自己破産 / Q&A

自己破産はしたもん勝ち?手続きの負担と免責されない場合

この記事のもくじ
  1. 「したもん勝ち」と言えない理由:免責は自動で許可されない
  2. 手放すもの・手続きの負担を事実で並べる
  3. 免責されない場合:不許可になるとき、許可されても残る支払い
  4. 自己破産した後の生活:変わること、変わらないこと
  5. 「得か損か」ではなく、立て直しの手段として選ぶ考え方

自己破産は、「したもん勝ち」の制度ではありません。免責が許可されて確定すれば、税金や養育費などを除いて返済の責任を免れますが、その前に財産を手放し、手続きの間は転居や一部の仕事に制限がかかり、免責が許可されない場合もあります。この記事は、得か損かの答えを出すのではなく、手放すもの、手続きの負担、免責されない場合、その後の生活を、条文と裁判所の資料で並べます。

「したもん勝ち」と言えない理由:免責は自動で許可されない

自己破産の目的は、返せなくなった借金について、裁判所に破産手続の開始と免責の許可を求めることです。裁判所の説明では、破産手続が始まっても当然に返済を免れるわけではなく、免責が許可されて確定して初めて、責任を免れます(破産法252条7項)。

手続きの中身は、債務者の財産を金銭に換えて債権者に分ける(配当する)ことです(裁判所「破産・再生」)。借りた側が一方的に払わなくなる仕組みではなく、持っている財産を債権者に分けたうえで、免責が許可されるかどうかを裁判所が審査します。免責を許可する条件として、破産法252条1項は11の免責不許可事由を挙げ、そのどれにも当たらないときに許可すると定めています。

つまり、借金を重ねてから破産すれば得をする、という作りにはなっていません。たとえば、返せない状態を隠して借り入れた場合や、特定の人にだけ返した場合などは、免責不許可事由にあたりえます(同条1項2号・3号・5号)。やってはいけない行為は自己破産で嘘はバレる?申立て前にしてはいけない財産の移動と返済に整理しました。

手放すもの・手続きの負担を事実で並べる

自己破産で手放すもの、かかるお金、手続きの間の制限を、表にまとめます。費用の額は東京地方裁判所民事第20部が公表している令和8年1月1日現在の例で、裁判所ごとに違います。

一覧:自己破産で手放すものと、手続きの負担
区分 内容 根拠
手放す財産 開始の時に持っていた財産は破産財団になり、換価して配当に回る。現金99万円までと、差押えが禁止された財産などは手元に残る 破産法34条
申立ての費用 収入印紙は破産の申立て1,000円と免責の申立て500円の計1,500円。予納金や郵便料が別に要る 裁判所Q&A
予納金の例 東京地裁では、同時廃止事件の基準額13,046円、個人の管財事件は最低20万円と1件につき20,397円 東京地裁の公表資料
書類の準備 債権者一覧表、財産目録、事情説明書、住民票の写し、給与明細など 裁判所Q&A
転居・旅行 開始決定から手続が終わるまで、裁判所の許可なしに居住地を離れられない 破産法37条
管財人の調査 説明義務、財産の開示、免責の調査への協力。郵便物が管財人に配達され、開いて見られる 破産法40条・41条・81条・82条・250条2項
官報 開始決定などが官報で公告される 破産法10条

弁護士や司法書士に頼むときの費用は、これとは別にかかります。内訳は自己破産の費用はいくら?裁判所の費用と弁護士費用の内訳で見られます。

**費用と時間の目安を並べると、負担の大きさがつかめます。**費用は、法テラスの着手金の基準額(債権者1社〜10社)と東京地裁の公表額を足した筆者の計算で、事務所への実際の支払額ではありません。

負担の見える化:費用の総額と、手続きにかかる時間の目安
同時廃止 管財事件
費用の総額の例(筆者の計算) 151,496円 358,847円〜446,847円
手続きの時間 弁護士が代理人の場合、東京地裁では申立てから3開庁日以内の面接で同時廃止が決まることがある。そのあと免責の意見申述の期間が1か月以上ある 債権者集会などが加わり、同時廃止より長くなる構造。全国共通の日数は公表されていない
本人の動き 書類の準備、裁判官との面接、免責の審尋(呼出しがある場合) 同左に加えて、管財人の調査への協力、郵便物の転送

時間の内訳は自己破産の流れ|相談から免責許可の決定までの期間と手順に、費用の組み立ては自己破産の費用はいくら?にあります。

手続きの負担の重さは、同時廃止か管財事件かで違います。管財事件では債権者集会が開かれ、郵便物の転送もありますが、同時廃止ではどちらもありません(裁判所の民事事件Q&A、破産法81条)。同時廃止になるか管財事件になるかは、裁判所が決めます。違いは自己破産の同時廃止と管財事件の違い|分かれ目と費用・期間にあります。

選挙権は失いません(裁判所の民事事件Q&A)。一方で、資格や職業には制限がかかることがあります。警備業法3条1号などで「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」が欠格とされていて、免責許可の決定が確定すると当然に復権します(破産法255条1項1号)。

