個人再生と住宅・車のローン / 基本ガイド

個人再生とは?いくら減るかの決まり方と家を残す条件・流れ

この記事のもくじ
  1. 個人再生とは|借金を減らして3年で返す裁判所の手続き
  2. 返済額の決まり方|いくら減っていくらになるのか
  3. 家を残せる条件|住宅資金特別条項(住宅ローンの特則)
  4. 申立てから返済開始までの流れ・費用と、減らないもの
  5. 手続きの段階別|知りたいことから読み進める
  6. 自己破産・任意整理と比べて、自分に合うかを考える

個人再生とは、裁判所に認めてもらった再生計画にそって借金を法律の下限まで減らし、原則として3年で分割して返す手続きです。いくら返すかは、住宅ローンなどを除いた借金の額に応じた「最低弁済額」と、財産を処分した場合の額(清算価値)のうち、多いほうで決まります。たとえば対象の借金が600万円なら最低弁済額は5分の1の120万円で、減る額は最大480万円の計算です(筆者の計算。財産が多いと返す額は増えます)。住宅ローンは減りませんが、約束どおり払い続けて家を残す特則があります。

個人再生とは|借金を減らして3年で返す裁判所の手続き

個人再生は、民事再生法のうち、個人向けに手続きを軽くした特則です。再生計画が認可され、計画どおりに返し終えると、残りの債務の免除を受けられます(裁判所「個人再生手続」)。自己破産のように財産を処分して配当に回す手続きではなく、財産を持ったまま、収入から返していく点が違います。

使えるのは、将来にわたって継続的または反復して収入を得る見込みがあり、住宅ローンや担保で回収できる分などを除いた借金の合計が5,000万円以下の人です(民事再生法221条1項)。アルバイトやパートでも収入の見込みがあれば対象になりえます。

手続きは2種類あります。どちらを選ぶかは申立ての時に決めます。

小規模個人再生 給与所得者等再生
使える人 収入の見込みがあり、借金が5,000万円以下 左に加えて、給与など定期的な収入があり、額の変動の幅が小さいと見込まれる人(239条1項)
債権者の関わり 書面で意見を求める決議があり、不同意が多いと手続きが廃止される(230条・237条) 債権者の意見を聴くだけで、決議はない(240条)
返す額の下限 最低弁済額と清算価値のうち多い額 左に加えて、可処分所得の2年分以上(241条2項7号)

違いの詳細と選び方は個人再生の給与所得者再生とは?小規模個人再生との違いと選び方で説明しています。ほかの手続きとの位置づけは債務整理とは?4つの手続きの違いと自分に合う方法の選び方が入口です。

返済額の決まり方|いくら減っていくらになるのか

返す総額の下限は、複数の基準を並べて、いちばん大きい額になります。

図解:返す額の下限は3つの基準のうち最も多い額
  1. 最低弁済額:借金の額から条文どおりに出る額(小規模個人再生・給与所得者等再生の両方)
  2. 清算価値:自己破産した場合に債権者へ配当される額に相当する、自分の財産の評価額(両方)
  3. 可処分所得の2年分:手取り年収から最低限度の生活費を引いた額の2倍(給与所得者等再生だけ) → 1・2・3のうち最も多い額以上を、再生計画で返す

最低弁済額は、小規模個人再生の場合、住宅ローンや担保で回収できる分などを除いた借金の額によって次のように決まります(民事再生法231条2項3号・4号)。

対象の借金の額 最低弁済額
100万円未満 借金の全額(減らない)
100万円以上500万円以下 100万円
500万円超1,500万円以下 借金の5分の1
1,500万円超3,000万円以下 300万円
3,000万円超5,000万円以下 借金の10分の1

「個人再生は借金が5分の1になる」と言われますが、5分の1で計算するのは、対象の借金が500万円超1,500万円以下の人だけです。500万円以下なら一律に100万円、100万円未満なら減りません。借金額ごとの早見表と月々の額は個人再生の最低弁済額の早見表|借金額ごとの返済総額と計算の仕方にまとめています。

