個人再生の家計簿の付け方|裁判所に出すときの注意点と記入例
個人再生で裁判所に出す家計簿は、書式の名前が「家計全体の状況」で、世帯の収入と支出を月ごとに書いて、収入と支出の合計を合わせる表です。提出する月数は裁判所で違い、東京地方裁判所は直近2か月分、札幌地方裁判所は直近3か月分です。レシートが残っていない支出は、通帳やカードの明細で金額を埋め、残りは概算と断って書きます。この表は、再生計画の毎月の返済を払い続けられるか(民事再生法174条2項2号)を判断する材料になるので、きれいに見せるのではなく、実際の暮らしの金額を書くのが基本です。
家計簿は何か月分、どの形で出すのか
裁判所の公表資料から読み取れる範囲を、表にします。申立先の裁判所が違えば、月数も書式も変わるので、自分の分は依頼先の指示に従います。
| 裁判所 | 提出する月数 | 書式の特徴 |
|---|---|---|
| 東京地方裁判所(令和7年11月1日以降) | 家計全体の状況・直近2か月分 | 添付書面の一つとして、財産目録及び清算価値算出シートなどと一緒に出す |
| 札幌地方裁判所(令和6年9月版の書式) | 申立て直前の3か月分 | 収入と支出を費目別に書き、各種保険料と同居者のローンは別紙に内訳を書く。収入の受取方法と、定期的な支出の支払方法も別紙に書く |
札幌地裁の書式には、決まりごとが4つ書いてあります。申立て直前の3か月分を出すこと、各種保険料は別紙の内訳表に詳細を書くこと、同居者のローン返済があれば別紙に詳細を書くこと、定期的な収入と支出は受取方法と支払方法を明記して資料を付けること、です。東京地裁の様式の中身は今回見た公表資料にないので、記入欄の名前は自分の申立先の書式で確かめてください。
どちらの裁判所も、収入と支出の合計を一致させるよう求めています。札幌地裁の書式は「収入合計と支出合計が一致するように記載してください」と書き、前月からの繰越と翌月への繰越の欄を設けています。足りない月は、繰越金や預貯金の取り崩しで説明がつくように書きます。
記入例と、書き方の手順
記入のイメージです。金額は書き方を示す例で、足し算は筆者の計算です。
| 区分 | 費目 | 金額(円) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 収入 | 前月からの繰越 | 15,000 | 預金から |
| 収入 | 給与(申立人) | 230,000 | 手取り |
| 収入 | 給与(配偶者) | 90,000 | パート・手取り |
| 収入 | 収入合計 | 335,000 | |
| 支出 | 家賃(管理費を含む) | 68,000 | 契約書を添付 |
| 支出 | 食費 | 55,000 | |
| 支出 | 電気・ガス・水道 | 22,000 | 領収書を添付 |
| 支出 | 電話・携帯 | 12,000 | 端末代の分割は別に明記 |
| 支出 | 日用品・雑費 | 9,000 | |
| 支出 | 交通費 | 8,000 | |
| 支出 | 医療費 | 5,000 | |
| 支出 | 教育費 | 10,000 | |
| 支出 | 各種保険料 | 13,500 | 別紙の内訳表① |
| 支出 | 被服費 | 4,000 | |
| 支出 | 交際費・娯楽費 | 8,000 | |
| 支出 | 借金の返済 | 95,000 | 申立て前の返済額 |
| 支出 | 支出小計 | 309,500 | |
| 繰越 | 翌月への繰越 | 25,500 | 335,000−309,500 |
次の順で書くと、抜けと数字の食い違いを防げます。
- 3か月分(または2か月分)の通帳・給与明細・カード明細を並べる:書式が求める月数ぶんの資料を、月ごとの束にします。
- 収入から先に書く:給与は明細の手取り額、年金や手当は振込額で書きます。副収入や、親族からの援助、借入があった月は、収入の欄にそのとおり書き、備考に誰から何のお金かを足します。
- 固定費を契約書や明細の金額で埋める:家賃、光熱費、通信費、保険料は、引落しの記録で額が出ます。
- 変動費は月ごとの実額で書く:食費や日用品は、カード明細・電子マネー履歴・レシートで集計します。分からない分は後の節の手順で埋めます。
- 合計を合わせる:収入合計と支出合計が一致するまで、繰越を含めて見直します。
- 借金の返済は内訳を別に控える:どの会社へ、いくら払ったかを一覧にしておくと、債権者一覧表と食い違わずに済みます。
同居家族の収入と支出は、世帯の分として書く
「家計全体の状況」という名前のとおり、書くのは申立人だけの収支ではなく、同じ家計で暮らしている人の収入と支出を合わせた世帯の収支です。札幌地裁の書式には、給与(申立人)と並んで、給与(配偶者)、年金(配偶者)、児童手当、他からの援助、といった欄があります。
家族の収入を書いたときは、裏づけの資料も付けます。札幌地裁の添付書類一覧は、家計表の収入欄に申立人以外の収入を書いた場合に、その人の給与明細(直近3か月分)と源泉徴収票(直近2年分)を付けるよう求めています。同居家族に頼んで、明細を見せてもらい、金額を転記します。