免責されない場合:不許可になるとき、許可されても残る支払い

免責に関わる「免責されない」には、2つの意味があります。分けて見ます。

免責が許可されない場合

破産法252条1項の免責不許可事由のどれかにあたると、免責は原則として許可されません。事由は11あり、この記事のテーマに近いのは次の4つです。

  • 浪費や賭博その他の射幸行為で、著しく財産を減らした、または過大な債務を負ったこと(4号)
  • 特定の債権者に特別の利益を与える目的での返済や担保の提供(3号)
  • 開始の原因を隠して、信用取引で財産を得たこと(5号)
  • 裁判所の調査で、説明を拒む、または虚偽の説明をしたこと(8号)

残りの7つ(財産の隠匿、帳簿の隠滅、虚偽の債権者名簿、前の免責から7年以内の申立てなど)は自己破産の免責不許可とは?注意する行為と裁量免責の仕組みの早見表にあります。

どれかにあたっても、裁判所が開始に至った経緯などを考えて相当と認めるときは、免責を許可できます(同条2項、裁量免責)。許可されるかは個別の判断です。免責が許可されなければ、返済の責任は残ります。

免責が許可されても残る支払い

免責が許可されて確定しても、破産法253条1項が挙げる請求権は免責されません。7種類のうち、「したもん勝ち」の誤解が出やすいのは、次の3つです。

免責されない請求権 例
租税等の請求権(国税徴収の例で徴収できる請求権) 税金、国民年金保険料など
夫婦間の扶助、婚姻費用、養育費などの義務 養育費、婚姻費用
知りながら債権者名簿に載せなかった請求権 借金を一覧から外した場合

悪意の不法行為による損害賠償、人の生命・身体を害した損害賠償、雇用関係の請求権、罰金等も免責されません。

借金の大半が税金や養育費のような免責されない支払いだと、自己破産をしても負担が大きくは減りません。一覧と考え方は自己破産しても払う必要がある支払い|税金・養育費などの一覧にあります。保証人がいる借金は、本人が免責されても、保証人への債権者の権利は残ります(破産法253条2項)。

自己破産した後の生活:変わること、変わらないこと

「した人の末路」と検索する人が知りたいのは、手続きの後の暮らしでしょう。条文や公表資料で言えることを分けると、次のとおりです。

何度でもできる手続きではない点にも注意が必要です。前の免責の確定の日から7年以内の免責の申立ては、免責不許可事由にあたります(破産法252条1項10号)。2回目以降の考え方は自己破産を繰り返す人は免責される?2回目の申立てと7年の線にあります。

「得か損か」ではなく、立て直しの手段として選ぶ考え方

自己破産を「得か損か」で考えると、手放すものや制限ばかりに目が行ったり、反対に、軽く考えすぎたりします。判断の材料は、次の4つに分けると整理しやすくなります。

  1. 返せる見通しがあるか。 収入が続き、減額や分割で払い切れる見込みがあるなら、任意整理や個人再生が候補になります。収入が途絶えている、借金が大きく返す見通しが立たないなら、自己破産が候補になります。
  2. 残したい財産があるか。 持ち家や車を残したいときは、個人再生が検討されます。比較は自己破産と個人再生の違い|家・仕事・返済額で選ぶ判断材料にあります。
  3. 免責されない支払いの割合。 税金や養育費が借金の大半なら、別の手段(役所への分納の相談など)が先になります。
  4. 免責不許可事由にあたる行為がないか。 浪費、賭博、特定の人への返済などがある場合は、依頼先に事実を伝えたうえで進め方を決めます。

自己破産は、返せなくなった借金を整理し、生活を立て直すために法律が用意した手続きの一つです。得をする手段としてではなく、収入・財産・借金の額で見て、ほかの手段よりも合うかを確かめて選びます。個別の見立ては、弁護士など資格のある人に書類を見せて確かめるのが現実的です。全体像は自己破産とは?流れ・失うもの・生活への影響をまとめて確認に、失うものと制限の一覧は自己破産のデメリット一覧|失うもの・制限・家族への影響にあります。

よくある質問

Q. 自己破産をしたら、もう一生お金を借りられませんか?

一生借りられないと決まっているわけではありません。CICとJICCは免責確定にともなう契約終了日から約5年、全国銀行個人信用情報センターは官報に公告された破産の開始決定の情報を、決定日から7年を超えない期間保有します。機関ごとの期間は[自己破産後のクレジットカード](/hasan-credit-card/)の表で見られます。記録が消えたあとも、各社の審査に通るとは限りません。

Q. 自己破産を何度もすれば、借金を繰り返しても大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。前の免責許可の決定が確定した日から7年以内に免責許可の申立てがあった場合は、免責不許可事由にあたります(破産法252条1項10号)。浪費や賭博で財産を著しく減らしたことも、不許可事由です。

Q. 自己破産をすると、保証人や家族に請求がいきますか?

本人が免責されても、保証人への債権者の権利は残ります(破産法253条2項)。保証人でも連帯債務者でもない家族には、本人の借金の返済義務は生じません。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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