自己破産と個人再生の違い|家・仕事・返済額で選ぶ判断材料
自己破産と個人再生の大きな違いは、返済が残るかどうかです。自己破産は、免責許可が確定すると返済の責任を免れる代わりに、一定の財産を手放し、復権まで一部の資格に制限がかかります。個人再生は、減額した借金を原則3年で返し続ける代わりに、住宅ローンのある家を残せる場合があり、財産を手放すことが原則ではありません。この記事では、違いを項目ごとに表で比べ、収入と住宅の有無で絞る判断材料を示します。
項目ごとの違い(早見表)
| 比べる点 | 自己破産 | 個人再生 |
|---|---|---|
| 仕組み | 破産手続と免責の2本立て。免責が確定すると返済の責任を免れる | 裁判所が認めた再生計画に沿って、減った額を返す |
| 使える人 | 支払不能の人(破産法15条) | 継続的・反復した収入の見込みがあり、住宅ローン等を除く借金が5,000万円以下の人(民事再生法221条1項) |
| 返済 | 免責が確定すれば、税金・養育費などを除いて責任を免れる | 計画期間は原則3年、特別な事情があれば5年まで(民事再生法229条2項) |
| 返済額の下限 | なし | 最低弁済額がある(民事再生法231条2項3号・4号) |
| 財産 | 自由財産を超える分は換価される | 手放さないが、破産した場合に配当される額以上を返す必要がある(清算価値) |
| 住宅 | 担保のある家は原則として処分の対象 | 住宅資金特別条項で、ローンを払いながら残せる場合がある |
| 資格制限 | 復権まで一部の資格に制限(警備業法3条1号など) | 「破産手続開始の決定」を条件にした資格制限は当たらない |
| 免責不許可事由 | 11の事由がある(破産法252条1項) | 浪費・賭博を理由にする定めはない(不誠実な申立ては棄却される) |
| 官報 | 載る(破産法10条) | 載る(民事再生法10条) |
| 申立ての印紙 | 1,500円(開始1,000円・免責500円) | 1万円 |
| 保証人 | 免責は保証人に影響しない(破産法253条2項) | 再生計画は保証人に影響しない(民事再生法177条2項) |
2つの手続きは、保証人への影響が変わらない点も共通です。本人の借金が減っても、保証人への請求は残ります。保証人の借金の扱いは債務整理すると保証人はどうなる?請求が保証人に行く仕組みで説明しています。
個人再生で返す額の決まり方
個人再生は、借金の総額が減る手続きですが、減る額は借金の大きさで決まる最低ラインがあります。最低弁済額は、条文から次のように読み取れます(筆者の計算)。
| 基準債権の総額(住宅ローンや担保で回収できる分などを除く) | 最低弁済額 |
|---|---|
| 100万円未満 | その全額 |
| 100万円以上500万円以下 | 100万円 |
| 500万円超1,500万円以下 | 総額の5分の1 |
| 1,500万円超3,000万円以下 | 300万円 |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 総額の10分の1 |
借金が100万円に満たなければ、個人再生では減りません。さらに、手元の財産を処分した場合の配当額(清算価値)を下回ることはできないので、財産が多い人は返す額が増えます。この下限の詳細は個人再生の最低弁済額の早見表|借金額ごとの返済総額と計算の仕方と個人再生の清算価値とは?財産が多いと返済額が増える仕組みにあります。
給与所得者等再生を選ぶ場合は、可処分所得の2年分以上を返す必要があり、条件がさらに厳しくなります(民事再生法241条2項7号)。小規模個人再生とどちらを使うかは小規模個人再生と給与所得者再生(給与所得者等再生)の違いと選び方で説明しています。
住宅と仕事で分かれる点
住宅は、2つの手続きで最も扱いが違う項目です。自己破産では、担保のある家は処分の対象になるのが原則です。個人再生では、住宅資金特別条項を使うと、住宅ローンを約束どおりに払いながら家を残せる場合があります。ただし、次の条件があります。
- 住宅ローン以外の担保権(別除権)が、その家に付いていないこと(民事再生法198条1項)
- 保証会社が代位弁済した場合は、その日から6か月を経過する日までに申立てをすること(同条2項)
- 認可の見込みがなく、住宅を失うと見込まれる場合は認可されない(同法202条2項3号)
住宅ローンの返済の期限を延ばす場合も、最終の返済日は約束から10年以内、70歳を超えない範囲です(民事再生法199条2項。住宅ローンの債権者の同意があれば、別の定めもできます。同条4項)。ペアローンや親子で共有する家は扱いが分かれる場合があるので、個別に確かめます。詳しくは個人再生で住宅ローンを払い続ける特則|家を残す条件と流れに載せました。
