個人再生が失敗する場合|却下・不認可・取消しになる原因
個人再生が通らない形は、4つの段階に分かれます。申立てが棄却・却下される、手続きの途中で廃止になる、再生計画が不認可になる、認可された後で計画が取り消される、の4つです。日弁連の記録調査(2023年)では、小規模個人再生の91.06%(604件中550件)が認可で終わっています。認可で終わらなかった1割弱は、取下げと廃止が大半です。この記事は、段階ごとの原因と、失敗しそうになったときの次の手を条文で示します。
失敗する4つの段階と、主な原因
失敗は、手続きのどの段階で起きるかで、名前と結果が変わります。
| 段階 | 結果 | 主な原因 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 申立て | 棄却・却下 | 費用の予納がない/認可の見込みがないことが明らか/不当な目的 | 民事再生法25条 |
| 開始後〜決議 | 手続きの廃止 | 計画案が期限内に出せない/債権者の反対が線を超える/財産目録の不記載(237条2項は小規模個人再生の規定) | 191条・237条・243条 |
| 認可の判断 | 不認可 | 遂行の見込みがない/債権者の一般の利益に反する/最低弁済額に届かない/収入の見込みがない | 174条2項・231条2項・241条2項 |
| 認可後 | 計画の取消し | 不正の方法で成立/履行を怠った/清算価値を下回ることが明らかになった | 189条・236条 |
同じ「失敗」でも、手を打てる時期は違います。申立てに近い段階ほど、書類と見込みの確かめで防げます。認可後の段階は、払えなくなる前に使える制度があるため、早めに依頼先へ連絡することが分かれ目になります。
実際にどれくらい終わらないのか|日弁連の記録調査
日弁連は、2022年6月から11月に全国50地裁へ申し立てられた事件を調べています(2023年調査)。終わり方の割合は、次のとおりです。
| 終わり方 | 小規模個人再生(604件) | 給与所得者等再生(169件) |
|---|---|---|
| 認可決定 | 550件(91.06%) | 148件(87.57%) |
| 取下げ | 28件(4.64%) | 16件(9.47%) |
| 廃止 | 18件(2.98%) | 3件(1.78%) |
| 申立棄却 | 2件(0.33%) | 1件(0.59%) |
| 不認可決定・申立却下 | 0件 | 0件 |
| その他(死亡終了・記入漏れ) | 6件 | 1件 |
認可で終わらなかった事件の大半は、不認可ではなく、取下げと廃止です。この調査では、不認可の決定も申立却下も、どちらの手続きでも0件でした。裁判所は、不認可の事由があると認めるときは、小規模個人再生では計画案を決議にかけられず(230条2項)、給与所得者等再生では債権者の意見聴取に進みません(240条1項1号)。不認可の決定に至る事件が少ないのは、その手前で止まるためです。認可後に取り消された割合は、この調査には出ていません。
段階ごとの原因と、防ぎ方
申立てから開始決定まで
申立ての書類は、東京地方裁判所の案内で、申立書、収入一覧及び主要財産一覧、債権者一覧表、住民票の写し、給与明細書、確定申告書または源泉徴収票、財産目録及び清算価値算出シート、直近2か月の家計全体の状況などが挙がっています。書類が足りないと、開始の判断まで進めません。
小規模個人再生には、将来継続的または反復して収入を得る見込みが必要です(221条1項)。住宅ローンなどを除く借金が5,000万円を超えるときは、そもそも小規模個人再生の要件に当たらず、認可の段階でも不認可の理由になります(221条1項・231条2項2号)。収入や金額の要件に当てはまるかは、申立ての前に依頼先と確かめます。
開始後から決議まで
東京地方裁判所の案内は、とくに債権者一覧表の誤りに注意を促しています。個人再生では、一覧表の内容が債権届出とみなされるため、開始後に訂正はできません。誤記があると、適正な再生計画案が作れず、手続きが廃止されることがあります。借入先の漏れや金額の誤りは、ここで起きる典型的な失敗です。
計画案は、裁判所が定めた期限までに出す必要があります。期限に間に合わなければ廃止になります(東京地裁の案内。小規模は191条2号、給与所得者等再生は243条)。小規模個人再生では、財産目録に書くべき財産を書かない、不正の記載をしたときも、廃止の対象になります(237条2項。この規定は小規模個人再生についての定めです)。債権者の反対が線を超える場合は個人再生に反対する業者がいたら?不同意で廃止になる条件と備えで、数え方を示しています。
認可の判断のとき
裁判所は、次のときに不認可を決めます。手続きや計画が法律に反して補正できないとき、計画が遂行される見込みがないとき、決議が不正の方法で成立したとき、決議が債権者の一般の利益に反するときです(174条2項)。小規模個人再生では、このほか、収入の見込みがないこと、総額が5,000万円超であること、計画の弁済総額が最低弁済額を下回ることも不認可の理由です(231条2項)。
「債権者の一般の利益に反する」とは、破産した場合の配当を下回る返済しか計画にないことを指します。財産の評価が低すぎると、ここで引っかかります。評価の方法は個人再生の清算価値とは?財産が多いと返済額が増える仕組みで、最低弁済額の数字は個人再生の最低弁済額の早見表|借金額ごとの返済総額と計算の仕方で確かめられます。
