個人再生の給与所得者再生とは?小規模個人再生との違いと選び方
小規模個人再生と給与所得者等再生(通称・給与所得者再生)の違いは、主に2つです。1つは債権者の同意で、小規模個人再生は債権者の書面決議があり、給与所得者等再生は意見を聴くだけです。もう1つは返す額で、給与所得者等再生は最低弁済額と清算価値に加えて、可処分所得の2年分以上を返す必要があります。債権者の反対が心配なときは給与所得者等再生が候補になりますが、返す額が大きくなることもあるため、収入の安定度と合わせて選びます。
2つの個人再生の違い|比較表
| 比べる点 | 小規模個人再生 | 給与所得者等再生 |
|---|---|---|
| 使える人 | 継続的・反復した収入の見込みがあり、借金が5,000万円以下(221条1項) | 左の要件に加え、給与など定期的な収入があり、額の変動の幅が小さいと見込まれる人(239条1項) |
| 債権者の関わり | 再生計画案を書面で決議にかける | 届出債権者の意見を聴く(240条) |
| 反対への対応 | 不同意が一定を超えると、手続きが廃止される(237条1項) | 不同意で自動的に廃止にはならない |
| 返す額の下限 | 最低弁済額と清算価値のうち多い額 | 左に加えて、可処分所得の2年分以上(241条2項7号) |
| 7年の制限 | なし | 前回の給与所得者等再生の遂行、ハードシップ免責、破産の免責許可から7年以内の申述は、小規模個人再生で行う旨の決定になる(239条5項2号) |
| 返す期間 | 原則3年、最長5年 | 同じ |
2つに共通するのは、申立ての時にどちらにするかを決める点(小規模は221条2項、給与所得者等は239条)、5,000万円の借金の上限、最低弁済額の基準、住宅資金特別条項を使えることです。最低弁済額の数字は個人再生の最低弁済額の早見表|借金額ごとの返済総額と計算の仕方で、全体の流れは個人再生とは?いくら減るかの決まり方と家を残す条件・流れで確かめられます。
債権者の同意の違い|書面決議と意見聴取
小規模個人再生は書面決議、給与所得者等再生は意見聴取です。 小規模個人再生では、不同意の回答が議決権者の半数に満たず、かつ議決権の額の2分の1を超えなければ、可決したものとみなされます(民事再生法230条6項)。給与所得者等再生には決議がなく、裁判所が届出債権者の意見を聴いたうえで、不認可事由がなければ認可します(240条・241条)。
数え方の細かい境目(頭数は半数以上、額は2分の1超で廃止になる点)と、実際に反対が出た事件の割合は、個人再生に反対する業者がいたら?不同意で廃止になる条件と備えにまとめています。この記事では、2つの手続きを分ける残りの条件、返す額と使える人に絞って見ていきます。
返済額の違い|可処分所得の2年分
給与所得者等再生の最大の特徴が、可処分所得の2年分という下限です。計画で返す総額が、次の額の2倍以上でなければ、認可されません(民事再生法241条2項7号)。
手取りの年収 − 本人と扶養を受ける人の最低限度の生活を維持するための1年分の費用 = 可処分所得(1年分)
手取りの年収は、収入から所得税・住民税・社会保険料などを引いた額を1年分に換算したものです。最低限度の生活費は、政令で、地域や年齢、扶養する人数で決まる額が定められています(241条3項)。この額は個人ごとに違うため、依頼先に計算してもらいます。
計算例を示します。借金が600万円(住宅ローンなし)の人で、手取りの年収が300万円、最低限度の生活費が年に150万円と仮定します(いずれも筆者の仮定)。
| 小規模個人再生 | 給与所得者等再生 | |
|---|---|---|
| 最低弁済額(600万円の5分の1) | 120万円 | 120万円 |
| 可処分所得(300万円 − 150万円) | 使わない | 150万円 |
| 可処分所得の2年分 | 使わない | 300万円 |
| 返す額の下限(清算価値が小さい場合) | 120万円 | 300万円 |
| 36回の月額 | 約3.3万円 | 約8.3万円 |
この例では、給与所得者等再生を選ぶと、返す額は2.5倍になります。可処分所得が大きい人ほど、この差が開きます。反対に、収入が少なく生活費がかさむ人は、可処分所得の2年分が最低弁済額を下回り、差が出ません。
