個人再生と住宅・車のローン / Q&A

個人再生に反対する業者がいたら?不同意で廃止になる条件と備え

この記事のもくじ
  1. 反対されたらどうなる?|個別の同意は要らず、数と額で決まる
  2. 廃止になる境目|頭数と債権額を数えてみる
  3. 実際に反対はどれくらいあるのか|日弁連の記録調査
  4. 反対が心配なときの備え|申立ての前にできること
  5. 給与所得者等再生という別の道
  6. 万一、廃止になったら

個人再生では、1社ずつの業者の同意は要りません。小規模個人再生は書面で債権者の意見を聞く手続きで、反対した債権者が「頭数で半数以上」か「債権額で2分の1超」になったときだけ、手続きが廃止になります(民事再生法230条6項・237条1項)。反対する業者がいるだけでは、認可は止まりません。この記事では、廃止になる線の数え方と、反対が心配なときの備え方を、裁判所の案内と日弁連の記録調査の数字で書きます。

反対されたらどうなる?|個別の同意は要らず、数と額で決まる

小規模個人再生の再生計画案は、債権者の決議にかけられます。ただし、全員または過半数の賛成が要るわけではありません。同意しない旨を書面で回答した債権者が、頭数の半数に満たず、かつ債権額の合計の2分の1を超えなければ、可決したものとみなされます(230条6項)。東京地方裁判所の案内も、この数え方を同じ内容で説明しています。

どちらかの線を超えると、裁判所は職権で手続きを廃止します(237条1項)。2つの線は、境目の数え方が少し違います。

図解:小規模個人再生で手続きが廃止になる2つの線
可決とみなされる(廃止にならない) 廃止になる
反対の頭数 議決権者総数の半数に満たない 半数以上
反対の債権額 議決権の総額の2分の1を超えない(ちょうど2分の1も可) 2分の1を超える
根拠 民事再生法230条6項 民事再生法237条1項

反対の回答は、回答期限までに書面で裁判所へ出すものです。東京地方裁判所の案内は、電話や口頭では不同意の回答をしたことにならないと明記しています。回答しなかった債権者は、反対の数には入りません。

廃止になる境目|頭数と債権額を数えてみる

2つの線は、数字で置くと分かりやすくなります。次の表は、債権者8社、議決権の総額が600万円の場合の筆者の計算例です(実際の議決権は、債権額の確定の結果で変わります)。

反対した業者 頭数 反対の額 結果
小口の3社(各20万円) 3社(8社の半数に満たない) 60万円 可決とみなされる
小口の4社(各20万円) 4社(半数以上) 80万円 頭数の線を超えて廃止
大口の1社(300万円) 1社 300万円(ちょうど2分の1) 可決とみなされる
大口の1社(350万円) 1社 350万円(2分の1超) 額の線を超えて廃止

この例のとおり、小さな債権者が数でそろっても、大口が1社だけで額の線を超えても、廃止になります。借金の中に突出して大きい債権がある人は、その1社の動きが結果を左右しうる、と見ておきます。

議決権は、異議が出なかった債権(無異議債権)と、裁判所の評価が済んだ債権(評価済債権)の額で数えます(230条8項)。住宅資金特別条項で権利を変更される住宅ローンの債権者と保証会社には、議決権がありません(201条1項)。

実際に反対はどれくらいあるのか|日弁連の記録調査

日本弁護士連合会は、2022年6月から11月に全国50の地方裁判所に申し立てられた事件の記録を調べています(2023年調査)。小規模個人再生で、不同意の債権者がいなかったのは573件中543件(94.76%)でした。反対した債権者がいた事件は30件(5.24%)です。

30件の内訳は、次のとおりです。反対した債権者が頭数で半数以上に達した事件は0件、債権額で2分の1を超えた事件は10件でした。反対があった30件では、反対した債権者の数はすべて頭数の30%未満にとどまり、数より額で線に近づいた事件が目立ちます。573件に対して10件は約1.7%です(筆者の計算)。反対が出たときに起きるのは、まれな事態といえます。