仕事は、自己破産の資格制限が関わります。警備業は「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」が営めず(警備業法3条1号)、免責許可の決定が確定すれば復権して外れます(破産法255条1項1号)。個人再生は、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」という文言の欠格には当たりません。ただし、仕事が資格制限の対象かは、法令を一つずつ確かめる必要があります。自己破産の資格制限は自己破産で就けない仕事|警備員など資格制限の一覧と期間にまとめています。
費用・信用情報・繰り返す場合
費用は、裁判所に納める額が違います。申立ての印紙は、自己破産が1,500円、個人再生が1万円です。東京地方裁判所の個人再生では、官報公告費用として1万5,120円の予納金が必要とされています(令和7年11月1日以降適用)。個人再生委員が選ばれると、その費用も加わります(民事再生法223条)。個人再生委員を選ぶか、その報酬がいくらかは、裁判所ごとに違います。
自己破産は、管財事件になると最低20万円規模の予納金が必要になる場合があります(東京地裁)。同時廃止との差は自己破産の同時廃止と管財事件の違い|分かれ目と費用・期間で見られます。依頼先の報酬は別で、見積書で総額を確かめます。
信用情報は、全国銀行個人信用情報センターが、官報に公告された破産・民事再生の手続開始決定を、決定日から7年を超えない期間持ちます。2つの手続きで、この点は変わりません。機関ごとの年数はブラックリストの期間の早見表|延滞・債務整理・破産ごとの年数に表があります。
繰り返す場合は、手続きによって制限が違います。自己破産は、前の免責許可の確定日から7年以内の免責申立ては免責不許可事由になります(破産法252条1項10号)。給与所得者等再生にも、破産の免責が確定した日などから7年以内は使えない制限があります(民事再生法239条5項2号)。
収入と住宅の有無で絞る問い
次の順に問いをたどると、どちらを中心に検討するかの見当がつきます。個別の結論ではなく、書類を持って弁護士などに聞くときの整理です。
- これから継続して収入を得る見込みがあるか
- ない → 自己破産を中心に検討
- ある → 2へ
- 住宅ローンの残る家を、手放したくないか
- 手放したくない → 個人再生(住宅資金特別条項が使えるかを確かめる)
- こだわらない → 3へ
- 最低弁済額と清算価値を、3年から5年の収入で払えそうか
- 払えそう → 個人再生と自己破産を、資格制限や費用も含めて比べる
- 払えない → 自己破産を中心に検討
聞き方の例は次のとおりです。
文例:「毎月の手取りは約○○万円で、住宅ローンの残る家があります。個人再生で家を残せるか、自己破産になる場合は家をどうするかを、費用の総額とあわせて教えてください。」
借金の理由が浪費やギャンブルを含む場合は、自己破産では免責不許可事由が問題になりえるため、浪費やギャンブルの借金でも自己破産できる?裁量免責の考え方も確認します。任意整理も含めた違いは任意整理と自己破産の違い|返済の有無と失うものを比べるに、個人再生そのものの入口は個人再生とは?返済額が決まる仕組みと家を残す条件・流れにあります。
手続きを選ぶ段階で、弁護士に頼む選択肢があります。見積もりでは、自己破産と個人再生のそれぞれについて、裁判所に納める額を含めた総額、必要な期間、家や仕事への影響を説明してもらうと、比べやすくなります。
次の記事は、申立ての後に裁判所へ出向く場面を扱う自己破産で裁判所に行くのは何回?審尋と債権者集会の中身です。
よくある質問
Q. 個人再生ができるのは、どんな人ですか?
将来、継続的または反復して収入を得る見込みがあり、住宅ローンなどを除いた借金の総額が5,000万円を超えない人です(民事再生法221条1項)。給与のように定期的で変動の幅が小さい収入がある人は、給与所得者等再生も選べます(同法239条1項)。
Q. 個人再生なら、浪費やギャンブルの借金でも使えますか?
民事再生法には、破産法252条1項のような、浪費や賭博を理由とする免責の不許可事由は定められていません。ただし、不当な目的や誠実でない申立ては開始の申立てが棄却される事由になります(民事再生法25条4号)。個別の見通しは弁護士などに書類を見せて聞きます。
出典・参考にした公的な情報
- 破産法(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事再生法(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 警備業法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産・再生(裁判所)(最高裁判所)
- 個人再生手続(裁判所)(最高裁判所)
- 裁判手続 民事事件Q&A(裁判所)(最高裁判所)
- 個人再生手続の申立てに当たって(東京地方裁判所民事第20部・令和7年11月1日以降適用)(東京地方裁判所)
- 民事訴訟費用等に関する法律 別表第一(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 登録情報(全国銀行個人信用情報センター)(一般社団法人全国銀行協会)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。