計算例を示します。住宅ローンを除く借金が600万円なら、最低弁済額は5分の1の120万円です。清算価値がそれより小さければ、返すのは120万円で、36回に分けると月に約3.3万円です。借金が1,000万円なら200万円で、月に約5.6万円です(いずれも筆者の計算で、依頼先の費用は含みません)。

清算価値が最低弁済額を上回る人は、その額まで増えます。裁判所の説明も、返済総額は清算価値を上回らなければならないとしています。預金・保険の解約返戻金・車などの評価の考え方は個人再生の清算価値とは?財産が多いと返済額が増える仕組みで見られます。

返す期間は、認可決定の確定から原則3年、特別の事情があれば5年までで、3か月に1回以上の分割で払います(民事再生法229条2項)。

家を残せる条件|住宅資金特別条項(住宅ローンの特則)

個人再生が家を持つ人に選ばれる理由が、住宅資金特別条項です。住宅ローンは減らさず、約束どおり払い続けながら、ほかの借金だけを減らします。裁判所も、この計画が認められ、従って返済すれば住宅を手放さずに済むと説明しています(裁判所「民事事件Q&A」)。

使うには、次の条件がそろう必要があります。

  • 対象の建物が、自分が所有して自分が住む家で、床面積の2分の1以上が専ら居住用であること(196条1号)
  • ローンが、住宅の建設・購入・改良の資金で、分割払いの定めがあり、その住宅に抵当権が付いていること(196条3号)
  • 住宅に、住宅ローン以外の担保権が付いていないこと(198条1項)
  • 保証会社が代わりに払った(代位弁済)場合は、その日から6か月を過ぎる前に申し立てること(198条2項)
  • 計画で、家の所有権や敷地の利用権を失うと見込まれないこと(202条2項3号)

返し方の基本は、約束どおりの返済に、認可の時までの滞納分を最長5年の弁済期間の中で上乗せして払う形です。難しければ、最終の返済日を約束から10年を超えず、70歳を超えない範囲で延ばせます(199条)。認可の見込みがあれば、競売の手続きの中止を命じてもらえる場合もあります(197条1項)。

注意したいのは、家に別のカードローンの担保が付いているなど、条件を満たさない家は特別条項を使えない点です。家の価値とローン残高の差が返済額にどう響くかは個人再生のオーバーローンとアンダーローン|家の価値で変わることに、条件と流れの全体は個人再生で住宅ローンを払い続ける特則|家を残す条件と流れにあります。ローンが残る車は別の扱いで、個人再生で車はどうなる?ローン中の車と完済した車で違う扱いにあります。ローンの滞納が始まっている人は、銀行への相談や売却も含めた選択肢を住宅ローンが払えないときの選択肢|銀行への相談・売却・個人再生で整理しています。

申立てから返済開始までの流れ・費用と、減らないもの

流れは次のとおりです。

  1. 借入先・残高・毎月の返済額・収入・財産を一覧にして、弁護士などに相談する
  2. 申立書、債権者一覧表、財産目録、住民票の写し、源泉徴収票・給料明細書などをそろえる(書類は裁判所ごとに違うため、申立先に確かめる)
  3. 住所地を管轄する地方裁判所に申し立てる
  4. 開始決定。債権の届出期間と異議を述べる期間が決まり、公告される(222条)。開始決定を受けると、借金に基づく差押えなどの手続きは中止になる(39条1項)
  5. 再生計画案を出す。小規模個人再生は債権者の書面決議、給与所得者等再生は債権者の意見聴取に進む
  6. 認可の決定。確定すると、小規模個人再生の手続きは当然に終結する(233条)
  7. 確定から3年(最長5年)にわたり、計画どおりに返す

開始決定のあとは、再生計画によらずに特定の借金だけ返すことは禁じられます(85条1項)。段階ごとの内容と期間は個人再生の流れ|申立てから認可決定・返済開始までの期間に分けて書いています。

裁判所に納める費用は、手数料の収入印紙1万円分(民事訴訟費用等に関する法律 別表第一)のほか、連絡用の郵便料、官報に公告を載せる費用です。裁判所が個人再生委員を選んだ場合は、その費用も要ります。個人再生委員は、必要があると裁判所が認めたときに選ばれ、債務者の財産や収入の調査などを担当します(223条)。郵便料や委員の費用の額は裁判所ごとに違うので、申立先の裁判所の案内を見てください。依頼先に払う費用は別で、個人再生の費用はいくら?裁判所の費用・弁護士費用・再生委員と個人再生の弁護士費用|内訳と分割払い・見積書の確かめ方に分けて整理しています。