家族が自分の借金を返している場合は、同居者のローンとして別紙に書きます。書式の例では、債務の種類、債務者、債務総額、月の支払額を並べます。家族の分と自分の分を混ぜず、誰の返済かが分かるようにします。
収入を持つ家族が別居している場合や、扶養している別居の家族がいる場合は、申立書の陳述書の欄に書く項目があります。家計表と陳述書の数字が食い違わないよう、同じ資料を見て書きます。
説明を求められやすい支出
裁判所や個人再生委員が見るのは、再生計画の毎月の返済を払い続けられる家計かどうかと、申立て前後に不公平な支払いがないかどうかです。次の支出は、金額や理由を聞かれやすいので、先に資料と説明を用意します。
| 支出 | なぜ聞かれやすいか | 用意するもの |
|---|---|---|
| 保険料 | 解約返戻金のある保険は財産として清算価値に入る | 保険証券、解約返戻金の証明書 |
| 車の維持費・ローン | 車は財産であり、ローンは債権者の扱いが変わる | 車検証、ローンの契約書と返済表 |
| 教育費・習い事 | 家計に占める割合が大きいと見られる | 月謝の領収書、学費の案内 |
| 交際費・娯楽費 | 額が大きいと、使い方の説明を求められる | 内訳のメモ、カード明細 |
| 家族や知人への支払い | 開始前に一部の人だけへ返した分は、返す総額を決める清算価値に響く。開始後の返済は、民事再生法85条1項で禁じられている | 借用書、振込の記録 |
| 借金の返済額 | 債権者一覧表の残高と合っているか | 取引明細、請求書 |
家族や知人に返したお金は、書かずにおくのが最もまずい書き方です。事情があって払ったなら、そのまま書き、依頼先に相談します。債権者の間で不公平になる返済の扱いは個人再生の偏頗弁済とは?手続き前に一部だけ返すと起きることで説明します。
レシートがない支出の埋め方
レシートがなくても、たいていの支出は別の記録から金額を作れます。
- 口座とカードの記録で埋める:引落し、振込、クレジットカードの利用明細、電子マネーやQRコード決済の履歴に、日付と金額が残ります。
- 現金は「引き出した額−手元に残った額」で出す:その月に現金で使った額の上限になります。食費、日用品、交通費に割り振ります。
- 割り振った費目に、概算であることを書く:備考欄に「現金払い分。ATM引出額から計算」のように根拠を書きます。正確な額のように書かないのが大切です。
- これから先の分は、受け取ったレシートを封筒にまとめる:まだ申立て前なら、これからの期間の分はレシートで裏づけられます。
浪費やギャンブルの支出を「食費」「雑費」と書き替えるのは避けます。個人再生は自己破産のような免責不許可事由の審査ではありませんが、虚偽の記載は手続の信用を損ない、財産の記載に不正があれば手続廃止の理由にもなります(民事再生法237条2項)。自己破産の家計表の付け方は自己破産の家計簿と必要書類に、アプリや手書きで日々の家計を続けるコツは借金返済中の家計簿のつけ方にあります。
毎月の積立や返済に使える額が表のどこに出るかは、個人再生の履行テストとは?積立の目的と払えなかった場合で見られます。次の手続の準備として、個人再生で通帳はどこまで調べられる?に進んでください。
よくある質問
Q. 個人再生の家計簿は、いつまで付ければよいですか?
裁判所に出すのは、申立ての直前の期間だけです。東京地裁は直近2か月分、札幌地裁は直近3か月分を求めています。申立ての後も、個人再生委員から追加の資料を求められることがあります。認可の後に家計表を裁判所へ出す定めは、確かめた書式や条文にはありません。ただ、再生計画の返済は原則3年続くので、家計の管理として付け続けるのが安全です。
Q. 同居している家族の収入は書きますか?
書きます。書式の名前が「家計全体の状況」で、札幌地裁の書式は配偶者などの給与の欄と、申立人以外の収入を載せたときの給与明細の添付を求めています。同居家族のローンの返済があるときは、別紙に債務の種類と月の支払額を書きます。
Q. 収入と支出の合計が合わない月は、どう書けばよいですか?
札幌地方裁判所の書式は「収入合計と支出合計が一致するように記載してください」と書き、前月からの繰越と翌月への繰越の欄を設けています。足りない月は、繰越金や預貯金の取り崩しで説明がつくように書きます。レシートがない支出は、通帳やカードの明細で金額を埋め、残りは概算と断って書きます。
出典・参考にした公的な情報
- 個人再生手続の申立てに当たって(令和7年11月1日以降適用)(東京地方裁判所)
- 個人再生に関するQ&A(東京地方裁判所 民事第20部)(東京地方裁判所)
- 家計全体の状況(再生手続開始申立書一式・令和6年9月版)(札幌地方裁判所)
- 添付書類一覧(小規模個人再生・令和6年1月版)(札幌地方裁判所)
- 再生手続開始申立書、陳述書等(小規模個人再生・令和6年1月版)(札幌地方裁判所)
- 民事再生法 第85条・第174条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。