選び方|反対しそうな債権者がいる場合
債権者の同意が心配なときの考え方を、順に示します。
- 給与など定期的な収入があり、変動の幅が小さいか
- いいえ → 小規模個人再生
- はい → 2へ
- 前回の給与所得者等再生の計画遂行、ハードシップ免責を受けた計画の認可、自己破産の免責許可のそれぞれの確定から7年以内か
- はい → 小規模個人再生
- いいえ → 3へ
- 債権額が大きく、反対すると債権額の2分の1を超えかねない債権者がいるか
- いる → 給与所得者等再生を検討。ただし4へ
- いない → 小規模個人再生
- 可処分所得の2年分以上を、3年(最長5年)で払えるか
- 払える → 給与所得者等再生
- 払えない → 小規模個人再生。反対がどのくらい出そうかの見方は、依頼先に聞く
2では、民事再生法239条5項2号が、次の日から7年以内に給与所得者等再生を求める申述がされたときは、裁判所が小規模個人再生で行う旨の決定をすると定めています。①前回の給与所得者等再生の計画が遂行された場合は、その認可決定の確定の日、②ハードシップ免責が確定した場合は、その免責に係る計画の認可決定の確定の日、③破産法252条1項の免責許可の決定が確定した場合は、その確定の日です。
3の「反対しそうな債権者」は、貸金業者や銀行など特定の業態が反対しやすい、とは言えません。債権者の意向は、債権者ごとに違います。借入先の債権額を一覧にして、どの債権者の額が大きく、反対すると半数と2分の1の線に近づくかを、依頼先に見てもらいます。小規模個人再生で反対が出た場合の扱いは個人再生に反対する業者がいたら?不同意で廃止になる条件と備えで詳しく説明しています。
4で払えないのに給与所得者等再生を選ぶと、計画弁済総額が可処分所得の2年分に届かない場合は不認可になり(241条2項7号)、払い続ける見込みがないと判断されても不認可になります(241条2項1号が引く174条2項2号)。債権者の反対を避けたい気持ちだけで選ばず、月の返済額が家計で続けられるかを先に確かめます。
申立てを決める前に
どちらにするかは、申立ての時に決めます。収入の安定度、借金の大きい債権者、財産の額、家の有無を合わせて、依頼先と試算します。手続き全体の得と損は個人再生のメリット|家や財産を残せる条件と、デメリットとの分かれ目で確かめられます。財産が多い場合の返す額の増え方は個人再生の清算価値とは?財産が多いと返済額が増える仕組みにあります。弁護士に依頼するときは、小規模個人再生と給与所得者等再生の両方で返済額を試算してもらい、見積書で費用の総額を確かめて選びます。
次に読むなら、小規模個人再生で債権者が反対したときの数え方を書いた個人再生に反対する業者がいたら?不同意で廃止になる条件と備えが続きです。
よくある質問
Q. 給与所得者再生と給与所得者等再生は別のものですか?
同じ手続きです。民事再生法の名称は「給与所得者等再生」で、「給与所得者再生」はその通称として広く使われています。給与のほかに、これに類する定期的な収入がある人も対象になるため、条文は「等」を付けています(民事再生法239条1項)。
Q. 給与所得者等再生を選ぶと、債権者の同意はいらないのですか?
小規模個人再生のような債権者の書面決議はなく、債権者の意見を聴く手続きになります(民事再生法240条)。ただし、意見を聴いたあとに、不認可事由がなければ認可される仕組みで、可処分所得の2年分以上を返すなど、別の要件を満たす必要があります。
Q. 自営業やパートでも給与所得者等再生を選べますか?
給与など定期的な収入があり、額の変動の幅が小さいと見込まれることが条件です(民事再生法239条1項)。自営業や、収入の変動が大きい働き方では、この要件に当たらない場合があります。当たらない場合は、小規模個人再生で申し立てます。
出典・参考にした公的な情報
- 民事再生法 第221条・第230条・第231条・第237条・第239条〜第241条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個人再生手続(裁判所)(最高裁判所)
- 裁判手続 民事事件Q&A(個人再生手続とは・どれくらいの額を返済するか)(最高裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。