個人再生でも減らないもの・残る負担。

  • 住宅ローン:特別条項を使うと約束どおりに払う。減らない
  • 悪意で加えた不法行為の損害賠償、養育費などの扶養に関する義務:債権者の同意がなければ減免できない(229条3項)。罰金等も対象外(232条2項)
  • 税金:再生債権ではなく一般優先債権として、再生手続の外で随時払う(122条)
  • 保証人への請求:再生計画は保証人に影響しない(177条2項)。保証人のいる借金を入れると、保証人に請求が行く

官報に公告が載ることや、信用情報に記録が残ることなどの負担もあります(民事再生法10条)。デメリットの全体は個人再生のデメリット|失うもの・手続きの負担・家族への影響で、表で確かめられます。計画どおりに返せなくなったときの手は個人再生が失敗する場合|却下・不認可・取消しになる原因にあります。

手続きの段階別|知りたいことから読み進める

いまの段階に合う記事から読んでください。

住宅ローンの滞納が進んでいるときは、保証会社の代位弁済から6か月という期限(198条2項)を先に確かめます。過ぎると住宅資金特別条項が使えません。

自己破産・任意整理と比べて、自分に合うかを考える

個人再生は、収入があって、借金を大きく減らしたい人、とくに家を残したい人に向く手続きです。逆に、収入の見込みが立たないなら自己破産、借金が少なく、3〜5年で返しきれるなら任意整理が候補になります。

任意整理 個人再生 自己破産
裁判所 使わない 地方裁判所 地方裁判所
元本 原則として減らない 最低弁済額などの下限まで減る 免責が確定すれば責任を免れる
家 住宅ローンを外せば残せる 特別条項で残せる場合がある 原則として手放す
官報 載らない 載る 載る

比べ方は任意整理と個人再生の違い|借金額・収入・住宅で選ぶ分かれ道と自己破産と個人再生の違い|家・仕事・返済額で選ぶ判断材料で、4つの手続きの比較表は債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いで確かめられます。

相談先は、裁判所ではありません。裁判所は中立の立場にあるため、申立ての相談には応じず、弁護士への相談を案内しています(裁判所「破産・再生」)。費用が心配なときは借金が返せないとき法テラスでできること|無料相談と費用立替の流れを、窓口を探すときは借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方をどうぞ。

個人再生の依頼先として、弁護士に頼む選択肢もあります。選ぶときは、報酬の内訳と総額を見積書で示してもらう、資格者本人と面談できるか、個人再生以外の手続きの見通しも説明してくれるかを確かめます。

相談の前に、借入先ごとの残高と毎月の返済額、収入と財産の資料をそろえておくと、話が早く進みます。次に読むなら、失うものを先に知りたい方は個人再生のデメリット|失うもの・手続きの負担・家族への影響が続きです。

よくある質問

Q. 個人再生で借金はいくらまで減りますか?

住宅ローンなどを除いた借金が100万円以上500万円以下なら返す額の下限は100万円、500万円超1,500万円以下なら5分の1です(民事再生法231条2項4号)。ただし、財産を処分した場合の額(清算価値)がそれより大きければ、その額まで返す額が増えます。借金が100万円未満なら減りません。

Q. 住宅ローンがあっても個人再生を使えますか?

使えます。住宅ローンは借金の5,000万円の計算から除かれ、住宅資金特別条項を定めれば、住宅ローンを払いながら家を残せる場合があります。ただし住宅に別の担保が付いているなど、特別条項を使えない場合もあります(民事再生法198条1項)。

Q. 個人再生は自分で申し立てられますか?

裁判所は申立ての書式を公開しており、本人が申し立てることはできます。ただし債権者一覧表や財産目録、再生計画案の作成は複雑です。司法書士ができるのは裁判所に出す書類の作成までで、申立ての代理ができるのは弁護士です(司法書士法3条1項4号)。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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