反対が心配なときの備え|申立ての前にできること

次の順で、依頼先と見立てておくと、廃止の危険を下げられます。

  1. 借入先ごとの金額を並べ、突出した債権がないかを見る。 債権者一覧表の金額が、額の線の判断のもとになります。1社で総額の過半を占める債権があれば、その1社の動きに注意します。
  2. 返す額が清算価値を下回っていないかを確かめる。 再生計画の決議が債権者の一般の利益に反するときは、認可されません(174条2項4号)。債権者が反対する理由を減らすうえでも、財産の評価を丁寧にしておくことが土台です。個人再生の清算価値とは?財産が多いと返済額が増える仕組みで評価の考え方を見られます。
  3. 給与所得者等再生が使えるか検討する。 使える人は限られますが、債権者の決議がないので、反対の数で廃止になることがありません。
  4. 反対しそうな業者にだけ多く返す、という手は使えない。 手続きの開始後は、計画によらない返済が禁じられます(85条1項)。計画の内容も、不利益を受ける債権者の同意がない限り、債権者の間で平等でなければなりません(229条1項)。開始前の返済の扱いは個人再生の偏頗弁済とは?手続き前に一部だけ返すと起きることにあります。
  5. 業者とのやり取りは依頼先に任せる。 弁護士や司法書士が書面で受任を通知すると、貸金業者が正当な理由なく本人に返済を求めることが禁じられます(貸金業法21条1項9号)。「同意してほしい」と本人に頼むような接触は、控えます。

給与所得者等再生という別の道

給与所得者等再生には債権者の決議がなく、裁判所が意見を聴くだけなので、反対の数で廃止になることがありません(240条)。東京地方裁判所の案内も、不同意の意見を出しても再生計画案には影響しないと説明しています。その代わり、返す額に可処分所得の2年分という下限が加わり、使える人にも条件があります。

使えるかどうかと、返す額がどれだけ増えるかは、個人再生の給与所得者再生とは?小規模個人再生との違いと選び方で、計算例つきで比べています。反対への備えとして選ぶ値打ちがあるかは、その総額の差で決めます。

万一、廃止になったら

認可の決定が確定するまで、借金は再生計画で変わりません。再生債権の権利が計画のとおりに変更されるのは、認可決定が確定したときです(232条1項・2項)。廃止になれば、計画による減額は成立せず、借金は元のままです。差押えなどの手続きの扱いや、その後に取れる手続きは、個人再生が失敗する場合|却下・不認可・取消しになる原因で段階ごとに整理しています。自己破産との選び分けは自己破産と個人再生の違い|家・仕事・返済額で選ぶ判断材料が参考になります。

個人再生の全体像は個人再生とは?いくら減るかの決まり方と家を残す条件・流れから確かめられます。

よくある質問

Q. 業者から「個人再生には同意しない」と言われたら、手続きは止まりますか?

電話や口頭で反対すると言われても、それだけでは手続きに影響しません。小規模個人再生で同意しない旨は、債権者が書面で、裁判所の決めた期限内に回答して初めて数に入ります(東京地方裁判所の案内)。数に入ったうえで、頭数の半数以上か、債権額の2分の1を超えたときに廃止になります。

Q. 住宅ローンの銀行が反対したら、家は残せなくなりますか?

住宅資金特別条項で権利を変更される住宅ローンの債権者は、再生計画案の決議で議決権がありません(民事再生法201条1項)。決議の頭数にも額にも入らないため、反対票にはなりません。ただし裁判所は、この債権者の意見を聴くことになっています(同条2項)。

Q. 反対が多かったら、あとから計画を直して出し直せますか?

小規模個人再生では、反対が頭数の半数以上か額の2分の1超になった時点で、裁判所は職権で手続きを廃止しなければなりません(237条1項)。廃止になった後の次の手は、別の記事で手続き別に整理しています。出し直しに頼らず、申立ての前に反対の見込みを依頼先と見立てておくのが現実的です。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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