確認に、失うものと制限の一覧は自己破産のデメリット一覧|失うもの・制限・家族への影響にあります。
よくある質問
Q. 自己破産をしたら、もう一生お金を借りられませんか?
一生借りられないと決まっているわけではありません。CICとJICCは免責確定にともなう契約終了日から約5年、全国銀行個人信用情報センターは官報に公告された破産の開始決定の情報を、決定日から7年を超えない期間保有します。機関ごとの期間は[自己破産後のクレジットカード](/hasan-credit-card/)の表で見られます。記録が消えたあとも、各社の審査に通るとは限りません。
Q. 自己破産を何度もすれば、借金を繰り返しても大丈夫ですか?
大丈夫とは言えません。前の免責許可の決定が確定した日から7年以内に免責許可の申立てがあった場合は、免責不許可事由にあたります(破産法252条1項10号)。浪費や賭博で財産を著しく減らしたことも、不許可事由です。
Q. 自己破産をすると、保証人や家族に請求がいきますか?
本人が免責されても、保証人への債権者の権利は残ります(破産法253条2項)。保証人でも連帯債務者でもない家族には、本人の借金の返済義務は生じません。
出典・参考にした公的な情報
- 破産法 第10条・第34条・第37条・第40条・第41条・第81条・第82条・第97条・第252条・第253条・第255条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産・再生(最高裁判所)
- 裁判手続 民事事件Q&A(最高裁判所)
- 破産事件の手続費用一覧(東京地方裁判所民事第20部・令和8年1月1日現在)(東京地方裁判所)
- 警備業法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国民年金法 第95条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 登録情報(全国銀行個人信用情報センター)(一般社団法人全国銀行協会)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。