住宅資金特別条項を使う計画では、住宅の所有権や敷地の利用権を失うと見込まれるときも不認可です(202条2項3号)。給与所得者等再生では、可処分所得の2年分以上を返す計画でないと、不認可になります(241条2項7号)。
遂行の見込みは、認可の前の積立の実績でも見られます。東京地方裁判所は、計画弁済予定額を毎月、個人再生委員の指定する口座に振り込むよう求め、振込漏れがないよう注意しています。積立が続かないと、遂行の見込みがない(174条2項2号)という判断につながるおそれがあります。積立の仕組みは個人再生の履行テストとは?積立の目的と払えなかった場合にあります。
認可のあと
認可が確定した後でも、債権者は計画の取消しを申し立てられます。取消しの理由は、計画が不正の方法で成立したこと、再生債務者が計画の履行を怠ったことなどです(189条1項)。小規模個人再生では、計画弁済総額が、認可確定の時点で破産していた場合の配当を下回ることが後から明らかになったときも、取消しの理由になります(236条)。財産を隠して評価を下げていた場合などがこれにあたります。
取消しが確定すると、計画で変更された借金は元に戻ります(189条7項)。ただし、債権者が計画で得た権利には影響しないとされています。
失敗しそうなときの次の手
認可の後で、病気や失業などで払えなくなりそうなときは、取消しになる前に使える制度があります。
| 手 | 内容 | 条件の要点 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 計画の変更 | 返済の期限を延ばす | やむを得ない事由で計画の遂行が著しく困難。延長は最終期限から2年を超えない範囲 | 民事再生法234条 |
| ハードシップ免責 | 残りの借金の責任を免れる | 責めに帰することができない事由で遂行が極めて困難。変更後の基準債権に4分の3以上を弁済済み。計画の変更も極めて困難 | 235条 |
| 自己破産 | 破産手続と免責の許可を申し立てる | 支払不能の状態など破産の要件。免責不許可事由がないこと | 破産法252条 |
ハードシップ免責は、養育費などの対象外の請求権と罰金等を除いて、残りの借金の責任を免れさせる制度です。保証人や担保には影響しません(235条6項・7項)。ハードシップ免責が確定すると、その計画の認可確定の日から7年以内は、給与所得者等再生ではなく小規模個人再生で扱われ(239条5項2号)、自己破産でも免責不許可事由になります(破産法252条1項10号ハ)。
どれを使うかは、払えなくなった理由と残りの額で変わります。個人再生と自己破産の違いは自己破産と個人再生の違い|家・仕事・返済額で選ぶ判断材料で、自己破産の全体は自己破産とは?で確かめられます。
失敗を避けるための確認表
申立ての前に、次の項目を依頼先と確かめておくと、よくある失敗を避けられます。
- 借入先を全部、債権者一覧表に載せたか(家族・友人からの借入れ、使っていないカードの残高も含む)
- 収入が途切れそうな事情(休職・転職・契約満了)はないか
- 財産目録に、預金・保険・車・退職金見込みを漏れなく書いたか
- 手続きの前に、一部の人だけに返していないか(個人再生の偏頗弁済とは?手続き前に一部だけ返すと起きること)
- 毎月の積立と、依頼先への支払いを、家計で続けられるか
- 手続きの全体と費用を、個人再生とは?いくら減るかの決まり方と家を残す条件・流れで確かめたか
よくある質問
Q. 個人再生は、審査で断られることがありますか?
条文では、再生手続の費用の予納がないとき、再生計画案の作成や可決・認可の見込みがないことが明らかなとき、不当な目的の申立てなどのときに、裁判所は申立てを棄却しなければなりません(民事再生法25条)。日弁連の記録調査(2023年)で、申立てが棄却された事件は小規模個人再生で0.33%でした。
Q. 認可されたあとに払えなくなったら、どうなりますか?
債権者の申立てがあれば、裁判所は再生計画を取り消せます(189条1項2号)。取り消されると、計画で変更された借金は元に戻ります(同条7項)。その前に、期限を延ばす計画の変更や、ハードシップ免責という手があります。条件は本文の表で示します。
Q. 小規模個人再生と給与所得者等再生で、失敗しやすさは違いますか?
日弁連の調査では、認可された割合は小規模個人再生が91.06%、給与所得者等再生が87.57%で、取下げの割合は後者(9.47%、前者は4.64%)が高く出ています。ただし件数が少なく、取下げの理由までは調査に出ていません。どちらかが不利と読むのは控え、自分の収入の安定度で選ぶ材料にします。
出典・参考にした公的な情報
- 民事再生法 第25条・第174条・第189条・第191条・第221条・第231条・第234条〜第237条・第241条・第243条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 2023年破産事件及び個人再生事件記録調査(日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会)(日本弁護士連合会)
- よくある質問 個人再生手続について(東京地方裁判所民事第20部)(東京地方裁判所)
- 個人再生手続の申立てに当たって(東京地方裁判所)令和7年11月1日以降適用(東京地方裁判所)
- 破産法 第252条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。